目次
Gustard X16の概要
Gustard について
Gustardの読み方
日本への販売代理店と思われるShenzhenaudioのホームページによると、日本語のページに英語読みのガスタードとフランス語の読みのグスタールの2つの読みのサイトがあり、よくわかりません。
ちなみに、gustarというスペイン語の単語があります。”好きにさせる”という意味の動詞です。
X16の外観と機能のレビュー
外観のレビュー
前面パネル
前面には、右側にプッシュSW付き回転ノブ(プッシュで機能選択、回転でサブメニュー選択)があり、センターにEL表示パネルがあります。表示の文字はやや小さく離れてリモコンで操作するのはやや困難です。
入出力の端子はありません。
底面側
底面側を示します。4つのネジ止めの頑丈な足がついています。ネジにより高さ調整もできます。
下の写真は、説明のために、左下の足のネジを外して、ひっくり返して撮影しています。
接続端子について
フロントパネル
フロント側に端子はありません。
リアパネル
入出力端子を左から順番に示します
1. XLR バランス プリアウト出力(左右)
2. RCA 非バランス プリアウト出力(左右)
3. Optical入力端子(上)
4. IIS入力(下)
5. AES/EBU入力端子
6. COAXIAL入力端子
7. Blue Tooth アンテナ接続端子(上)
8. USB入力(PC用:下)
9. 電圧切り替え(110V/220V)
10. 電源端子
11. Fuse
12. 電源スイッチ
内部構造のレビュー
内部全体
最初に、内部の全体の様子を示します。
筐体に基板がすっぽりと入っている構造で、分解が困難となっています。
トロイダルトランスは、筐体に取り付けたままで、基板を引き出してみた写真です。
電源まわり
奥のトロイダルトランス1個と、基板上の電源まわりのコンデンサ等を拡大して示します。
メイン基板
基板は、一部のモジュールがオンボードで乗っている以外は、基本一枚です。
基板の色は黒ですが、ソルダーレジストの色と思われます。
メイン基板には、DACまわりとプリアンプ、USBまわりなどすべてオンボードになっています。また、BT(BlueTooth)と思われるモジュールがオンボードで実装されています。
基本的に、アナログ信号系はオンボードで処理され、接続用の配線は無いようです。
DACチップ回り
DACチップ回りの拡大写真です。
ESS社のオーディオ向けDAC「SABRE DAC」シリーズの最新のES9068ASが左右に1個ずつ配置され、オンボード上で、完全バランス出力のXLRおよび非バランス出力のRCA端子に接続されています。
ES9068ASは、1chあたり4つのDAC内蔵ですので、2chで計8個のDACを使うことになります。
周辺パーツは、いわゆるオーディオ用が用いられています。
なお、ES9068ASは、MQAレンダラー機能がありますので、MQAコアデコーダー(ハードまたはアプリケーション)と組み合わせることで、MQAフルデコードが可能となります。
本機には、ハード内蔵で、MQAフルデコード対応です。
信号処理関連等
DACチップの右側には、大きなALTERAのCPLD、XMOSのUSB用信号処理チップ、また、ACCUSILICON社のフェムト秒水晶発振器2個とBlueTooth モジュールなどが実装されています。
拡大写真です。
ALTELAのCPLDの拡大写真です。ローコストファミリーのMAX IIを使っています。
DACの音の評価について
評価のシステム構成
以下に示す構成で、試聴を行いました。
構成としては、音源を、PCからのUSB出力とします。また、本機種はヘッドホンアンプが内蔵されていないため、プリアウトのXLR端子からの信号を外部のヘッドホンアンプに接続します。
PC
自作Windows10マシンで、やや古いi5ベースですが、今回の再生ファイルには十分と思われます。
PCアプリ
foobar2000で、CDベースのWAVファイルの再生を行います。44.1kHz/16bitです。
ヘッドホンアンプ
GastardのH16をヘッドホンアンプに用い、XLR接続で使用します。
ヘッドホン
ゼンハイザーのHD 660Sをバランス出力(4.4㎜、5極)で接続します。
X16の音の評価
X16の音の評価
各ジャンルの次の4曲について行いました。それぞれの試聴コメントを記載します。
各曲の詳細については、”高音質オーディオソース”シリーズのブログを参照ください。
最初に、Rock You Gentry / Hunter / Jennifer Warnesを試聴しました。まず、初めのベースが、かなり低い音域ですが、きちんと再生されます。ただ、同社のA22にくらべると、弾んだ感じは少し足りないようです。続くジェニファーのボーカルは、ナチュラルです。全体にまとまりはよく、バランスとしては低域が豊かという感じがしますが、ドラム系のハイハットなどのキレはよく、パンチ力を感じます。
次に、弦楽四重奏 第16番/ ベートーベン / Hagen Qualtett を試聴しました。中域が厚く、チェロの音がしっかりしています。バイオリンの高域の伸びは、A22やsmslのSU-9に比べると、ややおとなしい印象です。そのせいでしょうか、A22の方がダイナミックレンジが広い印象を受けます。
次に、California Roll Ft. Stevie Wonder / Bush / Snoop Dogを試聴しました。
エレクトリックベースの超低域が、豊かに響きます。一方、クラッブなどの高音域の効果音のキレが、SU-9よりもやや甘い印象です。低域のゆったり感がとてもいい感じがします。
最後に、In The Wee Small Hours (Of the Morning) / Here's To Ben / Jacinthaを試聴しました。全体にこの曲のジャズ的な雰囲気が良く出ている感じがします。
Jacinthaのボーカルのがしっとりと響きます。続くベースも低域が響き、ピアノといい感じで絡み合います。
全体に、同社の上位機種であるA22に比べ、高域のキレがやや甘い感じもします。一方、ゆったりとした豊かな低域がよく響きます。あくまでイメージですが、真空管アンプのゆったり感に通じるような印象を受けました。
まとめ
GastardのX16のレビューを行いました。同社は、日本では、まだ、知名度が低いと思われますが、いわゆる中華系で、R&D志向を方針に記載している少し特異な会社です。
サイズの割に、重量感があります。2.5kgです。ちなみにこれは、同シリーズのヘッドホンアンプH16と同じです。この2つは、電源系のパーツが共通なのではないかと思われます。
また、内部は、筐体内が狭いせいか、トロイダルトランスの充実した電源を持ち、左右の独立した完全バランス出力構成であることなどにより、結構、ぎっしりと詰まっている感じです。
使用されている部品は、コンデンサ類も含め、オーディオ用に吟味されたものが用いられており、基板上に整然と実装されています。
この部品構成を見ただけでも、コスパはかなり高いという印象です。
また、ES9068ASは、MQAデコード機能が内蔵されており、本機は、既にMQAからの認定もうけていますので、MQAコアデーコーダー機能をもつ音楽ソフトとの組み合わせで、ストリーミング配信やダウンロード配信のMQAファイルをフルデコードして再生することができます。
試聴の結果としては、まず、豊かな低域が印象的です。また、中域も充実しており、高い音圧を感じます。高域については、上位のA22などに比べるとややキレと伸びやかさが低い感じですが、高域が足りない、という印象ではありません。
特に、ジャズ系の音楽やフルオーケストラをゆったりと聴くにはとてもいい雰囲気を醸し出してくれそうです。
本機は、いわゆる中華DACですが、高性能の部品を高い技術力で使いこなしている印象で、それが、音の質に反映されており、本来の意味のコストパフォーマンスの極めて高い製品と感じました。