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【限定】Z600-OMMF4販売
2020年に販売されましたステレオ誌ムック付録OMMF4専用のオリジナルエンクロージャーキットです。底面ダクトのバスレフ構造となっております。PC用や、寝室での小音量でのニアフィールドでの利用を想定して設計しました。1回限りの限定生産販売になります。塗装動画セミナー全編・突板貼りセミナーの2つのストリーミング閲覧が可能です。2021年4月25日締め切りになります。ご購入はこちらから。
Z600-OMMF4開発
Z600-OMMF4開発1 2021年3月19日配信
何回かに分けてこちらのスピーカーキットについての開発のお話をさせていただきたく思います。
○ニアフィールドリスニングにおける音のバランスのとり方と吸音材の重要性
○何故BHBSではなくシングルバスレフの箱を選んだか?
○PC用のスピーカーにとって大事なアンプの選択方法とは?
などスピーカー開発をしてゆくなかで気づいたことをお話してゆきます。
なるべく分かりやすさを優先した文章を心がけてゆきます。今回のZ600-OMMF4というキットは2020年の夏頃に恒例のステレオ誌ムックについてくるスピーカーユニットを利用していただくことを前提にしたスピーカーキットです。
ムックのスピーカーはFOSTEXさんや、Scannspeaks、そして3年連続で採用となりましたマークオーディオさんの小口径フルレンジスピーカーユニットが選ばれています。音や外観のクオリティーがずば抜けて高いため、マークさんが出したユニット3つは全てそれに対応した箱を販売しています。
今回は昨年の冬ごろに今回のOMMF4を片ch2発用いたスピーカーキットを限定販売いたしました。
701-OMMF4の開発
↑のリンクにユニットの素性検討等全て書いてありますのでご覧ください。今回のZ600-OMMF4の開発話では割愛いたします。Z701はフルレンジ2発を使った大型のバックロードバスレフの箱になりました。
しかし、小型のニーズもあるのでは?と思いメルマガでアンケートっぽくお願いしたところ、多くの方が小型箱を求めているのが分かりまして今回の商品開発につながっています。話は逸れますが、音工房Zは箱の開発に時間をかけ、その開発過程を全てメルマガやブログで可能な限り公開するのを基本としています。
そのため開発時間は異常に長くなり昔はFOSTEXの限定ユニットの販売が開始した2年後に、弊社が箱を出すとかやってました(笑)今はさすがにそこまで時間はかかりませんが、時間をかけても良いものを作れば買っていただけるのをわかっているのでこのスタイルで今後もやっていこうと思います。
■PC用に特化して開発
小型のスピーカーボックスはいろいろありますが、今回のZ600-OMMF4はパソコンの隣において音楽を楽しんでもらうことを主目的で開発しました。そのため視聴も全てパソコンの隣において聞くニアフィールドでのチューニングをしています。
PC用といってもアクティブスピーカーではなく、普通のパッシブスピーカーですので、これまで通りの使いかたも可能は可能です。後日の開発のところでもお話しますが、パッシブスピーカーをPCで使うには接続の仕方や利用する小型アンプも大事なためこちらについての説明もいたします。
もうスマホだけでパソコンは使わないという方もいるかもしれませんが、まだまだ多くの方はデスクトップPCやノートパソコンを使って仕事やネットを使っているかと思います。パソコンモニター付属のスピーカーの音云々の前に、音量がそもそも出ないので弊社のものを利用することで圧倒的なクオリティーアップをはかれます。
次回のメールの開発話では実際に市販品PC用スピーカーを実際に購入し、ライバルスピーカーと比較した場合にどこに優位にたてるかなどを検討してゆきます。
Z600-OMMF4開発2 2021年3月26日配信
これまでいろんなサイズのスピーカーボックスを作ってきましたが、PC用と言える超小型のスピーカーはこれまで作ったことがありませんでした。そこでPC用として評判の良さそうなものを何種類か実際に購入してみて、ライバル製品の音の比較をしてみました。音は据え置きのスピーカーが違うのと同じように各メーカーによって音に特色があります。
↑安いのから高いのまで全部で6機種ぐらいテスト購入しました。聞いてみるといろんなことが分かりますが、共通しているのは全て
●フルレンジ1発
●アンプ内蔵(アクティブ型スピーカー)
●内蔵アンプで音の味付けをしている
といったところです。様々な箱のサイズがありまして、やはり箱のサイズが大きくなればなるほど低域の量感や伸びが有利になるルールは据え置き型のスピーカーと全く同じです。
「超小型箱で凄い低域を出す箱を作って欲しい」と良く言われるのですが、これは非常に難しい注文です。スピーカーユニット低能率にして、アンプで強引にドライブすれば低域は多少のばすことができますが、今回のフルレンジでは難しいですし、容積が大きな箱の自然な低域にはかなわないです。
↓に購入した市販PCスピーカーの一部を左から容積大きい順に並べていますが、低域の伸びと量感は完全にボックスの容積に比例しています。
ドライバーの口径の問題もありますが、どんなに大口径のユニットを使っても箱の容積を小さくしたら低域は思うようにでてきてくれません。逆に小口径でも箱の容積さえあれば共振を使って低域は出すことができます。
そういう理由で音工房Zで作るキットは、毎回大きいものばかりになっていってしまいまして超小型箱というのをこれまでほとんど出していませんでした。しかし、今回のZ600-OMMF4はPC用なので、箱を巨大にすることはできません。決められた小型サイズの中でどのようにして低域を出すことができるか???
戦いの一部始終はメルマガとブログに書いてゆきます。
■他社のPCスピーカーどのような音を目指しているか?
箱作りについては楽しくも苦しくもあった開発話を書いてゆきますが、、その前にニアフィールドで聞くことを前提とした市販品のPC用のスピーカーの音の特徴とはどんなものでしょうか?
一言で書くと、
「聴きやすさを重視した」音作り
といったら良いでしょうか?
ボーズやヤマハのPC用スピーカーは50センチ程度の超ニアフィールドで聞くと、バランス良く長時間聞いていても疲れにくい音質なのが分かりました。一方で、弊社の試作の小型バスレフ箱にOMMF4を入れて聞くとハイアガリで高域が耳につく印象でした。
逆に市販のPC用スピーカーで2m以上離れて聞く、つまりニアフィールドではなくミドルフィールドぐらいになると評価が逆転します。市販PC用スピーカーはハイ落ちで眠たい音、弊社の試作OMMF4がウエルバランスとなりました。
スピーカーの音は一般的な部屋で聞く場合リスナーとSPの距離が近ければ近いほど、高域が多く感じられます。またPC用スピーカーは音楽を聞くことに特化というよりかは、映像をみたり・仕事をしながら聞くという性格があります。結果的にPC用のスピーカーの音質は据え置き型の2chとは異なり、ナローレンジの中での聴きやすさを狙っているものが多いことがわかりました。
音工房Zが目指すPC用自作スピーカーキットは、それらの市販メーカーと全く同じものを作っても面白みがありません。かと言って、ニアフィールドで使われるという前提を無視してこれまでの据え置き型の設計で突き進めば良いとも思いません。
弊社のPC用キットは映像との親和性より、音単体をより重視した方向性でゆくことで、市販品と差別化を図りたいと思います。
Z600-OMMF4開発3 2021年4月2日配信
小型のスピーカーボックスでなんとかして低域拡大できないかということで、一番最
初に試したのが↓のパッシブラジエターを使ったボックスです。
ボックスの容積を変えることができるような注射器型試作エンクロージャーを3つ作りました。
パッシブラジエターとは別名ドローンコーンとも呼ばれておりまして、簡単に言いますとスピーカーユニットにマグネットやボイスコイルがついていない状態のものです。アンプからの駆動で動くものではなく、エンクロージャー内部の背圧で動きます。
動作的にはバスレフダクトと似た原理になりますので、パッシブラジエターをつけたからと言って低域が爆発的に伸びるわけではありません。では何故試してみたかと申しますと、某大手メーカーの小型スピーカーでパッシブラジエターを採用している商品に低域拡張のメリットが大きく書かれていて、試してみる価値あるのでは?と思った次第です。
パッシブラジエーターはこれまで使ったことがなかっったのでどんな音になるかに興味もありました。
パッシブラジエターの単体販売は昔はあまり見た記憶がありませんでしたが、最近はamazonで調べてみると結構でてきますので、興味のある方はAnazonの検索窓に「パッシブラジエーター」と入れてみてください。スピーカーユニットから、マグネットやボイスコイルがないものなので金額は
安いものが多くでてきますよ。
■パッシブラジエーターの音の結果は?
容積を変えたり、2種類のパッシブラジエーターを試してみました。結論的には弊社のテストでは音はNGで採用は見送りになりました。パッシブラジエーター自体は値段はさほど高くないので、こちら採用できたら面白いなーと思ってのテストでしたので非常に残念な結果に終わりました。
OMMF4と小型箱を使ったパッシブラジエーターの音の印象ですが、抜けが悪く詰まったような音でした。低域の量感やレンジが伸びるどころの話ではなく全帯域に渡って全く音に生気がない感じでした。
パッシブラジエーターが低域を増強する原理自体はバスレフと同じという説明が長岡先生の本にもありますが、箱の構造を考えてみると、パッシブラジエーターをバスレフダクトの代わりにつけると、音の抜け道がない「密閉型」のようになりますよね。
今回複数の小型箱にパッシブラジエーターを付けて聞いた音は、ちょうど超小型箱を密閉にして聞いた時のような音に似ていました。「密閉型エンクロージャー」は何度かやっていますが、一番メリットでるのはやはり大型の箱でサブウーファーやウーファーボックスとして使ってローエンドを伸ばす使い方ですね。
反対に、
「小型フルレンジ&小型密閉」というのは最も相性良くないという印象です。
今回のパッシブラジエーターもやはり箱のサイズが大きくないと本領発揮は難しいのかなと。某大手メーカーの小型のスピーカーでパッシブラジエーターを採用しているものが、どのようにして音をまとめているのか興味はあるところですが、、いずれにせよ今回のZ600-OMMF4にパッシブラジエーターを搭載は断念となりました。
Z600-OMMF4開発4 2021年4月2日配信
■容積はどのくらいがベストか?
低域拡張を目指して一番最初におこないましたパッシブラジエーターですが、厳しい結果に終わりました。3つの箱を用意してサイズを少しずつ変えながら行いましたが、この程度のサイズの小型箱では正直どのスピーカーでもパッシブラジエーターのマイナスの印象は拭えませんでした。
ただ、ここで行いました実験はパッシブラジエーターの効果を知ること以外に、スピーカー容積をどの程度にするのが良いのか?どのくらいの容積差を認知できるのか?というのを知る目的を兼ねていました。
こちらの箱は背板を交換することで、「パッシブラジエーター」「バスレフ」「密閉」と交換で、容積まで変更できるシステムです。
写真では3つの箱がありまして、
大サイズが3L
中サイズが2L
小サイズが1.5Lです。
この箱は写真のように背板を押すと容積を最大で70%ぐらいまで小さくできます。3組のスピーカーがありますが、「容積」を同じにして、バスレフとパッシブラジエターを比較したり、逆に同じ「バスレフ」で容積だけを変えたりしながら音を瞬時切り替えで比較してみました。
結論、
言わずもがな容積は大きければ大きいほど良いのですが、このくらいの超小型スピーカーになるとほんの僅かな容積差が低域の量感差が非常に大きい事がわかりました。10Lぐらい大きい箱でしたら、容積を仮に2Lつまり2割大きくした場合に影響のでる帯域は低域の下のほうになるので変化はでるにはでますが、相対的には小さな変化になります。
しかし、2~3Lの極小箱の場合、容積の変化で影響がでる帯域が低域の上のほうである100~200Hzあたりになるので、変化量は非常に大きく感じられるようです。
2.5Lぐらいは最低でも欲しいなという結論になりました。
■市販品のPCスピーカーを分解してみる
現状のままで、ニアフィールドで市販品と比較して聞くと低域不足という感じではないのですが、高域が少々尖っている感じがします。市販のPCスピーカーは基本パワードスピーカーで内蔵アンプの回路で音の調整をしているのがわかります。
YamahaNX-50に内蔵のデジタルアンプの写真
基本ハイアガリ傾向を抑えてローブースト傾向にするほうがニアフィールドにはマッチするのでそのような音作りをしているところが多いように感じます。このことはメーカー品のPCスピーカーを分解して、アンプ部分だけを取り出してOMMF4に接続してみてわかりました。
YamahaNX-50のアンプ部分だけを利用して試作のOMMF4を鳴らす↓
ハイ落ち、ローブストで気持ちエコーがかかった感があります。
また逆に、メーカー品のPCスピーカーのユニットだけをフルレンジのスルー接続してみてアンプで音を作っている仕組みがよ~くわかりました。
弊社の試作箱に、ヤマハNX-50のフルンレジをいれて普通のアンプで鳴らす
市販のPC用スピーカーも弊社のものも同じフルレンジ1発ですが、専用のデジタルアンプの回路を通ることで一枚皮がかぶった音ではありますが、「聴きやすい音」「疲れにくい音」という意味では効果的なようです。
ちなみに↓の写真は以前にデジタルアンプの音を比較した時の写真ですが、一番右はダイソーの300円スピーカーのアンプを抜き出して実験したものです。
音工房Zで作るZ600-OMMF4はフルレンジ1発のスルー接続でありながら、高域が煩くならない澄んだ音を目指したいと思いました。しかし、アンプやPSTのようなものを使わずにそれを実現するには低域を伸ばすぐらいしか方法がありません。
次回小型BHBSにチャレンジしたお話です。
Z600-OMMF4の販売はこちら。4/25まで。