はじめに

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FE-NSシリーズとFE108NS

 FE-NSシリーズは、2018年12月に、16cmのFE108NSが、先行して発売開始されています。さらに、2020年7月、10cmと20cmのユニットであるFE108NSとFE208NSの追加が発表されました。2020年8月31日に各販売店から発売開始となり、FE-NS系は、現在3ユニットの構成となっています。

 FE系全体のラインアップとしても、FE108NSとFE208NSが最新機種ということになります。

 FostexによるFE-NS系の紹介では以下が共通しています。
以下引用します。(下記で、xxxには、型番が入ります。各々、108,168,208)

” FExxxNSは、Sol シリーズの開発理念と独自技術を継承し、新たに開発されたフルレンジ・スピーカー・ユニットです。質と量のバランスのとれた低域とクオリティの高い中高域の音質は、2 層抄紙と低歪みフェライト外磁型磁気回路に支えられ繊細で表現力豊かな音楽の再生を実現します。 ”

 ということで、本シリーズは、限定販売されたsolシリーズの技術が継承されているとのことですが、比較的発売時期が近いxx8-sol系などと比べると磁気回路が異なるなど、違うところも見受けられます。

 また、本シリーズの各リリースの間となる2019年7月に、FE-NVシリーズのFE83NVとFE103NVが発売開始され、さらに2019年11月に、同、FE126NV, FE166NV, FE206NVが追加されています。

 特に小口径のsolシリーズでは導入されなかったハトメレスなどの技術も、最新のFE108NSでは、NVシリーズと同様に導入されています。

 また、FE108NSは、FE-NS系として最初に発売されたFE168NSから、約1年半の時間が経過しており、他のラインアップとの関係などからも、やや指向が異なってきているかもしれません。

 これらについて、実際に、エンクロージャーに入れて音を聴き、また、諸特性を検討して、確認していきたいと思います。

 

FE108NSの価格と概要

標準価格    : ¥16,500+消費税(1台)

発売年     : 2020年 8月

スピーカー形式 : 10cm 口径フルレンジユニット

 

FE108NSの音質評価

FE108NSのエンクロージャー評価

 FE108NSをバスレフ箱に入れた場合と、BHBS(バックロードホーンバスレフ)箱に入れた場合の音質評価を行いました。また、Z501を追加してスーパーツイーターの効果を調べてみました。

 なお、それぞれの評価の際に試聴した曲のリスト及び、その関連リンク先を、この節の最後にご参考までに、記載していますので、御覧ください。

標準バスレフ箱(7L)

 FE108NSを7Lのバスレフタイプのエンクロージャーに入れ、試聴してみました。

 全体にバスレフ箱で聞いてもバランス良く聞けます。ただ、低域は弱く、例えば、ホテル・カリフォルニアのイントロのバスドラは、トンという軽い感じですが、もう少し低い音が出ている片鱗は感じさせます。自力はありそうです。ギターなどは、ホール感もあり、きれいです。Rock You Gentlyのボーカルもすっきりと聞かせてくれます。

 ただ、ボリュームを上げていくと、ピーク感というか、少し尖って聞こえる部分が出てきました。 ホテル・カリフォルニアの喚声、ボーカルの一部や、 Rock You Gentlyのハンドクラップ、また、カプリースで、まっすぐ伸びやかに聴こえたバイオリンの高音部に少しピークによるクセが感じられるようになりました。水上の音楽のバイオリンでも同様です。


 逆に、曲やパートによっては、高音部が粒立ちがよく、また、アタックのキレがよく聞こえたりもします。なお、ボリュームを上げても、やや低域が物足りない傾向は同じです。

 

BHBS箱 バックロードホーンバスレフ(約13L)

 FE108NSを13LのBHBSの試作箱に入れ試聴しました。

 低域が自然なバランスで増強され、聴こえてきました。ホテル・カリフォルニアのバスドラが、ドンになりました。こちらを聴くと、バランスは、バスレフよりもいいようです。ギターも太くなり、呻りのような音も聴こえてきます。

 また、ボリュームを上げても、バスレフで少し気になったピーク感がありません。
Rock You Gentlyでは、ボーカルに重なるベースの存在感が増します。バイオリン独奏曲のカプリースも、ゆったり感が出てきます。管弦楽曲の水上の音楽でも、管楽器がふっくらとしてきて、バランスはいいようです。ボリュームを上げても耳障りな音はありません。

 箱の容積をもう少し増し、もっと低音域がでてくるようにしてもいいようにも思いました。この試作箱では、このユニットの能力を、まだ出し切っていないような印象も受けました。試作していないのでなんともわかりませんが20LぐらいのBHBS箱にすればさらに低域レンジ拡大しバランスも良くなると思われます。

BHBS(13L)+ Z501(スーパーツィーター

 BHBS単体で、高域の再生音に特に不満はなく、また、バスレフで感じたピーク音も聴こえなくなっていたので、スーパーツィーターを接続して効果があるのか、疑問ではあったのですが、試しということで、Z501を接続して試聴してみました。

 なお、Z501のネットワーク用のコンデンサは、標準の2.0μFから、0.82μFに変更しました。これにより、カットオフ周波数を上げる方向で、かつ減衰量を増やす方向となります。

 効果は、有りました。
一段と、再生音がくっきりと聞こえ、バスドラの余韻も良くなります。また、セパレーションが良く、広がり感が出てきました。

 カプリースのバイオリンの高域も、伸びやかでキレがあり、とてもよく奏でてくれます。水上の音楽でも同様です。また、In The Wee Small Hours のJacinthaのボーカルのホールトーンからベース、さらに、伸びやかでパワーのあるサックスも、心地よく響きます。

 このスーパーツィーターの付加は、予想外に効果的で、クオリティの向上が実感出来ました。

 

D101Sスーパースワン (かなりざっくり45L)

 パイプ音的な中域の盛り上がりはBHBSを聞き慣れていると結構気になりますが、高域は実に魅力的です。音全体的には能率が低く落ち着いた感じで、前にでてくるFE108Superとは方向が違う感じがします。

 スーパースワン+FE108NSは長岡鉄男先生が考えたような高能率で音がバンバン前にでてくるという音を考えると少し違う気もしますが、上品に鳴るスワンというのであれば良いかもしれません。

 小音量・中音量で聞くのであればよいと思いますが、ある程度音量を上げると中域のパイプ音が盛り上がって気になる場合があるかと思います。そんな場合は、音の出口の開口面積を少し絞ることで量感を落として対応するとよいでしょう。 

試聴に用いた曲のリスト

 今回、音質評価用に試聴した曲を、ご参考までに下記に示します。
なお、各曲の詳細については、当サイトのブログにてそれぞれ紹介していますので御覧ください。
 既に公開している場合は、リンク先を表示しています。また、作成中の場合は、近日公開予定ですので、すみませんがお待ち下さい。

1. Hotel California :リンク先  https://otokoubouz.info/hotel-california/ ‎
オーディオチェック用としても有名なロックバンドイーグルスの名曲です。
アルバム「HELL FREEZES OVER」の6曲目を試聴しました。ライブ盤です。

2. Rock You Gently :リンク先  https://otokoubouz.info/rock-you-gentry/ ‎
 Jennifer Warnes の1992年のアルバム”The Hunter”の最初の曲です。
本曲では、大陸的なおおらかさを感じさせる、いわば、カントリーのポップスバージョンのような、さらりと流れる彼女のクールなヴォーカルを聞くことができます。
また、実は、50-60Hzが全帯域の中で音圧のピークとなっており、40Hzでもその音圧が1kHzの音圧と変わらないレベルで録音されています。低音域の再生能力が比較ポイントでもあります。

3. Take Five  :リンク先  https://otokoubouz.info/take_five/ ‎
 デイブ・ブルーベック・カルテットの有名なジャズナンバーです。
 この曲は、低音が、案外下まででており、ベースやドラム、の再生に90-150Hz、それに部屋の雰囲気等の再生には、40Hzぐらいまでの再生能力があったほうが良さそうです。また、中音域の500-2.5kHzぐらいの再生における分解能力がサックスなどの再現性に関係して来そうです。この曲では、この領域の音圧が高くなってもいます。

4. カプリース :リンク先  https://otokoubouz.info/caprice/
ニコロ・パガニーニの24の奇想曲(24Capricci)です。ヴァイオリン独奏曲、すなわち無伴奏曲です。難易度の高い強烈な技巧が随所に盛り込まれており、難曲として知られています。
ピエール・アモイヤルの名器の響き ヴァイオリンの歴史的名器、に収録された演奏を試聴用に用いました。

5. 水上の音楽  :リンク先      https://otokoubouz.info/suijo_no_ongaku/ ‎

 水上の音楽は、ヘンデルの作曲による管弦楽曲集で、弦楽合奏と管楽器からなる管弦楽編成です。試聴では、第2組曲の第2曲のアラ・ホーンパイプを用いました。オルフェウス室内管弦楽団による演奏です。
 本録音では、約30Hz~5kHzの広い範囲で、-40dB以上の音圧を持って録音されています。聴感上は、フルオケのような比較的広い範囲の音域として感じられると思われます。
 高い周波数の倍音成分も、20kHzのカットオフ周波数まで、なだらかに下がりながら検出されています。おそらく実際の演奏では、20kHz以上も入っているものと推定されます。

6. In The Wee Small Hours (Of the Morning)  :リンク先   作成中
   Jacinthaのアルバム Here's To Ben からの一曲。7曲目に入っています。
この曲は、最初にJazzyなヴォーカルのソロで始まります。次にベース、ピアノ、スネアが加わっていき、リリカルなサックスのメロディラインが続きます。
それぞれのパートの効果や定位、音質を比較することができます。
また、全体のエコー、ホールトーンの加減なども、評価対象かもしれません。

 本曲を構成している楽器はシンプルですが、CDの録音領域の端から端まで、広い音域で録音されているのがわかります。ピーク値の特性からは、特に、40-10kHzの領域の再生能力が必須なのがわかります。

FE108NSの諸特性の検討

他のユニットとの特性比較

Fostexの10cmフルレンジユニットの特性比較表

 Fostexから公開されている各データを用いて、FEシリーズの現在の定番4つと旧型(En) 及び限定版(sol) 2つの計7ユニットの値を一覧表にしました。
ここでは、FE108NSを太字にしてあります。

なお、この表で、FE108NSのマグネット重量の値は、マグネットの直径と厚さ及びボイスコイル径が同じであるFE108EΣの値からの推定値です。また、FE103NVのマグネット重量の値は、FE103Enのマグネットと直径と厚さ(実測値)が同じ寸法ですので、同じ重量と推定されます。

その他の値は、Fostexの公表値を用いています。有効数字は公表値のままです。


   表 1.   Fostexの10cmフルレンジユニットの特性比較表

 

 次に、この一覧表の上段の規格値と、下段のTSパラメータについてそれぞれ比較検討したいと思います。

規格値の比較

 規格値について、それぞれを比較すると、まず、FE系は総重量の値が2群に分かれているのがわかります。700g以下と、1kg以上の2群です。それぞれ、鉄フレームとアルミダイキャストフレームに対応します。FE208NSは、後者のグループとなります。
Fe-FF系の10cmユニットの場合、その取り付け穴は共通ですが、このフレームの違いで、バッフル開口寸法は異なります。既存のエンクロージャーでユニット交換の場合は注意が必要です。

また、FF系は、その2群の中間に位置します。鉄フレーム系ですが、マグネットが比較的重いためです。

FE108NSは、FE108EΣと同じマグネット重量と推定されます。この400gという値は、FE103NVの推定値193gの約2.1倍となります。

横に並べてみると、その違いがよくわかります。


図   FE108NS(左側) と FE103NV(右側)

 

表に戻り、定格入力の値を比べると、15WとFE-FFシリーズの中で、最も大きな値となっています。なお、瞬間最大許容入力の値は、公表されていません。

一方、出力音圧レベルは、87dBとこの表で、最も小さな値となっています。
同じマグネットサイズのFE108EΣより3dB低くなっています。

 

TS-パラメータの比較

 カタログ上のTSパラメーターの値を比較していきます。まず、最低共振周波数Fsが、75Hzとこの表の中で最も低い値になっており、FE105WKと同じ値です。
ちなみに、今回試聴に用いたユニットのインピーダンス特性の実測値では、下図のようになりました。この図からは、約65Hzと読み取れます。

仕様よりも低いのは、本ユニットが、まだ新しく、エージングが不十分ということもあるのかもしれません。

 


図    FE108NSのインピーダンス特性測定値(実測値:軸は右側)

 

次に、Qtsの値を比較すると、0.32となっており、FE103Enの0.33、Fe108EΣの0.3、FE108solの0.34とほぼ、同じような値となっています。ちなみに、MmsとCmsの値は、FE103EnとFE108EΣの間程度となっており、これら2機種と近くなっています。

これら先行の3機種同様、FE108NSは、バックロードホーン用と想定されていることが伺えます。

実際、Fostexからは、FE108NSの専用箱として、バックロードホーンのBK108NSが用意されています。また、それとは異なる設計のバックロードホーンの図面もホームページからダウンロードすることが出来ます。

このTSパラメータの各値を見る限り、FEシリーズの10cmユニットでは、旧型のFE103Enから、バスレフも視野に入れたFE103NVと、バックロード系に一層フォーカスしたFE108NSに別れた、とも言えるかもしれません。

このあたりの位置づけは、16cmの場合とは、異なっているようです。

周波数特性と高調波特性(2次、3次高調波歪)

ユニットの周波数特性測定結果の比較と検討

 最初に、FE108NSの周波数特性とインピーダンス特性の測定値を示します。

 これは、弊社簡易無響室でユニットをJIS箱に入れて10cmの距離から測定した値の比較になります。測定装置は、エタニ電機のASA-10mkⅡを用いました。


図  FE108NSの周波数特性(左側の軸;dB)とインピーダンス特性(右側の軸;Ω)

 

周波数特性の比較のために、FE108NS(実線)とFE103sol(点線)との周波数特性の値を下図に示します。測定条件と装置は、前記と同様です。

 

 


図 .  FE108NS(実線)とFE103sol(点線)の周波数特性(10cm)

 

また、同様にして、FE108NS(実線)とFE108sol(点線)との周波数特性の値を下図に示します。

図 .  FE108NS(実線)とFE108sol(点線)の周波数特性(10cm)

 

 FE108NSの周波数特性で、特徴的なのは、400Hz-1.5kHz が、窪んでいることです。この周波数帯域は、人間の声の領域ですので、最も聞こえやすい音域です。さらに、1.5kHz以上では、音圧が立ち上がって5kHzぐらいまでフラットとなっています。この2-4kHzは、人が最も反応しやすい音域で、赤ちゃんの鳴き声にも相当します。相対的に、2-4KHzが、耳に入りやすいようなプロファイルとなっており、特徴的なサウンドになると予想されます。

 この窪みは、FE103solや、FE108solには見られず、それぞれ、若干の凹凸がありますが、FE108NSに比べれば、400Hz から4kHz は概ねフラットとも言えます。こちらは、比較的癖のない音の傾向にあると予想されます。

 また、FE108NSでは、6kHz、9kHz、16kHz付近に、ピークがあります。これらは、サブコーンとの干渉によるものかもしれません。この音域では、基音として直接きこえてくるというよりも、倍音として、各波形の立ち上がり/下がりの波形形状に関係してくる効果の方が大きいようにも思われます。

 ちなみに、88鍵のピアノの一番高い音は、C8(4.186kHz)であり、約6kHzはその上のG8(6.272kHz)程度となります。人の耳は、若く聴力の優れた人の場合、最高で20kHz 程度まで聴こえるとも言われますが、音程として感じられるのは、4kHz程度までで、それ以上は、キンキンと聞こえるだけで音程としては把握できないと言われています。これがピアノが88鍵である理由のようです。

 これらの特徴を踏まえた使いこなしとしては、バックロードホーン系のエンクロージャーで、500Hz前後を補う一方、スーパーツィーターで、高域の凹凸を適度に補うのが効果があるかもしれません。

 また、全体に、なだらかにハイ上がりな周波数特性ですので、低域-中低域をエンクロージャー等で補うのが必須とも思われます。

 

本ユニットの高調波(歪)の測定結果

次に、FE108NSの周波数特性と高調波特性の測定データを下図に示します。

図.  FE108NSの周波数特性と高調波特性(2次;オレンジ、3次;緑)

 

 いずれも、弊社簡易無響室でユニットをJIS箱に入れてユニットから10cmの距離で測定した値です。

なお、n次高調波と歪については、FE168NSのブログでコメントを載せていますのでご覧ください。それぞれの高調波は、オレンジが2次高調波。緑が3次高調波です。

 なお、縦軸は、ユニットの周波数特性と同一画面に収めるために、高調波特性の値は、2次、3次共に、+20dB嵩上げして表示しています。

 具体的に高調波歪率の計算例を検討してみます。例えば、1kHz での周波数特性の音圧は、上の図より約105dBです。2次高調波の値は、85dBと読み取れますが、20dB嵩上げ表示していますので、実際は、65dBであり、差は、40dBとなります。

 40dBの差は、100分の1となります。すなわち、ここでの2次高調波歪率は、1%です。
同様に、3次高調波は、70dB@1kHz ですので、実際は、50dB、周波数特性の値105dBとの差は55dBですから、562分の1となります。3次高調波歪率が約0.18%に相当します。

 ここで、1%の高調波歪率というのは、音質に影響のある範囲と言えます。
周波数特性の形状から、400Hz付近から1kHz 付近までのいわゆる中域において、2次、3次高調波などは、本ユニットの音質になんらかの影響を与えていると思われます。

ただし、FE168NSのブログでも記載しましたが、特に、2次高調波については、2倍の音ですから、オクターブ高い音になります。従って、これを”歪”とは人は認知しません。3次についても、和音の関係のオクターブ高い音になります。これまた、”歪”と感じるかは、疑問です。むしろ、豊かな響きの再生音と感じる可能性が高いと思われます。

高調波測定結果の比較検討

 比較のために、FE103solの周波数特性と2次と3次の高調波の周波数特性を示します。
こちらも先と同様、オレンジが2次高調波。緑が3次高調波です。また、縦軸は、周波数特性と同一画面に収めるために、歪特性の値は、2次、3次共に、+20dB嵩上げして表示しています。

 


 図.  FE103solの周波数特性と高調波特性(2次;オレンジ、3次;緑)

 

 この高調波の特性図では、600Hz 付近の3次高調波(緑;約1%)と2kHz付近の2次高調波(オレンジ;約6%)が突出していますが、それ以外は、FE108NSに比べ2次高調波歪率は比較的低いようです。ただ、3次高調波は、500Hz以上、すなわち人の耳の感度がいい領域、で約0.3%以上あり、こちらの影響の方はFE108NSよりもやや大きいようです。

 

FE108NSの外観のレビュー

フレーム

 

 FE108NSは、FE108solと同様、高剛性アルミダイキャストフレームが採用されています。フレーム外径、取付穴ピッチ、バッフル開口径はFE108solや、FE108EΣよりやや小さくなっています。同じマグネット重量であるFE108EΣより、総重量がやや軽いのは、そのためもあるかもしれません。

 FE-NV系は、FEシリーズで、踏襲されてきた鉄フレーム系ですので、FEシリーズは、フレームが2系統となりました。

 フレームで分類すると、FE-NV系とFF系が、鉄フレーム。FE-NS系とEΣ系がアルミダイキャスト、となります。

 

振動板とエッジ


図  FE108NSのエッジ(コルゲーションエッジ)

 

 10cmとしては、FE-FF系で、唯一コルゲーションエッジが採用されています。コーン紙とは材質が異なるフリーエッジ方式です。また、FE-FF系の10cmユニットとしては、これもまた唯一、FE系で伝統的なサブコーンがあります。サブコーンの材質は、メインのコーン紙と同様と思われます。

 この2点については、他の10cmユニットと比べてみて異なるのがすぐわかる、という点で、とても目立つ特徴と思われるのですが、少し奇妙なことに、Fostexのホームページには、これらについての説明がありません。

 FE108solや、最新の限定版であるFE103Aにもこの2つは採用されていません。

 

 ちなみに、FE-FF系の10cmユニットで、一番多く採用されているエッジは、Uエッジとなります。
FE108solと、FE103NVの例を示します。

 

写真   FE108solの外観(Uエッジ)

 


写真   FE103NVの外観(Uエッジ)

 

 このUエッジは、FE103En、FE103solにも同様に採用されています。
なお、FE105WKだけは、Ωエッジとなっています。

 

 また、振動板は、同社独自の技術である2層抄紙により、コーン紙を2 段階で抄紙することにより、基層と表層の2 層で1 つのコーン紙を構成している2層抄紙コーンを採用しています。この技術は、FF-WK系で、最初に採用されました。

 この製造技術をベースとして、FE-solシリーズで採用された材料と同じ系統が、本FE-NS系でも採用されているようです。

Fostexによると、 
” この技術により、基層に長繊維のパルプを主体に厚み剛性による高剛性化と内部損失を保有させ、表層には短繊維のパルプを配合し、コーン紙表面の伝播速度を高めることで、中域の明るく張りのある音色はそのままに、立ち上がりが良く、切れのある高音と厚みのある低音再生を可能にしました ” とのことです。

ダンパー等の振動系

Fostexによると、ここでは、3点強調されています。

1. ハイ・コンプライアンス コルゲーションダンパー:リニアリティ向上のため、ハイ・コンプライアンスでありながら微小入力時から大入力時まで硬さの変化が少なく動きの優れたコルゲーションダンパーを採用。

2. 3 点接着方式:コーン紙とダンパー、ボイスコイルの接着を同一箇所で行う3 点接着方式を採用。コーンネックの強度を高めることで、高域特性が向上。

3. ファストン205 金メッキ端子:入力端子にはファストン205 タイプの低損失金メッキ端子を採用。スピーカーケーブルの確実な接合と音質劣化を防ぐため。

FE103NVでは、ハトメレスポケットネックダンパーという用語が強調されていますが、こちらでは、それは語られていません。


しかしながら、3点接着方式が、それらと同等な技術で、表現もしくは視点の違い、と思われます。また、ダンパーの写真も外見はほぼ同様です。

 従って、ダンパー周りの振動系は、FE103NVとほぼ同様の技術が採用されていると思われます。なお、Cmsの値は、1.69となっており、一覧表に示したユニットの中で、最も大きな値になっています。つまり、最も動きやすい振動系であることを示しています。

 FE108NSは、FE103NVに比べ、約1.4倍(=1.69/1.2)動きやすい振動系に、約2.1倍の重さの強力なマグネットがついていることになります。

 また、Cmsについては、16cmのFE168NSでは、0.83と他のユニットの半分近い小さな値になっています。つまり、10cmの場合とは逆となっており、FE-NS系として興味深いところです。

磁気回路

写真  FE108NS と FF125WK のマグネットの比較

 

 磁気回路にはΦ90mm フェライトマグネットを採用し、十分な磁束密度を確保しています。ポール部に銅キャップを被せて電流歪みを低減し、力強い音楽再生を可能にしました、とのことです。

 ちなみに、このマグネットの外寸は、FE108EΣやFF125WKと同じで、Φ90mm、15mm厚です。FE108NSのマグネット重量は公表されていませんが、ボイスコイルの径が同じ20mmのFE108EΣのマグネット重量は、400g。ボイスコイル径が25mmとやや太いFF125WKのマグネット重量は、388gと記載されています。

 

まとめ

 FE108NSは、FE-sol系のコーン紙技術と材料に、FE108EΣと同様の強力な磁気回路系と高剛性アルミダイキャストフレーム、それとFF105WK/FE103NVのハトメレスや3点接着方式などの振動系の軽量化及び歪低減化技術も統合され、さらに、コルゲーションエッジやサブコーンなど独自の技術も取り入れられた最新のユニットです。

 特性的には、周波数特性の400Hz-1.5kHzの領域で、鍋底状に落ち込んでいるところが特徴となっております。音についてはSolの音色を継承したもので、ハイアガリ傾向を基本テイストとしながら、歪感が少なく聞きやすいものとなっています。昔のFEのような耳を突き刺すような印象は全くありません。

 全体に高域に向かって音圧が高くなる傾向や、Qts=0.32などのTSパラメータの値からバスレフでは難しいのではと予想しました。本ユニットをバスレフ箱と10cmのユニットの比較試聴用に準備したBHBS(バックロードホーンバスレフ)箱、スーパースワンなどに入れ、試聴してみました。

 結果は予想されたように、やはりBHBS箱が低域から高域のバランスが比較的よく聞こえバスレフではFE-NVに比べれば良いものの他と比較すると低域不足にきこえました。 BHBSのエンクロージャーにスーパーツィーターを追加したところ、一段とセパレーションもよくなり、全体に伸びやかでキレのある再生音となりました。

 兄弟機にあたる、FE168NSや、FE208NSは口径が大きいこともありシングルバスレフでもそこそこ低域が豊かに鳴ってくれましたが、こと10センチのNSについてはバックロード、ダブルバスレフ、BHBS等がおすすめに思いました。

 今回試聴したBHBSの箱は、本FE108NSに最適化されているわけではありませんでしたが、それでもバックロードホーン系のエンクロージャーが本ユニットには向いている事がわかりました。サイズや音道を再検討することで、スピード感を保ちつつ、低音の量感を増すことなども可能かと思われます。

 能率は以前の10センチのオーバーダンピングユニットと比較すると能率が低いユニットのため、スワンやD118ほど大きい容積にしなくてもバランス良い低域を出すことができそうです。