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【限定】Z701-OMMF4販売
【限定】Z701-OMMF4の販売は終了いたしました。限定生産品のため、再生産の予定はございません。
音工房Z OM-MF4専用箱開発
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発1(2020年8月28日配信)
今年で3年連続になりましたマークオーディオの付録ユニットのエンクロージャーの開発の話を時系列的にお話いたします。エンクロージャーはまだ開発中ですが、10月の初旬までにはキットの販売を受付開始したいと思っております。
弊社が箱を販売する時はいつもユニットの素性を調査し、複数の箱を試作して社内ブラインドテストを経てから販売します。そのため開発には時間がかかり、弊社が箱を販売する時には付録のユニットが完売となっているパターンが定着しています(笑)
去年までは雑誌完売後に同一のユニットをフィデリティムサウンドさんが販売しましたが今年はどうなるかわかりません。↓より入手しておいていただければと思います。
付録のフルレンジスピーカーOM-MF4については今日から数回のメールでユニットの音の傾向や箱について書いてゆきます。
■マークオーディオ過去3回の付録ユニットについて
2018年 OM-MF5 (8センチ口径)
2019年 OM-MF519 (8センチ口径)
2020年 OM-MF4 (6センチ口径)
過去2回のスピーカーユニットとの今回2020年のユニットを比較しますと、口径が一回り小さくなります。3つのスピーカーを写真で比較してみますと今回の2020年版が最も小さいのが分かります。
音工房Zが過去に製作・販売してきたフルレンジ1発のスピーカーというのは8センチ~10センチという口径がほとんどです。これは私の趣味というか好みの問題ももちろんありますが、このクラスの口径のスピーカーが最もフルレンジの良さである生々しさ・定位の良さ・高域の美しさがあると考えているからです。
そして、ここが肝心なのですが8~10センチ口径のフルレンジは箱の工夫で「16センチクラスのウーファーやフルレンジにほぼ匹敵するような低域」をだすことができ、バランスの優れたシステムを作ることができます。
オーディオファンの方がこだわるパイプオルガンによる40Hz以下の超ローエンド帯域とかに関しては、確かに10センチのフルレンジが25センチのウーファーに勝つことはできません。
しかし、ごくごく普通の音楽ソースを聞いている限り10センチのBHBS1発で十分なワイドレンジを実現することができます。弊社のフルレンジ1発のBHBSを聞いたことがない方にはなかなか分かっていただくのが難しいのかもしれません。
マルチウエイの場合ウーファーの口径が10センチ程度のものですと低域不足を感じるかと思います。10センチのウーファーを使った2wayと、20センチのウーファーを使った2wayとでは多分低域の違いは一聴してわかるでしょう。
しかし、低域をBHBSなどで持ち上げるフルレンジ1発の場合ですと10センチでも20センチでも厳密に40Hz以下のローエンドを測定で比較すれば20センチのが有利でしょうが、それより上のごく普通の40~100Hzの低域帯域は聴感上の違いは大きくありません。
これはもう15年以上前でしょうか。
長岡鉄男先生のフルレンジ1発の10センチ、D101Sスーパースワンというバックロードを作って、低域の凄さに圧倒されました。その後に20センチのバックロードホーンD58ESを作りました。
10センチでこんだけ凄い低域がでるんだったら、20センチだったらどんなことが起こるんだろう?とメチャクチャ期待しましたが、低域については予想とは逆の結果でした。20センチのほうが10センチより低域はでていて伸びてはいるのは分かるのですが
「この程度なんだ?」というものでした。
注:D58ESに使われているFE208ESと箱のD58ESは相性が悪く、低域不足で「箱の設計ミス」ではという意見もありました。確かに個人的にはD58ESにはFE208ESRが最もマッチした記憶があります。
大口径のフルレンジを使ったバックロードの良さは、ローエンドの伸びや量感ではなく別のところあるのだとその時思いました。話が思い切り逸れました。
今回使うフルレンジOM-MF4は弊社がストライクゾーンと考えている8センチから10センチ口径から考えると小さい口径になります。OM-MF4とは別に8センチ以下のユニットはテストしたことは何度かありますが、
採用に至らなかった最大の理由は必要な低域の確保が難しかったからです。
今回のOM-MF4は普通に考えると低域は昨年のものより出ないはずです。箱作りをする時は最初にユニットの素性を確認し、作る箱のコンセプトを絞り込んでゆきます。
次回から素性をスペックや測定データーを確認をしながら試作箱にいれつつ、音造りを楽しみながら、コンセプトを練ってゆこうと思います。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発2(2020年9月8日配信)
前回はOM-MF4は過去の限定ユニットと比較して口径が小さく低域が出にくいということを書きました。今日は実際の視聴の前にカタログスペックや実際に弊社で測定した周波数特性をベースにこのOM-MF4をどのように料理してゆくかを書きます。
エンクロージャーをご自身で自作される方にも参考になるように書いてゆきたいと思います。
■TSパラメーター上の比較
前回出した写真ですが過去のマークオーディオの付録ユニットと今年のユニット3つを比較した写真です。
2018年 OM-MF5 (8センチ口径)
2019年 OM-MF519 (8センチ口径)
2020年 OM-MF4 (6センチ口径)
続いて、TSパラメーターの主要データを比較してエクセルに落とし込んだデータが下です。
注目してもらい点を赤文字にしました。
■F0 (Fs)
F0とはスピーカーの最低共振周波数です。スピーカーユニットとして低域の再生限界を示します。このユニットの最大の特徴は小口径でいかに低域を出すかということのようで、そのための技術として、振動板の振れ幅(Xmax)を長くして、それを制御するためのエッジとダンパーを工夫したことがマークフェンロンの雑誌インタビューにも書かれています。
基本共振周波数はF0を下げるには
(1)口径の面積を大きくする
(2)振動板を重くする
(3)振動系を柔らかくする
(4)振動板の振れ幅を長くする
のいずれかです。
マークは3つ目と4つ目の方法をとっています。振動板の振れ幅(XMAX)を大きくとるために、フロントのエッジに大きなUの字の新構造を採用し、リアのダンパー(スパイダー)には切れ込みごとに柔らかさを変えるというかなり手のこんだことをしています。
結果的に過去3つのユニットの中で最も口径が小さいにもかかわらず、共振周波数が最も低いユニットとなっています。
参考:共振周波数
2018年 OM-MF5 (8センチ)124Hz
2019年 OM-MF519(8センチ)106.25Hz
2020年 OM-MF4 (6センチ)97.5Hzです。
参考までにFOSTEXの紙のユニットで口径の近いFE83NV(8センチ)はFs149Hz、P650K(6.5センチ)はFs157Hzです。このクラスの口径のユニットで100Hz以下の共振周波数を出すものは過去に私もみたことがありません。OM-MF4は口径は小さいけれど低音はでやすいユニットであることがスペック上から読み取れます。
■Q0 (Qts)
Q0は先程の共振F0がどれほど鋭くでるかを示します。数値が小さいほど共振はダンプされていることになり、低域はしまってきます。今回のOM-MF4は口径を考えた時にQ0の値0.64は決して高い数値ではなく、低い部類にはいるかと思います。よく共振のピークを抑えられているのが分かります。
基本小口径のユニットはQ0が高いものが多くFOSTEXのFE83nvは0.78ですし、口径の近いP650Kは0.99です。OM-MF4はQ0の値はそれらに比べるとかなり低くなりますが、決してオーバーダンピングという特性ではなく、低域は下まで良くのびながらもよくダンピングの効いた音と予想しました。
激安ユニットでマグネットをけちって高いQ0値になっているものをよく見かけますが、このOM-MF4はむしろここにはコストをかけているのがうかがえます。
■周波数特性の比較
実際に過去の3機種を弊社の無響室で、JIS箱に入れて測定しました。
測定している時の写真↓
マイクを10センチの距離で測定したものを比較しています。3つのユニットの特性を測定したものをグラフで比較できるようにしました。
OM-MF4だけ口径が小さく能率が低いのでグラフが下にでていますが、低域は良くでているのがグラフから分かりますでしょうか?
グラフの
緑が2018年のOM-MF5
青が2019年のOM-MF519
赤が今回2020年のOM-MF4です。
OM-MF5とOM-MF519は同一口径で気持ちだけOM-MF519のほうが能率が高いです。今回のOM-MF4は口径が小さいので当然能率が低いです。100Hz以上ほぼ-4dB程度の差で似た相似形ですが、100Hz以下は差が2dB程度しかありません。
つまりOM-MF4は相対的には低域のよく出るユニットというのがここでも示されています。
インピーダンスを比較すると今回のOM-MF4が最もインピーダンスの山が低くでていまして最低共振周波数の97.5Hzとほぼ同じところにでています。(インピーダンスの山が共振点のF0になります) 通常は低域が出にくいはずの6センチのフルレンジユニットですが、スペック上からは低域がよくでることがわかりました。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発3(2020年9月14日配信)
今回はOM-MF4を実際に弊社にある様々な箱にいれて主観的なユニットの素性についてファーストインプレションを行います。
■3.7Lの小型バスレフ & OM-MF4
まず、OMMF4を以前に弊社でamazonで販売していた3.7Lの小型バスレフ箱にいれて音を聞いてみました。この箱はFOSTEXのFE系の8センチを入れてご利用いただける標準バスレフ箱で、最小サイズのものです。
こちらの箱はノーマル状態ですと箱のダクトの共振周波数が105Hzぐらいのために、OM-MF4では高すぎで若干調整が必要でしたが、、音を聞いて率直に感じましたのは、このサイズの口径のフルレンジとしては非常に良く低域がでているという印象がありました。雑誌のセールスポイントにも、「驚くことに低域再生限界の目安となるfo(最低共振周波数)は6cmながら100Hz以下を誇ります。」とあります。前回のパラメーターの分析通りです。
容積がかなり小さいシングルバスレフの箱のため、弊社のメインスピーカーと聞き比べをしてしまうと当然低域は不足して聞こえてはしまいます。音色全体で見ると前回の周波数特性の分析どおり、高域が多いハイ上がり特性ではなく、低域の多いローブースト系の音と言えるでしょう。
このサイズの口径でしかも金属系のスピーカーユニットですからイメージだけだと低域が全くでなくて高域だけうるさいような印象を持つ方もいるかもしれませんが、実際は逆です。
マークオーディオのほとんど全てのスピーカーユニットに共通していますが、高域に煩くなるようなピークなどは皆無で聴きやすく洗練された音です。明るく元気の良い音とよりかは、ちょっと暗めで落ち着いた音といったら良いでしょうか。
■4.6Lの小型バスレフ & OM-MF4
続いて4.6Lの小型バスレフ箱を新たに4つ試作しました。一つ前に試聴した箱と比較するために、並べて撮影しています。
写真左が4.6L。写真右が3.7Lです。
わずか1L差ですが超小型スピーカーはこの僅かな容積差で低域が大きく変わってくるから面白いです。これが仮に25センチウーファー用の70Lの箱だとしたら、1Lの差の違いは分からないでしょう。
このクラスの口径のユニットはあまり使ったことがないのですが、FOSTEXのP650Kというカンスピのユニットが口径が近いので比較視聴してみました。
箱は同じサイズです。
価格差がありますので比較するのは少し酷ですが、低域に関しては一聴して分かるレベルでOM-MF4が良くでていて外観のクオリティーも上です。
スペック的に
●FOSTEXのP650K
最低共振周波数 157Hz
出力音圧レベル 84dB/w
M0 1.8g
Q0 0.99
●マークオーディオOM-MF4
最低共振周波数 97.5Hz
出力音圧レベル 83.4dB/w
M0 1.69g
Q0 0.64
OM-MF4は弊社のメインスピーカーと比較して聞くと、当然といえば当然ですが低音がでていないと感じるのですが、似た口径のP650Kと比較すると何故これほど低音がでるのか?と思えるほど良くでています。弊社の視聴環境では大音量で聞くのが前提ですので、低域の伸びや量感差というのはわかりやすい環境です。
一方で、PC用のスピーカーやニアフィールドで小音量で視聴する場合ですと低域の差は分かりにくくなります。そのような用途で考えるとこのサイズでも本当に十分かなと思える量感ではあります。
次回からは、昨年のOM-MF519やOM-MF5のエンクロージャー、Z701-Modenaなど弊社
の箱にいれて試聴してみたいと思います。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発4(2020年9月18日配信)
■過去のマークオーディオの限定箱で比較
前回は2つの容積の小型バスレフ箱に入れてOM-MF4の低域がよく出ることを確認しました。続きまして、音工房Zで
●2018年に販売した
「2018年マークオディオー専用バーチキット&OMMF5」
●そして2019年に販売した
「Z701-OMMF519&OMMF519」
●そして弊社の定番である、「Z601(V2)&OMMF4」を比較試聴しました。
弊社では複数のスピーカーを比較する時は、スピーカーの能率差を補正する特殊なソフィソナントオーディオ製のセレクターを利用しています。このセレクターの凄いところは事前にスピーカーごとに音量差をプリセットできるところです。
スピーカーの能率差に騙されることなく比較的正しい比較が可能になります。こちらのセレクターにはプリアンプを内蔵していますが、以前使っていたプリアンプAccuphaseのC2410と音の違いがよく分からないので最近ではこちらのセレクターのプリとAccuphaseのパワーアンプA35が弊社のメインシステムとなりました。今回のOM-MF4は口径が小さく能率が約3dBほど低いので、OM-MF4だけ他の2機種と比較して+3dBに設定してテスト開始です。
■低域は2018年版に匹敵!
3つのSPのボリュームをセレクターでほぼ揃えて聞くと、さすがにZ701-OMMF519だけは箱のサイズが大きくローエンドは別格です。2018年マークオディオー専用バーチキットとZ601(V2)はエンクロージャーはほぼ同じなので、
2018年版と今回のOM-MF4は目隠しではほぼ分からないレベルといえます。むしろ違いがはっきりするのは高域の出方のようです。フルレンジスピーカーを長くやっている人はご存知だと思いますが、特にオーケストラのような音場感や解像度を要求されるソースの場合に8センチのフルレンジよりか10センチのフルレンジのほうが全体的な音の印象は上に聞こえる場合があります。
一方で、音の定位感に耳を向けると口径が小さければ小さいほど有利で、特にボーカル系や弦楽・管楽器など低音を要求されない単体ソースにおいては強みを発揮します。小口径も6センチとなるとユニット自体が点音源に近いので、多少バフルが大きくても空間に音像を表現する力が圧倒的に高いです。
の3つの箱の勝負ですと、2019年版が頭ひとつ飛び抜けている印象でした。Z601(V2)箱でも決して悪くはないのですが前回テストした超小型のバスレフ箱と比較して差が小さく感じました。
■Z701-Modena(V5)にOMMF4を入れて聞いてみる
そこで、低域を拡張する路線として2019年版にサイズ的に最も近いZ701-Modena(V5)の箱にOM-MF4を入れて聞きました。
スピード感はちょっとZ701-Modenaに比べると遅く、少しホワンとした感じになりますが40Hz近くまででている印象です。点数にすると70点ぐらいで、これで販売しても不満を言われることはまずないと思います。
不満点としては低域のスピード感が遅いことと、バランス的に低域が膨らみすぎてツィーターが欲しくなることです。
■昨年の限定箱Z701-OMMF519(2019年限定箱)にOMMF4を入れて聞いてみる
続いて、この低域の締りの無さを解消する目的で、2019年箱にOMMF4を入れました。写真ではユニットを変えていませんが箱のサイズ比較をご確認ください。かなり近いですが若干小さいです。
OM-MF519に合わせて作った箱でZ701-Modenaと同じ音道構造で幅だけ15mm短くして、最終ダクトを少し変更しています。その箱にOM-MF4を入れたところ、容積を絞ることで低域の締りがよくなるのを期待しましたところ、若干改善しました。やはり箱の容積をもう少し絞ったほうが良い印象で方向性は間違えていないようです。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発5(2020年9月24日配信)
■どのようなコンセプトのスピーカーにするか?
測定によるスピーカーユニットのスペック調査から弊社にある様々なエンクロージャーに入れての素性確認を終えました。今後どのような方向で箱を作ってゆくかなんとなくコンセプトがまとまってきましたので発表いたします。
OM-MF4は他のマークオーディオユニットがそうであるように、ハイ上がりなオーバーダンピングユニットではありません。そのためバックロードやBHBSのように思い切り低域をもちあげる箱にしなくても口径レベルの低域は楽しめます。
OM-MF4の雑誌掲載の作例はほぼ小型のバスレフ箱を作っていることからも、シングルバスレフでも楽しめることが分かります。これはオーソドクスな方向性の1つとしては間違いないと思います。
もう一つの方向性としては箱を拡大した上で低域を伸ばしワイドレンジ化という方向性です。
試していないので想像になりますが、、長岡式バックロードで合わすのには中域が膨らみすぎるのでぽん付けでは難しく内部や開口部のチューニングが必要な気がします。つまり、このOM-MF4の持ち味を生かしたエンクロージャーというのは
(案A)低域は妥協した実用重視の小型箱
もしくは、
(案B)低域を思い切り伸ばした音重視の中型サイズのBHBS箱 もしくわユニット2発並列利用
どちらの方向でいくか現時点でもまだ確定しておりませんが、もしかしたら両方販売するかもしれません。決定したらその段階でアナウンスしたいと思います。いずれの商品も完成品ではなくキットでの販売を計画しております。
■OM-MF4の箱の案A (小型箱)
ユニット素性確認から分かりましたが、OM-MF4は4Lぐらいの極小の箱でもそこそこの低域はでるスピーカーユニットなのが前回の確認で分かっています。箱のサイズで低域はほぼ決まってしまいますから、この小型箱にした場合はローエンドは犠牲にするしかありません。
PCスピーカーやニアフィールドで比較的小音量で聞かれる用途になるかと思います。ノーマルバスレフの超小型箱になると、ほぼ雑誌に書いてある作例と同じになってしまいますので、音工房Zの特徴を出すチューニングをつけ加えることができないか実験してみようと思います。
サイズが小型という括りの中での低域追求というのは私はやったことがありません。
音を第一優先して箱がどんどん大きくなっていくのがいつものパターンでした(笑)小型でどのような特色が出せるかはメルマガで開発記を書いてゆきますが、小型のBHBS、パッシブラジエーター、などの実験をしてゆきたいと思っています。
■OM-MF4の箱の案B (低域をしっかり出す箱)
ユニットの能力はとても高いので、大きい箱の容積でハイエンドに打ち勝つレベルのものを作る方向性です。低域をしっかり出す箱としては前回の実験でZ701-Modena(V5)に入れたものが70%ぐらいの出来でしたのでZ701をベースに作るというのが有力な案の1つです。
もうひとつ試してから決めようと思っているのが、フルレンジユニットを並列利用して左右で合計4つ利用も検討しています。これまでのマークオーディオの専用箱はインピーダンスが4Ωでしたので、2発を並列で利用すると2Ωになって使えなかったです。
今回は8Ωですので2本使いで4Ωにしての利用も可能となります。ただ2本使いのフルレンジは能率はあがり低音は良くでるようになりますが、
●定位が悪化する
●ハイ落ちになるからツィーターが欲しくなる
●ユニットの数が増えるので当然コストアップとなる
などデメリットもたくさんあります。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発6(2020年10月2日配信)
■フルレンジ2発使いで箱(キット)の販売決定!!
現在開発をすすめているOM-MF4ですが、2発使いの試作で良い音になりましたので、こちらの方向で音を詰めたものを限定キットとして販売を決めました!小型版についてはまだ迷っていますが、に合えば試聴会で小型の試作版をお客様に聞いてもらってから決めようかなと思います。
片chにフルレンジ2発(左右合計4発)ですがイメージとしては真ん中に弊社のスーパーツィーターを入れたバーチカルツインになります。近々デザインを公開します。
開発文章と前後してしまいますが、音についてはすでに90%ぐらいの完成度のところにおります。箱の価格はペアで3.5~4万程度を予定しています。フルレンジ4本とスーパーツィーターを含めると総トータルで6万ぐらいになりそうです。
音にこだわっていった結果いつもどおりまた大きい箱でこの価格帯になってしまいました(汗)
サイズはまだ変わるかもしれませんが、だいたい幅200mm*高さ450mm*奥行き310mmぐらいです。Z701-Modenaより一回り大きいサイズを予定しています。もし、ご検討いただける方はフルレンジユニットを4本確保していただけたら幸い
です。
2020年 ONTOMOMOOK OM-MF4 ユニット
■最初は全く話にならなかったフルレンジ2発
話をフルレンジ2発の開発話に戻します。
シングルのZ701-Modena(V5)の容積は17Lほどですが、少し小さく作ることを考慮してまずは既存の12Lほどのバスレフ箱にフルレンジ2発が入るバフルだけ作って実験しました。
試聴してみたところ、たしかに低域の量感はシングル仕様よりも上がりましたが、、低域にキレが無いうえに、高域もフルレンジの良さが皆無でした。比較試聴に使ったのがZ701-Modenaです。
(写真では試作の下に置いたスピーカーです)
正直これだと誰が聞いてもZ701-Modenaの音のほうが良いという感じでした。
スーパーツィーターをつけると若干ましになりましたが、覆るくらいの印象には全くなりません。フルレンジ2発の配置とスーパーツィーターの配置が離れすぎていてここは問題ありそうですが、これを直してところでこの音では全く商品にならないだろうと思いました。
自作スピーカーを長くやっている方からも「フルレンジ二発は難しいよ~」という話はよく聞いていました。
諦めて1発で作り直すか?もう少しチャレンジしてみるか?
仮に商品にならなくてもブログネタに面白い実験がたくさんできそうかなと(笑)
Z701-ModenaにOMMF4を入れた箱がそこそこ綺麗に鳴りましたので、だめならZ701の1発ベースに戻ろうと考えていましたがまさかの大逆転劇が起こりました。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発7(2020年10月12日配信)
■2020年ステレオ付録の箱開発7
前回11Lの箱に2つのOM-MF4を並列接続させた標準箱にバフルだけ作ってテストしたのが↓↓でした。
このスピーカーの音が2発の割に音が全然良くなかったので、2発使いは「ダメ」だと思いこのスピーカーはブログネタにしようと思った後に作ったスピーカーが↓↓です。
このスピーカー見ていただくと分かりますがスピーカーを左右と上下に並列させている箱を4つ作っています。容積は前回の約2倍の20Lあります。
6つのスピーカーを並べた写真
最初に試作した11Lの箱は2発の割に低域は大したことないうえ、定位感というか高域の出方が最悪だったので全く期待していませんでした。今回の20Lの箱にはせいぜい低域が改善する程度ぐらいだろうと思っていたのです。
しかし、いざ蓋を開けてみるとバーチカルツインタイプのものはこれまで聞いてきた「OM-MF4」の中で最高の出来でした。スピーカーユニットの能力を最も生かしているスタイルと確信しました。
比較したZ701-Modenaよりか良く伸びているローエンド、高域も6センチ1発クラスの小さい音像ではないですが、非常に綺麗な出方をしてくれます。それまではOMMF4を1発使いで大きいBHBS箱を設計しようと思っていましたが、フルレンジ2発のこの音を一度聞いたらもうこれしか考えられなくなりました。
毎年この時期にだしているステレオの箱はユニットが安価なこともあって、箱もできるだけ入門クラスのいわば、「安い・早い・旨い」ものを作って多くの方に買っていただく戦略でした。今回のバーチカルツィンは入門用の安価な商品という位置づけとは違う、少し高級路線となりました。
■横2発と、縦2発(バーチカルツイン)の音の違い
当初この2組の音の違いを知りたくて実験の箱を作ったことは書いた通りです。
横2発と、縦2発の試作
これ奥の深いテーマなので、この実験は一つの研究テーマとして商品販売終了後にでも実験してブログとかでコンテンツにしたいと思います。今この実験にハマると販売がさらに遅れてしまいますので(笑)
ここではサラッと結論だけ書きます。非常に単純に書くと、
●左右配置⇒広がり感が良い。
●上下配置(バーチカルツイン)⇒定位感が良い
普通の一般人には僅かな違いかもしれませんが、オーディオ好きの方であれば大きな違いに感じるはずです。ツィーターなしのフルレンジ2発の場合長岡鉄男先生の作例では左右配置が多く感じます。人間の耳は上下の角度より左右の角度のほうが音に敏感だからか、フルレンジ2発の配置は左右のほうが良いという意見も聞いたことがあります。しかし、今回弊社が採用したのは両者を比較して音が良かった上下配置となりました。
試作はノーマルバスレフで十分にローエンドが伸びていますので、このまま販売でも問題ありません。しかしもしこれをBHBS化したらどんなことが起こるのだろう???
適当な試作でここまで音が良いとなると、徹底調整を行いさらに磨きをかけたくなるものです。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発8(2020年10月12日配信)
前回約20Lの箱で2発のバスレフ箱をだしました。
このスピーカーは普通のバスレフ箱ですが、これまでテストしてきたOM-MF4の中で最も良い出来の箱でこれをベースに行くことを決めました。容積だけ決めて適当に作った箱でしたが、40Hz以下の空気感を再現するローエンドがもの凄いでるんです。最近まで販売していたZ1000-FE103Aより遥かに多くのローエンドが普通にでていました。
これは一般受けするスピーカーとしては、このまま販売しても十分なのですが、よりレベルの高い方を満足させるには、ローエンドだけではなく、もう少し中低域(100Hz)と中域(200Hz~)にエネルギーを振ってやらないといけないと感じました。
試しに、長さの短いバスレフダクトを使って共振周波数を上げてみました。中低域は幾分改善しますが、中域帯域はほとんど変化しません。中低域帯域を伸ばせばもちろんローエンドはエネルギーを奪われてしまいます。
■BHBS化による中域改善
そこで、いつものBHBSを試すことにしました。BHBSはこれまでローエンドを伸ばす目的で
使う場合が多かったですが、今回は「ローエンドのエネルギーを大きく損なうことなく中域・中低域の量感を確保する」という目的になります。
シングルバスレフだとどうしても1箇所の帯域を大きく持ち上げるかわりに、他の箇所が大きく落ちるという構図になります。BHBSは特性に多少特性に凸凹がでてしまうというデメリットはありますが、低域の広い帯域を内部音道と最終ダクトの調整で自由に調整できます。
前回2組作ったパーチクルボード版のスピーカーの片方を分解して、音道を入れて「バスレフ VS BHBS」で音の比較を行いました。
ダクトのFdが低いバスレフ版のほうが、ローエンドだけは良くでますが全体的なバランスはBHBSのほうが優れているところにすぐに到達しました。次回無響室での音道微調整を経た後にフィンランドバーチベニヤでの本試作になります。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発9(2020年11月4日配信)
バーチカルツインタイプのユニット配置ですと、空気室が縦長になってしまうでZ701-Modenaをベースに作ることができません。キャド図面からZ701-Modenaのサイズを割り出して拡大したサイズのものをいくつか作りました。正直、ローエンドを伸ばしたいわけではないので総音道は短めでもいけると思いいくつか試作しました。
この試作は全て木工ボンドでとめてしまうわけではなく、クランプで仮止めして音出し&測定を行います。最終的にはバックロードよりかはダブルバスレフに近い形状が聴感上最もよかったので、その形状をベースに音道を変えてゆくことにしました。
BHBSで最も音が大きく変化するところは「総容積」と「最終ダクト部分の調整」で、全体の70~80%を締めます。箱のサイズ(総容積)は予め決めています。ダクト調整は最後に耳で聞きながら1センチ単位で変えてゆくことにしています。
無響室でのスィープ測定と、実際の音楽ソースを使っての調整は同時並行で行っているので時系列で書くのも難しいのですが、今回のBHBS調整の要点となる部分をデータも交えながら書いてみます。
■空気室
(スピーカーユニット背面のスペース)
皆様が想像するよりか、そこそこ自由度があるのが空気室の容積です。ほんの僅かに空気室の容積を動かしても低域や中域の量感自体の変化の実感が少ないので、変化させる場合は30%増/減ぐらい思い切り変化させます。ここの設計は背圧の影響もあり高域や低域
の質感にも影響します。
ユニット背面からでる高域が、ユニットの振動板やエッジから漏れて音を濁すのを防ぐ工夫として、桟を斜めに入れたり・奥行き寸法を長めに取る設計を行っています。高域が気になる場合は吸音材を多めにしますが調整できる範囲は限られています。
概して、
空気室が大きいとローエンドが
アップ(一方で中域に凹む)、
空気室が小さいと中域がアップします。
(一方でローエンドは凹む)。
今回のZ701-OMMF4では2パターンを試しまして超感で空気室容積を決めました。
■スロート
(空気室から伸びる一番最初の音道)
スロートの断面積については昔は長岡先生の本の公式を基準にしていましたが、今はそれほど重視していません。長岡先生の公式ではスロートの断面積を振動板実効面積で割ったものをスロート絞り率と呼ばれていて、これを1以下にするように言われています。
Z701のスロートは↓の部分です。
スロートと空気室はバックロードホーンのロードのかかり方を決めますが、基本ここも測定と超感で決めてゆきます。
上は無響室での測定で、スロートの幅が40mm(点線)45mm(実線)で音は上のように変化します。
■第2音道
(スロートの次にくる部分)
普段あまり調整しないところですが、今回はこの部分で音が大きく変わりました。
第2音道の写真
↓の2つの特性をご覧ください。
点線と実線で130Hzあたりのデップに差があるのが分かりますでしょうか?これは今回の無響室調整で得られた最大の収穫でしたが、第2音道を広くする事によりデップが解消しました。
■最終ダクト
(第2ダクト、音の最後の出口)
音の変化が一番大きいポイントです。ダクトの長さをを110mm(点線)80mm(実線)の無響室での測定結果です。
ダクトの長さが30mm変わるだけでこれだけ変化します。
無響室でフラットになるように調整してもあまり意味がなく、実際に音楽ソースを聞きながら最終決定をします。
次回無響室で得られたデータからフィンランドバーチベニヤによる本試作にすすみます。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発10(2020年11月6日配信)
無響室とリスニングルームを往復しながら音を調整してゆきまして、微調整を終えバーチベニヤで作った本試作のスピーカーが販売品と同じ↓です。
デザインは別途CADでつめながら別のデザイン用のバフルだけ試作を行いました。
今回実はデザイン的にもう一つ候補がありました。サブバフル方式で、こちらのほうが音的には有利かとも思いましたがコストとデザイン的なところから現状のスリットタイプを採用といたしました。
候補に上がったが非採用となったデザイン↓
試作版はパーチクルボードを、クランプと両面テープで組んでいましたが、今回作った本試作版ではフィンランドバーチベニヤに実際に木工ボンドとクランプで組んでおります。
■ダクト、吸音材、コンデンサー調整
本試作版がでてきて、一番最初に聞いた音のファーストインプレッションは「???」でした。
通常、クランプだけで組んだスピーカーは音が抜けてしまうからかボンドを入れて組んだスピーカーの80%ぐらいの実力になってしまうのですが、今回はベニヤを変えて、きちんとボンドを入れたのにも関わらず劇的な改善が感じられなかったのです。
おかしいなと思いながら、スピーカーをチェックしてみるとダクトの長さを間違えてダクトをカットしないものを入れておりました(汗)BHBSの最終のダクト調整は音への影響度の大きさにはいつも驚きますが、、、
気を取り直して調整を開始し、普通の音楽ソースを聞きながらダクトの長さを調整してゆきましたら、いつものように試作版より圧倒的に良い音がでてきてくれました。ダクトの調整方法は一般のバスレフの公式と基本同じなのですが100%同じというわけではなく、毎回微妙に異なります。
今回のスピーカーは特にダクトの長さがシビアで10mm変えただけで、大きく性格が変わってしまうようです。ダクトの調整は2つの候補が上がりました。ローエンドがZ1000以上に伸びるタイプと中低域を重視するタイプです。
ここは音工房Zとして最終決定値を決めますが、購入者の方向きに簡易的な使いこなしレポートでダクトの調整については書きたいと思います。どちらを標準にするか迷いますが、1回目の試聴会前はローエンド重視タイプのチューニングでいくことを決めました。
■吸音材とコンデンサー
空気室に入れる吸音材とコンデンサーは結構あっさり決まりました。弊社のBHBSの吸音材は基本空気室部分にしか入れません。その音の変化はスピーカーユニットの種類と空気室の奥行きの深さとユニット自体で変わるようです。
今回の箱は空気室の奥行きをそこそこ長く取れるうえ、OM-MF4も重い振動板のためか吸音材の影響は少なく、もしかしたらゼロでもいけるのでは?と思いました。試しに1枚のフェルトあり・なしで比較したところ、差は僅差でしたがやはりゼロよりは良いということでフェルト1枚で決定。
スーパーツィーターに使うコンデンサーは理論値から考えるとかなり大きめのものに仮ぎめしました。
■試聴会前のチューニングが完成
迷いは多々ありますが、1回目の試聴会前のチューニングは完成しました。調整後のスピーカーと、パーチクルボードで前に試作で作っていた時のスピーカーを並べて聞いてみましたが、同じピーカーと思えないほど圧倒的に音が良いものに仕上がったと思います。
あとはこれから行う試聴会のお客様からのお声をお聞きして、このままゆくか微修正をいれるか決めたいと思います。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発11(2020年11月9日配信)
2日間の試聴会を終えまして合計で43名の方に聞いていただきました。試聴会にご参加くださいました方、レビュー投稿して頂いた方どうもありがとうございます。Z701-OMM4以外のスピーカーも含まれていますが、試聴会に参加してくださった方のレビュー文章はこちらからみることができます。
音工房Zでは試聴会は3,4年前から年に何回か実施するようになりました。試聴会は初めの頃は来ていただいたお客様にお披露目するスピーカーを購入してもらえる確率が上がると考えて実施していました。
ですが、試聴会に来てくださった方がすぐに購入してくださるか調べてみると、そんなに甘くはないことがすぐにわかりまして(笑)、、
現在の試聴会は、来て頂いた方から購入してもらうことを主目的とはしていません。ですので試聴会では売り込み的なものは基本ありませんので、初めての方も、常連様もお気楽にご参加いただけたら幸いです。
■試聴会から得られるもっとも有り難い情報とは
「お客様の生のお声」を聞けることです。
これは弊社のホームページに掲載するための「お客様商品レビュー」もそうなんですが、それ以上に実際にスピーカーを聞いてくださった方から得られるご感想をその場で直接お聞きできることです。
「今回のスピーカーどうでしたか?」 ってお聞きすると良し悪しをお客様視点で教えてもらえます。このお客様からいただける生のお声は対面からしか得られないものが多くあります。
現場の営業マンが最も商品改善のヒントを最も知っていると言いますが、弊社にとっては試聴会でお客様に教えてもらえるご感想が、社内のラインドテストと並んで商品開発の一部になっています。
■Z701-OMM4の視聴会終了後の最終調整を終えました
2回の試聴会を終え最終の調整をしました。初回と2回目でツィーターのコンデンサーの値と、ダクトの値を変えて行いました。
お客様の生のお声と頂戴したレビューの結果から、コンデンサーの値を結構大きく変更して高域をおとなしいものにしました。(ハイアガリ傾向でなくなりました)
ダクトの定数は2回目に行ったものを採用。吸音材は当初通り変更なしです。
数値はここでは書けませんが、商品購入してくださる方にお渡しする簡易的な使いこなしレポートでは試聴会で使ったコンデンサー数値も書きます。ダクトも変更するとかなり変わるのでこの部分についても記載しようと思います。
今回のバーチカルツインタイプは高域の調整が通常のスーパーツィーターほど単純ではなく困難を伴いました。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発12(2020年11月12日配信)
Z701-OMMF4の開発の最終話としまして弊社の他のスピーカーとの比較と、使いこなしについて少しだけ書きたいと思います。ご購入を検討していただいている方は参考にしていただけたらと思います。
あ、あとこちらの箱当初200セット限定と書きましたがすでに200セットは超えてしまいました。ご購入頂いた皆様どうもありがとうございます。
当初修正させていただきました通り、今週の15日(日)の24時までにご注文いただいた数で製作させていただきたいと思います。
■音工房Zのスピーカーとの比較1
弊社のスピーカーと比較して、音の違いを書いてみたいと思います。まずいちばんサイズ的に近いロングセラー商品Z701-Modena(V5)と比較します。
このスピーカーとは開発時、そして視聴会のときも散々聞きました。写真を見ていただいてもわかりますが、Z701-OMMF4のほうがZ701-Modenaと比較して箱のサイズが一回り大きいです。フルレンジユニット2つでさらに箱が大きいので、当然低域に関してはZ701-OMMF4のほうがローエンドもでますし低域の質感も上になります。
高域の伸びについてもスーパーツィターをつけている分Z701-OMMF4のほうがハイエンドは伸びています。つまり、上も下も周波数特性だけでみれば伸びているのでワイドレンジではあります。
ただ、定位感に関しては1発であるZ701-Modenaのほうがやはり上です。
特にわかりやすいのがボーカル系のソースで、口のサイズなんかがZ701-Modenaと比較すると大きめになってしまいます。その反面なのか分かりませんが「音の広がり感が良い」というお声をよくいただきました。
能率は聴感上の比較になりますが、Z701-OMMF4のほうがZ701-Modenaより2dB程度高い印象です。Z701-Modenaは聞いたことがある方であればわかると思いますが、いわゆるバックロードホーンのような音の出方ではありません。
Z701-OMMF4も同じBHBS形式ですので似てはいますが、フルレンジ2発と箱の拡大により低域の伸びと質感は間違いなく上に感じます。
■音工房Zのスピーカーとの比較2
Z1-Livornoと比較しました。
マルチウエイと比較すると何もかもが違うのですが、、、市販の小型2wayスピーカーを利用されている方が最も多いでしょうから、あえて比較記事を書いてみます。
Z1-LivornoとZ701-OMMF4を比較しますと、高域が聞きやすく、疲れ感がでにくいという意味ではZ1-Livornoかなと思います。しかし、これは多分良質なフルレンジと良質なマルチウエイを比較しても似たような感じになるかなと思います。
Z701-OMMF4がZ1-Livornoに対して優位に立てるところがあるとすると
「広がり感」
「40Hz以下のローエンド再生」
「鳴りっぷりの良さ」
あたりかなと思います。
40Hz以下のローエンド再生というのはかなりマニアックなところになりますが、ダクトチューニングを変更すると13センチのウーファーにも勝ててしまうだけの低域がでてきます。購入者用の使いこなしレポートに書きます。あまり一般的なニーズがあるものではないことはわかっています(笑)
一般性のある音という意味ではZ1-Livornoに軍配があがるでしょう。
■使いこなしレポートから1つ紹介
今回のZ701-OMMF4の購入者用の音の使いこなしレポートはダクトの長さとツィーターのコンデンサーの変更をさらっと書いています。あと1点スピーカーの配置位置を横に変える方法を紹介していますが、その方法と効果について紹介します。
横置きセッティングイメージ
これは試聴会に来てくださった常連様に「横置きにしてみたらどうですか?」と教えてもらって試してみたら良かったものになります。 これは私もスピーカーを設計する前に、バフルにユニットを横に並べる方法と縦に並べる方法を試しています。
スタンドの高さだけ変える工夫をしないといけませんが、スピーカーのボックスの向きを90度変えれば同じことが実現するという発想が思いつきませんでした。写真では既存のスタンドの上に音響ポールを重ねて強引にセッティングしていますがこのやり方は安定が良くないので非推奨です。
横置きにして聞いて見た感想は、さらに横方向への広がり感がさらにでたことです。オーケストラ系の広い空間のソースで効果が大きく感じます。フルレンジ複数使いの良さはもしかすると、複数のユニットを使うことでの広がり感の良さで、軽い音場型スピーカーのようなものになってくるのかもしれません。
スピーカーユニットが3つ以上のゴリゴリの音場型スピーカーは定位するという感じがしないのですが、Z701-OMMF4はそこまで極端ではなく、もちろん1発には勝てませんが、広がり感のあるなかにも定位します。
もっと極端な音場型スピーカーも今後ブログ内で遊びでやってみたいとは思いますが、商品化は一般性のなさから難しいかなと思っています。
2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発 最終(2020年11月14日配信)
■最後の最後に音がめちゃくちゃ良くなりました。
購入者様用の使いこなしレポートを書いている最後の最後でとてつもなく大きなブレークスルーが起こりましたので最後に書いておきます。実際、商品発送用の紙の取り説は出来上がっていてプリントアウトもしていたのですが、あまりに改善が大きかったので一度刷ったものを全て破棄してやり直したほどです。
できればこの状態でもう1回試聴会を開催して、聞いてもらいたいくらい音が大きく良くなりました。
それは、使いこなしレポートを書くために無響室で複数のコンデンサーを使いお客様にご自身で調整される場合の定数をいろいろ試すために測定をしている時に判明したことです。
今回のスピーカーはフルレンジとツィーターの3箇所から高域がでているからか、測定結果と高域の聴感で聞く量感が全く一致しませんでした。2つのフルレンジに挟まれているスーパーツィーターの軸上にマイクをセッティングしているから干渉でそうなるのかもしれません。
1つやり忘れていたのがあって、スーパーツィーターの正相と逆相の測定をしてみました。スーパーツィーターの正相と逆相で音は当然変わるのですが、変化量が普通のスピーカーと比較してやたらに多いのが測定から分かりました。
2つのフルレンジに挟まれているからだと思いますが、8KHz以上の超高域だけでなくメイン帯域の高域も大きく変化しました。そこで、測定ではなく実際に生の音でスーパーツィーター逆相で聞いてみました。
これまで高域に若干感じていた違和感(ある特性のソースだけで感じられるピークのようなもの)が大きく解消され、圧倒的に良いつながりになりました。
当初のコンデンサーの値も変更して
逆相接続を基本とすることにいたしました。
ほとんどの方にはこちらの音を気に入っていただけると思いますので、こちらを推奨として取説に記載することにいたしました。
【限定】Z701-OMMF4の販売は終了いたしました。限定生産品のため、再生産の予定はございません。