デジタル信号処理対応のサブウーファー用パワーアンプ

APA1200DSPを用いたパッシブ型サブウーファーの運用方法

今回御紹介するのは、Dayton Audio社のAPA1200DSPという、ADC(アナログ→デジタル・コンバーター)、DAC(デジタル→アナログ・コンバータ)、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)などを内蔵した統合アンプです。

これを用いたパッシブ型サブウーファーとメインスピーカーとの組み合わせの使いこなし事例を今後ご紹介していく予定です。

 

APA1200DSPは、前記のデジタルデバイスを搭載してサブウーファー用アンプとしての様々な機能を実現しています。

ここでは、このAPA1200DSPの概要説明と、パッシブ型サブウーファーを本機で駆動させるための接続方法について、まずご紹介します。

 

 

接続フロー

これを用いた場合の基本的な接続フローは次のようになります。

プリアンプまたはプリメインアンプからのプリアウト信号を、APA1200DSPの入力に接続します。このスピーカー出力をパッシブ型サブウーファーに接続します。

一方、メインのパワーアンプまたはプリメインアンプのスピーカー出力をメインスピーカーに接続します。

全体のマスターボリュームは、プリアンプ(部)のボリュームとなります。

 

図  APA1200DSPを用いたサブウーファーの接続フロー 1

 

または、次の様な接続も可能です。


図  APA1200DSPを用いたサブウーファーの接続フロー 2

 

上記フローは、APA1200DSP のラインアウト出力を使って、メイン用のパワーアンプ(部)の入力信号とします。

ラインアウト出力については、後述しますが、この信号には、ハイパス・フィルター機能や遅延機能などを適用できます。

 

APA1200DSPの構成と特徴

APA1200DSPの内部構成

APA1200DSPは、入力したプリ信号を24bit/48kHzでA/D変換してデジタル信号に変えます。そのデジタル信号を内蔵のDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)で、LPF(ロー・パス・フィルタ)やHPF(ハイ・パス・フィルタ)、PEQ(パラメトリック・イコライザ)などの様々な信号処理を行い、サブウーファー用の信号にできます。

最終的にその信号をD/A変換してアナログ信号を出力します。そのアナログ信号を内蔵のD級アンプで増幅し出力します。

 

信号処理機能について

デジタル信号をDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)で信号処理することで、LPF(LowPass Filter)、HPF(High Pass Filter)、位相変更、時間遅延、PEQ(Parametric Equalizer)、Limiterなどの各機能がそれぞれ実現可能です。また各機能は、個別にON/OFFができます。

ここで、HPF(ハイ・パス・フィルタ)は、超低域をカットするサブソニックフィルタとして使うことが想定されています。

 

ラインアウト出力について

ラインアウト出力は、メインスピーカー用のパワーアンプへ接続できます。

ここでは、入力したプリ信号をそのまま出力することもできますが、メインスピーカー用信号にHPS(ハイ・パス・フィルタ)をかけて、メインスピーカーの低域を低減させ、サブウーファーとの被りを減らす事もできます。

HPFとしては、カットオフ周波数の設定とフィルター特性(-6,-12,-24、-36dB/oct)の設定ができます。

また、サブウーファーの出力がメインスピーカーに対して遅延する場合に対応して、メインスピーカー用の信号であるこのラインアウト出力に対して遅延処理を行うこともできます。

なお、これらのデジタル処理が不要な場合は、それぞれの機能を個別にON/OFFできます。また、信号処理を全く行わない場合は、前述のようにオリジナルのプリアンプ出力を直接メインスピーカー用のパワーアンプに入力してもかまいません。

 

APA1200DSPの特徴

このように、APA1200DSPは、サブウーファ用アンプとしての用途を想定した機能が複数組み込まれています。それぞれの機能は、独立しており、個別にON/OFFが可能です。

また、フィルター特性なども、カットオフ周波数やスロープを即座に変えることができます。実際に音を聴きながら、よりよい設定を探ることができるわけです。

また、デジタル信号での処理なので、アナログ方式に比べると、信号の劣化が格段に少ないことが大きな特徴と言えます。

 

リアパネルについて

リアパネルの写真を示します。

このリアパネルの図をマニュアルから引用します。

詳細の説明は省きますが、この図のFやHで示されているように、アンプとの接続は、RCAコネクタもしくはXLRケーブルで可能です。

また、サブウーファーとの接続は、通常のスピーカーケーブルで行います。

やや注意が必要なのは電源です。信号処理系は、日本の電源の100Vで動作します。
アンプの出力はステレオ(8Ω/RMS)で最大200W✕2で、最大消費電力が1600Wとの記載があります。ちなみに、モノラル(ブリッジ結合/4Ω)で1160Wなので、型番に1200の記載があるようです。

日本家庭用の通常のコンセントは、最大15Aですから、最大出力で流すと、ブレーカーが飛ぶことになります。
ただ、本機はもともとPA用で、このような大出力が可能となっていますが、通常の家庭用のスピーカー用のサブウーファー領域の用途では、そのような大出力となることは、まずないと考えていいかと思います。

 

WebベースのGUI画面表示について

上の図の"B" のLANコネクタに接続することで、PCやスマホ、タブレットなどからWeb画面上での各パラメータの設定が可能です。正面パネルにある小さなディスプレイでも操作は可能ですが、こちらのWeb画面でのオペレーションの方がはるかに容易です。

PCもいれた接続フローは次のようになります。

 

Web画面の例としてローパスフィルタ(LPF)の設定画面を表示します。

ここでの詳細説明は省きますが、サブウーファーを単体かステレオ(2個)か選択したり、カットオフのスロープや、カットオフ周波数を設定すると、そのイメージのカーブがグラフで表示されるなど、具体的でわかりやすい表示となっています。

ちなみに、本体のディスプレイでは、このような表示となります。

   

以上、APA1200DSPとサブウーファーとの接続の概要について御紹介しました。

最後に、APA1200DSPの仕様の概要を示します。

  • チャンネル数:2
  • A/D 仕様:24-Bit/48kHz
  • 入力端子:XLR x2, RCA x2, Coax (SPDIF) x1
  • 出力端子 (固定ボリューム):XLR x2, RCA x2
  • 出力端子 (Powered):Stereo binding posts x2
  • 出力値 (Stereo @ 2Ω):410W x2 RMS
  • 出力値 (Stereo @ 4Ω):240W x2 RMS
  • 出力値 (Stereo @ 8Ω):200W x2 RMS
  • 出力値 (ブリッジ;モノラル @ 4Ω):1160W
  • 入力感度電圧:0.316 VRM @ -10 dBV, 0.631 VRMS @ -4 dBV
  • 最大入力電圧:1.8 VRMS
  • 入力インピーダンス: 22kOhm 
  • 周波数特性: 10Hz to 20kHz 
  • 周波数偏差(20-20kHz): +/- 0.4dB 
  • SNR, A-weighted: >96dB 
  • THD+N @ Rated Power: 0.74% 
  • Auto-on 感度: 10 mVRMS 
  • 電力(Standby): <2W 
  • 総電力 (待ち受時): 17.5W 
  • 総電力 (最大): 1600W 
  • 重量: 7.3 kg 
  • 大きさ: 幅43.2cm✕奥行38.1cm✕高さ9.5cm

 

 

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