目次
The Third Decade / Art Ensemble of Chicago
規格品番:[823 213-2]
本アルバムの概要 について
今回ご紹介するのは、Art Ensemble of Chicagoのアルバム” The Third Decade "です。試聴したのは、ECMレーベルからPolygramにより西ドイツで1985年に作成されたオリジナルバージョンです。規格品番は[823 213-2]。録音は、1984年6月です。
ちなみに、Amazonでは、少しややこしいことに、” The Third Decade "という英語表記と、”ザ・サード・ディケイド”という日本語表記のページがあり、それぞれ作成年の異なる複数のCDが異なる価格で表示されています。日本からはSHM-CD版 もでているようです。この規格品番は、[ UCCU-5735 ]で、2016年10月26日発売です。
本アルバムは、広帯域、高ダイナミックレンジで、かつ各楽器の定位感の良さ、などが際立ちます。
曲によっては、高域の楽器群から徐々に、中域、低域とシフトしたり、またその逆のパタンなどもあります。その意味では、オーディオチェックに使えるかもしれない、と思わせるテイクもあります。
様々な楽器が、入り乱れ、幻想と混沌のなかに、素晴らしい定位感などが産み出すのでしょうか、秩序を感じたりもします。
ただし、本アルバムは、曲によって、曲調が大分異なるので、どの曲にフォーカスするかで感じ方はかなり違うのではないかとも思われます。おそらくそれもあり、音楽的には評価に賛否両論あるようですが、少なくも録音はどれも優秀です。
アート・アンサンブル・オブ・シカゴは、シカゴのアフリカ系アメリカ人音楽家による自助組織のAACM(Association for the Advancement of Creative Musicians)のメンバーによりロスコー・ミッチェル・セクステットとして1966年に結成されました。1969-1971年にパリを拠点に活動していた時期にアート・アンサンブル・オブ・シカゴに改名したとのことです。
そしてこのアルバムが三番目の10年(の始まり)ということのようです。
最初は、フリー・ジャズ・バンドとしてスタートしましたが、その後、ブルース、ゴスペル、アフリカ音楽などアフリカ系音楽の原点をさぐるような方向となっていきます。
そして、前衛的なジャズグループとして、「多楽器主義」を掲げ、ステージ上に膨大な数の楽器を並べて演奏するのが特徴です。ステージ上の楽器数が500のこともあったようです。西洋の楽器、アフリカの楽器、アジアの楽器、南アメリカの楽器、などとベル、自転車のホーン、ウィンドチャイムなど、思いつくもの全てという感じのようです。
また、ライブのときは、ジャケットの裏表紙にあるようなボディペインティングをするようです。
本アルバム時点でのメンバーは、次の5人です。全員多彩な楽器を演奏しますが代表的な楽器(種)を記載します。また、全員ボーカルも担当しています。
レスター・ボウイ;Lester Bowie( trumpet, fluegelhorn)
ジョセフ・ジャーマン;Joseph Jarman (saxophones, clarinets, percussion instruments, synthesizer)
ロスコー・ミッチェル;Roscoe E. Mitchell (saxophones, clarinets, flute, percussion instruments)
マラカイ・フェイヴァース;Malachi Favors Maghostat ( bass, percussion instruments)
ドン・モイエ;Famoudou Don Moye (drums, percussion)
なお、本アルバムには、" in memory of Jo Härting "と記載されています。Jo Härtingは、オレゴン(Oregon)というジャズバンドのマネージャーだった人物で、1984年のツアー中に東ドイツで自動車事故により亡くなりました。
各曲のピーク値の周波数特性の特徴
各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、モニター用のヘッドフォンのSennheizerのHD-660SとSONYのMDR-M1STを用いました。
" Funky AECO " のピーク値の連続データの周波数特性について
最初に、本アルバム2曲めの" Funky AECO " の全曲のピーク値の連続データの周波数特性を、下図に示します。
この図では、縦軸横軸を補完しています。縦軸が音圧で、0dB~-80dB、また、横軸が周波数で、20Hz~20kHzとなります。
図 1. " Funky AECO " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
先に、広帯域、と記載したのが一目瞭然かと思います。
全体の最大ピークが-20dBに至っていない中で、20.9Hzでも-34dBあります。また、高域も、CDの限界である20kHzで打ちきられているような感じですが、たとえばSACDならば、マスターに入っているもっと高い音域まで記録されたのではないかと思われます。
人間の可聴領域についての議論はさておき、ここで録音されている音をキチンと再生するには、かなり広帯域に対応した再生装置が必要なようです。
" Prayer for Jimbo Kwesi " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、1曲めの " Prayer for Jimbo Kwesi " のピーク値の周波数特性をみてみます。
図 2. " Prayer for Jimbo Kwesi " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
この曲は、アルバム最初の曲ですが、ベルや鐘、鈴など、ハイトーンの音源がそれぞれ、左右、前後に定位して、聴こえ、始まります。それから徐々に中域の楽器が登場し、最後に低域の楽器も登場していきます。
この曲は、低域は、48Hz付近のピーク程度ですが、高域は20kHzまで、録音されているようです。
" The Bell Piece " のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、4曲目の" The Bell Piece "のピーク値の連続データの周波数特性を示します。
図 3. " The Bell Piece " のピーク値の連続データの周波数特性kono
この曲は、先程の " Prayer for Jimbo Kwesi " とは逆に、まず、低域から始まります。20.2Hzや22.9Hzでの-36dB前後のピークは、最初の部分に入っています。
次に、高域の鐘や鈴などが続きます。最後に、中高域の鐘の音などで終わります。
Z1000-FE108SSHP+スーパートゥイーターZ501での試聴
フォステクスの限定ユニットを用いたZ1000-FE108SSHPにスーパーツィータのZ501(ウォールナットエディション)を組合せてみました。
ネットワーク用のコンデンサは、0.82μFを用いました。Z501の接続は今回は正相に接続しました。
1曲目は、銅鑼の響きで始まります。次に、シンセが主体でしょうか、本曲のテーマが何度か繰り返され、幻想的な雰囲気を鈴や鐘の高域の効果音が醸し出していきます。
この鈴などの楽器音がとても伸びやかでリアルです。
各楽器の一音一音が、伸びやかにくっきりと聴こえます。ダイナミックレンジがとても高く広い印象です。
また、これら効果音的な各音の定位感がとてもよく、さらに音が前後の奥行方向にも定位するように聴こえます。
徐々に、中域、低域の楽器郡が登場してきますが、この太鼓、ドラム、タムタムのような音が左側に定位してリズムを刻みます。
広帯域、かつ高ダイナミックレンジの各音が空間を紡ぎ出していきます。
じわじわと異世界の音の世界にひきこまれていくような感じです。
左右に定位した音が散らばり、さらに全体には整合性を感じます。
並の再生能力では、この余力を感じさせる音の世界を表現しきれないのではないかと思います。
4曲目は、最初から低域の音圧が高く、なにやら物の怪の世界の様相です。極低域の音が不安感を煽ります。ややアニミズム的宗教観を想起させる根源的な恐怖に満ちた異世界という感じでしょうか。
しばらくして、その怪しさを、清浄な鐘の音が打ち消します。仏教の世界観のような雰囲気です。
それらの雰囲気の表現力が、とても秀逸な印象を受けました。
Z1000-FE108SSHPの低域側の余力のある再生力とスーパーツイータとのコンビネーションが、本アルバムの魅力を十分に引き出してくれるようです。
CD情報
アマゾンのリンク先1(日本語表記)
アマゾンのリンク先2(英語表記)
関連リンク先
・本アルバム同様、極低域が豊かに含まれる音源集です。
・パッシブ型サブウーファーの使い方をご紹介しています。
・PCオーディオ入門編 2023です。導入しやすく高音質のオーディオ環境のご紹介です。
サブスク音源、驚きのminiPC、最新D級アンプ、音工房Zのスピーカキットなどをご紹介しました。
今や入手が困難なCD音源なども、1億曲のサブスクなら聴くことができる、かもしれません。