音工房Z OM-MF4専用箱開発 

2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発1(2020年8月28日配信)

 今年で3年連続になりましたマークオーディオの付録ユニットのエンクロージャーの開発の話を時系列的にお話いたします。エンクロージャーはまだ開発中ですが、10月の初旬までにはキットの販売を受付開始したいと思っております。

 弊社が箱を販売する時はいつもユニットの素性を調査し、複数の箱を試作して社内ブラインドテストを経てから販売します。そのため開発には時間がかかり、弊社が箱を販売する時には付録のユニットが完売となっているパターンが定着しています(笑)

 去年までは雑誌完売後に同一のユニットをフィデリティムサウンドさんが販売しましたが今年はどうなるかわかりません。↓より入手しておいていただければと思います。

付録のフルレンジスピーカーOM-MF4については今日から数回のメールでユニットの音の傾向や箱について書いてゆきます。

 

■マークオーディオ過去3回の付録ユニットについて

2018年 OM-MF5  (8センチ口径)
2019年 OM-MF519 (8センチ口径)
2020年 OM-MF4  (6センチ口径)

過去2回のスピーカーユニットとの今回2020年のユニットを比較しますと、口径が一回り小さくなります。3つのスピーカーを写真で比較してみますと今回の2020年版が最も小さいのが分かります。

 音工房Zが過去に製作・販売してきたフルレンジ1発のスピーカーというのは8センチ~10センチという口径がほとんどです。これは私の趣味というか好みの問題ももちろんありますが、このクラスの口径のスピーカーが最もフルレンジの良さである生々しさ・定位の良さ・高域の美しさがあると考えているからです。

 そして、ここが肝心なのですが8~10センチ口径のフルレンジは箱の工夫で「16センチクラスのウーファーやフルレンジにほぼ匹敵するような低域」をだすことができ、バランスの優れたシステムを作ることができます。

 オーディオファンの方がこだわるパイプオルガンによる40Hz以下の超ローエンド帯域とかに関しては、確かに10センチのフルレンジが25センチのウーファーに勝つことはできません。

 しかし、ごくごく普通の音楽ソースを聞いている限り10センチのBHBS1発で十分なワイドレンジを実現することができます。弊社のフルレンジ1発のBHBSを聞いたことがない方にはなかなか分かっていただくのが難しいのかもしれません。

 マルチウエイの場合ウーファーの口径が10センチ程度のものですと低域不足を感じるかと思います。10センチのウーファーを使った2wayと、20センチのウーファーを使った2wayとでは多分低域の違いは一聴してわかるでしょう。

 しかし、低域をBHBSなどで持ち上げるフルレンジ1発の場合ですと10センチでも20センチでも厳密に40Hz以下のローエンドを測定で比較すれば20センチのが有利でしょうが、それより上のごく普通の40~100Hzの低域帯域は聴感上の違いは大きくありません。

 

 これはもう15年以上前でしょうか。

 

 長岡鉄男先生のフルレンジ1発の10センチ、D101Sスーパースワンというバックロードを作って、低域の凄さに圧倒されました。その後に20センチのバックロードホーンD58ESを作りました。

 10センチでこんだけ凄い低域がでるんだったら、20センチだったらどんなことが起こるんだろう?とメチャクチャ期待しましたが、低域については予想とは逆の結果でした。20センチのほうが10センチより低域はでていて伸びてはいるのは分かるのですが

 「この程度なんだ?」というものでした。

注:D58ESに使われているFE208ESと箱のD58ESは相性が悪く、低域不足で「箱の設計ミス」ではという意見もありました。確かに個人的にはD58ESにはFE208ESRが最もマッチした記憶があります。

 大口径のフルレンジを使ったバックロードの良さは、ローエンドの伸びや量感ではなく別のところあるのだとその時思いました。話が思い切り逸れました。

 今回使うフルレンジOM-MF4は弊社がストライクゾーンと考えている8センチから10センチ口径から考えると小さい口径になります。OM-MF4とは別に8センチ以下のユニットはテストしたことは何度かありますが、

採用に至らなかった最大の理由は必要な低域の確保が難しかったからです。

 今回のOM-MF4は普通に考えると低域は昨年のものより出ないはずです。箱作りをする時は最初にユニットの素性を確認し、作る箱のコンセプトを絞り込んでゆきます。

 次回から素性をスペックや測定データーを確認をしながら試作箱にいれつつ、音造りを楽しみながら、コンセプトを練ってゆこうと思います。

2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発2(2020年9月8日配信)

 前回はOM-MF4は過去の限定ユニットと比較して口径が小さく低域が出にくいということを書きました。今日は実際の視聴の前にカタログスペックや実際に弊社で測定した周波数特性をベースにこのOM-MF4をどのように料理してゆくかを書きます。

 エンクロージャーをご自身で自作される方にも参考になるように書いてゆきたいと思います。

 

■TSパラメーター上の比較

 

 前回出した写真ですが過去のマークオーディオの付録ユニットと今年のユニット3つを比較した写真です。

2018年 OM-MF5  (8センチ口径)
2019年 OM-MF519 (8センチ口径)
2020年 OM-MF4  (6センチ口径)

 

続いて、TSパラメーターの主要データを比較してエクセルに落とし込んだデータが下です。

注目してもらい点を赤文字にしました。

 

■F0 (Fs)

 F0とはスピーカーの最低共振周波数です。スピーカーユニットとして低域の再生限界を示します。このユニットの最大の特徴は小口径でいかに低域を出すかということのようで、そのための技術として、振動板の振れ幅(Xmax)を長くして、それを制御するためのエッジとダンパーを工夫したことがマークフェンロンの雑誌インタビューにも書かれています。

基本共振周波数はF0を下げるには
(1)口径の面積を大きくする
(2)振動板を重くする
(3)振動系を柔らかくする
(4)振動板の振れ幅を長くする
のいずれかです。

 マークは3つ目と4つ目の方法をとっています。振動板の振れ幅(XMAX)を大きくとるために、フロントのエッジに大きなUの字の新構造を採用し、リアのダンパー(スパイダー)には切れ込みごとに柔らかさを変えるというかなり手のこんだことをしています。

 結果的に過去3つのユニットの中で最も口径が小さいにもかかわらず、共振周波数が最も低いユニットとなっています。

参考:共振周波数
2018年 OM-MF5 (8センチ)124Hz
2019年 OM-MF519(8センチ)106.25Hz
2020年 OM-MF4 (6センチ)97.5Hzです。

 参考までにFOSTEXの紙のユニットで口径の近いFE83NV(8センチ)はFs149Hz、P650K(6.5センチ)はFs157Hzです。このクラスの口径のユニットで100Hz以下の共振周波数を出すものは過去に私もみたことがありません。OM-MF4は口径は小さいけれど低音はでやすいユニットであることがスペック上から読み取れます。

 

■Q0 (Qts)

 Q0は先程の共振F0がどれほど鋭くでるかを示します。数値が小さいほど共振はダンプされている
ことになり、低域はしまってきます。今回のOM-MF4は口径を考えた時にQ0の値0.64は決して高い数値ではなく、低い部類にはいるかと思います。よく共振のピークを抑えられているのが分かります。

 基本小口径のユニットはQ0が高いものが多くFOSTEXのFE83nvは0.78ですし、口径の近いP650Kは0.99です。OM-MF4はQ0の値はそれらに比べるとかなり低くなりますが、決してオーバーダンピングという特性ではなく、低域は下まで良くのびながらもよくダンピングの効いた音と予想しました。

 激安ユニットでマグネットをけちって高いQ0値になっているものをよく見かけますが、このOM-MF4はむしろここにはコストをかけているのがうかがえます。

■周波数特性の比較

 実際に過去の3機種を弊社の無響室で、JIS箱に入れて測定しました。

測定している時の写真↓

 マイクを10センチの距離で測定したものを比較しています。3つのユニットの特性を測定したものをグラフで比較できるようにしました。

 OM-MF4だけ口径が小さく能率が低いのでグラフが下にでていますが、低域は良くでているのがグラフから分かりますでしょうか?

グラフの

緑が2018年のOM-MF5
青が2019年のOM-MF519
赤が今回2020年のOM-MF4です。

 OM-MF5とOM-MF519は同一口径で気持ちだけOM-MF519のほうが能率が高いです。今回のOM-MF4は口径が小さいので当然能率が低いです。100Hz以上ほぼ-4dB程度の差で似た相似形ですが、100Hz以下は差が2dB程度しかありません。

 

つまりOM-MF4は相対的には低域のよく出るユニットというのがここでも示されています。

 インピーダンスを比較すると今回のOM-MF4が最もインピーダンスの山が低くでていまして最低共振周波数の97.5Hzとほぼ同じところにでています。(インピーダンスの山が共振点のF0になります) 通常は低域が出にくいはずの6センチのフルレンジユニットですが、スペック上からは低域がよくでることがわかりました。

 

2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発3(2020年9月14日配信)

 

 今回はOM-MF4を実際に弊社にある様々な箱にいれて主観的なユニットの素性についてファーストインプレションを行います。

 

■3.7Lの小型バスレフ & OM-MF4

 まず、OMMF4を以前に弊社でamazonで販売していた3.7Lの小型バスレフ箱にいれて音を聞いてみました。この箱はFOSTEXのFE系の8センチを入れてご利用いただける標準バスレフ箱で、最小サイズのものです。

 こちらの箱はノーマル状態ですと箱のダクトの共振周波数が105Hzぐらいのために、OM-MF4では高すぎで若干調整が必要でしたが、、音を聞いて率直に感じましたのは、このサイズの口径のフルレンジとしては非常に良く低域がでているという印象がありました。雑誌のセールスポイントにも、「驚くことに低域再生限界の目安となるfo(最低共振周波数)は6cmながら100Hz以下を誇ります。」とあります。前回のパラメーターの分析通りです。

 

 容積がかなり小さいシングルバスレフの箱のため、弊社のメインスピーカーと聞き比べをしてしまうと当然低域は不足して聞こえてはしまいます。音色全体で見ると前回の周波数特性の分析どおり、高域が多いハイ上がり特性ではなく、低域の多いローブースト系の音と言えるでしょう。

 

 このサイズの口径でしかも金属系のスピーカーユニットですからイメージだけだと低域が全くでなくて高域だけうるさいような印象を持つ方もいるかもしれませんが、実際は逆です。

 

 マークオーディオのほとんど全てのスピーカーユニットに共通していますが、高域に煩くなるようなピークなどは皆無で聴きやすく洗練された音です。明るく元気の良い音とよりかは、ちょっと暗めで落ち着いた音といったら良いでしょうか。

 

■4.6Lの小型バスレフ & OM-MF4

 

 続いて4.6Lの小型バスレフ箱を新たに4つ試作しました。一つ前に試聴した箱と比較するために、並べて撮影しています。

 

写真左が4.6L。写真右が3.7Lです。

 わずか1L差ですが超小型スピーカーはこの僅かな容積差で低域が大きく変わってくるから面白いです。これが仮に25センチウーファー用の70Lの箱だとしたら、1Lの差の違いは分からないでしょう。

 このクラスの口径のユニットはあまり使ったことがないのですが、FOSTEXのP650Kというカンスピのユニットが口径が近いので比較視聴してみました。

箱は同じサイズです。

 価格差がありますので比較するのは少し酷ですが、低域に関しては一聴して分かるレベルでOM-MF4が良くでていて外観のクオリティーも上です。

スペック的に
●FOSTEXのP650K

最低共振周波数 157Hz
出力音圧レベル 84dB/w
M0 1.8g
Q0 0.99

●マークオーディオOM-MF4

最低共振周波数 97.5Hz
出力音圧レベル 83.4dB/w
M0 1.69g
Q0 0.64

  OM-MF4は弊社のメインスピーカーと比較して聞くと、当然といえば当然ですが低音がでていないと感じるのですが、似た口径のP650Kと比較すると何故これほど低音がでるのか?と思えるほど良くでています。弊社の視聴環境では大音量で聞くのが前提ですので、低域の伸びや量感差というのはわかりやすい環境です。

  一方で、PC用のスピーカーやニアフィールドで小音量で視聴する場合ですと低域の差は分かりにくくなります。そのような用途で考えるとこのサイズでも本当に十分かなと思える量感ではあります。

  次回からは、昨年のOM-MF519やOM-MF5のエンクロージャー、Z701-Modenaなど弊社
の箱にいれて試聴してみたいと思います。

2020年ステレオ付録OM-MF4の箱開発4(2020年9月18日配信)

 

■過去のマークオーディオの限定箱で比較

 

 前回は2つの容積の小型バスレフ箱に入れてOM-MF4の低域がよく出ることを確認しました。続きまして、音工房Zで

 

●2018年に販売した
「2018年マークオディオー専用バーチキット&OMMF5」

●そして2019年に販売した
「Z701-OMMF519&OMMF519」

●そして弊社の定番である、「Z601(V2)&OMMF4」を比較試聴しました。

 

弊社では複数のスピーカーを比較する時は、スピーカーの能率差を補正する特殊なソフィソナントオーディオ製のセレクターを利用しています。このセレクターの凄いところは事前にスピーカーごとに音量差をプリセットできるところです。

スピーカーの能率差に騙されることなく比較的正しい比較が可能になります。こちらのセレクターにはプリアンプを内蔵していますが、以前使っていたプリアンプAccuphaseのC2410と音の違いがよく分からないので最近ではこちらのセレクターのプリとAccuphaseのパワーアンプA35が弊社のメインシステムとなりました。今回のOM-MF4は口径が小さく能率が約3dBほど低いので、OM-MF4だけ他の2機種と比較して+3dBに設定してテスト開始です。

 

■低域は2018年版に匹敵!

3つのSPのボリュームをセレクターでほぼ揃えて聞くと、さすがにZ701-OMMF519だけは箱のサイズが大きくローエンドは別格です。2018年マークオディオー専用バーチキットとZ601(V2)はエンクロージャーはほぼ同じなので、

2018年版と今回のOM-MF4は目隠しではほぼ分からないレベルといえます。むしろ違いがはっきりするのは高域の出方のようです。フルレンジスピーカーを長くやっている人はご存知だと思いますが、特にオーケストラのような音場感や解像度を要求されるソースの場合に8センチのフルレンジよりか10センチのフルレンジのほうが全体的な音の印象は上に聞こえる場合があります。

 

一方で、音の定位感に耳を向けると口径が小さければ小さいほど有利で、特にボーカル系や弦楽・管楽器など低音を要求されない単体ソースにおいては強みを発揮します。小口径も6センチとなるとユニット自体が点音源に近いので、多少バフルが大きくても空間に音像を表現する力が圧倒的に高いです。

の3つの箱の勝負ですと、2019年版が頭ひとつ飛び抜けている印象でした。Z601(V2)箱でも決して悪くはないのですが前回テストした超小型のバスレフ箱と比較して差が小さく感じました。

 

■Z701-Modena(V5)にOMMF4を入れて聞いてみる

そこで、低域を拡張する路線として2019年版にサイズ的に最も近いZ701-Modena(V5)の箱にOM-MF4を入れて聞きました。

 

スピード感はちょっとZ701-Modenaに比べると遅く、少しホワンとした感じになりますが40Hz近くまででている印象です。点数にすると70点ぐらいで、これで販売しても不満を言われることはまずないと思います。

 

不満点としては低域のスピード感が遅いことと、バランス的に低域が膨らみすぎてツィーターが欲しくなることです。

■昨年の限定箱Z701-OMMF519(2019年限定箱)にOMMF4を入れて聞いてみる

 

続いて、この低域の締りの無さを解消する目的で、2019年箱にOMMF4を入れました。写真ではユニットを変えていませんが箱のサイズ比較をご確認ください。かなり近いですが若干小さいです。

 

OM-MF519に合わせて作った箱でZ701-Modenaと同じ音道構造で幅だけ15mm短くして、最終ダクトを少し変更しています。その箱にOM-MF4を入れたところ、容積を絞ることで低域の締りがよくなるのを期待しましたところ、若干改善しました。やはり箱の容積をもう少し絞ったほうが
良い印象で方向性は間違えていないようです。

 

 

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