目次
Deep Lee / Lee Konitz and Trio Minsarah
規格品番:[ VQCD-10136]
本アルバムの概要 について
今回ご紹介するのは、リー・コニッツ(Lee konitsz)とトリオ・ミンサラー(Trio Minsarah)により2007年9月に録音され、2008年に発売された " Deep Lee " です。
規格品番は、[ VQCD-10136]で、enja(エンヤ)レーベルのSHM-CDです。
本アルバムのプレイヤーは、次の4人。
リー・コニッツ (Lee Konitz): alto saxophone(1927/10/13-2020/4/15)
フローリアン・ウェーバー (Florian Weber) : piano(1977/11/11- ) / Trio Minsarah
ジェフ・デンソン (Jeff Dendon) : bass (1976/12/20-)/ Trio Minsarah
シヴ・ラヴィッツ (Ziv Ravitz) : drums (1976/1/10-) / Trio Minsarah
録音時点で、りー・コニッツは、79歳と11ヶ月、トリオ・ミンサラーのメンバーは、30-31歳です。年齢差が約50歳ということになります。
リー・コニッツは、シカゴ生まれ。父がオーストリア、母がロシア出身の共にユダヤ系移民で、家庭内の言語は、イディッシュ語だったそうです。
11歳でクラシック系クラリネットの教育を受け、テナーそして、アルトサックスに転向しました。1945年18歳でプロのアルト・サックスプレイヤーとして活動を開始します。ピアノのレニー・トリスターノなどとの活動を経て、1948年からマイルス・デイヴィスのグループに参加します。後にアルバム”Birth of the Cool"の録音にも参加しています。
その後、スタン・ケントン・オーケストラや、エルヴィン・ジョーンズとソニー・ダグラスとのトリオ、デーブ・ブルーベック、オーネット・コールマン、チャールス・ミンガス、ビル・エヴァンスらとの共演、またブラッド・メルドー、チャーリー・ヘイデンとのトリオなど、幅広く活躍します。
Wiki的には、ビバップ、クール・ジャズ、そしてアバンギャルド・ジャズなどに分類されるようですが、常に最先端の音楽を切り開いてきたという印象です。
2020年4月15日に、COVID-19による肺炎のため、ニューヨークで亡くなりました。93歳でした。
Trio Minsarahは、前記の3人によるジャズ・トリオで、”ミンサラー”は、ヘブライ語で”プリズム”という意味だそうです。
ドイツのピアニスト、フロリアン・ウェーバーと、アメリカのアーリントン生まれのベーシスト、ジェフ・ベンソン、イスラエル出身のドラマー、シヴ・ラヴィッツ。
この3人は、バークリー音楽大学で出会いました。
トリオ・ミンサラーとしては、フロリアン・ウェーバーの人脈を基に、ドイツで活動を開始しました。
なお、同じくENJAレーベルから、リー・コニッツ・ニュー・カルテットの名前で、ライブ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガードというアルバムがでていますが、これは、リー・コニッツとトリオ・ミンサラーのメンバーによるカルテットです。
こちらは、リー・コニッツが、2009年のモントレー・ジャズ・フェスティバルに彼らと出演後、26年ぶりに2009年にヴィレッジ・ヴァンガードにも出演したということで、当時、話題になりました。規格品番は、前後しますが、[VQCD-10135]です。
特に、このライブ版では、4人がそれぞれ豊かな個性を保ちながらも、和やかな雰囲気の中で、一体感のあるプレーをしているのが伝わってきます。
モントレー・ジャズ・フェスティバルでの彼らの演奏を聴いたある評論家は、”これは、リー・コニッツの理念(idea)をバンド形式で示している”、と語った、とりー・コニッツ自身が引用しています。
これまで、フルタイムの自身のバンドを持ってこなかったリー・コニッツが、インプロヴァイゼーションの長い旅で、トリオ・ミンサラーとのカルテットについにたどり着いた、ということかもしれません。
各曲のピーク値の周波数特性の特徴
各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、モニター用のヘッドフォンのSennheizerのHD-660SとSONYのMDR-M1STを用いました。
" Deep Lee " のピーク値の連続データの周波数特性について
本アルバムのタイトル名でもある4曲目の"Deep Lee" 、この全曲のピーク値の連続データの周波数特性を、下図に示します。
図 1. "Deep Lee" のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
この図では、縦軸横軸を補完しています。縦軸が音圧で、0dB~-80dB、また、横軸が周波数で、20Hz~20kHzとなります。
本周波数特性のデータは、きれいに右下がりのパターンとなっています。
左側の白いカーソルで示したピーク付近は、53.8Hzで、それほど低くはありません。ただしピークの大きな値が、60-100Hz付近にいくつかあり、ドラムスとベースの存在感が大きいことが伺われます。
時間軸的には、本曲は、まずピアノで始まります。師匠のリチャード(リッチー)・バイラークを想起させるフロリアン・ウェーバーのメロディアスなトーンがリリカルに響きます。かすかに唸り声が聴こえます。
続いて、ミンサラーのメンバー3人の演奏になります。特に、重いベースが印象的です。ドラムスも絡み合い、3者が一体となる感じです。
3’45”あたりで、アルトサックスの登場で、世界が変わります。このピアノ+ベース+ドラムスの世界とアルトサックスの登場がスピーカーでどのように再生されるかが興味深いところです。
" Cactus " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、アルバムの6曲目、" Cactus "(サボテン)のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 2. " Cactus " のピーク値の連続データの周波数特性
本曲のプロファイルは、全体としては、右下がりですが、1kHz前後の値が大きいのと、比較的やや離散的な感じがします。
時系列的には、まず、鐘のような音で始まります。出だしは、現代音楽、というか、仏教の世界のようなイメージを連想させます。音数は、極端に少なく、どうやら、アルトサックスも、尺八的な音色で参加しているようです。
しばらくすると、その雰囲気の中で、アルトサックスのみがメロディーラインを紡ぎ出し始めます。
それ以外の楽器は、全て効果音的に用いられます。なるほど、この音の数では、離散的なサンプリング結果となるのがわかります。
ただし、各楽器の音は伸びやかです。この曲の再生には、ダイナミックレンジの高さが要求されます。本曲は、シヴ・ラヴィッツ作曲です。
" W 86TH " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、アルバムの6曲目、" W 86TH " のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 3. " W 86TH " のピーク値の連続データの周波数特性
本曲のプロファイルは、先の" Cactus "のデータを稠密にしたような形状となっています。
最初から、4人が参加します。アルトサックスが全体を主導しつつ、ミンサラーが絡み合うように曲が進みます。この曲の進み方は、前の節で、ご紹介したフレーズ、”これは、リー・コニッツの理念をバンド形式で示している”、をまさしく実現している印象です。
ちなみに、作曲者としては全員がノミネートされています。共作です。
4人の協議の結果が、本曲、ということのようです。
なお、この3曲に共通しますが、どうも50Hz以下の周波数については、意図的にカットされているのではないかと思われます。その結果かもしれませんが、アルバム全体としてそれぞれの音がクリアで押し出しが強い印象です。
興味深いことに、前節でご紹介したライブ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガードでは、ほぼアルバム全体で、40Hz付近まで高い音圧で録音されています。
どうやら、一部の優れたライブ録音版もしくはライブでの音質を重視するミュージシャンのアルバムでは、超低域まで録音データがはいっていることがあるようです。これについては、機会があれば別途ご紹介したいと思います。
Z702-Modena(V6)での試聴
2022年8月に、旧Z701-Modena(V5)を改訂して、Z702-Modena(V6)を開発し、発表しました。
本製品は、前作と同様BHBS(バックロードホーンバスレフ)のショートホーンタイプとなります。
製品名は、音工房Zの新たなネーミングルールにより、701から702に変更しました。
また、これまでのヒストリーを考慮し、(V6)として、Z702-Modena(V6)と命名しました。
正面の写真を左、背面側を右に示します。
比較のため、Z702-Modena(V6);左とZ701-Modena(V5);右とを正面側と背面側それぞれを並べて示します。
正面の写真でわかるかと思いますが、幅が20mm狭くなっています。また、背面のダクトをプラスチックの円形ポートタイプに変更しました。背面のダクトは構造上、第2ダクトという位置づけですが、キットですので、長さの変更が可能です。それぞれのお好みで調整いただければと思います。
4曲目のアルバム・タイトルでもある " Deep Lee "を例に、新旧2機種で聴いた比較も交えて試聴の印象を述べたいと思います。
始まりのややエコー感のあるリリカルなピアノが静けさも感じさせ、印象的です。続いて約1分後、トリオ・ミンサラーとしてのプレイが始まります。ここで、低域のベースの音で、(V5)と(V6)で、やや差がでます。(V6)の方が、より低域側の響きを伝えてくれるようです。
全体の音の印象はフラットです。共鳴的な響きは感じません。
そして3分45秒、アルトサックスの登場です。音が伸びやかです。どうやら(V6)の方が、スッと突き抜ける感じの再生音に聴こえます。Z702-Modenaは、リー・コニッツのアルトサックスの音を実に活き活きと再生してくれます。押出と勢いを感じます。
Z-1のふくよかなゆったりした感じやZ800のクリアな分解能などとは、また違った、素直な吹き抜けの良さがとても印象的でした。
さらに、Z702-Modena(V6)に、スーパーツイーターキットを追加して試聴してみました。
コンデンサは、1.6μFを用いました。
接続は、下図のように行います。
同じく試聴してみたところ、意外な効果に、少し驚かされました。
スーパーツイータを付加した結果、低域側のスピード感が増し、ベースのキレが歴然と良くなったのです。
このような経験は過去ありますが、ここまではっきりと感じたのが驚きでした。
もちろん、高域側の抜けは一段と良くなり、アルトサックスのシャウト感が増し、音楽が一層活き活きとしてきました。
これは、この組み合わせは、お勧めです。全体のクオリティが一段増します。
なお、もちろんZ501でも同様の効果が得られます。
Z702-Modena(V6)は、改良により、ジャズ系の再生にはとてもいいようです。
アルトサックスとベースやドラムスとの対比がとてもバランスよく響きます。
比較的素直な音質は、ジャンルをあまり問わないといえるかもしれません。
特にアルトサックスの音域を考慮すると、他のサックス系やボーカルの再生にもいいのではないかと予想されます。
はたして、テナー・サックスや、女性ボーカルではどうか、他の音源で確認していきたいと思います。
結果は、別ブログでご紹介する予定です。
CD情報
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