はじめに

スヌープ・ドッグ世界大絶賛の新作『Bush』ファレル・ウィリアムス全面プロデュース

曲の概要

 アメリカのラッパー、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)の2015年のアルバム ”BUSH" の 1曲目。Stevie Wonder(スティービー・ワンダー)が、ボーカルとハーモニカ奏者として参加しています。この共演は、スヌープドッグが本アルバムを録音中に、スティービー・ワンダーのボーカルが閃き、参加要請。その連絡の1時間後にスティービーが現れ、実現したそうです。
 なお、曲名にあるFt.は、" featured "の略です。" スティービー・ワンダー登場 ! "、といったような感じでしょうか。

 また、このCalifornia Rollは、同アルバムの先行シングルとしてもリリースされています。

 プロデューサーは、「第56回グラミー賞」で最優秀プロデューサー賞となったPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)。彼によると、「この曲はスシロールみたいだね。あらゆるものが重なっていて、いろんなことが同時に起きているんだ。レコーディング現場ではナーバスになってて、Stevieに対してあまりディレクションできなかったんだけど、彼は素晴らしいサウンドにしてくれた。流石だよ。Snoopの歌声も最高だ。レコーディング翌日に聴いてみたら、魔法のような多重サウンドになっているんだ。本当に最高の曲に仕上がったよ」とのことです。

 曲は、出だしが少し弾けて始まり、アコースティックベースのようにも聴こえるエレクトリック・ギターが、超低域でリズムを奏で始め、それが最後まで曲を支えます。
スティービー・ワンダーのボーカル、そしてスヌープ・ドッグのラップと、スティーブのハーモニカ等の絡み合いとともに、ゆったりと流れます。それ以外のバックは、アコースティックギターとエレクトリックギターがクレジットされているだけです。エレクトリックギターのMIDI信号で、ディジタル音源を鳴らして多重録音しているようです。

 ともかくこのゆったり感は、ヒーリング効果が期待できるのではないかと思うほどです。

 逆に、本アルバムに、元気なラップミュージックを期待した人には、肩透かしかもしれません。Amazonなどの評価が2つに分かれているのも、そこに原因があるのではないかと思われます。

 オーディオ的には、超低域の充分な再生能力が欲しい曲でもあります。また、色々な倍音成分が豊かなので、スーパーツイータの効果も試してみたくもあります。

 なお、この曲の入った ” BUSH " は、当社のお客様が試聴会にお持ちいただいたCDになります。

特性測定と評価

本曲のピーク値の周波数特性の特徴

 本曲全体のピーク値の特性を示します。
 縦軸は、dB(デシベル)単位の出力で、上が0dBで、下が-80dBとしています。
また、横軸は周波数で、対数目盛となっており、一番左端が、20Hzで、緑の目盛りは、10kHzが記載されており、実線の枠で囲まれた一番右側の点線が、20kHzとなっています。


図  California Rollのピーク値の周波数特性

 

 なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、ヘッドホンにより行っています。このモニター用ヘッドホンには主にSONYのMDR-CD900STを用いました。

 このピーク値のプロファイルは、最新のラップやレゲエ、ダンスミュージックのような音作りの傾向となっており、聴覚の等感曲線を補うような左肩上がりの曲線となっています。
 曲全体での最大音圧は、約54Hz(ほぼA1)の-10.8dBです。より低い41Hz(E1)付近でも、-14.8dBと非常に高い音圧となっています。ちなみに、E1の音程は、コントラバスの第4弦の開放弦の音程となります。この領域の音圧を生み出しているのは、エレクトリック・ギターで制御されていると思われるコントラバスのような音質のゆっくりとしたリズムセクションです。つまり、超低域の音が非常に高い音圧で、リズミカルに流れます。特に、43Hz、54Hz、65Hz付近の3音などがリズムセクションとして最初から最後まで交互に流れます。

 大事なリズムセクションですので、この曲の再生には、超低域の再生能力が必須と言えるかと思います。

 このような超低域の領域の音を再生するには、Z-800クラスの再生能力が必要、と想定されます。
また、25センチウーファーであるZ505-Trento(S)のようなサブウーファーを追加し、ハイエンド3way化することで、一段とグレードの高い超低域での再生音と量感が得られると思われます。

 中高域を見てみると、例えば、440Hz(A4)付近の音圧が、ー18dBで、4.2kHz(C8)付近の音が、ー29dBですので、差分は、ー11dBだけ高域側が低くなっています。この音圧の形状は、人の聴覚の等感曲線と似たような形状となっており、この領域の音が、ほぼ同じ音圧で聴こえるように補正されているようにも感じます。ちなみに、-11dBの音圧の差は、約3.5倍となります。

 最もこの値は、聴くときのボリューム(音圧)がどれぐらいかによって、大きく変わります。

 さらに高域では、2kHzから12kHzぐらいまで、ほぼ同じレベルの音圧が並んでいますが、これは、ハンドクラップや、ザッザッザッ、というような特徴的な効果音、それとハーモニカの倍音成分からなるものです。ここから先の、20kHzまで、急降下しながらも-50dB 程度の音圧で入っている成分は、様々な音源の倍音成分となっています。

 

  等ラウドネスレベル曲線の新旧特性の比較図
  図  参考データ;聴覚の等感曲線

 

 ここで、参考データとして、聴覚の等感曲線を示します。これは、等ラウドネスレベル曲線とも呼ばれます。
 新規格がISO226として全面改正されたのが2003年ですので、既に新しくはないのですが、古い本などでは、旧規格の記載された書籍等もありますので、参考までに両方記載した図を示します。
旧規格と新規格は基本的に似たような形状をしていますが、場合によっては、特に低域側で、10-15dBの違いがあります。ここで10dBは音の強さ換算で10倍、15dBは30倍の差に相当します。
 ちなみに、この新規格は、日本の研究機関が主導した国際共同研究の成果です。
引用元: https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20031022/pr20031022.html

 この、等ラウドネスレベル曲線とは、様々な周波数の音が、感覚的に同じ大きさに聞こえる音圧レベルを結んで作られる周波数特性です。
1kHzでの最小可聴値の値を0dBとして、それより、20dBごとに音量を大きくした場合の値を結んで各曲線としています。

 つまり、同じ音量でのグラフで比較すると、値が上になるほど、聞こえにくく、下になるほど聞こえやすいということになります。
ざっくり見ると、低音ほど聞こえにくく、3-4kHz 付近が最も聞こえやすく、さらに高音になるとまた聞こえにくくなるという傾向が見えます。また、音量が増すと、カーブが平坦になっていく傾向にあります。特に低域側でその傾向が顕著です。従って、人の聴覚は、音量が増すと低音と高音が聞こえやすくなるということがわかります。逆に言えば、音量が低いと低音と高音が聞こえにくいということです。

 なお、この値は、国際的な統計量です。個人差が相当ある、とのことですので、留意しておく必要があろうかと思います。

California Roll  Feat.  Stevie Wonderの試聴

Z800-FW168HRS + Z505-TrentoS での試聴

 

 今回の試聴のポイントは、全曲に流れる50Hz前後の低域でのリズムセクションです。
もちろん、久しぶりのスティービー・ワンダーのボーカルと、スヌープ・ドッグのラップとの絡みが、どう聴こえるかが、音楽的には重要ポイントです。

 はじめに、Z800-FW168HRS単体で、試聴してみました。全体に音はクリアで、分離感良く聞こえます。50Hz 前後のリズム音は、空気の唸りのように聴こえてきますが、音圧が低く、リズムを刻むという雰囲気ではありません。
 低域の再生音の音圧は、比較試聴したZ1000-103Aや、Z1-Livornoの方がむしろ高く、100Hz前後のドラム系の音に、ボリューム感を感じます。なお、Z1の場合は、Z501(スーパーツイーター)をつけたほうが、低音の分離感が増したように感じました。

 その点、Z800は、超低域の音は聴こえてくるのですが、低域がすっきりとしていて量感が少なく、少し物足りないぐらいです。

 そこで、即、Z505-Trentを並列接続して聴き直しました。

 雰囲気が全く異なりました。
 超低域のリズムセクションが、ズドドーンと響きます。単体の場合と、再生音のレベルが異なります。なお、Z505-Trentを接続したことによる中低域のかぶりは、感じられません。高域のハーモニカやハンドクラップやクリック音などの効果音の分離の良さは、そのまま活きています。
 ともかく、全体にリズムセクションを始めとした超低域はもちろん、ドラムなどの低域での再生音でのゆったり感が増し、スティービーとスヌープ・ドッグのボーカルが、絡み合いながらまったりと曲が流れていきます。

 Z505Trentの威力を堪能できた一曲でした。

 なお、本アルバムでは、各曲に超低域が、随所に効果的に入っています。この音が聴こえるのと聴こえないのとでは、曲に対する評価が大分異なるのではないかと思いました。

比較試聴に用いた製品の紹介

 今回の試聴に用いた製品を、紹介します。

1.  Z800-FW168HR (Z800と略称)
https://otokoubouz.com/z800/fw168hr.html

2. Z505Trent
https://otokoubouz.com/z500/505trento.html

3. Z-1-Livorno (S)
https://otokoubouz.com/z1/livorno.html

4.  Z501を組み合わせ。(C=0.82μF)
https://otokoubouz.com/z500/501.html

CD情報

 

関連リンク先

・本アルバム同様、極低域が豊かに含まれる音源集です。

 

・パッシブ型サブウーファーの使い方をご紹介しています。

 

・PCオーディオ入門編 2023です。導入しやすく高音質のオーディオ環境のご紹介です。
サブスク音源、驚きのminiPC、最新D級アンプ、音工房Zのスピーカキットなどをご紹介しました。
今や入手が困難なCD音源なども、1億曲のサブスクなら聴くことができる、かもしれません。

 

 

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