ニコロ・パガニーニの24の奇想曲(24Capricci)

曲の概要

 ニコロ・パガニーニの24の奇想曲(24Capricci)は、ヴァイオリン独奏曲、すなわち無伴奏曲で、左手ピッツィカートなどの難易度の高い強烈な技巧が随所に盛り込まれており、難曲として知られています。今回は、ピエール・アモイヤルの名器の響き ヴァイオリンの歴史的名器、に収録された演奏を比較試聴用に用いました。

 本曲に、低音域は、ほとんど含まれない印象ですが、中域から高域にかけての音域のダイナミックレンジは広いと言えます。

 また、難易度の高い奏法により、一つの楽器にも関わらず、左右の手と複数の弦で、同時発音、または、ごく僅かな時間差での連続発音などの、通常のバイオリンソロでは、あまり聞けないような音が繰り出されます。

これらをきちんと分離して再生できるかといったところもチェックポイントかと思われます。従って、中高音域の音質や過渡特性などを比較するのに適した曲と言えます。

本曲のピーク値の周波数特性の特徴

 本曲の全曲のFFTアプリによる周波数特性を下図に示します。

         図  カプリースの全曲の周波数特性

 

 グラフの縦軸が音圧、横軸が周波数で、20kHzまで表示しています。曲によってもやや異なりますが、音圧の値が-80dB程度で、聴感上は、ほぼ無音状態です。

 測定値は、-120dBまで、取れています。

  
 本録音の特徴は、200Hz以上の音圧が高く、100-200Hzで音圧レベルが-80から-70dBと急激に下がり、100Hz以下が、-60dB前後と再び音圧が高くなっていることです。100Hz近傍よりも、20-50Hzの音圧が高いのは、とても、目立つ形状です。

バイオリンの第4弦(G線)の開放弦の周波数が、196Hzですから、こレよりも高い周波数が基音となり、これ以下が急激に音圧が低いのはわかります。

100Hz以下の音圧源は、低調波ということですが、理由はよくわかりません。

また、20dB程度の差のあるピークが、約500Hzから上まで並んでいます。特に、約3.5kHzぐらいにやや大きなピークがあり、その後はなだらかに下がっていきます。上は、CDのリミットの20kHz近くまで、離散的にピークが検出されています。

 本曲は、バイオリンの独奏曲なわけですが、バイオリンの場合、主音の最も高い音は、基音のAの、3オクターブ上ぐらいと想定できます。Aの音を、仮に440Hzとすると、3オクターブ上は、3.52KHzとなり、本計測値の結果と、ほぼ合います。

 このやや大きなピークの高さは、おそらく、演奏者の出せる最も高い音を、さらに最大のフォルテッシモの強度で演奏を要求しているという、演奏者にとって厳しい曲であることを示しています。そもそも技量がなく、この音が強く出せない演奏者は、この曲を演奏できません。この点で、既に、演奏者を選ぶ曲と言えます。

 それ以上の、20dBのピーク差を持ちながら、なだらかに下がっていく離散的なピークは、主音の倍音成分と思われます。この豊富な倍音のピークの列は、バイオリンの豊かな音質を示していると言えるでしょう。

 通常のCDでは、20kHzでこれらのピーク値はカットされていますが、この録音での、急峻なカットの様子から、実際の演奏では、もっと高い周波数成分も含まれていると推測できます。アナログレコードの方が、音がいいと言われるのは、そこにも理由があるのかもしれません。SACDなどのハイレゾの音源で、これらが再生されることにより、音の立ち上がりと立ち下がりの速さの向上や、豊かな響きなどの感覚の向上につながるものと推測されます。ただし、あくまでも、この曲のように、音が入っていれば、ということですが。

 

音工房Zスピーカーでの比較試聴

 

Z601-Modena (V2)での試聴

 Z601は、音工房Zのオリジナル8cm のフルレンジユニットであるZ-modena mk2を用いたスピーカーで、バックロードホーンの要素を設計に取り入れたダブルバスレフタイプです。

 試聴での第一印象は、トランジェントの良い音。キレを感じる早い反応の音です。Z-modena mk2の強力な磁気回路による駆動能力の高さのおかげかと思われます。ただ、他の高級機と比較すると、少しまっすぐな感じといいますか、やや単調な素直な音という印象も受けました。

 

Z601-Modenaのページを見る

 

Z701-Modena (V5)での試聴

 Z701は、Z601と同じZ-Modena mk2のフルレンジ一発のモデルですが、箱が異なります。BHBS(バックロードホーンバスレフ)といういわばバックロードホーン(BH)とバスレフ
(BS)の良いところ取りをしたエンクロージャーです。これにより、8センチ1発とは思えないローエンド再生が可能です。

 本曲は、バイオリンの独奏曲で、どちらかというと中高音域が主体ですので、試聴の前は、Z601とあまり差がでないのではないかと考えていました。ところが、実際に試聴してみると、Z601に比べ、さらにダイナミックレンジが広がった感じがします。

 さらに、少しホール感もでてきました。これらにより、演奏の再現性という点で、一段上の印象を受けました。ただただし、聞き方によってはZ601と比較すると若干くもった感じに聞こえなくも
ありません。中域の押出が強くなったためではないかと思われます。

 Z701-Modenaはソースによってはスーパーツィーターをつけてやることでこの部分は改善します。基本的には、Z600で感じた素直な音のイメージは同じでした。これは、共通して用いているユニットの性格のようです。

 

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Z-1-Livorno (S)での試聴

 Z-1は、音工房Zオリジナルユニットと、最適化されたネットワーク回路から成る2ウェイのバスレフスピーカーです。

 バスレフポートは、テーパー状で、後ろ側に配置されています。各専用ユニットとシンプルなネットワーク構成をバランス良くチューニングすることで、コストパフォーマンスと高級機に匹敵するクオリティを両立させることができました。

 フルオーケストラ等の再生に強みを発揮する朗々とした中低音域が特徴です。本曲のような、中高音域が、どちらかというと主体の場合では、他の機種に比べ、バランスが、高音に比べ、中音が少し強いように聞こえました。おとなしいバイオリンの音、という印象です。

 

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Z800-FW168HRでの試聴

 Z800は、音工房Zの最高峰のスピーカーです。
 2ウェイのバスレフタイプで、形式的には、Z-1と同じです。

 ただし、ツィーター、ウーファー共に、フォステクスの最高のものを使っています。それぞれ、市販の300万クラスのスピーカーに普通に採用されているユニットです。

 特に、ツィーターのT-250Dの振動板の材料である純マグネシウムは、内部損失が大きく、余分な振動をしないため、ユニット由来の余分な倍音成分を付加することなく、その結果高い周波数まで音の再現性が高い、という点で、スピーカー用の素材としても高く評価されています。本ユニットの再生周波数特性は、カタログ値で、900Hz~50kHzとなっています。

 
 試聴の結果、同時に鳴っている音まで、よく分離して聞こえ、高音から中低音まで、正確にいいバランスで鳴っている感じがしました。さらに、一つの長い音が演奏されるときに、時間とともに、少し変化していく僅かな違いを再現してくれます。

 

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Z-1-Livorno (S)+スーパートゥイーターZ501

 

 

 Z1-LivornoにスーパーツィーターZ501を組合わて試聴しました。ネットワーク用のコンデンサは、試聴の結果、標準の2.0μFから、0.82μFに変更しました。

 試聴してみると、全体にホール感が少し増して、さらに弦の音にツヤのようなものを感じるようになりました。また、Z800で感じた、長音での音のわずかな変化を再生してくれるようになりました。これは、Z-1単体では、聴き取ることができませんでした。

 

 Z-1の再生音のグレードが上がったように聞こえます。スーパーツイータの追加による倍音の再生能力の向上によるものと推察されます。

 

Z501のページを見る

まとめ

 この曲は、バイオリンの豊かな倍音成分の再生がポイントです。測定値で示したように、10kHz以上の領域でも、倍音に相当する離散的なピーク値が高い音圧で、測定されています。

 従って、やはりもともと高音の再生能力の高いZ800が、他とは次元の異なる音を聞かせてくれました。 また、Z-1に、スーパートゥイーターのZ501を追加した場合の効果も聴き取ることが出来ます。その効果は大きく、再生音のグレードが上がったように感じられました。

 コストパフォーマンスという点で、Z701も、印象的でした。
中域、中高域の押出の強さが原因と思われる、少しこもった感じは、スーパーツィーターを加えることで、音のバランスが変わり、なくなるかもしれません。今後、実験していきたいと考えています。

 

CD情報

 

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