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ロンド/ ルカーシュ / Duo Di Basso
規格品番: [PCCL-00403]
曲と演奏者の概要紹介
今回ご紹介するのは、音工房Zの試聴会で、お客様からご推薦頂いたCDとなります。HDCD (STEREO)のアルバムですが、通常のCD再生環境で試聴を行いました。
規格品番は、[PCCL-00403]です。
本CDは、1997年発売のオリジナル版ですが、2007年にSACD(Hybrid)版もでています。
オリジナル録音が、1997年にプラハの聖ミヒャエル教会にてキャニオン24bitレコーディングシステムを用いて行われています。
このアルバムから、1曲目に収録されているルカーシュ(Zdenek Lukas)作曲のRondoをご紹介します。
演奏は、Duo Di Basso、これは、チェロのフランティシェック・ホスト(Frantiseek Host ;1955年生まれ)と、コントラバスのイルジー・フデッツ(Jiri Hudec ;1953年生まれ)の2人のグループです。チェロとコントラバスのデュオというのは、珍しい感じもしますが、Duo Di Bassoは、イタリア語で、”バスのデュオ”という意味のようです。
2人は、共にチェコの生まれで、年も近く、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーとして活動していたという共通点があります。それぞれソリストとしても活動しています。
ズデニック・ルカーシュ(1928-)もチェコの作曲家で、以前、友人でもあるDuo Di Bassoのために曲を提供しているそうです。
今回、本アルバムの冒頭を飾っている本曲は、早いパッセージの明るく豊かな低域が印象的で、かれらの素晴らしいテクニックをさり気なく伝えてくれます。
なお、本アルバムは、ボッケリーニ(1743-1805)、ハイドン(1732-1809),ジャホシュ(1938-)、クーブラン(1668-1733)、ダヴィド(1921-),デフォルジュ(1773-1838)など1600年代から現代に至るまでの幅広い年代の作曲家の作品を網羅しています。
また、彼らのアルバムは、HDCDや、SACDなどの高音質のCDで提供されていることが多いのですが、MORAなどのハイレゾの配信サービスなどでも提供されています。
特性測定と評価
本曲のピーク値の周波数特性の特徴
ピーク値の周波数特性について
本曲のピーク値の周波数特性を示します。
グラフの縦軸が音圧(dB)、横軸が周波数(対数表記)で、22kHzまで表示しています。
図 ピーク値の周波数特性
また、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、ヘッドフォンにより行っています。このモニター用のヘッドフォンには、主にSennheizerのHD-660Sを用いました。
グラフの文字が小さいので補足しました。
縦軸は、最大が0dBで、以下、-20,-40,-60,-80と表示されています。
横軸は、緑色の表示が、左から、20、100,1K、10kとなっており、右端の赤いフレームの手前の点線が、20kHzです。
曲全体の周波数特性に関する特徴
全体の音圧は、やや低めです。全体での最大ピークは、約188Hzでの-12dBとなっています。
ただ、この約200Hz以下の領域で、音圧が比較的高いのが目に付きます。
例えば、約110Hzでの-15dBや、81Hzでの-17dBなどの目立つピークがあります。この音域は、いわゆる低音として認識される音域ですが、この音圧が高く、さらにその下の50Hz以下20Hzまでの測定範囲まで、-40dB以上の音圧が入っています。
これにより、通常のスピーカーでも豊かな低音が認識されるでしょうし、また、さらに50Hz以下の極低域まで再生できるシステムでは、それとはまた異なる響きが伝わってくることが予想されます。
また、弦楽器特有の中域から高域にかけての稠密な波形は、倍音成分が豊かであることを示しています。中域での離散的なピーク値の大小の差が大きく、ダイナミックレンジの大きな音の出方に聴こえるものと推定されます。例えば440Hz付近では、ピークとディップとの高さの差が、20dB(-13dB vs -33dB)となっています。
最近のヒップポップなどの、全体に音圧が高く、隣の音とのピーク値の高さがあまり変わらない傾向の形状とはかなり異なります。
また、コントラバスとチェロですから、ある意味当然ですが、高域は、どんどん音圧が下がり、14kHz以上の領域では、-80dB以下、つまり音が入っていない状況となっています。
Rondo の試聴
試聴に用いた構成の紹介
今回の試聴に用いた主な構成を、ご紹介します。
今回は、Z701-Modena(V5)単体のケースと、それにZ505-Trentを追加した場合の2種類で比較試聴してみました。
Z505-Trentは本来Z800-FW168HR専用のウーファーシステムですが、今回は、ローパスフィルタ内蔵のアンプのテストを兼ね、次のようなマルチアンプ方式での試聴をおこないました。
しかしながら、今回は、ローパスフィルタ内蔵のアンプのテストを兼ね、次のようなマルチアンプ方式での試聴をおこないました。
図 今回の試聴システムの構成
パワーアンプ2のヤマハのP2500Sが低音用アンプとなります。このアンプには、サブウーファー用の設定があり、ローパスフィルター付きのアンプとして動作させることができます。さらに、カットオフ周波数を変更することが可能です。
このアンプについては、別の記事で詳細説明を行う予定です。
パワーアンプ1には、ラックスマンのプリメインアンプであるL550Aのパワーアンプ部のみを用いました。こちらには、今回、Z701-Moderna(V5)を接続しています。
また、今回用いたプリアンプのアキュフェーズC2410には、プリのoutputのセレクタがあります。裏面のoutput端子には非バランス出力(RCAタイプ)とバランス出力(XLRタイプ)があり、それぞれバランスのみ、または、非バランスのみ、または全てに出力が選べるようになっています。
今回、パワーアンプ1を非バランスに接続し、パワーアンプ2をバランス出力に接続しました。
これにより、パワーアンプ2=Trentへの出力の有無を、本セレクタにより容易に切り替えることができます。
写真 C2410のOUTPUTセレクタ
Z701-Modena(V5)+Z505-Trentでの試聴
まず、Z701単体のみで、試聴してみました。
ユニットの高中域とBHBS(バックロードバスレフ)方式の箱による中低域がバランス良くチェロを奏でてくれます。チェロとコントラバスの速いパッセージが心地良く響きます。
これはこれでいい音に感じました。
次に、+Trentoで試聴しました。
コントラバスの低域の存在感を強く感じます。かつ、たまに聴こえてくる超低域のうなるような響きが漂います。先ほどとは、次元の違う音というか、コントラバスとチェロの低域の本領が発揮されています。
これを聴いて、Z701のみでは、本曲の音を再生しきれていなかったことが実感されました。
ブーミーな低域の余剰感などではなく、空気感のある余裕を感じさせる音になります。
逆に戻って、Z701単体でまた聴いてみると、最初に聴いたときの満足感とは異なり、低域の音にやや凹凸がある印象を受けます。
それが、Trentとの組み合わせで、凸凹がなくなり、更に下の周波数まで、余裕で伸びているのを響きで感じます。
また、一方でZ701につかわれているModenaの中域とTrentoとのバランスが、改めてとてもいいように聴こえました。
実は、この組み合わせはあまり聴いたことがなかったので、このバランスの良さは、少し意外でもありました。本曲の特性がぴったりだったということもあるかもしれません。
本曲は、チェロとコントラバスのデュオで、低域にバランスは寄っていますが、Z701-Modenaの張りのある中域により、速いパッセージを軽快に奏でてくれます。また、Z505-Trento を加えることにより、深みのあるコントラバスの響きを聴き取ることができます。
音源としての録音の良さを感じました。
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