History of the Drum / Peter Erskine

アルバムの概要とPeter Erskineについて

 今回ご紹介するのは、音工房Zの試聴会で、お客様からご推薦頂いたCDとなります。

Peter Erskine(ピーター・アースキン)のアルバム History of the Drum から数曲をご紹介します。

ピーター・アースキンは、1954年に、USAのニュージャージー州ソマーズ・ポイントで生まれました。
4歳でドラム演奏を始め、インディアナ大学でパーカッションを学びます。1972年18歳でスタン・ケントン・オーケストラに加入してプロとなりました。メイナード/ファーガソンのバンドを経て、1978年にウェザー・リポートに加入します。

80年代では、同じウェザー・リポートのメンバーでもあるジャコ・パストリアスのワード・オブ・マウスにも参加し、さらに、ステップス・アヘッドでも活動します。

その後、90年代のスティーリー・ダンのツアーや、2000年代のケイト・ブッシュなどのアルバムへのレコーディング参加やクラシックの交響楽団との共演など、さらに活動の幅を広げていきます。

その間、平行して、南カリフォルニア大学の音楽の教授として教鞭をとっており、1992年には、バークリー音楽大学から名誉博士号を授与されています。教育活動として、サンプリング用ドラム音源CDの作成や、ドラミング教育用著書の出版もしています。

渡辺香津美や、矢野顕子、小曽根真、渡辺貞夫などの日本のプレーヤーのアルバムにも数多く参加しています。

 

本アルバムのピーター・アースキンのノートによりますと、本アルバムの『History of the DRUM』は、もともとイギリスのバーミンガムに本拠を置くコクマダンスシアターカンパニーのバレエ用として作曲されました。(コクマは「これは決して死ぬことはない」という意味のナイジェリアのヨルバ語です)
企画・作曲がピーター・アースキンです。

ジョン・フレッチャー(John C. Fletcher)によって書かれた寓話に基づき、有名な俳優のロスコー・リー・ブラウン(Roscoe Lee Browne)が、ナレーションを行い、ピーター・アースキンが、ドラム、パーカッション、キーボードを担当、ウィル・リー(Will Lee)がエレクトリックベースを担当しています。

…リズムの純粋な喜びを祝う…ドラムの歴史…アースキンはこの興味をそそる音楽旅行でバイーア、コンゴ、西アフリカ、トリニダード、スペインに旅行します…

このストーリーを受けて、トラックリストは、以下のような表題になっています。

  1. Drum Fanfare / Fable  / ドラムファンファーレ/寓話(5:11)
  2. Introduction / はじめに(1:50)
  3. Skins (that beating, spoke like kearts) / スキン(その鼓動、ハートのように話す)(4:17)
  4. Afro Bomba-Bahia / アフロ ボンバ-バイア(4:45)
  5. Come Here and Go / ここに来て行く(3:40)
  6. Drum History / ドラムの歴史(4:27)
  7. Congo / コンゴ(1:43)
  8. West Africa / 西アフリカ(1:37)
  9. Sticks / スティック(2:30)
  10. Calypso / カリプソ(6:32)
  11. Bolero / ボレロ(8:13)
  12. The New World / 新世界(3:11)
  13. Hymn / 賛美歌(5:12)

この一連のストーリーの中で、今回は、3.Skins, 4.Afro Bomba-Bahia, 6.Drum Historyを紹介します。

本アルバムは、プレイヤーがウィル・リー(エレクトリックベース)と、ピーター・アースキン(ドラム、パーカッション、キーボード)の、本来リズムセクション担当の2人、ということで、メロディーラインは少なく、リズム楽器主体なので、どちらかというとオーディオチェック的な聴き方もできるかと思います。

例えば、3曲めの” Skins "は、基本、エレクトリック・ベースとドラムを主とした演奏になります。非整数倍も含む広い倍音成分を持ち、周波数特性の音圧は中低音域に寄っています。強烈なバスドラを始めとする様々なドラムの響きを確認するのにいい曲です。

4曲目の " Afro Bomba-Bahia " は、シンセベースとドラム、パーカッション、シンセサイザーで、主なシンセサイザーが減算合成系、つまり三角波や矩形波、ノコギリ波などの基本波形をフィルタリングするタイプ、と思われ、比較的単純で離散的な倍音列となっています。
再生に要求される周波数帯域は広く、特に下は30Hzまで伸びています。このシンセベースは、ウェザー・リポートのバードランドを想起させますが、遥かに低い音程です。高域も口笛のような比較的単純なシンセの音圧が高く、支配的です。そのためか周波数特性は離散的です。また、比較的高い周波数でも割合高い音圧で録音されています。つまり周波数特性的に広い曲となっています。

Drum Historyは、Skinsよりも、楽器(音源)が増してはいますが、中低域の音圧が高く、高域に向かうほど音圧が低くなる傾向は、Skinsと同じです。また、比較的単調なベースの進行のもとに、曲名が示すように、様々なドラムのプレイが示され、教科書的な雰囲気を少し感じます。

 

全体に録音状態は良く、さすがアースキン教授という印象です。

次に、今述べた内容を具体的にそれぞれの周波数特性のデータで見てみたいと思います。

 

各曲のピーク値の周波数特性の特徴

 各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、ヘッドフォンにより行っています。このモニター用のヘッドフォンには、主にSennheizerのHD-660SとソニーのMDR-M1STを用いました。

 

”Skins" の全曲のピーク値の周波数特性を下図に示します。

まず、離散値測定と連続測定のデータの比較をしてみます。

図1-1は、RMEのDIGI Checkによる測定結果です。グラフの縦軸が音圧(dB)で最大0dBから-50dB、横軸が周波数(対数表記)で、離散値となっており、周波数の低い方から、25,31.5,40,50,63,80,100.125,180、250(Hz)・・・となっており、これらの値が10倍、100倍、1000倍と続き、最大が40kHzとなっています。


図 1-1.  ”Skins" のピーク値の周波数特性(DIGI Checkによる測定値;離散値)

 

次に同じ ”Skins"  のWaveSpectraによる連続データを示します。

図 1-2.  ”Skins" のピーク値の周波数特性(Wave Spectraによる測定値;連続値)

 

この場合は、連続値データが、離散値計測データとほぼ同じ傾向を示しているのが見て取れます。
連続データで見られるように、本データが比較的稠密なことにもよるのかもしれません。

本曲の再生には、低域では、約70Hz以上の再生能力があれば、ほぼ再生できるようです。
高域については、減衰はしていますが、16kHz程度までの再生能力が必要なようです。

 

次に、" Afro Bomba-Bahia " のデータを同様に比較してみます。


図 2-1.  " Afro Bomba-Bahia " の全曲のピーク値の周波数特性(DIGI Checkによる測定値;離散値)

 

図 2-2. " Afro Bomba-Bahia " のピーク値の周波数特性(Wave Spectraによる測定値;連続値)

 

図2-1は、図1-1に比べて、63Hz、50Hz、40Hz , 31.5Hzの値の音圧が高く、本曲が極低域までよく伸びているのが大きな違いとしてわかります。中高域の領域の形状も図1-1に比べてなだらかで、図1-1よりも高い音圧の音が録音されているようです。

さらに、図2-2と図1-2を比べてみると、形状が大きく違うのが歴然としています。
中高域において、図1-2に比べ図2-2では、強弱の差がとても大きな振幅となっています。隣り合わせに近い部分で、図1-2では5dB程度なのに対して、図2-2では15dB以上の差があります。

さらに、全体の形状は、図1-2の方が、低域の音圧が中高域よりもかなり高くなっているのが、わかります。

特に、振幅の差の違いは、DIGI Checkのデータでは、見て取ることが出来ないようです。

全体として言えるのは、本曲は、低域は、30Hzぐらいまでの再生能力が必要で、30-100Hzぐらいまで、離散的ではあるのですが、連続してピークがありますので、そのスピーカーの低域の再生限界により、聴こえ方が変わってくると思われます。とりわけ30-50Hzぐらいの特徴的な音は、シンセベースの音です。

高域についは、16kHzぐらいまでの再生能力があれば、ほぼ再現できそうです。

 

" Drum History " についても同様に2つのデータを示します。


図 3-1.  " Drum History " の全曲のピーク値の周波数特性(DIGI Checkによる測定値;離散値)

 

図 3-2.  " Drum History " のピーク値の周波数特性(Wave Spectraによる測定値;連続値)

この曲は、図1に比べて低域がより低い周波数の、50Hzの再生能力が必要ですが、それ以下はあまり必要としないようです。それ以外の形状は、図1と同じ様な傾向にあるようです。
この特徴的な約50Hzの音は、エレクトリックベースによるものです。

 

以上、曲の実際の特徴と関連して、ピーク値の周波数特性の形状等で、気付いた点をいくつか以下に列挙します。

まず、DIGI Checkによる離散値の値ですが、連続値のデータと同じような傾向を示しているように見えます。
単純に示している離散値の周波数での値そのものであれば、図2-1と2-2の" Afro Bomba-Bahia "では、図2-2がすごい暴れになっていてもおかしくないのですが、そうなっていません。これは、表示している値の前後のなんらかの平均値を算出して、それを示しているためではないかと思われます。
この結果から見ると、どうやら、周波数特性の傾向をみるには、DIGI Checkのデータは、すっきりしていて見やすく、使えそうです。

次に、図1-2と図2-2との比較で見られるように、連続データでみると、中音域での各周波数での音圧分布の暴れが小さい場合と、大きい場合があるようです。前者は、どちらかというと非整数倍も含む豊かな倍音列を含んでいるケースで、結果的に値が平均的になっているためではないかと思われます。

逆に、後者は、少しレガシーなシンセサイザーが多用されているケースで、整数倍の倍音列が多く、その結果、本来離散的な音階に対応してその整数倍の倍音が多いため、周波数によって音があるところとないところの差が生じ、このような大きなバラツキのある見掛けになっていると思われます。

見掛けの暴れとは逆に、基本的に整数倍の倍音列ですので、こちらの方が、音が単純ですっきりしているようにも聴こえます。

 

なお、減算合成系のシンセサイザーの音色が印象的なウェザー・リポートのバードランドのピーク値の周波数特性を参考までに示します。

図4-1.  " Birdland " の全曲のピーク値の周波数特性(DIGI Checkによる測定値;離散値)

 


図 4-2.  " Birdland " のピーク値の周波数特性(Wave Spectraによる測定値;連続値)

 

図4-2は、図2-2とよく似た形状をしているようです。整数倍の倍音の音圧が高い影響がでていると思われます。

 

音工房Zスピーカーでの比較試聴

今回の試聴では、30Hz付近の極低域が含まれている曲があります。

30Hz付近を再生できるスピーカーは、かなり限られます。音工房Zの標準ラインアップでは、単体では、Z800となります。または各スピーカーにウーファーシステムのZ505-Trento(S)を付加した場合となります。

そこで、まずは、Z800から試聴を始め、他のスピーカーはそれとの相対比較をおこないました。

 

Z800-FW168HRでの試聴

 Z800は、音工房Zの最高峰のスピーカーです。
 2ウェイのバスレフタイプで、形式的には、Z-1と同じです。

 ツィーター、ウーファー共に、フォステクスの最高のものを使っています。それぞれ、市販の300万クラスのスピーカーに普通に採用されているユニットです。

Z800-FW168HRのページを見る

 

まず、3曲目の”Skins"を試聴しました。

ボリュームを上げていくと、ドラムの各音が生々しく響きます。途中、強烈なバスドラが時折大きく一発なりますが、まるで花火を思わせます。普段、Z800は、どちらかというとモニター的なクールな印象を与える音調と感じますが、このドラムの音色と響きには、思わず聴き入ってしまいます。
ヘッドホンとは、全く異なる音の世界を感じました。

4曲目の " Afro Bomba-Bahia " は、極低域のシンセベースが入っている曲です。
そのシンセベースの音がズンと響きます。時折、音というよりも地響きを感じさせる雰囲気が漂います。これまた、ヘッドホンでは感じ取れない感覚だと思いました。どうも、この領域の再生音は、単に耳で聴くというのとは異なる感覚の世界のようです。

6曲目の" Drum History " は、50Hzのエレベースが響く中で、ドラムのレッスンを聴いているような感じです。ただ、ヘッドホンだととても単調に聴こえたベースラインの繰り返しが、音が太いせいか、気分的な安定感を醸し出しているのを感じます。お経での木魚の役割のような感じでしょうか。
これまで聴いていたヘッドホンでの曲の印象と違うので、ちょっと不思議な思いがしました。

 

Z701-Modena (V5)での試聴

 音工房Zのオリジナル8cm のフルレンジユニットのZ-modena mk2を用いたスピーカーです。箱は、BHBS(バックロードホーンバスレフ)という形式です。

 これにより、8センチ1発とは思えないローエンド再生が可能です。

 

試聴の結果、これ単体でも、かなり立派なドラムが鳴り響き、少しびっくりしましたが、スーパーツイータを付加したほうが全体に印象が良かったので、そちらでの感想を次に記載します。

 

Z701-Modena (V5)のページを見る

Z701-Modena (V5)+スーパーツイータキットでの試聴


Z701-Modena(V5)にスパーツィータキットを組み合わせて試聴しました。接続はコンデンサ1個で、0.82μFを用いました。

まず、”Skins"を試聴しました。

この曲は、かなり元気のいいバスドラが入っています。少しボリュームを上げて鳴らすと、まるで花火の音のようなズドーンという音を聞くことが出来ます。スーパーツィータを付加したほうが、そのバスドラの音の抜けがよくなるように感じました。

 

次に、" Afro Bomba-Bahia " です。

すっきり感のある音です。解像度が高い印象を受けます。
本曲は、シンセベースが極低域の30Hz,40Hz、50Hzなどに同じぐらいの高い音圧で入っているのが特徴ですが、やはり、低い方の音は再現しきれないようです。シンセベースの音が、極低域というよりも低音の一部が鳴っている感じで、音の出方が不均一なような、ちょっとブーミーな印象も受けます。
ドラムはそれより高い周波数の低域なわけですが、スーパーツィータをつけたほうが、その低域の鳴り方が、安定しているような感じを与えます。ハイハット等の高域の音も粒立ちがいいといいますか、一層クリアになります。

6曲目の" Drum History "でも、ドラムの音域については、とてもバランスが良く、元気に鳴ります。ただ、よく聴くと、エレクトリックベースがやや弱く、再生しきれていないような印象も受けました。

ただ、これは、他のスピーカーと比べたときに初めて感じる印象で、これ単体で聞いているときには、気づかないかもしれません。

 

Z-1-Livorno (S)での試聴

 Z-1は、音工房Zオリジナルユニットと、最適化されたネットワーク回路から成る2ウェイ
のバスレフスピーカーです。

 バスレフポートは、テーパー状で、後ろ側に配置されています。
 各専用ユニットとシンプルなネットワーク構成をバランス良くチューニングすることで、
コストパフォーマンスと高級機に匹敵するクオリティを両立させることができました。
 フルオーケストラ等の再生に強みを発揮する朗々とした中低音域が特徴です。

このZ-1についても、スーパーツィータZ501と組み合わせたほうが、音にキレが出てきていい印象でしたので、組み合わせて試聴した場合を中心に次にご紹介します。
 

 

Z-1-Livorno (S)のページを見る

Z-1+スーパートゥイーターキットでの試聴

 Z-1にスーパーツィーターZ501を組合わて試聴しました。

コンデンサは0.82μFを用いました。

Z501のページを見る

3曲目の”Skins"を試聴しました。

まず、スーパーツィータをつけない状態での試聴での第一印象は、存外にドラムが良く鳴る、という印象を持ちました。ただ、Z800に比べ、バスドラの再生などにおいて、少し高域が足りない感じもしました。
また、音像として、Z800よりも小粒な印象を受けました。
このような感想をもったので、スーパーツィータを付加してみました。

その結果、音のキレがよくなり、高域側のなにか伸びきれないような、抑えこまれているような感じが減りました。エコー感も増します。こちらの方が断然いいと思いました。

ただ、それでもシャープさという点では、Z800の方がいいように感じました。
一方、Z-1の方が、音が太く感じます。より一層、ズドン、という感じがします。聴いてて楽しくなるような音です。

4曲目の " Afro Bomba-Bahia " では、極低域が一つのポイントですが、これだけ聴いている文には、低域側もかなりよく再生されている感じがします。ただ、Z800の時にはあった空気の揺らぎのような感じは伝わってきません。これが30Hz付近の有無ということでしょうか。
スーパーツィータを付加すると、高域のフケが良くなり、スッキリと音が伸びる感じがします。例えば、トライアングルの音が、周囲にきれいに広がって鳴ります。

6曲目の" Drum History " の試聴では、これはこれでいいと感じました。低域側のエレクトリックベースもきちんと鳴っています。ドラムのズドンという感じはよく出ています。
ただ、全体に音の分離感という点では、Z800の方が上だと思いました。しかしながら、Z-1の音は、耳に馴染むというか安心感のある音に聴こえます。
全体的に、スーパーツィータを付加したほうが、シャッキリとして、いい方向になるようです。

まとめ

Peter Erskine(ピーター・アースキン)のアルバム History of the Drum から3曲をご紹介しました。

ドラマーとして知られるピーター・アースキンは、大学教授でもあり、本アルバムは、ドラマーを志す人にとって、音のテキストのような位置づけにもあるようです。

本アルバムのプレイヤーは、ウィル・リー(エレクトリックベース)と、ピーター・アースキン(ドラム、パーカッション、キーボード)の、本来リズムセクション担当の2人。

本アルバムは、もともとイギリスのバーミンガムに本拠を置くコクマダンスシアターカンパニーのバレエ用として作曲されたという背景を持ちますが、リズム楽器主体で、録音もよく、オーディオ的には、オーディオチェック的な聴き方もできるかと思います。

曲によっては、音域的にはあまりスピーカーを選ばず、ドラムスとエレクトリックベースの音の迫力を再生できるか試すことができます。

一方、30-50Hzの極低域の音圧が高い曲もあり、それを再生できるか否かがテスト出来ます。

録音がいいので、音のキレや分解能、ベースやドラムスの音の再現性を試すことのできる、面白い内容ではないかと思いました。

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