目次
Brahms String Sextets / Belcea Qualtet, Tebea Zimmermann, Jean-Guihen Queyras
規格品番:[ ALPHA-792]
本アルバムの概要 について
今回ご紹介するのは、ベルチャ・カルテット(Belcea Qualtet)+2名による、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番、第2番 です。規格品番は[ ALPHA-792]で、Alpha Clasicsからリリースされています。
ベルチャ・カルテットは、2022年10月に、来日予定です。水戸と東京で、コンサートが予定されています。
本アルバムは、2022年に発売された彼らの最新アルバムとなります。録音は、2021年3月、彼らの友人でもある演奏家2名を加えた6重奏曲です。
収録されている作品は、ブラームスの 弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 Op. 18(第1楽章~第4楽章)と 弦楽六重奏曲 第2番 ト長調 Op. 36(第1楽章~第4楽章)です。
ベルチャ・カルテットは、オリジナルの創立メンバーがロンドンの王立音楽大学在学中に、結成されました。
オリジナル・メンバーは、ルーマニア出身のコリーナ・ベルチャ=フィッシャー(Collina Belcea);第1ヴァイオリン、ローラ・サミュエル(Laura Samuel); 第2ヴァイオリン/イギリス 、クシシュトフ・チョルツェルスキー(Krzysztof Chorzelski);ヴィオラ/ポーランド、アラスデア・テイト(Alasdair Tait);チェロ/イギリスでした。
現在のメンバーは、2006年からアントワーヌ・レデルラン(Antoine Lederlin); チェロ、また、2011年からアクセル・シャッハー(Axel Schacher);第2ヴァイオリン/スイス、となっています。
ロンドンが本拠地のカルテットですが、イギリス人のいない構成となっています。
本アルバムでは、タベア・ツィンマーマン(Tabea Zimmermann);ヴィオラ/ドイツとジャン=ギアン・ケラス(Jean-Guihen Queyras);チェロ/カナダが加わり、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロがそれぞれ2つという構成になっています。
2人共、ソリストとして素晴らしい経歴をもっていますが、タベア・ツィンマーマンは、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学教授、また、ジャン=ギアン・ケラスは、ドイツ・フライブルク音楽大学教授でもあります。
ちなみに、本アルバムの弦楽六重奏曲 第1番では、第1ヴィオラがタベア・ツィンマーマン、弦楽六重奏曲 第2番では、第1チェロをジャン=ギアン・ケラスが各々担当しています。
この6人は、2021年3月にコロナ禍の中、ヨーロッパ・ツアーを敢行しました。ルクセンブルクやハンブルクなどで大きな成功を収め、この録音に臨んだとのことです。録音はウィーンで行われました。
ハーゲン・カルテットのように、とても息の合った演奏でも定評のあるベルチャ・カルテットですが、本作品では、さらにヴィオラとチェロの名手2人が加わり、特に中低域のパートの厚みがどのように聴こえるか、オーディオ的にも、音楽的にも、とても期待のできるアルバムと言えます。
各曲のピーク値の周波数特性の特徴
各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、モニター用のヘッドフォンのSennheizerのHD-660SとSONYのMDR-M1STを用いました。
" 弦楽六重奏曲 第1番第1楽章 " のピーク値の連続データの周波数特性について
本アルバム1曲目の 弦楽六重奏曲 第1番第1楽章 、この全曲のピーク値の連続データの周波数特性を、下図に示します。
図 1. " 弦楽六重奏曲 第1番第1楽章 " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
この図では、縦軸横軸を補完しています。縦軸が音圧で、0dB~-80dB、また、横軸が周波数で、20Hz~20kHzとなります。
80Hz以上の周波数流域で、90Hz付近を最大として、なだらかに音圧が下がっていくような特性となっています。
興味深いのは、70Hz以下の領域です。60Hzで、大きなディップとなっていますが、それ以下では、普通の暗騒音にしてはやや高い音圧が、20Hzの測定限界まで記録されています。このような傾向は、他の楽章でも共通しています。
例えば、本曲で、最も有名なフレーズで始まる第2楽章をみてみます。
" 弦楽六重奏曲 第1番第2楽章 " のピーク値の連続データの周波数特性について
図 2. " 弦楽六重奏曲 第1番第2楽章 " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
本曲の第1楽章と、第2楽章は比較的似たような落ち着いた雰囲気の曲調ということもあり、ピーク値の形状も同じような傾向を示しています。
ここでも60Hz付近が大きなディップとなっていますが、それ以下でピーク値がいくつかあります。
例えば、50Hz付近にまずピークが重なってありますが、これは、チェロの演奏とともに記録されているようです。以下の周波数でのピークも同様です。
20-30Hzの間の少し大きなピークは、25.9Hzで、ほぼG0の音程に相当しますが、これを基音として奏でる楽器はありません。おそらく、楽器のボディ等による低調波由来かと思われます。
チェロの第4弦の開放弦の音程が、C2で65.4Hz付近ですので(A4=440Hzの場合)、これが、チェロの基音の最低音となります。
この図での60Hz以上の最初のピークがそのC2に相当すると思われます。つまり60Hz以下のピークは、何らかの要因による楽器由来の低調波と考えられます。
本アルバムでは、それらの低い音程の領域もちゃんと録音されているということのようです。
それにしても、弦楽六重奏曲で、20Hz付近までの低調波のピークをこれほどしっかりと録音しているのは、あまりないようにも思われます。
もう1曲、本アルバムの最後の楽六重奏曲 第2番第4楽章についても、みてみます。
" 弦楽六重奏曲 第2番第4楽章 " のピーク値の連続データの周波数特性について
図 3. " 弦楽六重奏曲 第2番第4楽章 " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
先程の第1番の2つの楽章に比べ、やや元気なパッセージの多い第2番第4楽章ですが、それが、60Hz以下のピーク値に現れているようです。先程から本アルバムの特徴として示している60Hz以下でのピーク値がこれまでで最も大きな値を平均的に示しています。
特に30Hz以下の27.6Hzにこの付近で最大のピークがあります。これはほぼA0で、88鍵ピアノの最低音に相当しますが、この値は、-40dBをわずかに超える大きな値となっています。
ここまで大きな値だと、この領域を再生できるかどうかが、本演奏の再生忠実度にも関わってきそうです。ただ、通常のシステムでは、再生が難しい領域でもあります。
Z702-Bergamo(+Z502)での試聴
Z702-BergamoとZ502タモ版について
音工房ZのフルレンジフラッグシップモデルZ1000-Bergamoと同じユニットを使ったZ702-Bergamoを使いレビューします。改定しましたZ702-Modena(V6)でも聞いてみましたので合わせてレビューします。
Z702-Bergamo(左) と Z1000-Bergamo(右)の正面
Z702-Bergamo(左) と Z1000-Bergamo(右)の背面
Z702-Bergamoは、完成版のZ1000-Bergamoとエンクロージャーの内部構造と容積は同様ですが、正面からみた外観がやや異なります。
正面のバッフル面の4辺を斜めにカットをいれているのですが、写真でもわかるように完成版の方が角度が浅く、その結果、スピーカー周りのバッフル面積が完成品の方がやや小さくなっています。音に影響を及ぼす部分としてはこのバフルの面積くらいで内部設計は基本完成品とキットは同一となっています。
また、スーパーツィータのZ502のタモ版も改定しました。
Z502タモ版の正面(左)と背面(右)
Z502 ウォールナット版(左)と タモ版(右)
Z502タモ版は、ショートホーン形状のエンクロージャーの材質を従来のウォールナットからタモ材に変更し、さらに内蔵のネットワーク部品のコイルとコンデンサをMundorf製からSolen製に変更した廉価版となっています。
これは、関連部材の価格高騰や入手困難な状況への対策を検討した結果でもあるのですが、コスト低減化を図りました。その結果、この改訂によりZ502の高いクオリティを、お求めやすい価格で提供できるようになりました。
なお、私見ですが、Mundorf製とSolen製のネットワークの相違による音の違いは、わずかですがあるように感じます。
Mundorfの方がやや柔らかい、艶を感じさせる音、Solenの方がどちらかというとシャープなくっきりとした音、という印象です。これは、良し悪しではなく好みの領域で、かつ聴く音楽によっても印象は異なってくると思います。
今回、シングルユニットベースのZ702-Bergamo単体と、これにZ502タモ版を組み合わせた場合を試聴してみました。また、試聴にあたっては、他のスピーカーシステム(Z702-Modena等)とも比較しています。
Z702-Bergamo単体での試聴
試聴の音源としては、主に、前記の弦楽六重奏曲 第2番第4楽章を用いました。
その結果、まず、バランスがとても良く素直な音、というのが第一印象です。
Z-Bergamo は、女声ボーカルをとてもいい雰囲気で再生してくれます。中高音の素性がよく、この弦楽六重奏にもあうのではないかと考えたのですが、その通りでした。
弦楽四重奏や六重奏など、このような音源の主な音域は、基本的には、Z702-Modenaなどでもカバーできる範囲にあります。
実際に、Z702-Modena+スーパーツィータキット(1.2μF)で比較試聴も行いましたが、明るい音調で、分解能が良く、こちらもバランスがとてもいいと感じました。旧機種のZ701-Modenaに比べるとより自然な感じがします。
ただし、やはり、チェロがでてくると違います。Z702-Bergamoの方が低域側が伸びやかで、豊かです。その結果、特に6つの楽器が一斉に鳴ったときのボリューム感があります。そのためでしょうか、曲全体の強弱のダイナミックレンジが広く豊かに聴こえます。
この2機種を比較してしまうと、そのような曲中のボリューム感の強弱の差と、Z702-Bergamo低域側の余裕も感じられるので、Z702-Bergamoの再生音が一段上の印象です。
これにより、逆にゆったりと音楽が聴けるようにも思いました。
Z702-Bergamo+Z502タモ版での試聴
Z702-Bergamo に、スーパーツィーターのZ502タモ版を並列接続して試聴しました。Z502には、ネットワークとアッテネータが内蔵されています。今回は、目盛りを4の位置にしてみました。
まず、驚かされたのは、中高域の定位感、存在感がくっきりとしたことです。例えば、ビオラが、きちんとそこで鳴っていることに改めて気付かされた、というのが第一印象です。
同様に、各ヴァイオリンとチェロもそれぞれが分離して聴こえてきます。
スーパーツィーターを付加したため、高域が煩くなるということではなく、全体の音像が中高域の定位感向上とともに、はっきりとした、という印象です。その結果、全パートが一斉に奏でた時の各楽器の分離感の向上を感じます。
これは、Z502をつけない場合と聴き比べると、かなり違うと思いました。
要は、再生能力が一段向上した、という印象です。一度、この再生音を聴くと後に戻れない、という気がします。
スピーカーシステムの中での(スーパー)ツィータの存在感の大きさというのに改めて気付かされたように思います。
これまで、Z501を付加した場合に、高域の伸びやかさの向上はもとより、低域側のキレの良さを感じるようになる、という経験は、何度かしましたが、今回は、それに加えて中高域の解像度の向上といった大きな変化を感じました。
他の音源の場合は、どうか、もっと比べてみたいとも思いました。
この組み合わせの試聴は、さらに続けたいと考えています。
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