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Inside You / Richard Tee
規格品番:[ SICP 10101]
本アルバムの概要 について
今回ご紹介するのは、SACDのリマスター復活版で、CDとのハイブリッド版です。
リチャード・ティー(Richard Tee)自身と伊藤潔とのプロデュースによるソロアルバム、” Inside You "。2008年5月21日発売ですが、オリジナルは1989年でした。
リチャード・ティーは、1943年11月24日に生まれ、1993年7月21日に前立腺癌で亡くなっています。49歳でした。
彼は、スタジオミュージシャンのフュージョンバンドであるスタッフ(Stuff)の創設メンバーの一人として知られていますが、様々なアーティストのキーボード担当として参加しています。
ポール・サイモン、アート・ガーファンクル、ロバータ・フラック、アレサ・フランクリン、ジョージ・ハリスン、クインシー・ジョーンズ、ビリー・ジョエル、グローバー・ワシントンJr.、エリック・クラプトン、ジョージ・ベンソン、ピーター・ガブリエル、ジョー・コッカー、マライア・キャリー、、、、、などなど。
本アルバムには、様々なアーティストが、参加していますが、特にスティーブ・ガッド(ds;1945生)とマーカス・ミラー(b;1959生)が、各々1曲を除き、それ以外の全てにクレジットされています。
Stuffのアルバムや、1stアルバムのStrokin'などでの、ダダダダダと強烈に連打される10度の早いパッセージが特徴的なリチャード・ティーの演奏は、ある意味リズム・セクション的な役割を担い、スティーブ・ガットとの掛け合いがとても印象的ですが、今回はそれに加え、マーカス・ミラー(Marcus Miller)の太いベースの音が、アルバム全体のトーンを作り出しています。
それもあって、Strokin' とは異なり、比較的低域が豊かな音の傾向と、ゆったりとしたメロディーラインと渋いボーカルなどが、全体に、落ち着いた印象を与えるアルバムとなっています。
なお、このマーカス・ミラーのベースの低域とスティーブ・ガットのバスドラはかなり下まで伸びており、これを分離よく再現できることが再生システムには必要です。
各曲のピーク値の周波数特性の特徴
各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、モニター用のヘッドフォンのSennheizerのHD-660SとSONYのMDR-M1STを用いました。
"Lullabye" のピーク値の連続データの周波数特性について
本アルバム7曲めの"Lullabye" 、この曲のプレイヤーは、先に挙げた3人のみです。楽器構成は、Rhodes、アコピ、Stringsと、Base、Drumsです。この全曲のピーク値の連続データの周波数特性を、下図に示します。
図 1. "Lullabye" のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
この図では、縦軸横軸を補完しています。縦軸が音圧で、0dB~-80dB、また、横軸が周波数で、20Hz~20kHzとなります。
全体に、最大のピーク値で-20dBをやや超える程度となっていますが、低域側の音圧が高いのがわかります。
白いカーソルで示した低域側のピークが、約37.7Hz、その下にも、33Hz付近の肩の部分や27.6Hz付近にも-40dBを超える小さなピークなど、ベースまたはバスドラ由来のピークが低域側に高い音圧で入っています。
" Louisiana Sundy Afternoon " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、この3人に加え、レニー・ピケット(Lenny Pickett)のアルトサックス、ジョン・トロペイ(John Tropea)のギター、パティ・オースチン(Patti Austin)などのバックコーラスが入った" Louisiana Sunday Afternoon " のピーク値の周波数特性をみてみます。
図 2. " Louisiana Sundy Afternoon " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
先程の曲と、曲の雰囲気はだいぶ異なり、楽器も増え、また、R.Teeもハモンド・オルガンを弾いたりとか違っているのですが、ピーク値の全体の形状は、かなり似ています。このアルバムの音作りの傾向が見て取れます。
白いカーソルで示した低域側のピークは約37Hzです。D1の音程に相当し、ベースによるものです。
また、低域側は、ベースとバスドラが見事にシンクロして各ピークを形成しています。
この曲でも、約35Hzから50Hz 程度の再生能力が必須であることがわかります。
横軸方向、周波数特性の高い方は、本曲は先程よりもよく伸びています。7kHzぐらいまでの突出したピークは、主にハモンド・オルガンによるもので、それ以上の周波数は、ハイハットなどによります。また、音楽的には、ハモンド・オルガンとアルト・サックスとの絡みがいい感じを出しています。
" Strokin' " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、先程、音の傾向が違うと述べた1stアルバムの Strokin' から、3曲目の" Strokin' "のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 3. " Strokin' " のピーク値の連続データの周波数特性
本曲は、このアルバムでもドラムと広い音域のピアノ、それとベースの音圧が比較的高い方ですが、これまで示したInside Youの2曲とは異なり、低域の60Hz以下の音圧が低いことがわかります。全体のピークは、70-90Hz ぐらいの範囲でしょうか。また、10kHz以上がやや持ち上がっているのがわかります。
この領域は、音程やその高調波というよりも、波形の立ち上がりと立ち下がりに関係する成分と思われます。
どちらかというと、音のキレの良さを狙った音作りの感じがします。
Z1000-FE108SSHP+スーパートゥイーターZ501での試聴
フォステクスの限定ユニットを用いたZ1000-FE108SSHPにスーパーツィータのZ501(ウォールナットエディション)を組合せてみました。
ネットワーク用のコンデンサは、1.6μFを用いました。Z501の接続は今回は正相に接続しました。
試聴すると、30Hz台の低域をきちんと再生してくれ、キレのよいベースとバスドラがゆったりとした中でもカチッと響きます。ヘッドホンで聴いていたよりも、中高音の特定の音圧が高く、思ったよりもシャープな印象です。
少々、驚きでもあったのは、スーパーツイータZ501の有無による音の違いです。
スーパーツイータ無しの場合は、曲によってはやや刺さるような印象を受けることがありましたが、Z501をつけると、なんといいますか、やや滑らかな感じとなり、キレのよいスピード感を感じさせる高域という感じです。
特に4曲目の ” Precious Thing "などでは、それが顕著でした。
本スピーカーには、スーパーツイーターとの組み合わせがとても効果的なようです。
CD情報
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