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Oh Daddy / Fleetwood Mac SACD Multi-5.1ch
規格品番: [WPCR14171]
曲と演奏者の概要紹介
今回の曲は、SACD Multi-ch(5.1ch )盤のご紹介です。
Fleetwood Mac(フリートウッド・マック)の " Rumours "(噂)から10曲目の " Oh Daddy " です。
今回ご紹介するアルバムは、2011年のDSDマスターによるSACDステレオとSACDマルチ(5.1ch)さらに通常のCD層とのハイブリッド版です。
本アルバムのオリジナルは、1977年発売のLP版で、1978年にグラミー賞の1977年最優秀アルバム賞を獲得し、ビルボードにおいて31週1位に君臨しました。
2012年時点で累計4,000万枚の売上を記録している、とのことです。
ただし、ここで取り上げたアルバムは、2001年のDVD-Audioのリマスター版をベースとしています。
このDVD-Audio版は、一部、オリジナルへの曲の追加と曲順の変更があり、PCMの96kH/24bitサラウンドとなっています。
本アルバムのSACDステレオとマルチは、このDVD-AudioのPCMマスターをDSD化したものとのことです。通常のCD層も、ベースとなるマスターは同じなようです。
フリートウッド・マックは、本オリジナルアルバムの作成時に、当時の5人のメンバー全員が離婚直後の状態でした。
内2組は、メンバー同士です。おそらく顔を見るのも嫌という状態で、約1年間かけて本アルバムを完成させました。それが、アルバムもシングルも大ヒットです。
強いストレスが、逆に強烈な創造のエネルギーとなったということでしょうか。
割合と淡々とした感じの曲が多い中、イングランド的といいますか、少し陰鬱のような気配が伝わって来る感じもします。
このアルバムの後は、やはりグループが分裂状態となり、また、再結成し、メンバーが変わり、再び5人になり、などを繰り返しますが、結果的には、本アルバムがフリートウッド・マックの音楽活動における金字塔と言えるかと思います。
本アルバムには、シングルでもヒットした曲が何曲かありますが、" Oh Daddy "は、その中にははいっていません。
クリスティン・マクヴィーのボーカルによるバラード調の曲です。
同じボーカルのバラードである12曲目の ” SongBird " が、ピアノによるリズムとメロディー・セクションのいわば正統的なバラード調の構成なのに対し、こちらは、ドラムとベースによるリズム・セクションとギター系のメロディーサポートとなります。
グループの精神的支柱でもあったミック・フリートウッドについての歌と言われています。
ちなみに、メンバーの中で、彼は当時唯一子供がいて、”親”だった、とのことです。
改めて、SACDマルチで聞くと、曲として、案外、本アルバムの録音の特徴を代表していると思ったため、取り上げてみました。
ピーク値の周波数特性での特徴と、マルチ版ならではの音の配置などの特徴が、本アルバムの典型的パターンを示していると感じました。
それらについては、各項目で、説明したいと思います。
特性測定と評価
本曲のピーク値の周波数特性の特徴
下図に、本曲全体のピーク周波数特性を示します。
グラフの縦軸が音圧(dB)、横軸が周波数(対数表記)で、22kHzまで表示しています。
図 " Oh Daddy " のピーク値の周波数特性
グラフの数値が小さいので、文章で補足します。
まず、縦軸ですが、一番上が、0dBで、次に、-20,-40,-60 dBで、一番下が-80dB となっています。
次に横軸ですが、一番左が、20Hz、右に向かって、100,1k、10kと記載されています。一番右の赤枠のやや内側の点線が、22kHz(正確には44.1/2=22.05kHz)に相当します。
この測定には、CDデータをWAVに変換したデータを用いました。また、測定は、データをPC上で再生して内部処理で行っています。従って、SACDの実際の値は、特に超高域で異なっているものと推定されます。
なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、ヘッドフォンにより行っています。このモニター用のヘッドフォンには、主にSennheizerのHD-660Sを用いました。
また、DACには、GustardのX16、ヘッドホンアンプには、同H16を用いてヘッドフォンも含めフルバランス出力でモニターしています。
本曲は、全体にさほど音圧レベルは高くはなく、楽音の領域で、-20dBをセンター軸として±5dB程度で振れている感じです。
最大のピークが880Hz(A5)の-12dBです。これは、ボーカルの発声のときに記録されています。この音も含め、抜きん出て高い音圧は、ほぼボーカルによるものです。
一方、横方向、周波数範囲でみると、案外平均してある一定以上の音圧で入っており、全体として広い周波数範囲の録音となっています。
まず、低域は約40Hzでも、約-20dBと高く、バスドラがしっかりと支えています。また、30Hz ぐらいの超低域のベースも音圧は低いですが聞きとることが出来ます。
35-200Hzぐらいの超低域から低域の音圧がしっかりと平均して高く、下を支えています。
中域は、サイドギターなどが印象的に聞こえる割には、大きなピークはほぼ、ボーカルによるものです。ボーカル重視なのが伺えます。つまり、様々な効果音も含めた楽器音は、ステレオで聴くと割合にぎやかなのですが、楽音としては、案外、それらの音圧は低くなっています。
その割には、4kHz以上の倍音成分の音圧が、比較的高いと言えます。これらは、リードギターやサイドギターの弦楽器系によるものです。
これらの倍音成分は2kHz以上の楽音領域にも既に多く含まれ、音程を示す離散的なピーク分布というより、稠密な分布となっています。ギターやバイオリンなどの弦楽器の倍音は必ずしも厳密な整数倍ではなく、倍音ごとに高めであったり低めであったりするのが普通で、揺らいでいることも多いためだと思われます。
これに比べ、12曲目の " SongBird " の場合は、ボーカルが同じクリスティン・マクヴィーで、やはりバラード調ですが、こちらのリズム・セクションとメロディー・セクションは、ピアノ系のキーボードとなります。ズドンという低音の支えや様々な倍音成分の多いギターなどの比率が少なく、ピアノによる比較的はっきりした音程のために、4kHzぐらいまでピークが離散的になります。
それらが相まって、ボーカルを浮かび上がらせ、リリカルに聞こえます。
比較のために、" SongBird "のピーク値の周波数特性を示します。
図 " SongBird "のピーク値の周波数特性
本アルバム全体では、後者のSongBird のような分布は少なく、どちらかというと、ベース、ドラム、ギターの組み合わせが主流なため、Oh Daddyのような分布が多いようです。
その場合は、いずれも、40Hz以下の低域までしっかりと音が入っているのが特徴です。
例えば、2曲目に入っていてシングルでも大ヒットした " Dreams " の特性を下図に示します。
図 "Dreams" のピーク値の周波数特性
本曲のボーカルは、スティービー・ニックスと上記2曲とは異なっていますが、全体のプロファイルは、" Oh Daddy " と似ているのが見て取れると思います。
Duke's Lullaby 5.1ch の試聴
Z800-FW168HRS(Front) + Z-Liborno(Center)+Z800(Rear)
ボーカルは、ほぼ前方センターに、また、それぞれの楽器や効果音が、周囲の360度の各々の定位置にほぼ割り当てられています。
それらは、ステレオで聴くと、前方で色々と結構賑やかに入っている印象なのですが、マルチでは、それぞれの位置からエフェクトと共に分離して鳴ってくるので、うまく、空間を形成してくれるという印象です。
さらに、各音が各スピーカーに割り振られ鳴るので、全体に音がスッキリした感じに聞こえます。例えば、サイドギターは右後ろ、リードギターは右斜め前方、ちょっと上の方、など、決して賑々しくはありません。
それらが、クリスティン・マクヴィーのしっとりとしたボーカルを浮き立たせてくれる感じです。
また、バスドラムとベースのリズム・セクションはしっかりと力強く前方から響き、安定感を醸し出します。
ベースの音が結構低音を響かせます。このあたりの低域の再生では、少しスピーカーを選ぶと思われます。
この、各楽器や効果音が前後左右、そしてやや上下、それぞれの位置にうまく配置されて前方センターのボーカルを浮き立たせます。
これは、マルチチャンネル再生の場合、このアルバム全体に言える特徴のように思われます。
比較試聴に用いた製品の紹介
今回の試聴に用いた主な製品を、紹介します。
AVアンプ : TX-RZ830(ONKYO)
ユニバーサルプレーヤー: UBP-X800M2(SONY)
スピーカー:
1. Z800-FW168HR (フロント、サラウンド)
https://otokoubouz.com/z800/fw168hr.html
2. Z-1-Livorno (S) (センター)
https://otokoubouz.com/z1/livorno.html
3. Z501を組み合わせ。(C=0.82μF)(センター)
https://otokoubouz.com/z500/501.html
CD情報