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In The Wee Small Hours (Of the Morning) / Jacintha
曲の概要
Jacinthaのアルバム Here's To Ben からの一曲。7曲目に入っています。ちなみに同アルバムでは、9曲目のDanny Boy の方が有名かもしれません。オーディオファンには有名すぎる1枚です。
この曲は、最初にヴォーカルのソロで始まります。次にベース、ピアノ、スネアが加わっていき、リリカルなサックスのメロディラインが続きます。
それぞれのパートの効果や定位、音質を比較することができます。また、全体のエコー、ホールトーンの加減なども、評価対象かもしれません。
本曲のピーク値の周波数特性の特徴
本曲の全曲の周波数特性を下図に示します。
図 In The Wee Small Hours (Of the Morning)の全曲の周波数特性
グラフの縦軸が音圧、横軸が周波数で、20kHzまで表示しています。
曲によってもやや異なりますが、音圧の値が-80dB程度で、聴感上は、ほぼ無音状態
です。測定値は、-120dBまで、取れていますが、グラフを見やすくするために、ここでは、-80dB以上を示しています。
本曲を構成している楽器はシンプルですが、CDの録音領域の端から端まで、広い音域で録音されているのがわかります。特に、40-10kHzの領域の再生能力が必須です。また、とりわけ、50-100Hzの低域でかなり高い音圧が平均して入っているので、この領域の再生能力が低いと曲の雰囲気が出しきれない可能性があります。
曲の流れは、出だしのヴォーカルが、まず約200-800Hzの領域の基音と、それより上の倍音領域のピークを刻みます。7kHz付近の比較的高いピーク領域と10kHz付近からなだらかに落ちつつもしっかりと録音されている倍音領域もヴォーカルに起因するものです。
また、このヴォーカル録音には豊かなエコーが入っています。これが、この比較的高い中高音域での音圧に関係していると思われます。
続くベースが50Hz-200Hzを奏でます。
約50Hz付近のかなり低い音と、100kHz付近の音とが同じ音圧レベルで多用されています。
特に50Hz以下も含むこのベースの音をきちんと再現するにはスピーカーの基本的な低音再生能力が必要です。
さらにサックスは、音域が約200-3kHz付近と、ヴォーカルと重なります。
また、その倍音は、基音と同じような音圧レベルの多数のピーク列が同時に出ており、豊かでボリュームのある倍音構成となっています。倍音の周波数の高い成分が基音レベルの高い音圧で入っているということは、波形の立ち上がりがパルシブであることを示しているということと考えられます。
いわゆる鮮度のいい音といえるでしょう。
これらに、ピアノとスネアとが、重なっていきます。なかでも中高域でのヴォーカルのエコーと、サックスに艶やかさを加える各倍音域の再現性は、それぞれのスピーカーの中高域及び超高域の再生能力で異なってくるでしょう。
音工房Zスピーカーでの比較試聴
Z601-Modena (V2)での試聴
Z601は、音工房Zのオリジナルの8cmフルレンジユニットであるZ-modena mk2を用いた
スピーカーで、バックロードホーンの要素を設計に取り入れたダブルバスレフタイプです。
ヴォーカルが、少し、軽いタッチの音に聞こえます。
ベースは、それなりに、案外しっかり鳴っている感じがしますが、サックスは少しハイ上がりな印象でした。
Z701-Modena (V5)での試聴
Z601と同じく音工房Zのオリジナル8cm のフルレンジユニットのZ-modena mk2を用いた
スピーカーですが、箱は、BHBS(バックロードホーンバスレフ)という形式です。
これにより、8センチ1発とは思えないローエンド再生が可能です。
サイズは、Z601よりも高さと奥行きがあり、全体の体積が、約2.17倍となります。
ヴォーカルで、エコー音が大きく聞こえます。過剰なぐらいに、残響音が鳴っている感じです。
高域の抜けるようなホール感というよりは、中域のエコーという感じです。ベースは、少しボワンとした鳴り方。こちらも中音域がバランスとして大きく聴こえているようです。
また、サックスは、少しハイ上がりに聞こえます。
これはZ601と同じ傾向で、同じユニットの音の特徴と思われます。
Z-1-Livorno (S)での試聴
Z-1は、音工房Zオリジナルユニットと、最適化されたネットワーク回路から成る2ウェイ
のバスレフスピーカーです。
バスレフポートは、テーパー状で、後ろ側に配置されています。
各専用ユニットとシンプルなネットワーク構成をバランス良くチューニングすることで、
コストパフォーマンスと高級機に匹敵するクオリティを両立させることができました。
フルオーケストラ等の再生に強みを発揮する朗々とした中低音域が特徴です。
曲は、まず、深みのある豊かな感じのヴォーカルで始まります。
太いベースに続き、厚みのあるサックスが存在感を感じさせます。
Z701に比べ、全体に残響音は聞こえにくい感じがしますが、その分、それぞれの音に、
没入できるように思いました。
Z-1は、JAZZヴォーカルなどの、このようなジャンルを、音楽性の高いレベルで表現してくれるシステム、と感じました。
Z800-FW168HRでの試聴
Z800は、音工房Zの最高峰のスピーカーです。
2ウェイのバスレフタイプで、形式的には、Z-1と同じです。
ツィーター、ウーファー共に、フォステクスの最高のものを使っています。それぞれ、市販の300万クラスのスピーカーに普通に採用されているユニットです。
出だしは、爽やかな、しかし声量の大きさを予感させる余裕のあるヴォーカルです。
ホール感も感じられます。
各パートの分解能の高さとともに、特に、サックスで、ハリのあるシャウト感が印象的
でした。鮮度がいい音、といいますか、音が伸びて行く感じです。
ベースの低音も一番良く再現されていました。
Z-1+スーパートゥイーターZ501での視聴
Z1-LivornoにスーパーツィーターZ501を組合わて試聴しました。
ネットワーク用のコンデンサは、試聴の結果、標準の2.0μFから、0.82μFに変更しました。
試聴すると、Z-1ノーマルの、しっかりとした中低音が印象的な、その音質の傾向は残しつつ、全体にスッキリとナチュラルになり、音の抜けがよくなったように聴こえました。
本曲に含まれる10kHz以上の豊かな倍音領域の再現性が、より良くなったため、波形の立ち上がり、立ち下がり形状が良くなり、キレが良くなってきているのだと思われます。
逆に、改めてノーマルを聞き直すと、中音域で、少し色々な音が濁って混ざってしまっているように感じました。
これは、それぞれの波形の超高域の倍音成分が再生しきれず、波形がややなまってしまっていることによるとも考えられます。スーパーツイータのZ501は、その弱点をしっかりと補ってくれるようです。
まとめ
この曲の再生の場合、50-100Hzでの高い音圧領域の再生能力の有無が大きな意味を持ちそうです。いわゆる低域になります。
50Hzからはストンと落ちてはいますが、40Hzにおいても、約-20dBですので、充分音圧は高く、低域から超低域の再生能力が本曲の再生には必要といえるでしょう。
そのような観点からも予想されますが、やはり、Z-1やZ800のような超低域に近い低音再生能力に優れたスピーカーシステムが、本曲の再生には、いいようです。
さらに、Z-1の場合は、スーパーツイータの付加による効果が大きく、本曲では、超高域の再生能力もまた大事なことがわかります。
音質が、全体にウォームな感じのZ-1(+Z501)と、最も低い低音を再生する一方、クリアで、鮮度のよい音を聞かせてくれるZ800とで、どちらがいいかというのは、好みの問題といえるかと思います。
CD情報
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