はじめに

2021年にリリースした、PCとパッシブスピーカーの接続方法、という記事は、今でもたくさんの方にご覧いただいています。

このブログ記事では、PCとアンプとスピーカーをつないで、音をだすための基本的な方法を何種類か丁寧にご紹介しています。

これを受け、” カンタン接続のPCオーディオ!2023 その1” では、2023年の機器や音源の最新情報を踏まえ、手軽で高音質な音源と簡単な機器の接続方法とを両立させたPCオーディオの入門編として、DAC内蔵のアンプやサブスク音源についてご紹介しました。

今回は、” 簡単接続のPCオーディオ!2023 その2 " 、として、PCとスピーカーについて、ご紹介します。

 

PC~アンプ~スピーカーの接続

接続フローのイメージ

新たな接続方法(ケース1)

前回ご提案したPCとアンプ、そしてスピーカーの接続のイメージを下図に示します。

PC~アンプ~スピーカー、とそのままです。

今回は、PC本体、PCとアンプの接続、スピーカーについて、ご紹介します。

 

各構成要素の説明  ・・・前回からの続き

PCについて

ミニPCというジャンル

今、WindowsPCは、劇的に安くなっており、かつ性能も向上しています。専用機として新規導入もアリではないかと思います。

とりわけ、ミニPCという超小型デスクトップPCのジャンルが今元気です。

サイズから言えば、Mac miniもミニPCと言えます。Macとしては、比較的低価格で、かつ高性能ですが、さらに、Windows系では、価格が劇的に安い機種がでてきています。

N100 / N95の登場(+windows11pro)

例えばインテルから2023年1Qに発売された最新チップのN100 / N95などを用いたミニPCは、OSがWindows11proで、メモリーが、16GB/512GBで、2万円台からあります。

Windows付きです。それもpro。えっ?、という感じです。これは、OS単体として、まともに購入すれば、2万5千円ぐらいします。それが、ミニPCならほとんど同じ価格で購入できるわけです。

ノートタイプも、、、ラズパイより安い??

これとディスプレイとキーボードを組み合わせれば、PCの完成です。
LCDは、24インチクラスで1万円台前半で購入可能ですから、約4万円で一式が揃います。

なお、N100/N95を使った一体型のノートタイプもあります。約3万円台です。

もともと子供達のために安価なパソコンを提供する、という目的でラズベリーパイ財団がリリースしている最新のラズパイ4(Raspberry Pi 4)を使ったPC一式よりも安いぐらいです。

 

ミニPCのメモリーについて

メインメモリー

N100/N95のミニPCでは、メインメモリーのスロットが一つしかありません。これは、N100/N95の仕様です。従って、もし、メインメモリーを、8GBか16GBで迷うのであれば、16GBタイプをお勧めします。8GBだと後で拡張できないのでメモリーモジュールが無駄になります。もっとも、音楽専用機であれば、8GBで充分かもしれません。

ちなみに、メモリーを結構使うのは、ブラウザアプリです。Chromeなどで、いくつかウェブサイトを開きっぱなしにすると、あっという間に10GBぐらい使います。

外部メモリーにはNVMeも使える

外部メモリーのSSDとして、NVMeタイプを筐体内に接続できます。NVMeは、第12世代であるN100/N95から可能となりました。PC全体の動作速度向上に、これは極めて有効です。機種により、スロットが2つあるものもあります。各機種ごとに確認が必要です。

また、NVMeメモリーも、かなり安くなっていますので、大容量タイプの導入もしやすくなっています。

従来型のPCオーディオ用に用いる場合、WAVファイルなどファイルサイズが大きな場合でも、2TBのNVMeメモリーなどの増設で対応できます。さらに、通常の2.5インチサイズSSDが増設できるタイプもあります。ホームサーバーに転用するということもアリかもしれません。

 

N95の性能と用途

N95の性能は、2世代前のi3クラスです。音楽を流しながらエクセルを動かすくらいは余裕でできます。高性能なのでゲームもそこそこできます。

また、上記でご紹介しているDSP-408などのオーディオ関連機器の設定用にも使えます。
本機のコスパは驚異的です。筐体が小さく軽いので、VESAマウントキットでディスプレイの背中に装着することもできます。省スペースです。

N100は超省電力型

ミニPCの据置き型であれば、消費電力の高いN95の方がやや高性能で、かつ安くお勧めです。
N100は、いわばAtomの系譜の超省電力タイプとなります。ノート型には、こちらが向いているかもしれません。

PCとアンプとの接続方法

USBケーブル

PCとアンプは、USBケーブルで接続します。

USB信号は、デジタルですので、本質的には、劣化がしにくい信号伝送方式です。

ただし、PCの場合、様々なノイズが発生しています。このノイズにより、USB信号の波形などに影響し、結果的に劣化することがあります。

世の中にオーディオ用として販売されているケーブルは、そのようなノイズ対策や信号伝送への対策が施されています。

価格的には、ピンキリで恐ろしく高額なものもあります。

ただ、効果と価格とは、必ずしも正比例しません。

ここでは、オーディオ用として入手しやすく定評のあるケーブルをご紹介します。
エレコムのDH-AB10です。これは1mですが、2mのDH-AB20もあります。ノイズを考えると短い方がお勧めです。

Amazonで、実売価格がDH-AB10が約900円、同20が、約1800円ぐらいです。

オーディオ用としては、低価格品ですが、効果には定評があります。
なお、販売価格は都度変わりますので、ご確認下さい。

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スピーカー関連について

はじめに

今回、ご紹介している組み合わせのためのスピーカーは、アンプが外付けのパッシブ型となります。オーディオシステム全体の中で、音質に最も影響を与えるのが、スピーカーシステムです。

スピーカーは、その構造により、ユニットそのものと、その入れ物であるエンクロージャーと、それぞれいくつか種類があります。

ここでは、音工房Zの商品を例として、ユニットとエンクロージャーの組み合わせ例としてのスピーカーシステムについてご紹介したいと思います。いわゆるメインスピーカーのお話です。

通常は、これがあれば、音楽を楽しむ事ができます。(またはヘッドホンですが、その話はまた別途)

なお、前回ご紹介したアンプは、いずれも価格の割には、高性能です。

音域も十分広く、メインスピーカーの再生音域よりもより低域側を受け持つサブウーファーや、より高域側を受け持つスーパーツィーターを付加したときにも、用いることが可能です。ただし、サブウーファーの場合は、ローパスフィルターと組み合わせて、サブウーファー専用のアンプシステムとする必要があります。

限定された周波数帯の再生用スピーカー

サブウーファーの接続の場合

詳細については、例えば、この記事で接続方法や、設定方法などをご紹介しています。

ここで説明している設定方法は、次のような考え方で行っています。

基本的には、メインスピーカーを邪魔すること無く、50Hz以下の極低域を補うという考え方です。そのためには、高性能のフィルター機能と周波数特性に優れたパワーアンプが必要です。

できるだけ信号劣化を少なくするという観点では、デジタル処理の方が有効です。

例えば、上記でご紹介しているDSP-408の場合、ADC(アナログ・デジタル変換)+DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)+DAC(デジタル・アナログ変換)などの機能が一つに集積されたADAU1701というデバイスを用いています。ADAU1701は今やレガシーといってもいいぐらいですが、未だに現役です。192kHz/24bit仕様のΣ-Δ変調タイプの2つのADCと4つのDACが内蔵されており、DSP-408はそれを2個使っています。

メインスピーカー用のプリアンプからのアナログ信号を一旦デジタル化して、DSPでフィルター処理やイコライザ処理を行います。それをアナログ信号にして出力します。

その出力信号を最新のD級アンプデバイスを用いたパワーアンプで増幅し、サブウーファーを駆動します。従来のアナログ方式のフィルター内蔵のサブウーファー用アンプとは異なり、多様なセッティングが可能です。その機能が比較的低価格で実現できます。

 

スーパーツィーターの接続の場合

スーパーツイーターの場合は、メインスピーカーと並列に接続します。つまりメインスピーカーと同じアンプを使うわけです。
ただし、そのまま接続すると、中低域の成分のため、スーパーツィーターが破損します。

そこでスピーカー・ネットワーク経由で信号を入力します。スピーカー・ネットワークは、特定の周波数のみ、信号を通す仕組みです。一番簡単なのは、中低域成分をカットするハイパスフィルター機能として、コンデンサをプラス/マイナスのどちらかの端子に直列に接続します。

このコンデンサは、6dB/Octの性能のハイパス・フィルターとして機能します。

音工房Zのスーパーツィーターには、これらのコンデンサもしくは、より高度なネットワークが内蔵されていますので、そのまま接続して使うことができます。

設定したい周波数に対する推奨値については、たとえば、下記を御覧ください。

最初にメインスピーカー用のオプションを紹介しました。共に、極低域、超高域、で、下手すると耳では聴こえない音域の再生用です。

ところが、これらを導入すると、明らかに再生音の質が大きく向上します。

これは、音楽サブスクサービスのロスレス・ハイレゾ音源で、良い録音の音源であれば、確実にわかるレベルです。機会があれば、試聴することをお勧めします。

さて、次は肝心のメインスピーカーのお話です。

 

メインスピーカーについて

今回、” 手軽で高音質な音源と簡単な機器の接続方法とを両立させたPCオーディオの入門編 ”、が目的ですので、比較的ローコストながら、本格的な音質のスピーカーをご紹介したいと思います。

いずれも、音工房Zの製品です。

ローコストということで、スピーカーキットを2機種ご紹介します。

つまり、エンクロージャーを自分で手作りするわけですが、いずれも、作成のポイントが記載されたマニュアルが添付されていますので、自作は初めてという方でも、わかりやすいかと思います。また、写真付きの作業手順をダウンロードすることもできます。

各パーツの必要な箇所には、ザグリが入っていて、位置決めをフォローしています。

また、製品によってはダボ付きで、ダボを取り付け対応するダボ穴にはめ込むことで、組立がしやすいような工夫をしています。

組立後の塗装についても、フォローしています。購入特典として、様々な塗装のテクニックをご紹介する動画にアクセスできます。塗装関連の道具などの事前準備についてもご紹介しています。

 

Z601(V2)+Z-Modena

Z601は、ダブルバスレフ型のスピーカーエンクロージャーのみのキットで1ペア(2台)単位で販売しています。

これと別売の8cmのフルレンジのスピーカーユニットであるZ-Modena MK2とを組合わせます。

価格

いずれも、Amazonで購入することができます。価格は、1ペア(2台)で次のようになります。

Z601(V2)      \ 9,980 (2台)
Z-ModenaMK2 \ 7,560      (¥3,780x2)

                  計   \ 17,540 

 

ダブルバスレフとは

ダブルバスレフは、言葉通り、バスレフダクトが内部に2段階で構成されているエンクロージャー形式で、概略のイメージは、一般的には、下図のような構造となります。


ただし、実際には、各ダクトや空気室の形状は様々なバリエーションがあります。

一見、単純な構造ですが、実際には、第1ダクトと第2ダクトの各設定値と形状、第1空気室と第2空気室の体積、各空気室の比率など、検討するポイントがいくつかあり、ある意味同じ箱のサイズでも、無限のバリエーションがあります。

事前に、長岡鉄男先生の式などを参考にダクトの定数などを仮設定しますが、何度か試作を繰り返し決定しています。ダクト形状と配置の仕方などでも音は変わってくるようです。

この形式は、うまく作れば、比較的小型のエンクロージャーでも、豊かな中低域を得ることができますが、中域にディップが出る傾向があるので、それをどのように設計で自然な音質とするかが難しいところでもあります。

 

試聴結果

Z601(V2)の試聴レポートをジャズとクラシックから2曲ご紹介します。これは、高音質な音源をご紹介しているブログ記事からの引用です。

AmazonのZ-Modenaのリンク先のカスタマーレビューにも、Z601(V2)と組み合わせた場合のコメントがいくつか記載されています。例えば、”たった8cmのフルレンジでここまで豊かな低音が出るのか!”などというように、サイズからは想像できない音に驚いた、という感想が多いようです。

Z-Modena(Amazon)

 

Z702-Modena(V6)

Z702-Modena(V6)は、ユニットが、先程と同じZ-Modena MK2を用いていますが、エンクロージャーが異なり、BHBS(バックロードホーンバスレフ)型を用いたスピーカーシステムです。

上記でご紹介した高音質音源紹介には、旧型のZ701-Modena(V5)での試聴結果も記載されています。現在は、Z702-Modena(V6)となっており、音質がやや変更されています。中域がフラットで、癖が少なく、低域側の再生周波数がより下まで伸びています。

購入は、Z601とは異なり、音工房Zのホームページからとなります。(Z701-Modena(V6))

価格は、1ペアで、\ 39,800  です。(スピーカーユニット込み)

 

BHBSについて

BHBSは、バックロードホーンバスレフの略で、ユニットの背面にバックロードホーン構造を設定し、通常は、最も開口が大きくなる最後の部分を絞り込みバスレフ形状とした構造となっています。石田健一氏のBHBS型構造をベースに弊社が独自に開発した構造となっています。

同じBHBSという名称でも、形状的には、いくつかのパターンがあるのですが、Z702-Modena(V6)は、様々なトライアルの結果、比較的シンプルな内部構造となりました。

この構造と、エンクロージャーの体積自体がZ601に比べ大きいということもあり、さらに豊かで、かつスピード感のある低域を得ています。

Z601+Z-ModenaMK2と、同じユニットを用いているとは思えない、余裕感も出ています。

いわゆる共鳴音のような響きは、感じられず、キレのよい中低域を心地よく聴くことができます。

詳細については、こちらをご覧ください。(Z701-Modena(V6))

 

試聴の結果

Z702-Modena(V6)の試聴結果については、上記のサイトのユーザー様の声にもありますが、当ブログの高音質の音源のご紹介記事にもいくつかあります。

例えば下記リンク先を御覧ください。

以上、”カンタン接続のPCオーディオ!2023” として、2023年の各機器の最新動向も踏まえ、比較的低コストで、かつ高音質な音楽を楽しめる環境の構築方法についてご紹介しました。

 

 

関連リンク集

ダブルバスレフ関連

長岡鉄男先生によるダブルバスレフ用の公式について検討したブログです。

 

ダブルバスレフの設計の検討例です。ONKYOの限定ユニットOMOF-101用のエンクロージャー開発関連のブログです。

 

BHBS関連

同じくBHBS型エンクロージャーのZ702/Z1000-Bergamoの開発についてのご紹介記事です。
こちらは、マークオーディオに特注した音工房Zのオリジナルな10cmのスピーカーユニットを用いています。フルレンジユニット一発とは思えないワイドレンジで、かつスピード感のある音を余裕を持って再生します。音楽を一層堪能できます。

 

 

音響パネルの使いこなしについて

音響パネルZ103Aのレイアウトによる音の聴こえ方について検討してみました。

 

 

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