マトリックススピーカーについて

はじめに 

 長岡鉄男先生の自作スピーカーのシリーズということで、今回はマトリックススピーカーをとりあげます。

 マトリックス・スピーカーMX-1は長岡鉄男先生が考案、設計制作した「音場型」スピーカーの中の一つです。
 4つのスピーカーユニットを一つのエンクロージャーに取り付け、特殊な配線をもって広大な音場感を生成する、といったスタイルのユニークなスピーカーです。

   
     写真1 MX-1の外観

 写真のようにスピーカーボックスは1つで、これに4つのSPがついています。
モノラルスピーカーのようにも見えますが、この1つのボックスから音場を創りだすこの作品が、”音の魔術師” の異名を持つマトリックス系初代のスピーカーです。

 このマトリックススピーカーは、インピーダンスの高いユニットの利用が前提となっていますが、2014年に販売されたFE103Sol(16Ω)が入手できたのを機会に、様々なマトリックススピーカーを実際に製作・試聴して、レポートしたいと思います。

 今回はマトリックス方式についてと、そのMX-1の率直なレビューを書きたいと思います。

そもそも、マトリックススピーカーとは何か?

 マトリックススピーカーは、通常の2chステレオ出力を、少し変わったスピーカー結線で疑似4ch再生する方式で、立体的な音場感を得られるように工夫されたスピーカーの事です。

 シンプルな構造ゆえか、条件が揃えば音場感は抜群に良く、AVアンプが進化した現在でさえ多くの方が利用しています。

 通常のステレオスピーカーはLとRの2本のスピーカーで再生しますが、マトリックススピーカーはL+R(和信号)L-R(差信号)で再生します。

 MX-1ではフロントの2本のスピーカーからはL+R(和信号)が再生され、左のスピーカーからはL-R(差信号)、右のスピーカーからはR-Lの(差信号)が出力され、空間合成されたのちに、左耳に(L+R)+(L-R)=2L、右耳には(L+R)+(R-L)=2Rの信号が伝達されます。

 何がなんだがさっぱり分からないと思いますので図にします(笑)

  
   図1 マトリックススピーカーの配線

 さらに分からなくなった方も大勢いると思います(爆)。

 MX-1の左右のスピーカーに角度がついている理由は、R、Lのそれぞれの差信号が逆側の耳に届かないようにする工夫で、長岡先生の実験の結果40~45度の間が良いとされています。

 更に左右の差信号の多くは、録音のホールエコー等の間接音が大量に含まれている為、外側に向いたスピーカーからの音は、リスニングルームの壁で反射し、更に音場感、雰囲気が増強される事になります。

 このようにマトリックススピーカーは、「音場感」「雰囲気」を最大限に活かすように設計されたスピーカー形式で、一般的な2chステレオとは全く異なります。

MX-1の率直な感想

 MX-1は、2CHでのハイエンドを目指して普段音作りをしている私にとっては面食らう作品ではあります。

 私が印象に残った音場再生型のスピーカーとしてはBOSEの901 が一番でして、これは2chオーディオの音の自然さはなく、作られた感じの「音場感」ではありますが、評価の高いスピーカーでした。

 MX-1はBOSE901とは全く異なりまして、どちらかというと空間全体に包み込まれるという印象は薄く感じました。
 MX-1単体としては低音感が不足しがちなので、もともと低音の量感の少ないソース(例えばフルートとか)で比較的録音が古いものが合う印象がありました。

 4本の10センチフルレンジユニットを使っていて、ここまでしか低音がでないのは箱の容積不足が原因と思われます。

 調べてみるとこれは長岡先生も認識していたらしくMX-4、MX-10と進化していきます。

 高域は複数ユニットの影響で多少減衰している感じもしますが、そこまで落ち込むことはありません。
(FEの独特の高域が落ち着いてくれるのでこれはこれで良い感じと感じる方も多いでしょう)

 次回の研究室の長岡鉄男スピーカー研究では低音を増強したMX10を取り上げたいと思います。