はじめに


FE168EΣ_mian

FE168EΣの概要

関連のブログ、” FOSTEX FEシリーズ 16cmのバックロードホーン用スピーカーユニットの系譜と進化 ”、でFostexの16cmスピーカーユニットの進化の流れについて検討しました。

そこでの比較表を示します。

今回は、この表で、2005年11月10日発売のFE168EΣについて検討します。

本ユニットは、2021年6月現在で販売継続中です。販売期間が16年の長期モデルとなります。

FE168EΣの価格と主な仕様

標準価格      : ¥29,700円 (税込み)

発売年       : 2005年 11月10日

スピーカー形式   : 16cm 口径フルレンジユニット

 

フレーム形状(穴数): 丸形(8穴)

振動板形状     : HP振動板

バッフル開口寸法  : 155 mm

マグネット重量   :   721 g  (ランタン・コバルト フェライトマグネット)

総重量       :   2,600 g

FE168EΣの外観のレビュー

フレーム


写真   FE168EΣの上面

 


写真   FE168EΣの側面

 

FE168EΣは、8穴円形のアルミダイキャストフレームです。フレームの形状は、FE168ESと似ています。



写真   FE168EΣの背面

 

 

振動板



写真  FE168EΣの上面からみた振動板とエッジ

 

FE168EΣの振動板は、ESコーンにHP振動板構造を採用しています。また、エッジは、後述のダンパーと対となるUDRタンジェンシャル構造となっており、これらはすべて、2001年8月発売のFE168ESと見た目は似ています。

上から見た場合、2つを並べてみると、マグネット以外はとても良く似ています。


写真  FE168EΣ(左側)とFE168ES(右側)

ダンパーと信号接続系



写真   FE168EΣの側面

 

 

写真    FE168EΣのダンパー部とハトメ部分

 

ダンパーは、タンジェンシャル構造となっています。また、HP振動板上のハトメでスピーカー端子からの接続線とボイスコイルからの接続線が接合されています。

ここの部分の構造も、FE168ESとほぼ同じに見えます。

磁気回路



写真   FE168EΣの側面

 

 



写真  FE168EΣ(左側)とFE168ES(右側)

 

FE168EΣとFE168ESは、フレームの見掛けはそっくりですが、マグネットが大きく異なります。
721gと1798gです。FE168ESのマグネットが約2.5倍重くなっています。さらに、FE168ESは、ランタンコバルトフェライトマグネットを作用していますので、磁力の差は、かなり大きいと思われます。

 

 

FE168EΣの諸特性の検討

規格値の比較

FE168EΣは、マグネット重量が、FE168NSとほぼ同じ値となっています。この両者は、フレームが8穴で、円形のアルミダイキャストであり、ほぼ同じと思われますが、FE168EΣは、HP振動板でUDRタンジェンシャルエッジ/ダンパーを採用しており、おもにこれらの違いで、FE168EΣの総重量が増していると思われます。

TS-パラメータの比較

FE168EΣは、マグネット以外の要素技術のかなりの部分が、FE168ESに基づくと思われます。そのせいもあるのか、Qts以外のコンプライアンスやVasなどの値は、近い値を示しています。


なお、赤字の斜線で示した値は、Fostexが提示してある基本的値から計算で求めた値です。

周波数特性と高調波特性の測定結果

本ユニットの高調波(歪率)の測定

次に、FE168EΣの周波数特性と2次高調波と3次高調波の測定データを下図に示します。

 図. FE168EΣの周波数特性と高調波特性(2次高調波;オレンジ、3次高調波;緑)
   高調波の値は、実際の値+10dBで表示

 いずれも、弊社簡易無響室でユニットをJIS箱に入れてユニットから10cmの距離で測定した値です。

 高調波歪は、オレンジが2次高調波。緑が3次高調波です。
 なお、縦軸は、ユニットの周波数特性と同一画面に収めるために、歪特性の値は、2次、3次共に、+20dB嵩上げして表示しています。

 例えば、500Hzでの3次高調波の値(緑)が、グラフから、80dBと読み取れますが、20dB嵩上げして表示していますので、実際には60dBとなります。

 ちなみに、この500Hzでは、ユニットの周波数特性の値が、104dBですので、緑の3次高調波の60dBの値と、36dBの差があります。dBは対数表記ですので、20dB少ないと10%、40dBの差は1%、60dBの差は0.1%となります。

 この場合、本ユニットの500Hzにおける3次高調波の値は、周波数特性の値の1.5%となります。これは、500Hzにおける3次高調波歪率が1.5%だとも言えます。ちなみに、500Hzの2次高調波の値は、換算後50dBですので、差は46dBで、1/199.5となり、2次高調波歪率は約0.5%となります。

ユニットの周波数特性測定結果の比較と検討

FE168EΣ(実線)とFE168ES(点線)との周波数特性の値を下図に示します。

これは、弊社簡易無響室でユニットをJIS箱に入れて10cmの距離から測定した値の比較になります。なお、簡易無響室での測定のため、300Hz以下の低域特性は正確ではありません。

測定装置は、エタニ電機のASA-10mkⅡを用いました。

図 .  FE168EΣ(実線)とFE168ES(点線)の周波数特性(10cm)
    黒線:周波数特性、 赤線:THD(実際の値+10dBにて表示) 

FE168EΣの周波数特性は、FE168ESと似たような形状に見えます。ただ、FE168ESの低域は、中域~中高域の音圧に比べ控えめで、バックロードホーン等のエンクロージャーによるブーストが、より有効かもしれません。磁力等の駆動力が高く、Moが小さいFE168ESの方が、バックロードホーンにはより向いているようです。Qtsの小さな値から言っても、それはいえそうです。

低域の高調波歪率は、FE168EΣの方が改善されているようです。

 

 

FE168EΣの音質評価

長岡式 D37(バックロードホーン)+スーパーツイーター:T96A-REの試聴


まず、丸い音、という印象を持ちました。キレとか音の立ち上がり立ち下がりとかいうのとは、ちょっと違う世界です。
ちょっと、古い時代の音、という感じもします。低域はゆったりとでています。低域から中低域へのつながりの感じは、割合と自然で、他のユニットよりも、その点ではいいかもしれません。

ある意味、無難な感じもします。

ただ、やはりやや共振点があるといいますか、60Hzぐらいでしょうか、変にブーミーな感じがあるようです。また、40Hz以下の周波数は再生できていないようです。
California Roll Ft. Stevie Wonderなどの40Hzの音がほとんど聴こえません。

それと、中域のボーカルの音域に、ホーンからの被りを感じます。
例えばJacinthaの声で、エコーの感じはいいのですが、ボーカルそのものがややブーミーな印象を受けました。
ボーカルに続くベースの音は、弱く、クリアさに欠ける印象を受けました。

スーパーツイーター(T96A-RE)を加えているにも関わらず、それがあまり効果を発揮しているようには聴こえないようです。

同じHP振動板の系列であるFE168ESから、かなりマイルドになった印象です。

 

試聴に用いた曲のリスト

 今回、音質評価用に試聴した曲をご参考までに下記に示します。ここでは、低域の比較に適していると思われる曲を選定してみました。

なお、各曲の詳細については、当サイトのブログにてそれぞれ紹介していますので御覧ください。
 

1. Hotel California :リンク先  https://otokoubouz.info/hotel-california/ ‎
オーディオチェック用としても有名なロックバンドイーグルスの名曲です。
アルバム「HELL FREEZES OVER」の6曲目を試聴しました。ライブ盤です。

 

2. Rock You Gently :リンク先      https://otokoubouz.info/rock-you-gentry/ 
 Jennifer Warnes の1992年のアルバム”The Hunter”の最初の曲です。
本曲では、大陸的なおおらかさを感じさせる、いわば、カントリーのポップスバージョンのような、さらりと流れる彼女のクールなヴォーカルを聞くことができます。
また、実は、50-60Hzが全帯域の中で音圧のピークとなっており、40Hzでもその音圧が1kHzの音圧と変わらないレベルで録音されています。低音域の再生能力が比較ポイントでもあります。

 

3. California Roll Ft. Stevie Wonder / Bush / Snoop Dog  :リンク先 https://otokoubouz.info/california_roll-ft-steavie_wonder/
 ヒップポップに分類されるスヌープ・ドッグが、スティービー・ワンダーとコラボした曲です。
エレクトリック・ギターで制御されていると思われるコントラバスのような音質のゆっくりとしたリズムセクションが超低域の音を非常に高い音圧で、リズミカルに奏でます。
特に、43Hz、54Hz、65Hz付近の3音などがリズムセクションとして最初から最後まで交互に流れます。
従って、これらの音が再生できるかどうかで、超低域の再生能力を計る事ができます。

 

4. In The Wee Small Hours (Of the Morning)  :リンク先 https://otokoubouz.info/in_the_wee_small_hourss/
   Jacinthaのアルバム Here's To Ben からの一曲。7曲目に入っています。
この曲は、最初にJazzyなヴォーカルのソロで始まります。次にベース、ピアノ、スネアが加わっていき、リリカルなサックスのメロディラインが続きます。
それぞれのパートの効果や定位、音質を比較することができます。
また、全体のエコー、ホールトーンの加減なども、評価対象といえます。

 本曲を構成している楽器はシンプルですが、CDの録音領域の端から端まで、広い音域で録音されているのがわかります。特に、40Hz以上の領域の再生能力が必須です。

まとめ

Fostexのオーバーダンピングユニットの一つであるFE168EΣの諸特性の検討と試聴を行いました。

FE168EΣは、2005年11月に販売開始された、取り付け穴数が8穴で、円形のアルミダイキャストフレームにUDRタンジェンシャルエッジ/ダンパーとESコーン製HP振動板の16cmユニットで、現在も量産されています。2021年で16年目ということになります。

Qts=0.26とオーバーダンピングで、” バックロードホーンに最適 " とされています。フェライト製のΦ120mmのマグネットが1段用いられています。

FE168EΣは、FE168ESと型番が似ています。フレーム、振動板、エッジ、ダンパーなどすべて同形式ですが、マグネットは1段に減っており、直径もΦ120mmと一回り小さくなっています。

取扱説明書には、新しい技術を採用したように記載されていますが、その殆どが、2001年のFE168ESで用いられた技術のようです。

オーバーダンピングな特性をもたせた上で、HP振動板系のコストダウンを図ったユニットという印象です。

周波数特性は、FE168ESと似たプロファイルとなっています。ただ、FE168ESのややハイ上がりな傾向は控えめになっており、特に人の聴力が敏感な3-5kHzの領域が他の領域よりも音圧が低くなっています。

試聴用として長岡式のバックロードホーンエンクロージャーであるD37にスーパーツイーター(T96A-RE)を用いました。

まず、丸い音、という印象を持ちました。キレとか音の立ち上がり立ち下がりとかいうのとは、ちょっと違う世界です。同じHP振動板の系列であるFE168ESから、かなりマイルドになった感じです。

ちょっと、古い時代の音、という印象も受けます。
低域はゆったりとでています。低域から中低域へのつながりの感じは、割合と自然で、他のユニットよりも、その点ではいいかもしれません。

ただ、変にブーミーな感じが、低域に少しあるようです。また、40Hz以下の周波数はほとんど再生できません。

それと、中域の女性ボーカルの音域に、ホーンとの被りを感じます。
ベースの音などの倍音を豊かに含む音源では、弱く、クリアさに欠ける印象を受けました。

スーパーツイーターを加えているにも関わらず、それがあまり効果を発揮しているようには聴こえないようです。

周波数特性的には、似ているようにも見えるFE168ESとは、かなり異なる聴こえ方でした。

 

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