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zamazu / Roberto Fonseca
規格品番:[ VQCD-10132]
本アルバムの概要 について
今回ご紹介するのは、ロベルト・フォンセカ(Roberto Fonseca)の " zamazu " です。
enja(エンヤ)レーベルから2007年にリリースされました。規格品番は、[ VQCD-10132]です。
ロベルト・フォンセカは、1975年3月29日にキューバのハバナで生まれ、育ちました。父はドラマーのロベルト・フォンセカ・シニア、母は、プロの歌手のメルセデス・コルテス・アルファロです。ちなみに、本アルバムの冒頭、1曲目は、女性ボーカルのアカペラです。お母さんが歌ってます。
ロベルト・フォンセカは、4歳でドラムを始めます。8歳でピアノに転向します。キューバの高等芸術院(Instituto Superior de Arte ; ISA)で作曲の修士号を取得後、学位を得ています。現在は、ピアニスト、作曲家、アレンジャー、音楽監督などとして活躍しています。
彼の音楽歴では、まず、キューバのブエナ・ビスタ・ソーシャル・クラブでの活動が大きいようです。ここでの400回以上のコンサート(海外も)を含む活動の中で、キューバの一流プレイヤーとの共演はもとより、ハービー・ハンコック、マイケル・ブレッカー、ウェイン・ショーターなどの海外プレーヤーとの共演等も経て、音楽の幅が大きくなっていったようです。
2001年に、来日してアルバム " No Limit : Afro CubanJazz "を録音します。その後、日本とも縁があり、最近も何度かJazz Tokyoなどで演奏しています。Afro Cuban Jazz
本アルバム、 " zamazu " は、彼の4枚目のアルバムですが、enjaレーベルからのリリースは初めてで、これが国際的なデビュー作ともいえます。
本アルバムは、これまでの彼の音楽活動のベースとなっているアフロキューバン音楽、ジャズ、クラシック音楽、伝統的なキューバ音楽などを統合した結果、とも言えます。
ちなみに、本アルバムの4曲目、" Llego Cachaito " は、ウィル・スミス主演の映画ハンコックで使われています。
また、アルバム名の由来ですが、彼の姪が、当時、”ザマザマズ”と意味不明の言葉を言っていて、それが気に入ったから、とのことです。13曲目に、"zamazamazu"という曲も入っていて、曲の最初と最後に、ロベルト・フォンセカが、"ザマザマズ"、"ザマザマズ"、とつぶやいています。
本アルバムには、ブラジルのサンパウロ出身、バイーア在住のAlê Siquieraが共同プロデューサーとしてクレジットされています。ブラジルのスタジオでも録音が行われ、ブラジル人ミュージシャンのカルリーニョス・ブラウン(; gaita de sierra)、オーランド・"カチャイト"・ロペス(; double base)などが、数曲に参加しています。
また、キューバの歌姫オマラ・ポルトゥオンド、フラメンコギタリストのビセンテ・アミーゴなどなどに加え、彼のレギュラーメンバーであるハビエル・ザルバ(; flute)、オマール・ゴンサレス(; double base)、ラムセス・ロドリゲス(; drums)などが本アルバムの主要プレイヤーとなっています。
もちろん、ピアノは、すべてロベルト・フォンセカ。また、14曲中11曲の作曲者(もしくは共同作曲者)として彼がクレジットされています。本アルバムの各曲は次の通りです。
01. Misa Popular
02. Tierra En Mano
03. Clandestino
04. Llegó Cachaíto
05. Así Baila Mi Madre
06. Congo Árabe
07. Zamazu
08. Suspiro
09. Ishmael
10. El Niejo
11. Mil Congojas
12. Triste Alegría
13. Zamazamazu
14. Dime Que No
なお、ロベルト・フォンセカは、agnes bのファッションショーでライブ演奏を行ったほか、自らagnes bの作品を着てプレイしています。
そのような関係で、オリジナルのライナーノートには、agnes bのサインがあります。
各曲のピーク値の周波数特性の特徴
各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、モニター用のヘッドフォンのSennheizerのHD-660SとSONYのMDR-M1STを用いました。
" Misa Popular " のピーク値の連続データの周波数特性について
本アルバム1曲目の" Misa Popular " 、この全曲のピーク値の連続データの周波数特性を、下図に示します。
図 1. " Misa Popular " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
この図では、縦軸横軸を補完しています。縦軸が音圧で、0dB~-80dB、また、横軸が周波数で、20Hz~20kHzとなります。
本曲は、31秒と短く、中南米の民族音楽を連想させる曲調の女声のアカペラです。
一番左側、低い側のピークは約176Hz、F3です。右側のやや大きなピークが235Hz、A3#その左肩に、221Hz、A3の小さなピークがあります。逆に高い方では、約1044Hz、C6にあるピークまでがやや高く、このあたりまでが、女声の主音で、それ以上のピークは、エコー等、また音声自体の倍音成分ではないかと推察されます。
F3からC6までとなると、約2.5オクターブの音域となります。
一聴して、さり気なく歌っているように聴こえるのですが、なかなか広い音域のようです。
" Tierra En Mano " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、アルバム2曲目、" Tierra En Mano "のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 2. " Tierra En Mano " のピーク値の連続データの周波数特性
1曲目のアカペラに続く2曲目、いきなり音域が、低域側、高域側共に広がって展開します。低域側の41Hzと43Hzのピークはベース由来と思われます。
上図は、全曲の積算値ですが、約20秒で、ほぼこの形が形成されます。この間、ほぼ同じフレーズが2回くりかえされますので、約10秒で、このピーク値の世界が広がるわけです。
本曲のテーマと思われるフレーズが、ベース、ピアノ、等でユニゾン的に演奏され、旋律が刻まれます。
1曲目とは、様変わりで、大分、印象的です。特に、低域側の再生状況と、高域側の音の広がりが、どのようにスピーカーで表現されるかが興味深いところです。
Pailas、金属製の胴にプラスチックの膜を張った2連の太鼓(ティンバレス)の胴を叩く音、のリズム感が中南米的な雰囲気を少し醸し出していますが、Jazz的な曲調です。
ロベルト・フォンセカの音楽的ルーツその2という感じなのかもしれません。
もちろん、その1は1曲目です。母親が歌っていますので。
" Clandestino " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、アルバム3曲目、" Clandestino "のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 3. " Clandestino " のピーク値の連続データの周波数特性
40Hz台の低域の太いピアノがテーマをまず2回提示します。次にいかにもラテン的な曲調のサウンドが、そのテーマをお題として繰り広げられます。
上記の2曲目とは、大分印象が違う曲なのですが、ピーク値の周波数特性にすると、とても良く似た傾向を示しています。
30-40Hz台の一見なだらかなピークの連続は、ピアノとベースとで形成されているようです。
これらをちゃんと再生するには、低域側が少なくも34Hzぐらいまで再生できる能力が必要ということになります。通常のスピーカーシステムでは、かなり難しく、どの程度この雰囲気が再生できるか、といったところがチェックポイントかと思われます。
Z702-Modena(V6)での試聴
Z702-Modena(V6)について
2022年8月に、旧Z701-Modena(V5)を改訂して、Z702-Modena(V6)を開発し、発表しました。
本製品は、前作と同様BHBS(バックロードホーンバスレフ)のショートホーンタイプとなります。
製品名は、音工房Zの新たなネーミングルールにより、701から702に変更しました。
また、これまでのヒストリーを考慮し、(V6)として、Z702-Modena(V6)と命名しました。
正面の写真を左、背面側を右に示します。
比較のため、Z702-Modena(V6);左とZ701-Modena(V5);右とを正面側と背面側それぞれを並べて示します。
正面の写真でおわかりのように、幅が20mm狭く、スリムになっています。
また、背面のダクトをプラスチックの円形ポートタイプに変更しました。
第2ダクトのチューニングについて
背面のダクトは本BHBSの構造上、第2ダクトという位置づけです。完成版の場合、塗装との兼ね合いがあるので、ダクトは通常固定しています。
本製品はキットですので、このダクトの長さの変更が可能です。それぞれのお好みで、ダクト長さを調整頂けます。
この場合の共振周波数は、ダクトの断面積をダクト長さで割った値の平方根に比例すると予想されます。従って、ダクトが長いと共振周波数の値は、小さくなる方向となります。
つまり、ダクトが長い方が、より低い音が出せるようになるわけですが、ユニットの駆動能力などとの兼ね合いもありますので、限界もあります。また、再生音のバランスが変わってきます。
無理に低い方にチューニングすると、共振周波数より高い中低域領域の勢いが減ったりもします。
作業的には、複数のダクトをペアで別途入手頂き、長さの違うダクトの音を比較試聴して決めていくことになります。
曲によっても、これと思うバランスが異なったりしますので、なかなか悩ましい場合が多いのですが、正解はありません。各々のオリジナルの設定と比較を、楽しんでやっていただければと思います。
試聴の結果
キット付属の標準ダクトでの試聴を行いました。また、(V5)との比較試聴も行ってみました。
2曲目、" Tierra En Mano "を試聴しました。
(V6)と(V5)では、わずかな違いですが、中低域のバランスが少し違います。再生音域の中心位置が異なるといいますか、(V6)の方が、中低域がバランスよく散らばり、低域方向にやや伸びています。その結果ピアノの音の各音がより分離感がよく聴こえます。
その影響もあるのでしょうか、中域から高域にかけても、(V6)の方がよりスッキリと伸びている印象です。
逆に言えば、(V5)は、中低域のある部分にパワー感を感じる領域があります。その部分が塊のような感じに聴こえることがあります。
3曲目の" Clandestino "でも、印象はほぼ同様で、こちらのピアノとベースの低域側の音が、(V6)の方がやや分離感がよく、より低域側の音が聴こえてきました。
また、打楽器のカンカンカンという音が、より分離して聴こえました。
いずれの曲においても、Z702-Modena(V6)は、迫力ある中低音と伸びやかな高音で、バランスよく、楽しくキューバのロベルト・フォンセカの音楽を再生してくれました。
おそらくブラインドで試聴したら、8cmのユニットの音とは信じられないのではないかと感じました。
特に、ナチュラルな低域の伸びと存在感は、とても印象的でした。
スーパーツィータキットとの組み合わせ
以前ご紹介した " Deep Lee " と同様に、(V6)にスーパーツィーターキットを付加して、試聴してみました。
今回は、比較として、1.0μFと1.6μFの2ケースをためしてみました。
接続は、こんな感じです。
まず、1.6μFで接続した結果をご報告します。
やや、モヤッとしていた低域が、キリッとスッキリとします。低音のコシが出るといいますか、張りを感じる音で、例えばベースの音の存在感が増します。
当然、高域もくっきりとします。中南米の打楽器の音には、特に効果的です。
1.0μFで接続した場合は、低域側のスピード感と存在感の増すのは感じます。高域側の効果は、1.6μFよりかなり控えめな感じです。逆に言えば、ナチュラルとも言えるかもしれません。
これの感じ方は、聴力も含め、個人差が大きいかと思います。好みもありますが、バランスを考えると、一般的には組み合わせとして、1.2μF程度がいいかもしれません。
なお、Z501でも同様の効果が得られます。
Z501
CD情報
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