はじめに

FF165WK_01

FF-WKシリーズについて

 FostexのホームページにあるFF-WKシリーズの2020年8月末における紹介によると、

” FF-WKシリーズは、これまでのFFシリーズ構造を全面的に見直し、新たに10cm口径をラインアップに加えたバスレフ専用設計のフルレンジユニットです。

 新抄紙方法「2層抄紙コーン」を始め、リッジドーム形状アルミ合金センターキャップ、ポケットネックダンパーの採用により、明快でリアルな音質はそのままに力感溢れる低域とキャラクターを感じさせない高域再生を実現しました。”

とのことです。

 シリーズとして、8cm、10cm,12cm、16cm、20cmの5種類があり、FF165WKは、16cmとなります。 どちらかというと、バックロードホーン向けのFE系に対し、FFーWKは、バスレフ用と明記してあります。

 また、技術的には、最新のFE-NV系やFE-NS系にも採用されているハトメレス、3点接着方式、ポケットネックダンパーなど、振動系の軽量化や歪の低減化の中核となる技術や、2層抄紙コーンや素材としてのケナフの採用などを一番最初に実施しており、現在の各FE系の基本技術の先駆け的存在とも言えるかと思います。

 発売開始が、2011年3月下旬ということですので、2020年で9年が経過しています。2009年のFE-En系から2019年にFE-NV系へと改定があったように、そろそろ新型がでてくるのかもしれません。 現行機種がそうだったように、FE系に先駆ける新たな要素技術の採用も期待されるところです。

FF165WKの価格と概要

標準価格    : ¥10,000 + 消費税

発売年     : 2009 年 3月

スピーカー形式 : 16cm 口径フルレンジユニット

FF165WKの音質評価

試聴に用いた曲のリスト

 今回試聴に用いた曲を下記に示します。
 なお、各曲の詳細については、当サイトのブログにてそれぞれ紹介していますので御覧ください。既に公開している場合は、リンク先を表示しています。また、作成中の場合は、近日公開予定です。

1. HOTEL CALIFORNIA :リンク先  https://otokoubouz.info/hotel-california/ ‎
オーディオチェック用としても有名なロックバンドイーグルスの名曲です。
アルバム「HELL FREEZES OVER」の6曲目を試聴しました。ライブ盤です。

2. Rock You Gently :リンク先  https://otokoubouz.info/rock-you-gentry/ ‎

 Jennifer Warnes の1992年のアルバム”The Hunter”の最初の曲です。
本曲では、大陸的なおおらかさを感じさせる、いわば、カントリーのポップスバージョンのような、さらりと流れる彼女のクールなヴォーカルを聞くことができます。
また、実は、50-60Hzが全帯域の中で音圧のピークとなっており、40Hzでもその音圧が1kHzの音圧と変わらないレベルで録音されています。低音域の再生能力が比較ポイントでもあります。

3. Take Five  :リンク先  https://otokoubouz.info/take_five/ ‎
 デイブ・ブルーベック・カルテットの有名なジャズナンバーです。
 この曲は、低音が、案外下まででており、ベースやドラムの再生に90-150Hz、それに部屋の雰囲気等の再生には、40Hzぐらいまでの再生能力があったほうが良さそうです。また、中音域の500-2.5kHzぐらいの再生における分解能力がサックスなどの再現性に関係して来そうです。この曲では、この領域の音圧が高くなってもいます。

4. カプリース :リンク先  https://otokoubouz.info/caprice/
ニコロ・パガニーニの24の奇想曲(24Capricci)です。ヴァイオリン独奏曲、すなわち無伴奏曲です。難易度の高い強烈な技巧が随所に盛り込まれており、難曲として知られています。
ピエール・アモイヤルの名器の響き ヴァイオリンの歴史的名器、に収録された演奏を試聴用に用いました。

5. 水上の音楽  :リンク先      https://otokoubouz.info/suijo_no_ongaku/ ‎

 水上の音楽は、ヘンデルの作曲による管弦楽曲集で、弦楽合奏と管楽器からなる管弦楽編成です。試聴では、第2組曲の第2曲のアラ・ホーンパイプを用いました。オルフェウス室内管弦楽団による演奏です。
 本録音では、約30Hz~5kHzの広い範囲で、-40dB以上の音圧を持って録音されています。聴感上は、フルオケのような比較的広い範囲の音域として感じられると思われます。
 高い周波数の倍音成分も、20kHzのカットオフ周波数まで、なだらかに下がりながら検出されています。おそらく実際の演奏では、20kHz以上も入っているものと推定されます。

 

FF165WKのエンクロージャー評価

1. 標準バスレフ(16L)

 第一印象は、バランスの良い音、という感じです。超低域は聴こえませんが、全体に、はっきり、かつ、くっきりという音調で、ともすれば、やや硬い感じの音という印象も受けました。また、この箱では、中低域は適度にも聴こえるのですが、低音のふっくら感といいますか、ゆったりとした余裕はあまり感じられません。

 ただ、女性ボーカルの再生は良い感じで、例えば、Rock You Gentlyでのボーカルはクリアで適度にウェットに聞こえました。カプリースのバイオリンは、エッジの効いた音という印象です。

 一方、他のスピーカーでは、柔らかに聴こえる水上の音楽のホルンの音が、くっきりとしていて、解像度が高いように聴こえます。TakeFiveのサックスも、明るめでドライで、くっきりと聴こえる傾向にあるようです。

 一般的によく使われる表現である、豊かな倍音の、、という音とは、ちょっと対極のような印象を受けました。

 

2. 標準バスレフ+Z501

 エンクロージャーの聴き比べというのとは、趣旨が異なりますが、全体の音のバランスを確認するため、標準バスレフに、スーパーツィーターであるZ501を並列接続して試聴してみました。
なお、ネットワーク用のコンデンサは、標準の2.0μFから、0.82μFに変更しました。

これは、かなり効果的でした。

 音の粒立ちがよくなり、とおりのいい開けた感じに聞こえてきます。また、低域のバスドラなども、はずんで聴こえます。

 たとえば、TakeFiveのサックスが、一段と張り出すように聴こえ、もともとあるバランスのいい感じはそのままです。 さらに水上の音楽では、ゆったり感を感じるようになりました。同様にカプリースでも、バイオリンの押出が良く、キレのよい感じになり艶がでてきました。

 これは、高域から超広域の音圧が増し、倍音の再生能力が向上したためと思われます。スーパーツイーターの追加により、全体の硬いような感じがなくなり、音に張りと弾みが出てくるようです。

 

FF165WK の特性について

周波数特性と高調波特性(2次、3次高調波歪)

ユニットの周波数特性測定結果の比較と検討

 次に、FF165WKの諸特性を検討します。

比較対象は、主にFE166NVとします。これは2019年に発売が開始され、Fostexの16cmのフルレンジユニットしては最新となります。

 最初に、FF165WK(実線)とFE166NV(点線)との周波数特性の値を下図に示します。

 これは、弊社簡易無響室でユニットをJIS箱に入れて1mの距離から測定した値の比較になります。なお、簡易無響室での測定のため、300Hz以下の低域特性は正確ではありません。

測定装置は、エタニ電機㈱のASA-10mkⅡを用いました。

 

図    FF165WK(実線)とFE166NV(点線)との周波数特性

 

 中域から見ていくと、比較用に表示した点線のFE166NVに比べ、200Hz -1kHzの中域では、似たプロファイルではあるのですが、FF165WKの方が、どちらかというと音圧は2-4dB程低く、1kHz-7kHzの中高域では、同程度の音圧となっています。

 特徴的なのは、8kHz-17KHz程度の高域~超高域では、高い音圧を保持しているFE166NVに比べ、FF165WKでは急激に音圧が低くなっていることです。

 いわゆる基音の波形を補正する倍音の領域の音圧が低いことになります。
ピアノの88鍵よりも、高い音の領域です。

 また、なぜか、約17kHz -20kHzで、10dB程、音圧が再び高くなっています。
というか、これは逆に言えば、13kHz付近と17kHz付近の2つのディップにより形成されたものにも見えます。リッジドーム形状アルミ合金センターキャップ/メカニカル2Wayと、メインの振動板との干渉効果によるものかもしれません。

 この1mでの測定値と、下に示す、10cmでの測定値の形状がやや異なっているのは、距離によって干渉の効果が異なっているため、とも推定されます。

 このプロファイルを見た印象では、FF165WKは、スーパーツィーターを追加した方が、特性的にはフラットに近づき、スーパーツィーター追加の効果が高そうにも思えます。

 300-1.5kHz付近のヴォーカルやサックスなどの聞き取りやすい基音の領域で、若干の凹凸はありますが、比較的フラットですので、あまり耳障りな印象はなさそうです。8kHz以上の落ち込みが、聴感上どう感じられるかは、興味深いところです。

 

本ユニットの高調波(歪)の測定結果

次に、FF165WKの周波数特性と高調波歪の測定データを下図に示します。

 いずれも、弊社簡易無響室でユニットをJIS箱に入れてユニットから10cmの距離で測定した値です。

上で示した図よりも、見やすくするために横軸を横に広げています。また、1mでの測定と若干プロファイルが異なっています。

黒い線が本ユニットの周波数特性となります。

 高調波は、オレンジが2次高調波。緑が3次高調波です。
 なお、縦軸は、ユニットの周波数特性と同一画面に収めるために、歪特性の値は、2次、3次共に、+20dB嵩上げして表示しています。

 例えば、1kHzでの3次高調波の値(緑)が、グラフから、70dBと読み取れますが、20dB嵩上げして表示していますので、実際には50dBとなります。

 ちなみに、この1kHzでは、ユニットの周波数特性の値が、109dBですので、緑の3次高調波の50dBの値と、59dBの差があります。dBは対数表記ですので、20dB少ないと10%、40dBの差は1%、60dBの差は0.1%となります。

従って、本ユニットの1kHzにおける3次高調波の値は、周波数特性の値の約0.1%となります。これは、1kHzにおける3次高調波歪率が約0.1%だとも言えます。

 

高調波測定結果の比較検討

 比較のために、FE166NVの周波数特性と2次と3次の高調波の周波数特性を示します。

 こちらも先と同様、オレンジが2次高調波。緑が3次高調波です。また、縦軸は、周波数特性と同一画面に収めるために、歪特性の値は、2次、3次共に、+10dB嵩上げして表示しています。先のグラフと10dB異なります。

 先程のFF165WKと同様に比較してみます。1kHzの3次高調波の値は、グラフより68dBと読み取れます。こちらは10dB の嵩上げですので、実際は、58dBです。一方、ユニットの周波数特性は、108dBですので、その差分は、50dB   です。これは約316.23分の1に相当します。すなわち、約0.3%の3次高調波歪み率となります。FF165WKの約3倍の値です。

 ざっと見たところ、どうやら、2kHz 以上の高域から超高域で、FF165WKの方が2次、3次高調波共に低い傾向にあるようです。これは、FE166NVのサブコーンと、FF165WKのリッジドーム形状アルミ合金センターキャップ/メカニカル2Wayとの特性の差やMmsによる差(FF165WKが重い)を示しているようにも思われます。

 なお、高調波歪については、FE168NSの辛口レビュー( https://otokoubouz.info/fostex-fe168ns/ )に説明していますので、御覧ください。

 

 

他のユニットとの比較

Fostexの16cmフルレンジユニットの特性比較表

FOSTEXのFEシリーズとFF-WKの16cmユニットの比較表を示します。

これは、同社の定番のフルレンジユニットの比較、ということになります。

 


     表  Fostexの16cmフルレンジユニットの特性比較表

 

次に、この一覧表の上段の規格値と、下段のTSパラメータについてそれぞれ比較検討したいと思います。

規格値の比較

 特性比較表の上段の規格の値を見ると、FF165WKは、定格入力と最大許容入力の値が、5ユニットの中で最大となっています。

 更にそれと関係するかは不明ですが、ボイスコイル径が、FE166NVなどが25mmなのに比べ、35mmと太くなっています。これは、リッジドーム形状アルミ合金センターキャップ/メカニカル2Wayも関係していると思われます。

 また、マグネット重量の値が848gと最も大きく、鉄フレームのためか、マグネット重量が総重量に占める割合が最も大きくなっています。FE168EΣの721gに比べ2割ほど重いマグネット重量というのは、

 

TS-パラメータの比較

 TS-パラメータの値を比較すると、FF165WKは、Mmsが9.5と駆動系の重量が最も重くなっています。また、Cmsの値が、1.068と、FE168NSほどではありませんが、やや硬めの値になっています。

 これら、重い駆動系と硬めのサスペンションを、恐らく5機種では最も強力な磁気回路が駆動している、ということになります。

 また、Qtsの値をみると、0.34と一応バスレフ領域ではありますが、かなり値は小さめで、FE168NSの方が、0.39と大きな値になっているぐらいです。

 これらの値からみると、推奨のバスレフタイプ以外のエンクロージャーも検討の余地があるかもしれません。

 

 

外観のレビュー

フレーム

 

 FE系ではレガシーと言っていい、鉄フレームを採用しています。ただし、FE166NVなどは、黒なのに対し、グレーで、コーンの色と合わせているようです。

 ユニットの取り付け穴の位置は、FE-FF系の16cmのユニットについては、共通する4ヶ所については、同じ位置になっています。また、バッフル開口径については、FE166NVとFF165WKは同じです。

 ただし、FE-168NSと、FE168EΣについては、ユニット取り付け穴が8個あるうちの4ヶ所は同じで、共通化可能ですが、バッフル開口径は異なります。

 ちなみに、これが、20cmになると、NSとEΣの取り付け穴は同じですが、NVやWKとは位置も異なっています。

 

振動板


 コーン紙の製法に、FE-FF系として、初めて2層抄紙の技術を採用しています。
ただし、その材料は、FE系とは異なります。

Fostexによると、以下とのことです。

 ” FF-WKシリーズでは基層に長繊維( 低叩解度)の木材パルプを使用し、崇高構造による高剛性化と適度な内部損失を保有させ、表層には短繊維( 高叩解度)のケナフと備長炭パウダーを配合し、コーン紙表面の伝播速度を高めています。

 また、エッジ形状はアップロールにすることで高ストローク化を図り、材料には高損失、高ヤング率と相反する物性を保有したポリカーボネート系材料を特殊配合したウレタンフォームを採用しました。”

 備長炭パウダーが入り、グレーのコーン紙に加え、エッジ形状とエッジ材料がFE系と異なっています。さらに、センター部分がFE系と全く違います。

リッジドーム形状アルミ合金センターキャップ/メカニカル2Way構造、で、

” アルミ合金をリッジドーム形状に成形したセンターキャップを採用。
特定周波数での強い共振を分散して弱めることで高域のカラーレーションを軽減しています。
また、ボイスコイルボビンと直結することで高域の再生帯域を拡張しています。”となっています。

 このようにメカニカル2wayではあるのですが、周波数特性のところで既に記載しましたように、高域及び、超高域の音圧は他のFE系に比べると高くはありません。ただ、高調波については、FE系のサブコーンよりも大幅に少なくなっており、低い高調波歪率に寄与しているようです。

ダンパー等の振動系


 この部分に、現在のFE-FF系の基となっている技術がFF系により初めて採用されています。3点接着方式/ポケットネックダンパー の技術です。

 Fostexによると、

 ”コーン紙とダンパー、ボイスコイルの接着を同一箇所で行う3点接着方式を採用。
コーンネック部の強度を高めることで高域特性の向上を実現しています。
また、ダンパーネック部にポケット形状を設けることで、ボイスコイルに中継線を使用しながらも3点接着を可能にしました。”

 これにより、Enの時代にはまだあったコーン紙上のハトメがなくなり、ハトメレスとなっています。これは、最新のFE108NSにも採用されています。

磁気回路


 磁気回路としての詳細は不明ですが、少なくも、マグネット重量は、FE-FF系の定番の16cmフルレンジユニットの中では、最大の値となっています。

 寸法は、120mmΦで、厚みが20mmです。ちなみに、FE168EΣの寸法は、120mmΦの17mm厚となっています。

重量比=848/721=1.176
厚さ比=20/17=1.176

 と同じですので、この厚さの比が、重さの比となっていることがわかります。少なくも、マグネット重量という観点からは、FF165WKは、相当コストパフォーマンスがいいとも言えそうです。

 

 

まとめ

 FF165WKは、発売開始が、2011年3月下旬で、2020年で9年が経過しています。

 技術的には、最新のFE-NV系やFE-NS系にも採用されているハトメレス、3点接着方式、ポケットネックダンパーなど、振動系の軽量化や歪の低減化の中核となる技術や、2層抄紙コーンや素材としてのケナフの採用などを一番最初に実施しており、現在の各FE系の基本となる技術を駆使した先駆け的存在とも言えます。

 発売開始から9年が経過しているためか、Fostexの16cmの定番フルレンジユニットの中で、一番安価にもかかわらず、最もマグネットが重いという、現時点では、材料にコストをかけた非常にコストパフォーマンスが高い存在となっています。

 周波数特性のカーブでは、7kHz からなだらかに下がり、15kHzから再び音圧が高くなるという、やや特異な形状をしています。後者はメカニカル2Wayが影響しているものと思われます。
音楽的な音域としては、十分なのですが、7kHz-15kHzでの音圧不足が、波形の再現力を低下させる方向となっています。

 また、2019年発売の新型であるFE166NVなどと比べると、むしろ2次、3次高調波の音圧は少なく、余分な音を出さない忠実再生な指向のユニットである事がわかります。いわば、味付けが少ないユニットとも言えます。実際、標準バスレフ箱の試聴の結果では、硬い音、という印象を受けました。 

 スーパーツイーターZ501(0.82μF)を追加して試聴したところ、音質の向上が実感できました。スーパーツイーターの追加により、全体の硬いような感じがなくなり、音に張りと弾みが出てきます。この追加は、本ユニットの場合、必須ではないかと思われるほどです。

 さらに、強力な磁気回路と、Qtsが0.34と比較的低い値であることを考慮すると、BHBS(バックロードホーンバスレフ)なども適用可能に思えます。これにより、キレのある、豊かな低音の再生が可能になるかもしれません。

 FE-に比較すると低域が出しやすいという意味で難しいユニットではありません。バスレフ以外も色々とトライする価値があるように思われました。