目次
LUNGS / Florence+the Machine
規格品番:[1797940 ]
本アルバムの概要 について
今回ご紹介するのは、音工房Zの試聴会にて、お客様に御持参頂いた音源になります。
フローレンス・アンド・ザ・マシーン (Florence + the Machine)のデビュー・アルバム 、" Lungs " です。
Island Recordsから2009年7月3日にリリースされました。規格品番は、[1797940]です。
フローレンス・アンド・ザ・マシーンは、2007年にロンドンで結成された英国のインディー・ロックバンドです。
ボーカリストのフローレンス・ウェルチとキーボーディストのイザベラ・”マシーン”・サマーズが10代の頃に、フローレンス・ロボット/アイ・ザ・マシーン、という名前で演奏を始めたのがバンド名の由来のようです。先程の名前が長いので、Florence and the Machineにしたとか。
この2人と、ロバート(ロブ)・アクロイド(ギター、バックボーカル)、トム・モンガー(ハープ)、がコアメンバーのようです。
現時点では、さらに5人を加え、全部で9人のメンバー構成です。
特に、本アルバムでも、ハープの音は、効果的に用いられており、本バンドの特徴と言えます。また、ドラムス担当以外のメンバー全員が、ボーカル若しくはバッキング・ボーカルとして参加しており、それによるバッキングの分厚いコーラスも特徴と言えるかと思います。
本作、”Lungs"は、UKアルバムチャートで2位を長期間維持した後、2010年1月17日に1位となりました。その後、米国でも6位になっています。
さらに、2010年に6つのグラミー賞にノミネートされています。また、2010年のノーベル平和賞コンサートへ出演しました。
ファースト・アルバムで、トップランキング入しており、イギリスではメジャーバンドですが、アルバムの売上は、今のところ、デビューアルバムが一番だったようです。
ちなみに、日本でタレントとして活動しているハリー杉山は、フローレンス・ウェルチの従兄弟だそうです。
各アルバムの発売年とアルバムタイトルを示します。
2009 ラングス(Lungs)
2011 セレモニアルズ(Ceremonials)
2015 How Big, How Blue, How Beautiful
2018 High as Hope
2022 Dance Fever
スタジオ録音のアルバムは、この5枚で、2022年に発表の ”Dance Fever"が最新作となります。
各曲のピーク値の周波数特性の特徴
各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、モニター用のヘッドフォンのSennheizerのHD-660SとSONYのMDR-M1STを用いました。
なお、以下示すグラフは、フリーソフトのWave Spectraで測定したものです。
また、各グラフでは、オリジナルデータに縦軸横軸を補完しています。縦軸が音圧で、0dB~-80dB、また、横軸が周波数で、20Hz~20kHzとなります。
"Dog Days Are Over"のピーク値の連続データの周波数特性について
本アルバムの1曲目、" Dog Days Are Over " 、この全曲のピーク値の連続データの周波数特性を下図に示します。
図 1. " Dog Days Are Over " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
全体の音圧は、ほぼ-20dB以下と最近の録音にしては、比較的録音レベルが抑えめです。
目立つピークが、低域側の58Hz付近と100Hz付近、また、中域の1KHz付近に突出してあります。高域側は、20kHzまで、ほぼ-60dB前後と比較的高い値となっています。
低域側は、40Hz台が、約-30dBとなっており、全体に録音レベルが抑えめな中では、比較的高い音圧です。
この40Hz台の音源は、イントロの後半2分17秒付近から登場して連打されるバスドラやベースのコンビネーション等が主です。
また、200-800Hz台の各ピークは、イントロ前半からのハープとハンドクラップ、そして1kHz付近のハイトーンを含むフローレンス・ウェルチのヴォーカルです。
なお、100Hzのピークは、ピアノと思われるキーボード由来です。この音の前後にバスドラが入ります。
曲の後半の賑々しい部分で、中高音部の高いレベルのピークが入ります。
” Rabbit Heart " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に2曲目、” Rabbit Heart "の全曲のピーク値の連続データの周波数特性を、下図に示します。
図 2. ” Rabbit Heart " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
この曲も、ハープとヴォーカルが、バスドラとのサポートの下、比較的優しい雰囲気で始まります。なにやら、日本のアニソンのイントロを連想します。
40-60Hz台のピークは、ベース由来のようです。その下の周波数の36.7Hzはキーボード由来のようで、かなり高い音圧ですが、これは前半の1分では入っていません。
高域の5kHz-10KHzの特徴的な、高原状態に水平になっている部分は、バックで効果的に鳴り続けているハープと、特に後半部でのフローレンス・ウェルチなどのシャウトするヴォーカルとコーラスの倍音などによるものと思われます。このシャウトに合わせて、先ほどの30Hz台のピークが登場してきます。音域を広げてバランスをとっているような感じです。
" Howl " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、アルバム4曲目、" Howl "のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 3. " Howl " のピーク値の連続データの周波数特性
本曲の40Hz以下の3つの大きなピークは、2分20秒過ぎの約10秒程度入る効果音的なシンセ音によるものです。
それ以外の低域は、50-80Hz付近のバスドラがメインですので、低域に関して言えば、50Hz ぐらいまでの再生能力があれば、本曲は、ほぼ、再生可能と思われます。
この3つのピークを除けば、前半部の形状は、1曲目と比較的似ています。
中域の各ピークは、導入部の印象的なピアノとハードな音質のヴォーカル由来です。
5-10kHzの高原状態は、先程と同様、各楽器とシャウトするボーカルとコーラスによるものと思われます。全体に押しの強いフローレンス・ウェルチのヴォーカルが印象的ですが、実は、バックのコーラスが相当音圧が高く、曲全体のイメージ作りにかなり貢献している印象を受けます。
20kHzまで伸びた領域は、波形がシャープであることを示す、つまり早い立ち上がり成分を示すと思われます。
” Cosmic Love " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、アルバムの9曲目、" Cosmic Love "のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 4. ” Cosmic Love " のピーク値の連続データの周波数特性
表題のイメージの、ちょっと宇宙的な効果音をバックに、爽やかなヴォーカルが入ります。
2曲目と同じ傾向の構成です。最初は、優しくキレイな雰囲気で、段々と力強くなっていき、声もソリッドになり、最後は、コーラスの加わったシャウトというパターンです。
最後は、ハープが奏でて静かに終わります。
ドラマチックな展開とも言えます。
実際、彼らは、後にティム・バートンの映画の曲などを制作しています。
本曲の周波数特性の形状は、これまでの各曲と似た傾向を示しています。
下までよく伸びた低域、、白いカーソルで示したピークは33Hzです、、また、約700-1kHz付近での高いピークを持つ中域、20kHzまでよく伸びた高域と言う構成となっています。
この録音を充分に再現するには、低域から高域までの広い帯域と速い立ち上がりに対応できる過渡特性の良い、高い再生能力を持つスピーカーが必要と思われます。
Z702-BergamoとZ502の組み合わせによる試聴について
今回、Z702ーBergamo 単体と、さらにZ502タモ版を組み合わせた場合とを中心に試聴を行いました。また、比較対象として、最近改訂したZ702-Modena+Z501のケースを比べてみました。
Z702-BergamoとZ502タモ版の組み合わせについて
なお、Z-702-BergamoとZ502タモ版とを組み合わせたイメージは下記のようになります。
このZ702-Bergamo は、未塗装の状態です。
また、完成版であるZ1000-BergamoとZ502タモ版との組み合わせは、次のようになります。
Z1000-Bergamoのホワイトシカモア仕上げとZ502タモ版とは、トーンが比較的近い感じとなっています。
Z702-Bergamo(+Z502タモ版) とZ702-Modena+スーパーツィータキットとの比較試聴結果
試聴環境の設定
試聴にあたっては、比較対象として、Z702-Modena+Z501(1μF)と聴き比べてみました。
Z702-Modenaは、8cmユニットで、エンクロージャーもZ702-Bergamo に比べ、小さくなっています。当然、極低域の再生能力は、劣ります。ただ、8cmのスピーカーシステムとしては、低域再生能力も高く、また、音域のバランスも優れています。
これにスーパーツィーターであるZ501をコンデンサーを介して並列接続すると、再生音のキレが良くなる効果があります。例えば、ベースの音がシャープになります。また、エコー感も向上します。
これらを並べた時に、それぞれどのように聴こえるか色々な音源で試してみたい、ということで、あえて比べてみました。
比較対象として、次の3種類を並置します。
①Z1000-Bergamo単体
②Z702-Bergamo +Z502タモ版(目盛り5)
③Z702-Modena+Z501(1μF)
これらを、随時切り替えることができる環境にして、聴き比べてみました。
スーパーツィータ接続用コンデンサの値について
スーパーツィーターの接続では、コンデンサの値で、カットオフの周波数が変わります。今回は、1μFを用いました。
これは、各人の聴力や好みで変わりますので、値を変えて試してみることをお勧めします。
トライアルとしては、今回の場合ですと、例えば、まず、0.68μF、1μF、1.5μFを聴き比べてみます。
高域が過剰に感じたら、もっと容量を小さな値とします。また、効果が少ないと感じたら、より大きな値とします。今回の例の2つの値の間で迷ったら、0.82μFや1.2μFなどの、中間値の値に交換します。
音の聴こえ方と、その良し悪しの感性は、人によって異なりますので、このように自分の感覚に合ったようにカスタマイズできるのは自作の強みだと思います。
比較試聴の結果
本アルバムの曲には、特徴的なパターンがあるように感じました。
まず、フローレンス・ウェルチの幅広い音域を充分に生かしたハイトーン系のキレイな始まり、またはアカペラっぽいクールな始まりで、途中からバスドラなどで盛り上がり、また、一旦静まり、更に盛り上がり、最後はフローレンスのシャウトとバックコーラスで盛大に盛り上がり、ピッと終わる。というパターンです。
曲の構成にメリハリがあり、ドラマチックな印象です。イントロでは、曲によりハープやバスドラ、ベース、ピアノ、ハンドクラップなどがそれぞれヴォーカルを彩ります。また、キーボードが最低域の効果音など様々に活躍します。シャウトの盛り上がりでは絡み合ったバックコーラスがとても効果的です。それらがすべてフローレンスのヴォーカルを引き立てているという印象です。
ほとんどの曲の冒頭部分では、③のZ702-Modenaの音は、Bergamoに引けをとりません。曲によっては、コンパクトな雰囲気がむしろ好印象を与えます。
例えば、1曲目の" Dog Days Are Over "の場合、冒頭から2分16秒ぐらいまでは、途中のバスドラも含め、③は、とてもいい雰囲気です。
ただ、その後は、ピーク値の周波数特性でもご説明したように、40Hz台の音がBergamo系では響き始めるので、その差が歴然となってしまいます。
ただ、その後も大きなピークが50Hz 付近で連続してありますので、Z702-Modenaでも充分再生されており、全体の曲としてのバランスとしては決して悪くはありません。
これは、4曲目の" Howl "でも、同様な印象を持ちました。
①と②、Z502の有無では、例えば、9曲目の” Cosmic Love "の冒頭、ヴォーカルとハープのコンビネーションで始まりますが、Z502のない①の方が、ややヴォーカルがきつい感じに聴こえ、②の有りの方がハープが柔らかく響き、ヴォーカルのハイトーンが伸びやかに聴こえました。
この曲の最後の方が、ヴォーカルやコーラスも入交り、お祭り状態になるわけですが、この部分になると、③では、やや分解能が劣ります。ちょっとゴチャゴチャした印象です。極低域の要素によりスピーカーの駆動が阻害されているのかもしれません。
②では、まず、ドラムがくっきりとしており、ヴォーカル/コーラスもよく分離して聴こえます。このお祭り状態でも、①よりも、各音の解像度が高くスピード感を感じます。
いずれも共通しているのは、フローレンスの音域の広いヴォーカルのハイトーンはキレイに、また、中盤以降の迫力ある歌声もまた、ちゃんと再生してくれるということでした。例えば、中域の再生音の癖なども感じることはなく、女性ヴォーカルの表現力に優れているという印象を共に受けました。
CD情報
アマゾンのリンク先(下記画像をクリック)
関連リンク先
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・PCオーディオ入門編 2023です。音工房Zのスピーカキットをいくつかご紹介しました。
今や入手が困難なCD音源などが、サブスクなら聴くことができる、かもしれません。
少なくともCDクオリティーです。