Violin Concerto No.1 / Paganini / Hilary Hahn & Eiji Oue

Paganini: Violin Concerto No. 1 & Spohr: Violin Concerto No. 8 Product Image

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曲と演奏者の概要紹介

ヒラリー・ハーン(Hilary Hahn)と、スウェーデン放送交響楽団によるパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番とシュポワのヴァイオリン協奏曲第8番が入った2006年10月発売のCDから、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番第1楽章 Allegro maestosoをご紹介します。指揮者は、大植英次です。

ヒラリー・ハーン

ヒラリー・ハーンは、アメリカのバージニア州レキシントンで1979年11月27日に生まれました。1983年からメリーランド州ボルティモアに移り、3歳11ヶ月でヴァイオリンを習い始めます。1990年に10歳でペンシルバニア州のフィラデルフィアにあるカーティス音楽院に入学。同校の卒業は、1999年の19歳で、音楽学士号を取得します。

日本的に言えば、小学生がいきなり音楽大学に入学し、19歳で大学卒業ということになります。
ちなみに、必要な単位は16歳でとっくに取得済みで、勉強を続けるために在籍していたとのことですが、当時、既に演奏活動が忙しかったと推測されますので、かなり密度の高い音楽生活を過ごしてきているようです。

この間、11歳(1991年)のときにボルティモアのLeakin Hallで初リサイタルを行い、同年、地元のメジャーオーケストラであるボルティモア交響楽団と初共演します。その後、東海岸の主要なオーケストラと次々と共演し、14歳で、ブタペスト祝祭管弦楽団と共演して国際舞台へデビュー、15歳(1995年)でバイエルン放送交響楽団との共演でドイツ・デビュー、1996年には、フィラデルフィア管弦楽団との共演で、カーネギーホールデビューをしています。

彼女は、非常に幅広いレパートリーを持ちますが、とりわけ、バッハは、特別な意味を持つようです。

ボルティモアでの最初の先生であるクララ・ベルコヴィチとカーティス音楽院で最初に師事したヤッシャ・ブロツキーからバッハの集中的なレッスンを受けており、バッハは彼女の演奏の出発点というような位置づけに思われます。

本アルバムでは、パガニーニといえば難曲、ということで、ヒラリー・ハーンの超絶技巧を改めて確認できる一枚ともいえるようです。

また、ヒラリー・ハーンは、様々な情報を自ら発信しており、ツイッターやYouTubeで見ることが出来ます。ご参考までに、末尾に、YouTubeのヒラリー・ハーン オフィシャルをご紹介します。

なお、オフィシャルではありませんが、今回ご紹介するパガニーニの本曲も全曲をYouTubeで聴くことが出来ます。

大植英次

指揮者の大植英次は、1956年広島市に生まれました。4歳よりピアノを始め、様々な楽器を経験します。桐朋学園で斎藤秀雄に師事し、斎藤門下の先輩にあたる小澤征爾との関係で、1978年に渡米、タングルウッド・ミュージック・センターで学び、ボストンのニューイングランド音楽院指揮科に入学します。そして、ボストン郊外で開催されるタングルウッド音楽祭で、バーンスタインと出会い、世界各地の公演に助手として同行するようになります。

1980年には、同音楽祭でクーセヴィツキー賞を得ます。
ちなみに、この賞は、小澤征爾も受賞しています。ただし、当時はバークシャー音楽祭という名称でした。

その後、アメリカ東海岸を中心に様々な交響楽団の音楽監督や主席指揮者を歴任しています。

エネルギッシュな指揮姿とともに、「エイジ・エクスプレス」と称する地域での音楽普及活動に力を入れてきて、それぞれの地元で高く評価されています。「楽しくなければ音楽ではない」がモットーとのことです。

ペンシルバニア州エリー市のエリー・フィルハーモニック音楽監督や、ミネソタ州ミネアポリスのミネソタ管弦楽団の音楽監督、ドイツのハノーファ北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の主席指揮者そして同終身名誉指揮者などを歴任し、2000年からはハノーファー音楽大学終身正教授にもなっています。

2003年から大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を努め、現在は、同楽団桂冠指揮者です。
2006年9月からは、スペインのバルセロナ交響楽団の音楽監督に就任しています。

なお、米国リファレンス・レコードのミネソタ管弦楽団とのCDの内、1996年「ストラヴィンスキー:『火の鳥』」と1997年「展覧会の絵」が2年連続でグラミー賞にノミネートされ、2004年にはグラミー賞(Classical Contemporary Composition)を受賞しました。

本録音は、2006年、ドイツ・グラモフォンとの初仕事でした。大植英次のメジャー・デビューとなる記念すべきアルバムとも言えます。

パガニーニとその作品

本曲を作曲したニコロ・パガニーニは、1782年10月27日ジェノヴァ共和国のジェノヴァで生まれ、1840年5月27日似フランスのニースで亡くなっています。57歳でした。

5歳からヴァイオリンを引き始め、ヴァイオリンの名手としてヨーロッパ中で名声を得ます。
作曲家としても活躍し、ヴァイオリンの曲を創り自ら演奏しましたが、どれも、高度な技術を必要とする難曲として知られています。また、ギターの名手としても知られ、ギターの奏法がヴァイオリンの曲にも反映されているようです。

 

ただ、現存する楽譜は、オリジナルをどの程度再現しているかは定かではありません。
というのも、彼自身は、楽譜を一切外に公開しなかったことに加え、死の直前に楽譜をほとんど焼却処分してしまい、さらに僅かに残っていた楽譜も遺族がほぼ売却して、散逸してしまったとのことです。

現在、無伴奏のための24の奇想曲や、12曲あったと言われている内の6曲のヴァイオリン協奏曲などが残されたことになっていますが、その殆どが、彼の演奏を聴いた作曲家などが譜面として書き起こしたものだと言われています。

パガニーニの自身の曲と技術についての秘密主義は徹底しており、自らの演奏会の伴奏を担当するオーケストラに各パート譜を配るのは、演奏会の数日前、場合によっては数時間前で、演奏会後は、楽譜をすべて回収したとのことです。

また、オーケストラの練習では、パガニーニ自身のソロを演奏しなかったため、楽団員ですら、本番で初めて全容を知ることができたということです。

これらを背景として、オーケストラ部分は、ヴァイオリンソロのパートとは異なり、一般に比較的演奏しやすい単純な構成である、とも言われているようです。

 

晩年は、梅毒の治療のために水銀療法とアヘンが投与され、さらに、結核となり、その治療薬として塩化水銀も飲み始め、水銀中毒になったと推定されており、1934年には引退を余儀なくされています。
死因は不明のようですが、今では水銀中毒として知られている典型的な様々な症状がでていたようです。

ヴァイオリン演奏があまりにも上手で、また、病弱で痩せて肌が浅黒い容姿だったことなどから、悪魔に魂を売り渡して得た演奏技術、という悪い噂が信じられ、最後は埋葬を各所で拒否されてしまったほどだといいます。

 

パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番第1楽章の特性測定と評価

本曲のピーク値の周波数特性の特徴

ピーク値の周波数特性の測定結果

本曲のピーク値の周波数特性を示します。

なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、ヘッドフォンにより行っています。このモニター用のヘッドフォンには、主にSennheizerのHD-660SとソニーのMDT-M1STを用いました。

 

下図は、RMEのDIGI Checkでの離散データの測定結果です。

グラフの縦軸が音圧(dB)で最大5dB刻みで、0dBから-50dB、となっています。

また、横軸が周波数(対数表記)で、周波数の低い方から、25,31.5,40,50,63,80,100.125,180、250(Hz)・・・となっており、これらの値が10倍、100倍、1000倍と対数的に続き、最大が40kHzとなっています。

図 1-1. ヴァイオリン協奏曲第1番第1楽章のピーク値の周波数特性(DIGI Checkによる測定値;離散値)

 

次に、WaveSpectraによる連続データの測定値を示します。

クラシック系の場合は、整数倍の倍音構成によるデータ構造となるためか、中高音域で、音階とその倍音に相当するピーク値の強弱の振れが大きくなる傾向があります。

ただ、ヴァイオリンなどの弦楽器やトロンボーンなどの管楽器では、奏法としてグリッサンドやポルタメントといった連続的に音を変化させる奏法もあり、その場合、ピーク値も連続値となります。つまり凹凸が少なくなる方向です。

また、ロック系などでのエフェクターによる非整数倍の倍音が多用される場合などは、ピーク値の周波数特性の形状の凹凸が大幅に少なくなる傾向にあるようです。この場合、ある意味不協和音のオンパレードとも言えます。

 

図 1-2. ヴァイオリン協奏曲第1番第1楽章のピーク値の周波数特性(Wave Spectraによる測定値;連続値)

 

本曲もヴァイオリン協奏曲ということで、離散値ピークと一部の連続値ピークの合成となるわけですが、大勢を占める音階の離散値の影響の方が大きいことがわかります。

そのためピーク値の振れ幅の大小を示すために、縦軸が、0dBから-80dBと広くしており、DIGI Checkとは異なっています。

 

曲全体の周波数特性に関する特徴

図1-1でも、比較的低い周波数から、高い周波数まで、広い帯域で録音されている傾向を窺い知ることができますが、さらに図1-2では、低い領域で、35Hz付近に大きなピークがあり、30Hzと42Hz付近にも小さなピークを見て取れます。

35Hz付近の音は打楽器、42Hz付近の音はコントラバス由来と思われます。

いずれにしても、本録音をちゃんと再生するためには、30Hz付近の極低域の再生能力が必要なようです。

ただし、これら3つ以外は、一旦音圧が下がり、50Hz以上から、打楽器等が由来と思われるピークが高い音圧で入っていますので、これら極低域の3つのピークが再生しきれなくても音楽的にはそれなりに聞こえるという可能性はあります。

 

パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番第1楽章 の試聴

先に示しました本曲のピーク値の周波数特性の値によると、35Hz付近に大きなピークがあります。
これをきちんと再生できるのはZ800ということになりますので、まずZ800での試聴から行いました。

また、本曲で鮮烈な印象が残るのはやはりヒラリー・ハーンのヴァイオリンのソロパートです。ヴァイオリンは豊かな倍音を含みますので、その再生については超高域の再生能力も大事になる可能性があります。そこで、Z800以外のスピーカーについては、スーパーツィータを準備しました。

Z800-FW168HRでの試聴

 Z800は、音工房Zの最高峰のスピーカーです。
 2ウェイのバスレフタイプで、形式的には、Z-1と同じです。

 ツィーター、ウーファー共に、フォステクスの最高のものを使っています。それぞれ、市販の300万クラスのスピーカーに普通に採用されているユニットです。

Z800-FW168HRのページを見る

 

本曲の出だしは、オケで始まり、約3分23秒続きます。続いてヴァイオリンソロが加わるパートが始まりますが、そこは、ヴァイオリンやヴィオラ等の弦楽器のみがサポートします。これが約7分55秒までとなります。続いて再びオケ全体が加わっていきます。

 

始まりのオーケストラの音は、やや地味めに聞こえます。低域はよく出ていますが、高域がやや抑えられている印象です。聴きようによっては、籠もっているような印象を受けるとも言えます。

ただし、ボリュームを上げるといい方向に向かうようです。
全体のエコー感が増し、場を感じさせるようになります。さらに、オケの音にパンチ感を感じてきます。

Amazonなどの評価に、オケのパートにかなり厳しい評価の意見が散見されますが、再生の際のボリュームの違いによる差もあるのかもしれません。

続くヒラリー・ハーンのヴァイオリンの音は、艷やかで、音が伸びやかに響きます。ある意味、出だしのオケとは対照的で、場がぱっと明るくなる印象です。

再びオーケストラ全体との演奏が始まると、今度はバックのオーケストラが低域とエコー感を支え、全体のバランスがいいという印象を受けました。

全体的に音はクリアで、抜けが良く、録音が良いという印象を受けます。ピッツィカートなどの様々なテクニックが効果的にパルシブに伝わってきます。

特に、高域の音のキレなど、ツィータの能力の差がもろにでるのではないかと予感させる印象を受けました。

 

Z-1-Livorno (S)での試聴

 Z-1は、音工房Zオリジナルユニットと、最適化されたネットワーク回路から成る2ウェイ
のバスレフスピーカーです。

 バスレフポートは、テーパー状で、後ろ側に配置されています。
 各専用ユニットとシンプルなネットワーク構成をバランス良くチューニングすることで、
コストパフォーマンスと高級機に匹敵するクオリティを両立させることができました。
 フルオーケストラ等の再生に強みを発揮する朗々とした中低音域が特徴です。

このZ-1については、スーパーツィータZ501と組み合わせたほうが、音にキレが出てきていい印象でしたので、組み合わせて試聴した場合を中心に次にご紹介します。
 

Z-1-Livorno (S)のページを見る

Z-1+スーパートゥイーターZ501での試聴

 Z-1にスーパーツィーターZ501を組合わて試聴しました。

コンデンサは0.82μFを用いました。

Z501のページを見る

 

前半のオーケストラの出だしは、Z800よりも、やや籠ったように聴こえます。

ヒラリー・ハーンのヴァイオリンは、柔らかく響きます。どちらかというと、安心して聴いていられるような感じの音で、密やかな、といいますか、すっと音楽に入り込んでいけるような印象です。

Z800の場合は、高域の再生音に伸びやかさがあり、ツィータの良さを感じさせるとともに、ヴァイオリンのテクニックを表現豊かに伝えてくれる感じがします。

Z-1では、そのような感じではなく、音楽そのものに入り込んでいけるような気がします。

最後のオーケストラの音は、少しもっさり感といいますか、やや地味な印象を受けました。

 

この録音を聴いて改めて感じたことですが、ヒラリー・ハーンの演奏を引き立てるために、バックのオーケストラのパートを作為的に地味めにきこえるようにチューニングしているような印象を受けます。指揮者の意図というよりも、グラモフォンの意向なのではないでしょうか。

Z701-Modena (V5)での試聴

 音工房Zのオリジナル8cm のフルレンジユニットのZ-modena mk2を用いたスピーカーです。箱は、BHBS(バックロードホーンバスレフ)という形式です。

 これにより、8センチ1発とは思えないローエンド再生が可能です。

試聴の結果、これについても、スーパーツイータを付加したほうが全体に印象が良かったので、そちらでの感想を次に記載します。

Z701-Modena (V5)のページを見る

Z701-Modena (V5)+スーパーツイータキットでの試聴

Z701-Modena(V5)にスーパーツィータキットを組み合わせて試聴しました。接続はコンデンサ1個で、0.82μFを用いました。

出だしのオーケストラの音は、Z-1よりも籠もり感が少なく、元気に鳴ってくれます。
全体の印象は、明るい感じで、自然です。35Hzの音は再生出来ていないはずですが、低域もよくでているような印象を受けます。

ヒラリー・ハーンのヴァイオリンもよく鳴ってくれています。スーパーツィータとのつながりが自然で、これがあったほうが音のキレなどが良くなります。

正直にいいますと、意外なほどいいバランスで鳴ってくれました。音調は明るい印象です。

スーパーツィータは付加したほうがいいと思いました。

 

音楽情報

CD紹介

 

ヒラリー・ハーンは、様々な情報を自ら発信しており、ツイッターやYouTubeで見ることが出来ます。興味のある方はyoutubeで検索してみてください。

 

 

 

 

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