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Z700W-OMMF4MICAと音響パネル
Z700W-OMMF4MICAの使いこなし最後になりますが、弊社の音響パネルとの組み合わせについてご紹介したいと思います。Z700W-OMMF4MICAは前後に音が出るスピーカーのため、背面のパネルの距離は重要になります。
音響パネルZ103について
3つのタイプ
Z103音響パネルは、音工房Zの商品で、A、B、Cの3つのタイプがあります。
Aタイプは、足がついており、室内配置用に適しています。
Bタイプはコンパクトな590mm*240mmサイズのため、壁・床・天井などにパネルを貼るということにも低コストで対応できます。
Cタイプは、内部のパネルが360度回転する仕様となっており、パネルの開閉度合いによって音の反射を自在にコントロールできます。
写真 Z103A音響パネル(Aタイプ)
写真 Z103B音響パネル(Bタイプ)
写真 Z103C音響パネル(Cタイプ)
Z103音響パネルの効果
音響パネルを設置すると室内の反射モードが変化します。周波数特性測定を実施すれば、そのグラフ上で変化が確認できます。
例えば、下の写真とグラフは、実験的に弊社の無響室でスピーカーにサインウェーブを入れて周波数特性の測定をしたケースを示しています。1枚の音響パネルを測定用スピーカーの背面においた時の周波数特性が点線、音響パネルがない状態の測定結果が実線です。
このように、一枚の音響パネルを被測定対象のスピーカーの後ろに設置しただけで、前方方向の見掛けの周波数特性の形状に変化が出ていることがわかります。
Z103音響パネルは、基本音を吸音せずに乱反射・良い響きを与えることで、より良い音場空間の創成を目指すことができます。
弊社のリスニングルームには、実験と経験に基づき、これらの音響パネルを配置しています。これまで、Z700W- OMMF4MICAの諸条件を変えた場合の音の変化を報告してきましたが、今回は、改めてZ103音響パネルの効果について検討してみたいと思います。
今回の実験の概要
Z103音響パネルのユーザー様には、”Z103音響パネルの使いこなし” に関するレポートをいくつか提示させていただいております。
今回は、そのレポートで行っている実験に準拠して実施したいと思います。
なお、以下の実験では、音響パネルは全てAタイプ(Z103A)を用いています。
音響パネルの配置
まず、左右それぞれに、音響パネルを3枚用いて、次の2つのパターンのレイアウトを設定します。
それぞれ、パターンa、パターンbとします。
なお、折れ曲がりの場合は、角度を45°とします。
a b
次に、スピーカーの背面に音響パネルを配置しますが、スピーカーと音響パネルの距離を、10cm、30cm、50cmの、3ケースを設定します。
例としてパターンaの場合を示します。それぞれ、a-10,a-30,a-50と記載します。
a-10 a-30 a-50
また、パターンbについては、次のようになります。b-30,b-50の場合を示します。
b-30 b-50
これらについて、実際に試聴して、音を比較したいと思います。
各レイアウトの試聴結果
試聴に用いたスピーカー等について
前項でご説明したレイアウトで、Z700W-OMMF4MICAを比較試聴してみます。なお、試聴に当たっては、次の2つのタイプを用意しました。
1. 前後にそれぞれユニットを配置したタイプ 前:OMMF4MICA/後:Z-Modena
2. 前のみにユニットを配置したタイプ OMMF4-MICA
なお、試聴では、Woong Sanのアルバム "I'm Alright"の5曲目 "Love is A Losing Game"を主に用いました。また、その他に、Charlie HadenとHampton HawesのAs Long AS There's Music"や、Steely Danの "Gaucho"の1.babylon sistersなども確認用に用いています。
なお、実際の試聴用のレイアウトの例を写真で示します。
1、2の2つのタイプのスピーカーを横に並べ、音量がほぼ同一になるように、スピーカーセレクタ内蔵のプリアンプにて調整して比較試聴しています。
試聴結果
各パターンの設定を、前項で説明したように、例えば、a-10-1やb-30-2のように示します。
a: 3枚の音響パネルがスピーカーを囲むようにレイアウト
b: 3枚の中央と内側が水平
10,30,50: 中央の音響パネルとスピーカーとの距離
1: 前後にユニット配置
2: 前のみにユニット配置
以下それぞれのケースでのコメントのメモを記載します。
音を聴いてそれぞれのパターンを変えて聴き、また、元のパターンと比較試聴する、ということを行いました。あえて、時系列的にメモを記載します。
a-10
a-10-1の試聴
かなり低音の量感を感じる。出だしのベースの音等が印象的。ただし、ややブーストし過ぎのような印象。
a-10-2の試聴
上記1よりも、低音の量感はやや減るが、かなり出ている印象ではある。少し低音に癖というか、特定の領域のブースト感を感じる。
a-30
a-30-1の試聴
A-10-1で感じられたブーミーな感じが少なくなりすっきりした。一方、低音の量感はある。a-10-1よりも、自然で、音場感もある。
a-30-2
低音はそこそこ出てはいるのだが、a-30-1に比べると、音が薄い感じがする。量感と押出の点で劣る、という印象。
ここで、30cmの音がよかったので、Bパターンにレイアウトを変え試聴してみました。
b-30
b-30-1の試聴
音に広がりが感じられる。低域は、aと同程度の印象。全体に開放感があるようだ。さらに定位感がよくなったようにも感じられる。
b-30-2
a-30-2よりも、バランスよく聴こえる。ただし、少し音が薄い印象が依然とする。それでも中低域はさきほどよりも厚みがでてきている。
次にa-50を試聴しました。
a-50
a-50-1の試聴
音の広がりは感じるが、中低域がやや薄い。ただし、次の2よりは厚みがある。
a-50-2
a-30-2より、音の厚みを感じる。ただし、その点ではb-30-2の方が上。全体として自然な音という印象。すっきりとしている。
b-50
b-50-1の試聴
開放感がある。a-30-1よりも低域のバランスがいい。自然な印象。
b-50-2
バスドラの音に存在感を感じる。ベースもバランスがよい。なぜ、よくなったのかよくわからないので、ちょっと不思議な感じがした。
以上を総合すると、B-30が、1,2共に一番良い印象でした。ただ、B-50-2も2の中では評価が高く、こちらについてはもう少し詰める余地があるかもしれません。
総括すると、次のようになります。
試聴のまとめ
スピーカーユニットを(1)両面に配置した場合と、(2)前面のみに配置した場合とで、ともに、パタ-ンbの30cmがいいようでした。また、bの50cmも低域バランスが良好でした。
b-30-1 (配置パターンb+距離30cm+スピーカーユニットを前後に配置)
音のバランスと音場感が良い。定位感もよい。低域が力強く、かつブーミーさはほぼ感じられない。
b-30-2 (配置パターンb+距離30cm+スピーカーユニットを前のみに配置)
音がやや明るい感じがする。音の籠もっている感じはない。低域もそれなりにでており、バランスが良い。
b-50-1の試聴
開放感がある。低域のバランスがいい。自然な印象。
b-50-2 (配置パターンb+距離50cm+スピーカーユニットを前のみに配置)
低域の再生に優れる。バスドラの音に存在感を感じる。ベースもバランスがよい。
つまり、スピーカーユニットを前後ダブルで利用する場合でも、前方だけで利用する場合ともに、パターンbで、30センチ-50センチ程度あけるのが良い。
b-30 b-50
定在波への対策とともにスピーカーを部屋にどのように配置するか、ということとも関係しますが、基本的配置の検討とともに、音響パネルのレイアウトにより、聴こえる音は、大分違ってきます。
今回、前のユニットだけか前後のユニットを使うか、大きな違いが有りました。
なお、音の良し悪しは、好みもありますし、聴く音楽によっても変わってきます。
ただ、お気に入りのスピーカーを、より活かすという点でも、色々とトライしてみて最もマッチするポジションを探ってみてください。