※現行のDSP-408はノイズが発生するという報告がでております。弊社でもノイズが確認されました。決定的な対策が不明のため推奨を停止しております。

 

   

はじめに

DSP-408は、Dayton Audio社製で、同社では商品名として、4✕8 DSP Digital Signal Processor for Home and Car Audioと命名しています。

DSP-408は、デジタルマルチチャネルデバイダとして使うことができます。

外見は、4つのRCA入力端子と8つのRCA出力端子などが見えるだけです。サイズは、165.9 x 25.91 x 115.6 mmと小ぶりです。

この商品の特徴と使い方が、少しわかりにくいように思います。実際のところ本機のマニュアルにも、どういう機能があるか、は書いていますが、どのように使うか、といった適用事例は記載されていません。

そもそも、内蔵されている主な機能は、各種フィルターとパラメトリックイコライザなどですが、それを使うためには、WindowsPCか、スマホ/タブレットが必要です。各ソフトウェアで、設定、表示を行います。一見、敷居が高いように見えます。

今回は、このDSP-408についてと、使い方の例としてパッシブ型サブウーファー用のローパスフィルターとして使う場合の方法等についてご紹介したいと思います。

 

パッシブ型サブウーファー用のローパースフィルターとして使う

ソフトウェア/アプリとの組合せ

DSP-408の操作は、ソフトウェア/アプリで実行

本機とパワーアンプを組み合わせることで、以前ご紹介した同社のサブウーファー用パワーアンプであるDSP-1200の機能を、より低コストに実現することができます。

ただし、本機の場合、DSP-1200や通常のデジタルチャネルデバイダにある、ボリュームやスイッチ、ディスプレイなどは一切ありません。この機器は、WindowsPCまたは、iOSかAndroidのスマホやタブレットと接続することを前提としています。

内蔵されているフィルター機能などの設定は、各ソフトウェアまたはアプリで行います。
ソフトウェアとアプリは、デイトンオーディオ(Dayton Audio)のホームページから無料でダウンロードできます。

ソフトウェアの画面

WindowsPC用のソフトウェアには、次のような2つの画面があります。
上が、入力信号を出力に対してミキシングする画面で、下が、ハイパス/ローパス・フィルターとパラメトリックイコライザーなどの設定と表示の画面です。

これらの画面については、別途、次回以降で詳しくご説明します。

 

 

価格

DSP-408はAmazon Japanで販売されています。2023年3月での価格は、\ 33,448 です。

なお、Parts Expressでは、$164.98です。仮に1$=¥140とすると¥23,100となります。専用のBT用ドングルは、$49.98です。本体と合わせて$214.96となります。約3万円です。

操作系と表示系のハード部品をソフトウェアにしたことと、回路的にも、A/D、D/A、と内部演算用のDSPや周辺回路などが1チップとなっているデバイスを採用したことで、この価格が成り立っていると思われます。

 

 

 

DSP-408について

DSP-408の端子について

DSP-408には、4chのアナログ信号入力と8chのアナログ信号出力があります。

入出力端子について

入力端子はRCAが4chあります。
       

出力端子はRCAが8chあります。
       

DSP-408 図の吹き出し説明
  1. 12V ワイヤー ハーネス              
  2. ターンオン・セレクター            
  3. 12V DCジャック入力                 
  4. RCA 入力     
  5. リモート 入力
  6. パソコン制御入力(DSP-RCと併用) 
  7. Bluetoothドングル入力(  DSP-BT4.0で使用) 
  8. RCA 出力                         

 

車載用ハーネス端子

車載用のためのハーネス端子があります。(上記の①)

  

  

 

H/L変換機能

本機は、カーオーディオ用も考慮しているため、カーオーディオ用のワイヤーハーネス端子経由で、スピーカー出力を入力してライン出力レベルにする事ができます。

つまり、いわゆるH/L(ハイ/ロー)変換機能がついています。従って、オーディオ用においても、プリアウト端子がない場合にこの機能でスピーカー出力をプリアウト信号に変換して使うことができます。ただし、その場合は、電源はワイヤーハーネス端子から供給する必要があります。

 

DSP408の技術仕様

主な技術的な仕様を示します。

  • 高レベル 入力 インピーダンス: 180 オーム
  • 最大 スピーカー 入力 レベル:.. ≤8V
  • RCA 入力 インピーダンス:.....  ≥20,000  Ω
  • 周波数応答:...............................  20-20,000 Hz
  • THD + N:...................................... 0.008%
  • 出力 インピーダンス:................ <50 Ω
  • 最大 入力 レベル:......................  ≤3.2V
  • RCA 出力:..................................... 4V max
  • S/N 比:.......................................... ≥115 dB
  • リモート出力電流:.....................   >500mA
  • 電源 アダプタ の入力電圧 : ....    100-240 VAC
  • 電源 アダプタ 出力:.................. 12 VDC、1.5A
  • 動作電圧:...................................  9-17V
  • 寸法:............................................. 6.53" W x1.02"H x4.55"L (165.9 x 25.91 x 115.6 mm)

 

内部処理のフローと主な機能

ADC(アナログ・デジタル・コンバーター)→ ミキサー

4chの各端子に入力されるアナログ信号は、それぞれ、一旦内部のADCでデジタル信号に変換されます。

なお、ADCのサンプリングレートと分解能についての記載は、DSP-408のマニュアルにはありません。使用しているデバイスは、アナログデバイセズのADAU1701で、この仕様書によると、192kHz/24bitです。

ADAU1701には、A/D、DSP、D/Aなどが組み込まれています。この詳細については、次回ご説明します。

各4chの入力信号は、ミキサーにて出力の各8ch毎にミキシングが可能です。

 

チャネルデバイダ用のミキサーの設定

チャネルデバイダ用の場合は、次のようにミキサーを設定します。

たとえば、出力の1chに入力の1ch(L)を100%として、2-4chを0%とすると、入力の1ch=出力の1chとなります。

同様に、出力の2chに入力の2ch(R)を100%として、1,3,4chを0%とすると、出力の1と2chがL/Rとなります。さらに、出力の3,4chに、入力の1,2ch、出力の5,6chに、入力の1,2ch、出力の7,8chに入力の1,2chをアサインすると、1/2、3/4、5/6、7/8に、入力のL/Rの信号が並列でアサインされることになります。

これらの同じ入力信号に別々のフィルターをかけてやることにより、同じ入力信号でも、出力を変えることができるので、マルチ(複数)のチャネルデバイダーとすることができます。

DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)

ミキサーを通った出力信号の各8chに、複数のフィルター機能やイコライザ機能の信号処理を、それぞれ独立して行うことができます。

フィルター

各chに、ハイパス・フィルターとローパスフィルターが独立してプリセットされています。

それぞれ片方だけ掛けることもできますが、これを、両方同時に使えば、バンドパスフィルターとなります。

つまり、この機能を使えば、例えば低域側と高域側をカットして中域専用のスコーカー用のフィルター特性を作ることができるわけです。

PEQ(パラメトリック・イコライザー)

また、各8chの出力毎に10chのパラメトリックイコライザがあります。これは、中心周波数とQ値とゲインのパラメータがそれぞれ設定可能です。

ただし、これを耳だけで、使いこなすのはかなり難しい作業です。特性をマイクで測定し、そのデータに基づいてピークやディップを調整する、といった使い方が普通かと思います。

表示機能

各8chの出力毎に、それぞれのフィルターとパラメトリックイコライザ(PEQ)をかけた結果の周波数特性グラフで見ることができます。これは、フィルターやPEQの各値を変えると視覚上リアルタイムに変化します。

DAC(デジタル・アナログ・コンバーター)

各8chのデジタル出力信号は、内部のDACで、アナログ信号に変換されて出力されます。

信号フローの概略は、以上です。

 

ここで、ご説明した設定の実際については、あとで、また表示画面を使って説明します。

特にWindows用のソフトウェア画面はよく整理されており、使いやすそうな印象です。

 

DSP-408の応用例とその考え方

これらの機能により、いくつかの用途が想定できます。

応用例1 マルチチャネルスピーカー用デバイダ

例えば、サブウーファー、ウーファー、スコーカー、ツィータの構成の各スピーカーへのマルチチャネル用信号の出力特性をそれぞれ作ることができます。

具体的には、この場合、例えば入力端子の1と2に、L/Rの信号をそれぞれ入力します。

先程示した例のように、1/2、3/4、5/6、7/8に、入力のL/Rの信号がアサインします。それぞれのチャネルにフィルターを別々に設定して、例えば、1,2;サブウーファー用信号、3,4;ウーファー用信号、5,6;スコーカー用信号、7,8;ツィータ用信号にします。

この時、サブウーファー用には、超低域の信号のみを残し、中低域以上はカットします。
また、ツィーター用には、逆に、高域の信号のみを残し、中低域以下はカットします。
中域のスコーカー用には、低域と高域をカットして、中域のみを残します。
ウーファーも同様に低域のみを残します。

それぞれの出力にパワーアンプを接続して各スピーカーに接続すれば、それぞれ、得意とする領域の信号のみが供給されるマルチチャネル駆動の基本システムを構築することができます。能率の異なる各スピーカーのレベル合わせも、それぞれ独立したボリューム調整ができます。

パワーアンプとして、最近一段と高性能となったデジタルアンプを組み合わせれば、低価格で高性能なシステムとしてマルチチャネルシステムを構築することが可能です。

フィルターのタイプやカットオフ周波数、フィルターのスロープ等を変えてチューニングすることが、はんだ付けや部品の付け替えの手間無しで、極めて容易にできます。

 

応用例2 サブウーファー(ステレオ)用フィルタ

これは、応用例1の一部とも言えます。少し具体的に説明します。

入力端子の1と2に、プリアンプ出力のL/Rの信号をそれぞれ入力します。

出力端子のch1に入力のch1を100%とします。その他からの入力は0%にします。
同様に、出力のch2に、入力のch2を100%とします。その他からの入力は0%にします。

出力端子の1と2に、ローパスフィルタをセットします。
この場合、パラメータとしては、3種類あります。
1. フィルタのタイプ(3種類;リンクウィッツライリー/バターワース/ベッセル)
2. カットオフ周波数(20Hz-20kHz)
3. スロープ(6/12/18/24dB  から選択)

ここで、APA1200DSPでは、1の選択がなく、2が16Hz-20kHz、3が6/12/24/36dB でした。

さらに、メインスピーカー用については、本来のプリメインアンプでダイレクトに接続するのが普通ですが、DSP-408を経由させて、極低域をカットするサブソニックフィルター機能としてハイパスフィルターを設定することもできます。この場合の各設定値の選択幅については、ローパスフィルターと同じです。

なお、1のフィルタのタイプですが、画面に示される周波数特性の形状は、それぞれでかなり異なります。形状的にはバターワースが最も急峻に変化するようです。

各フィルターのタイプについては、次回以降で、別途もう少し詳しくご説明します。

 

応用例3 サブウーファー(シングル)用フィルタ

サブウーファーが一つの場合は、出力端子のch1に入力のch1を50%、ch2を50%とすれば、出力端子のch1で、メインシステムとのゲインの差を考慮して左右をミックスした信号を得ることができます。

あとの設定の考え方は、基本的に応用例2と同様です。

それを元にローパスフィルタを通すことで、低域のみの信号を取り出すことができます。

 

以上、DSP-408の概略をご説明しました。

次回は、その2として、DSP-408のハードウェアとソフトウェアについてご紹介したいと思います。

 

関連リンク先

次回へのリンク

DSP-408のハードウェア構成とソフトウェアの使い方の説明を行っています。

 

DSP-408の適用事例

音工房Zのパッシブサブウーファー、Z506-Livornosubを具体例として、DSP-408の出力を最新のD級アンプデバイスを用いたパワーアンプに接続して駆動してみました。

低コストで高性能なサブウーファーシステムが実現できます。

 

ミニPCについて

最新のミニPCをご紹介します。

最近、ミニPCというジャンルができています。Windows11Pro搭載で、メインメモリー16GB +NVMe/SSD512GBという構成で、2万円台という驚異的な価格で入手できます。プロセッサは、2023年版としては、インテルのN95やN100があります。

これらは、かつてのAtomやCeleronの系譜の低価格路線のプロセッサで、第12世代と先端製品(第13世代)から1世代古いアーキテクチャーですが、その分、お得な価格となっています。

性能は、2世代前のi3レベルですので、DSP-408の設定用としては充分以上です。専用PCとして気軽に導入が出来るかと思います。ラズパイ導入より、安くて簡単、かもしれません。

下記ブログでは、PCオーディオ用としてご紹介しています。

 

サブウーファー領域の音域が豊富に含まれている音源のご紹介

その2,その3もあります。

音響パネルの使いこなしについて

音響パネルZ103Aのレイアウトによる音の聴こえ方について検討してみました。

 

 

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