FOSTEX P800K 主観辛口レビュー


P800Kの音質評価(素性)

一聴して特徴のあるスピーカーではなく「フラットで扱いやすい」といった印象のスピーカーです。「普通」「無難」と言えなくもないが、悪い意味ではなくこの価格でこれだけのクオリティーであればコストパフォーマンス十分で、初心者向けに適したユニットといえます。

FE系のように高域がうるさい訳でもなく、バックロードやダブルバスレフのように強引に低域を引き出す必要もない、非常に扱いやすいスピーカーユニットです。低能率タイプなのでアンプで低域を持ち上げる感じで、ディティールが若干甘く、スピード感も早いほうではありません。

中高域は若干濁りがありますが、紙臭いという音ではなくて、音が解像出来ていない感じがします。高域は明るい音がでていて、これが重い低域とバランスをとっていて聞いて好印象を与える音を作っています。

高域がうるさいという印象がなく、初めて作るスピーカーでも、たぶんどのようなエンクロージャーでも良く鳴ってくれます。低音は出るし、音は落ち着いているので万人受けする音質に仕上がっています。どちらかというとピュアオーディオのスピーカーというよりかは、PA用のスピーカーの出音に近いです。


音工房Zで測定したユニット単体の周波数特性はページの最下部にありますが、見ていただくと低域がしっかり出ている上に、10KHz以上の超高域の味付けはマークオーディオの小口径ユニットに近いものがあります。特性はFEシリーズなどとも比較してみてください。

P800Kに合うエンクロージャーの考察

P800K+3.65L バスレフ箱 評価

小さな3.65Lのバスレフ箱でも十分な低域が出ます。密度の濃い低域がでて、勢いも良いです。定位は良い方ではなく、音像がぼやける感じです。このくらいの箱にいれる時は吸音材でしっかりユニット裏側からでる中高域を吸収してやらないと、さらに音がぼやけます。

能率は低めで他のFE系などにくらべて少しボリュームを上げなくてはなりません。バランス的には低域よりです。

P800Kのネジ穴はFE83系の穴位置とは異なっているので、注意が必要です。
試聴にはサブバフルを作り、ユニットを装着しました。

P800K+Z601(v2) ダブルバスレフ箱 評価

箱の容積を増したダブルバスレフ箱に入れました。中高域は上の小さな箱よりも、のびやかになりました。低域も強くでる感じでバランスが良いとはいえませんが、ここであげた3種類のものの中では一番良好な音質です。

このユニットには音道がある形式のものよりも、シンプルなバスレフタイプである程度容積が大きな箱があうのかもしれません。FE83系に比べればローエンドを狙う設計を考えると面白いかもしれません。

 

P800K+Z701(v3) BHBS箱 評価

さらに堆積を増やし、BHBS箱にいれたところ、中高域は元気がなくなり、低域がところどころの帯域で強まるといった再生になりました。箱の容積が大きい事もあるのですが、音道が長くなるとパワーダウンしてしまう感じで低域のロードを制動できていない印象がありました。

 

 

ソースごとの相性

・クラシック  
それなりに鳴らしますが、やはりFE83系などと比べると見劣りしてしまいます。
細かいディティールの再現と中高域からのヌケがないので、音楽が断片的になりすぎるきらいがあります。


・ジャズ

力強くなってボリュームを上げれば元気が良いのですが、こちらも細かい再現は苦手のようです。ウッドベースは力があり迫力がありますが、楽器本来の音色が薄く感じられます。トランペットなどもパワーがあり、ムードは良いのですが、再現性は甘めです。

ディティールがあまり気にならない音源ならば、力強い再生力であまり不満もなく聞くことができるでしょう。

外観のレビュー

フレーム

黒い焼きつけ塗装の鉄板プレス製フレームです。鉄板の厚さは0.8mmで開口が大きいです。
ダンパーの後ろにも開口があるのが特徴的なフレームです。

もう一つ特徴的なのは、フレームの縁が前面に向かって曲げ加工(リブ加工)されていて強度を高めているのですが、裏面とエンクロージャー開口まわりの接触が平らになる分、密着度が高く空気漏れが防げます。


注意しなくてはならないのが、他のFOSTEX8cmスピーカー FE83EnやFF85WKなどとはネジ穴のスパンが違う事です。試聴ではP800K用にサブバフルを製作しました。

見てくれは悪いかもしれませんが、空気漏れはスピーカー製作をしていると最も起こりがちなミスなので、特に初めて自作する方に立った細かい配慮といえます。

 

振動板・エッジ

振動板はパルプ系の素材で、センターキャップも同素材で出来ている。
センターキャップはボイスコイルボビンと直結させたメカニカル2wayになっており、高域再生帯域を伸ばしています。

振動板を含めた等価質量(m0)は2.2gとなっており、他のFOSTEXの8cmユニットに比べて重めです。

振動板をかるく撫でてみるとFE83系が軽く高めな音に対して、P800Kは硬い音と、鈍目の重い音が同居しているので、紙自体が厚みがあることが分かります。

エッジは高損失発泡ゴムを使用しており、幅広で弾力のあるものです。振動板にはFF85WKなどで採用されている「ハトメレス」の技術が使われています。

 

ダンパー

P800Kはポケットネックダンパーにはなっておらず、ボイスコイルのボビンにコーン紙とダンパーがそれぞれ別に接着されています。接着箇所を分ける事で生産性を上げている事が伺えます。


FF85WKはコーン紙、ボビン、ダンパーの3つを同じ箇所で接着する技術が使われている(3点接着方式)

 

FF85WKと比較すると、P800Kのダンパーと中継線 ダンパーの上にボビンが顔をのぞかせて中継線がハンダ付けされているのがわかる

磁気回路

マグネットの材質は、おそらくフェライトだと思われますが、重量は74gで、他のFEやFF系の半分か、それ以下です。

やや重めの振動板と相まって、スピーカーユニットの音色の性格がはっきり現れていると感じます。

磁気回路裏のモデル名などの表記はシールではなく印刷となっており、こちらも大量生産向きになっています。しっかりと印字されており、爪でこすっても消える気配がありませんでした。

P800K 客観的情報

歴史

フォステクスが自作スピーカーキット「かんすぴ」用に10cm口径の「P1000K」と共に販売した。
低価格なエンクロージャーも同時に発売され、スピーカークラフトの面白さを体験できる内容になっている。

 

価格・概要

標準価格   1,600円 (税別)
発売年 2012年10月下旬~
スピーカー形式 8cm口径フルレンジユニット

価格は相次ぐ価格改定により値上げされている。
2012年10月発売時は1,300円、2015年5月に1,500円、2018年10月に1,600円となり現在に至る。(2019年9月現在)

 

P800K スペック詳細

インピーダンス 8Ω
最低共振周波数 115Hz
再生周波数帯域   f0~18kHz
出力音圧レベル 84.5dB (1m/1W)
入力  24W (Mus.)
マグネット重量 74g
総重量 261g
バッフル開口寸法 φ73

メーカー標準箱の概要 バスレフ 2L  fb(ポートの共振周波数) 92Hz

Fs(F0):  115Hz
mms(m0): 2.2 g
Cms: 0.873 m/N
Qms: 3.79
Qes:  1.334
Qts(Q0): 0.99
Vas: 1,043L
バッフル開口 φ73

 

音工房Z無響室でのユニットF特・インピーダンス測定

弊社内無響室
測定機器 Etani ASA10MKII

P800KをJIS標準箱(600L密閉箱)に入れて計測

周波数特性    


マイク~ユニット間10cm /1W

 


マイク~ユニット間1m /1w

インピーダンス特性

Youtube視聴動画 

・・・音工房Z内のリスニングルームで録音したものです。ヘッドホン等で
ご視聴ください。

 

リンク集

自作用スピーカーユニット 辛口レビュー  一覧

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