はじめに

本レビューについて

 本レビューに訪問頂きありがとうございます。
直接ここに御訪問頂いた方に、このレビューについて、少しご説明したいと思います。

本レビューは、音工房Zのブログ記事の一つです。

 音工房Zは、スピーカーのキットや完成品、音響関連の部材の開発、製造、販売を行っている会社です。
https://otokoubouz.com/

本レビューを始めとするブログ記事をいくつか掲載していますが、これは、スピーカーや部材をより良い音で聴いていただけるよう、少しでもご参考になれば、ということや、スピーカーを自作される方への情報提供の一助になれば、などという意図に基づいています。

  記事の内容としては、たとえば、マトリクススピーカーや共鳴管の原理などのちょっと変わったスピーカーについてのご紹介や、自作用スピーカーユニットの”辛口”評価、また、音工房Zで製品の評価などに用いている録音の優れた曲やアルバムのご紹介なども行っています。この中には、お客様にご紹介頂いたアルバムなどもあります。

リンク先の例: 

 本レビューは、これらの中でも、”オーディオ愛好家のためのマルチチャンネルオーディオとは?" シリーズの関連記事となります。

 従って、ここではAVアンプの評価を行いますが、ちょっと偏っています。
主にAudio部分の、それもマルチチャンネル音源の再生のための装置としての評価が主です。そのためVisualの部分、たとえば最近のAVアンプの流行りでもある4K・8kの画像評価などは行いません。

その点、Visualの部分の情報を求めて来られた方には、申し訳有りませんが、この場では、あくまで、オーディオ用機器の評価の一環として記事のアップを行っていきたいと考えています。

また、現時点では、音源として比較的安価なSACDマルチや、さらに安価なストリーミングサービスを前提とします。また、オーディオからのアプローチとして、パワーアンプ内蔵を前提としたサブウーファーは外します。以上を鑑みて、5.0chを標準とします。

 これらを前提としまして、マルチチャンネル音源の再生のための装置としてのレビューを始めます。

                       

marants NR1710について

 

 

NRシリーズの実績と歴史

 MarantzのNRシリーズは、すでに10年以上の実績があり、2018年発売のNR1609では一年間ほぼ毎月シェア1位を獲得しました。ちなみに、本シリーズはほぼ毎年新機種に代わっています。
NR1710は、それに続き2019年6月に発売開始されました。この機種も、市場で高い評価を受け、全AVアンプでシュアNo.1となりました。
さらに2020年9月には、最新機種としてNR1711が発売開始となっています。

 NR1711では、NR1710のAVアンプ機能をベースに、HDMI2.1機能の本格的採用となっており、eARCをはじめ、新世代ゲーム機の仕様にも対応しています。また、新4K/8K衛星放送で使用されている音声フォーマットMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)にも新たに対応しており、コンデンサや抵抗などのパーツの改善などにより、音質もさらに向上させた、とのことです。

NR1710の特徴

 NR1710は、現時点2021年1月では、既に生産終了機種となっていますが、まだ、市場にはでまわっており、1ランク下相当の価格となっていますので、新型のゲーム機や、4k・8k用にこだわらなければ、かなりお買い得という位置づけかと思います。なお、7.2chベース(ただし、2台のサブウーファには同じ信号)で、eARCや、Dolby Atmos、DTS:Xの3Dサウンド(5.2.1ch)にも対応しています。さらに5.1chの場合、バイアンプ接続が可能で、フロントスピーカーのプリアウト出力もあります。
このフロントプリアウトは、ゾーン2用という位置づけのようです。

無線LAN内蔵で、AmazonMusicHDなどのストリーミングにも対応していますので、最近のAVアンプの流行を一通り取り入れています。

さらにこのネットワーク対応をベースにHEOSというアプリをiOS、Android、Amazon機器にインストールしてネット上で音楽情報の表示や機器のコントロールを行うこともできます。
このアプリは、DENONと共通です。

marantz商品群での位置づけ

 NRシリーズは、marantzのAVアンプでは、最も低い価格となります。NR1710とNR1711の定価は9万円です。
他社では、これより安い価格帯の機種をだしているのが普通ですので、これは、marantzのAV分野の製品群への考え方を示している思われます。
つまり、この製品のレベルがAVアンプの仕様の最低ラインと考えているということです。

 本シリーズの最大の特徴は、まず、薄型であることです。おそらく一般的な日本の家屋事情を背景に、これがまず、大きなインパクトとなりました。さらに、marantzが訴えているのは、入出力端子の数、機能性、音質などに関して妥協をしていない、ということです。

ある意味、日本の電気製品の(かつての?)特徴である、薄い、コンパクト、高密度、多機能、をAVアンプで実現した機種といえるかと思います。

その代わり、出力については、同価格帯やそれ以下の価格帯の他機種に比べやや低くなっています。これは、各チャンネルの定格50W(8Ω)というのが、不十分かどうか、ということでもあります。アンプの出力は、組み合わせるスピーカーのインピーダンスや能率などに関係しますが、そもそも集合住宅を含む一般的な日本の家屋で、どれぐらい大きな音をだせるのか、ということとも関係するようにも思われます。

なお、以上で示した機能の一部は、ファームウェアのバージョンアップで対応していますので、色々と使いこなしたい場合や動作の安定性の向上に、バージョンアップは必須と言えます。

 

以上、この本機種の特徴である、入出力端子の数、機能性、音質、それと出力について、マルチチャンネルオーディオの再生の観点で、確認していきたいと思います。

 

 

NR1710の価格と概要

標準価格    : 90,000円(税抜)

発売年     : 2019年 6月中旬発売開始  既に生産終了

チャンネル構成 : 7.2ch

プリアンプ出力 : 有:フロント(LR)とサブウーファのみ(0.2ch)

無線LAN    : 2.4GH/5GHz対応(IEEE 802.11a / b / g / n 準拠)

Bluetooth           :  4.1 (A2DP 1.2、 AVRCP 1.5)

HDMI      : 入力8,出力 1(4K、HDCP 2.3、eARC 等対応)、8K未対応
          対応音声フォーマット(2ch及びマルチチャンネルリニアPCM)
          =32kHz-192kHz,16/20/24bit  、MPEG4-AAC未対応DSD未対応

DSD対応    : 5.6MHz対応

ストリーミング等 : AmazonMusic、Spotify、tunein、AWA、AirPlay2など

マルチチャンネル規格   :     Dolby Atmos、DTS:X 対応、Auro系;未対応

サイズ      : W440 × H105 × D378mm (アンテナを寝かせた場合)

重量       : 8.4kg

 

NR1710の外観と機能のレビュー

外観のレビュー

前面パネル

 

 

 前面からみた外観でまず気づくのは、そのAVアンプらしからぬ薄さです。スッキリと、コンパクトに見えます。
フロントレイアウトは、左右にそれぞれ配置されている大きなつまみと、中央のディスプレイ、その下のセレクタ等のボタン類、一番下にの左側に電源スイッチ、ヘッドホン端子、測定用マイク端子、右側にUSB端子、HDMI端子などで、同じグループであるDENONのAVR-X1600Hとほぼ同じようなレイアウトです。

ある意味、AVアンプで流行りのデザインとも言えますが、その高さの違いで、受ける印象が大分違います。さらに、左右が少し後方にラウンドして、中央部が少し出ているデザインになっているのも、すっきりとした印象に寄与しているのかもしれません。


なお、重量は、8.4kgと、DENONのAVR-X1600Hの8.6㎏と200gしか違いませんので、中身はぎっしり、ということかと思われます。
8台分のパワーアンプがはいっていますので、放熱性については、一つの大きな開発課題だったろうと推察されます。

 

接続端子について

フロントパネル 

                               写真  AVR-X1600H(DENON)と NR1710(marantz)

 

フロントパネル側には、次の端子が付いています。

・ヘッドホン端子(標準プラグ)
・測定用マイク端子(ミニプラグ)
・HDMI端子(AUX)
・USB端子 (USBストレージ、USBメモリー) ;注 PCとの接続はできない

最後のUSB端子は、フロントのこの一つのみです。ストレージやメモリーを接続して音楽ファイルの読み込みをすることができます。

ただし、PCとの接続は想定されていません。PCオーディオを行いたい時は、HDMI端子を用いるか、LAN(無線/有線)経由で行うことになります。

リアパネル

本機の背面写真を見ていただければわかるように、端子が整然とたくさん並んでいます。

一番上、左右両端が、BlueTooth用のアンテナ2つ、またその間にデジタル系の端子が並んでいます。左から、光、コアキシャル、LAN、またHDMI入力用が7つ、フロントのAUX用と合わせて、計8つです。その右にテレビの入出力用のHDMI2.1端子があります。ただし、これは、3DオーディオなどのためのeARC対応のみで、画像の8Kには本機は対応していません。
ちなみに、eARC機能に未対応のテレビとの接続には、HDMI2.0ケーブルで十分です。

その下の段は、主にアナログ系の入出力です。
レコードプレーヤー(MMカートリッジ用)を接続するPhone端子を始めとして、セットトップボックスなどを接続するアナログオーディオ端子や、ビデオ端子などのアナログ系の端子が比較的豊富なのが本機の特徴といえます。最近のデジタル系の外部機器は、ほとんどがHDMI接続対応ですので、比較的古い機器にも対応していると言えます。

また、プリアンプ出力端子として、同じ信号を出力するサブウーファー端子が2つ、フロントスピーカー用の信号を出力する端子が1組あります。
後者については、高級機にあるような外付けのメインアンプを接続して音の向上を図るための用途ではなく、異なる部屋(ゾーン2)用にメインアンプを接続して使うのを想定しているようです。

中央右側には、バナナプラグ対応のスピーカー端子が、7組並んでいます。

通常の7.2ch(実質7.1chと同等)用接続や、5.2.2chの3D用のスピーカー配列に加え、5.2/5.1ch接続の場合、フロントとサラウンドバックの端子を使ってバイアンプ接続をすることができます。

 

マルチチャンネル関連の機能について

 SACDマルチ関連

 本機種は、SACDマルチのリソース対応については、DENONと同じくあまり重視していないようです。

  PUREモードで、SACDマルチを再生するときに、DSD directと表示されますが、SACDからのDSD信号を直接処理する、いわゆるDSDダイレクトには対応していません。

 まず、HDMI端子が、DSD伝送には対応しておらず、PCM伝送対応のみとなります。したがって、ユニバーサルプレーヤーからのSACDのDSD信号を本機はうけることができません。プレーヤ側の出力は、リニアPCMに変換されたデータとなります。

今回、試聴用マルチプレーヤーとして、ソニーのUBP-X800M2を使いますが、これは、SACDマルチの信号をDSDのマルチチャンネルで出力することができます。ただし、相手(この場合、NR1710)のHDMI端子がDSD伝送に対応していないと、SACDのマルチチャンネルの信号をPCM信号に自動的に変換して出力されます。

この時、アンプ側(NR1710)では、接続機器名と、Multi-ch Inと表示されマルチチャンネル信号が伝送されてきていることが示されます。この受けている信号が既にPCMなわけです。

なお、marantzのSR6015以上の機種では、HDMIがDSD(5.1ch、2.8KHz)に対応しています。ただし、DSDダイレクトにはいずれの機種も対応していません。

従って、ソニーのUBP-X800M2から、DSDマルチでデータを伝送され、アンプ内部で、一旦PCMに変換し、その後、PCMのマルチ信号をDA変換して再生する、という流れになります。

 まお、NR1710はDSD信号の5.6MHzまで対応していますので、配信サービスなどからのDSD5.6MHz相当のファイルは、DA変換することができます。対応しているファイル形式は、.dsfと.dffの二種類です。
採用されているDACは、AK4458VNで、これにはDSDの直接変換機能があり、8chのマルチチャンネル対応です。従って7.1chに対応できます。

 ただ、marantzの取扱説明書に著作権のあるファイルには対応していない、と明記されていますので、SACDのDSD再生はいずれにしてもやらないようです。

ダウンロード型配信サービスへの対応

 一般的なAVアンプで、ブラウザ機能とファイル保存機能はありませんので、音楽ファイルのダウンロードは、別途PC等で行い、ファイルを保存管理する必要があります。
その際のインターフェースは、PCであれば、LAN(無線、有線)または、HDMI端子経由で行います。

I/Oデータのfidata や Soundgenic、バッファローのDELAなどのミュージックサーバー系は、LAN接続で行います。

対応するマルチチャンネルリソースは、PCMであれば、リニア、Dolby系、DTS系共に、24bit/192kHzまで対応しています。また、DSDファイルについては、前記のように、DSD128(5.6MHz)とDSD64(2.8MHz)となります。

ストリーミング型配信サービスへの対応

 基本機能として、LAN(無線、優先)に対応しており、各種のストリーミングサービスに本体のみで接続が可能です。iPhone,iPadやandroid用に準備されているHEOSアプリで連携してコントロールできます。ファームウェアのバージョンアップにより、AmazonMusicHDなどにも対応しています。

 

NR1710の接続と設定

マニュアルについて

 本機には、マニュアルが付属していません。その代わりにGoogleなどの検索サイトで、”型番”+”webマニュアル”、で検索すると、ウェブ上でマニュアルを表示できます。これは、単純なPDFファイルの表示ではなく、webアプリになっていますので、左側には目次が表示され、そこから見たい画面に飛ぶことができます。紙のマニュアルよりも使いやすいかもしれません。

 なお、目次は、大項目が表示されていて、プルダウンでその下位の項目が表示されますから、慣れれば便利ですが、全体の把握はちょっとわかりにくいかもしれません。
一番最初は、右上にある目次ボタンで目次全体を見ることで、全体が把握できるのでお勧めです。

またそのほかに、PDFファイルも用意されています。このwebマニュアルの目次のメニュー、または、marantzのホームページから、参照して、ダウンロードすることができます。

ただし、マニュアルは、パワーポイントファイルのような横長構成で、296ページあります。印刷は、2ページ/枚かつ両面として、74枚相当となり、かなりのボリュームです。

セットアップアシスタントについて

 実際に、本体のスイッチをいれると、テレビに言語の選択に続いて、セットアップアシスタントの画面が出てきます。基本的には、これに従って設定していけば、スピーカーのセッティング状況の入力やAudysseyセットアップなどが、行われます。

これがとてもよくできていると思います。例えば、同じ資本系列であるDENONの画面とも異なっており、より親切で、わかりやすい案内だと思いました。
この内容であれば、ディスク機器を接続して音を出すまでの操作では、ほとんどマニュアルはいらないと感じました。

マルチチャンネル用の接続について

 以下、5.0ch接続を前提として、本機を使って音を出すための接続や設定について簡単に説明します。なお、接続する機器としては、次の機器類が最小構成となります。

1. テレビ  ;AVアンプや接続する機器の設定のためのモニター用
2. スピーカー ;5.0ch用 フロント用2台+センター用1台+サラウンド用2台
3. ユニバーサルディスクプレーヤー ;マルチチャンネルのリソースであるBlu-rayディスクや、DVDオーディオソフト、SACDマルチなどの再生用機器


テレビの接続

AVアンプをオーディオに用いる場合でも、各種設定のために、モニターは必須です。
そこで、モニター用として、テレビを必ず接続します。

テレビの仕様の前提条件として、オーディオ用を前提とするならば、ARCまたはeARC対応である機種をお勧めします。ちなみに最近のテレビは、ARC対応は通常の仕様となっています。
その場合の接続は、テレビのHDMI端子と本機のHDMI端子(一番右端)をHDMIケーブルで接続するだけです。

なお、HDMIケーブルですが、テレビがeARCに対応している場合は、HDMI2.1(8k対応:48Gbps)対応にしておいた方がいいかと思います。ただ、現時点では、それを必要とする機能、たとえば、テレビにDolbyAtmos機能が搭載されている機種などはほとんどないので、その能力を必要とするシーンは実質まだ少ない状況です。

機能を考慮すれば、HDMI2.0(4k対応:18Gbps)でも十分な場合がほとんどです。
少し前までは、HDMI2.1ケーブルの価格がかなり高額だったので、まずは、HDMI2.0で様子をみることをお勧めしていましたが、最近、HDMIケーブルの価格が急激に低下してきていますので、少し前の状況とはかなり異なってきているようです。

ARC対応機種の場合は、HDMI2.0が標準仕様となります。

なお、HDMI2.0と2.1とは、みかけは0.1の違いですが、対応する伝送速度が、18Gbps vs 48Gbpsと全く異なります。注意が必要かと思います。

スピーカーの接続

5.0chのスピーカー接続を検討する際、NR1710は、3通りの考え方があります。

1. NR1710の各スピーカー端子にそれぞれのスピーカーを接続する。

2. バイアンプ機能を用いて、フロントのツィーターとウーファーを別々のch(フロントとサラウンドバック)に接続する。
  この場合、事前に、アンプ設定のメニューでアサインモードをBi-Ampに設定します。 
  なお、この接続は、フロントスピーカーが2WAYであることが前提です。  
  その他の、センターとサラウンドは、通常通りの接続となります。

3. フロントスピーカーのプリアウト端子を別のパワースピーカーに接続する。
  そのパワーアンプにフロントスピーカーを接続する。
  その他の、センターとサラウンドは、通常通りの接続となります。

ただし、3の方法は、本来想定された使い方ではないようで、もともとは、ゾーン2用に用いることを前提としているようです。

なお、バイアンプのための関連の設定は、Audysseyセットアップのメニューのアンプの割り当てで行います。

ユニバーサルディスクの接続

本機のBlu-ray用HDMI端子と、ユニバーサルディスクプレーヤーのHDMI出力の端子を、HDMI2.0以上の規格のケーブルで接続します。なお、HDMI2.1のケーブルも下位互換ですので使用可能です。

 

マルチチャンネル用の設定

 初めて、アンプを起動させると、セットアップアシスタントが表示されますので、その指示に従って行うとセットアップができます。marantzのセットアップアシスタントの表示画面はわかりやすく、ほぼ、この通りにしていけば、大丈夫だと思います。

基本的には、このメニューに従って、セットアップを行っていきます。

ただし、その前に、ファームウェアのアップデートを行います。
ダウンロードに、5分くらい、そのインストールに13分の表示がでます。ほぼ実際の時間に近いようです。

次にAudysseyセットアップを行います。準備としてそれぞれの質問に答えて設定していくと、サブウーファーの有無をはじめとするスピーカーの構成やからはじまり、アンプの割り当てやスピーカーの諸特性を調整が自動的に行われます。

Audysseyセットアップ

 本機には、自動的に音場を補正する機能として、Audyssey MultEQが搭載されています。marantzの場合は、6点測定となります。事前にスタンドにマイクを取り付け、リスニング時の耳の高さに設置しておきます。
セットアップアシスタントの指示に従って、付属のマイクのジャックをフロントパネルのマイクジャックに入れ、各ポジションに移動させて、6点、同じ測定を行います。
その後、測定が終了すると、各データを内蔵のプログラムで解析して、スピーカーの特性を自動設定してくれます。

 

ディスク系マルチチャンネルの再生

 NR-1710のHDMI端子では、DSD信号を受信することはできませんので、PCM信号の受信となります。これは、機器間で自動的に確認がなされて、ユニバーサルディスクプレーヤーにてDSDからPCMの変換が行われます。PCMのスペックは、通常192kHz /24bitとなります。
したがって、逆に言えば本機ではSACDマルチの再生に関するDSD関連の設定項目はありません。

SACDマルチ再生の場合は、リモコンのPUREボタンを押して、DirectかPureDirectを選びます。
PureDirectの場合は、本体のディスプレイがオフとなり、アナログビデオ回路も停止となります。

なお、Blu-rayの場合は、リニアPCM系、Dolby系、DTS系の信号がありますが、本機の場合は、すべてのフォーマットに対応しています。

 

     表  Blu-ray Disc™で用いられる主な音声形式

 

NR1710の音の評価


音質の評価用リソースと関連機器について

今回の試聴は、以前のブログに記載したSACDマルチのディスクを使用しました。

同ブログのリンク先を示します。

 

 なお、スピーカーは、フロントとサラウンド用に、Z800を設置しました。また、センターにZ-1+Z501(スーパーツイーター)を用いました。
センタースピーカーは、5chの再生において、前方の各音の定位感の向上にとても大事な役割をしています。試聴を重ねるにつれ、この選択はとても大事だと感じています。
今後、リアも含め、いくつか組み合わせを試していきたいと思います。

 高音域は、直線性が高くなりますので、定位感にも寄与すると考えられます。また、Z-1の場合、特に音質の向上も期待できますので、当面、この組み合わせを標準にしたいと考えています。

 

音の評価方法

音量について

まず、気になる音量感ですが、今回の試聴で、ボリュームの低さを感じることはありませんでした。試聴の部屋は、約20畳の大きさですので、試聴環境としては、比較的広い方だと思われます。
最大50W(8Ω負荷)または70W(6Ω負荷)/chで、5.0chの場合、5か所から音が出せますので、そもそも通常の2ch分とは、総出力が最大2.5倍となりますから、当然、とも言えます。

ちなみに、フルボリュームではまだ試聴したことはありません。

なお、今回、曲によっても異なりますが、ボリューム表示が70前後で試聴を行っています。
ラウドネス効果を考慮すると、ボリュームの値は、機器を比較するとき非常に重要です。

マルチチャンネルの機器の評価基準の一つとして、ボリューム調整をどうするかは、今後の大きな課題と考えています。

音質と音場について

5ch以上のマルチチャンネルの場合、音質も機器によって異なりますが、それとともに、音場の感じ方も異なってくるようです。
AVアンプを換えた場合も、空間の広がりの感じ方が、どうやら違います。

この評価については、あくまでも、相対的なものですから、他機種との比較で表現したいと思います。
今回は、ONKYOのTX-RZ830と、DENONのAVR-X1600Hとの比較です。

今回の比較にあたっては、それぞれPureDirectもしくはDirectのメニューを選択しています。
つまり、音源のデータをそのまま再生するモードです。ただ、事前にそれぞれの組込みアプリでチューニング済みですので、その時点でそれぞれイコライジング等されています。
同じ名称のアプリでも、各社独自のチューニングの傾向もあろうかと思いますので、その結果込みということになります。

価格帯もそれぞれ異なり、仕様もTX-RZ830は9.2ch対応、AVR-X1600HとNR1710は、7.2ch対応など異なりますが、ここでは、5.0chのSACDマルチの音源を再生した場合の比較ですので、各AVアンプの基本性能の比較ともいえるかと思います。

 

NR1710の音の評価

まず、全体の印象ですが、再生音の傾向はとてもナチュラルな感じです。高域の耳障りな感じや低域の過剰な感じなどはないと言っていいかと思います。

例えば、マイルス・デービスのSo Whatでの始まりからのセンターのベース、続いてセンターのトランペット、ちょっと左のテナーサックスなどは、5.0chが作り出す空間で、前方方向にはっきりと位置が分かります。その後右側のアルトサックスは、センターと右の少し広い空間に漂いますが、ある程度わかります。これは、やや低音成分の多い楽器の特性のためかもしれません。

ただし、この定位感は、TX-RZ830よりは少し劣る感じです。また、AVR-X1600よりは明らかに上回っています。それも関係するのか、その順番で、空間の広がり感とゆったり感も、感じ方が違うようです。
どうも、定位感がいいほど、演奏している空間が広く感じます。

テナーサックスのパンチ感は、AVR-X1600Hよりも上で、かなりいい感じです。
ただ、ベースなどでの極低域の再生音は、TX-RZ830に劣るようです。あまり響いてきません。

この傾向は、The Gadd GangのDuke's Lullabyでも感じました。始まりからのドラムソロのパルシブで、よく弾むドラム音と、中盤から後方に配置された高域のパーカッションの分離感が特徴的な曲ですが、NR1710は、バランスよく鳴ってくれます。
ただ、TX-RZ830に比べて、バスドラのズドンという響きが甘いようです。また、パーカッションの後方定位も少し甘いので、空間がやや狭く感じます。

諏訪内晶子のシベリウス/バイオリン協奏曲/第一楽章のバイオリンソロから、オケがふわっと空間が広がっていくように入ってくるような感じにも少し物足りなさを感じました。
また、コントラバスの低域の響きも少し足りない感じです。
さらに、主役のバイオリンの音色の表現力に差を感じました。

以上のやや辛口な評価は、他の機種と比較したときに感じた印象です。

特にこの違いがなにによるのかは、逆に興味深い点だと思います。
TX-RZ830の重量は、14㎏。また、NR1710は、8.4㎏で、かなり違います。この違いのほとんどは、電源まわりによるのではないかと思われます。

電源まわりの音に対する影響については、様々な意見がありますので、やはり、こちらについても留意して検討していく必要があるように考えさせられました。

 

まとめ

 NR1710は、2019年6月中旬に発売開始となり、2020年9月に新機種のNR1711が発売になったのに伴い、既に生産終了となっています。
現時点(2021年1月)では、まだ、販売中であり、新機種に比べ低価格で販売されています。

AVアンプとしては、薄型の外観をもつ本機種は、市場で高い評価を受け、全AVアンプでシュアNo.1となった実績を持ちます。

この本機種の特徴である、入出力端子の数、機能性、音質、それと出力について、マルチチャンネルオーディオの再生の観点で、評価してみました。

高さが低く面積の少ない背面にHDMIなどのデジタル系やアナログ系の入出力端子がびっしりと並んでおり、特にアナログ系の入力端子が充実しているので、手持ちの機器の接続がほぼ可能と思われます。

機能性については、7.2chベース(ただし、2台のサブウーファには同じ信号)で、eARCや、Dolby Atmos、DTS:Xの3Dサウンド(5.2.1ch)にも対応しています。さらに5.1chの場合、バイアンプ接続が可能で、フロントスピーカーのプリアウト出力もあります。

ただし、DSDダイレクトには対応していません。これはmarantzの方針のようです。

 また、無線LAN内蔵で、AmazonMusicHDなどのストリーミングにも対応しており、HEOSアプリによって、そのコントロールをiOS機器や、androidのスマートフォンで行うことができます。
今回は評価していませんが、日常生活においては、これらのストリーミング系への対応力が、本機の一番の強みかもしれません。

音の特徴は、5.0chにおいても、フラットで、癖が少なく、自然な音場を形成してくれます。
ただ、上位機種に比べると極低音域の再生能力などは、やや劣るようです。また、艶のあるバイオリンの響きなどの再生は少し難しそうです。
音量については、マルチチャンネルにおいて、各チャンネル50W(8Ω)は、十分で、音量不足を感じることはありませんでした。

SACDマルチのオーディオ再生用として、DSDダイレクトには対応していませんが、音質的にはニュートラルで、5ch入門用として使えると思われます。

また、実売価格を考慮すると、新型のゲーム機対応や、4k・8k用にこだわらなければ、かなりお買い得といえるかと思います。

 

 

 

人気記事一覧

データはありません