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Robbie Robertson / Robbie Robertson
規格品番:[ 32XD-786 ][ UICY-94702 ][ UICY-91288 ] 他
本アルバムの概要 について
今回ご紹介するのは、1987年にGeffen Recordから発売されたロビー・ロバートソン(Robbie Robertson)の同名のソロアルバムです。今回試聴したCDの規格品番は[32XD-786]ですが、これは既に廃盤となっており、これ以外にCD/LPなどのバリエーションが89もあるようです。
Amazonにも何種類か掲載されており、版によって価格はかなり異なります。
ロビー・ロバートソンは、The Bandのリードギター/ボーカルであり、リーダー的存在でした。
The Bandは、ボブ・ディランのバックバンドとしてスタートしたことでも有名です。そのサウンドは、重いビートの土臭いロックというイメージで、代表作としてよく引用される曲に、" The Weight "などがあります。
本アルバムは、そんなThe Bandとは、音楽の傾向が大分異なります。
発表当時、解散後10年が立っていたこともあり、The Bandサウンドの復活を期待していた一部のファンには、拒絶反応もあったようです。
本アルバムのサウンドは、当時の先端のイメージです。録音も優秀。
さらに、全体の落ち着いた雰囲気は、音楽的に普遍的なものも感じさせます。
演奏には、U2、ピーター・ガブリエル、トニー・レヴィン(b)や、ギル・エヴァンスの率いるホーンセクションなどなど、名プレーヤーが多数参加しています。
ロビー・ロバートソンは、1943年生まれのカナダ人。ユダヤ系の父と、モホーク族インディアンの母との間に生まれました。父が早くに亡くなり、育ったのは、貧しいインディアン社会です。極貧というレベルだったようです。
このことは、アルバム発表と同年の1987年に、ローリングストーン誌で、明かされました。また、本アルバムは、この出自について歌ったものであると彼はコメントしました。
The Band解散の経緯には、わかりにくいところもあり、ロビー・ロバートソンが意志を通して脱退したことになっていて反感を持つファンも多いようなのですが、音楽的にこの出自にこだわっていきたい、という強い思いがあったのも、その一因かもしれません。
アルバム全体には、やや重い陰鬱な雰囲気がただよっているようにも感じられます。U2やピーターガブリエルなどの持つ、アイルランドの薄暗い曇り空のような雰囲気も連想されます。
心臓の鼓動のような低域のビートで始まる深く重いサウンドは、大人の音楽といった雰囲気を醸し出します。アルバム全体に、低音の太いリズムが曲を支えます。
このアルバムには、しっかりした低域の再生能力を持つシステムが必須です。
各曲のピーク値の周波数特性の特徴
各曲のピーク値の周波数特性を測定し、その特徴を検討したいと思います。なお、以下記載のある曲と各ピークの確認等については、モニター用のヘッドフォンのSennheizerのHD-660SとSONYのMDR-M1STを用いました。
" Fallen Angel " (堕天使)のピーク値の連続データの周波数特性について
1曲目の"Fallen Angel"(堕天使)のピーク値の周波数特性を示します。
この曲は、冒頭の心臓の鼓動を連想させる音、ドラムシンセでしょうか、が特徴的ですが、曲全体にベースとドラムスのしっかりした太いリズムを感じます。ロビー・ロバートソンとピーター・ガブリエルのツインボーカルで、ドラムスは、フランス人のマヌ・カチェ(Manu Katche)です。
図 1. "Fallen Angel" のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
この図では、縦軸横軸を補完しています。縦軸が音圧で、0dB~-80dB、また、横軸が周波数で、20Hz~20kHzとなります。
全体に、録音レベルは、やや抑え気味で、最大のピーク値でも-20dBに達していません。
曲全体は、右肩下がりのプロファイルとなっています。
白いカーソルで示した位置は、約41Hzで、小さなピークがあるのですが、それより低い、約38.4Hzのやや大きなピークは、4m45sec付近から入っている唸っているような効果音によるものです。
またその下の約35.7Hzのピークは、冒頭の鼓動のようなビート音に由来します。
" Testimony " (証言)のピーク値の連続データの周波数特性について
次に、本アルバムの最後の曲、9曲目の " Tetimony "(証言)のピーク値の周波数特性を示します。
図 2. " Tetimony " のピーク値の周波数特性(Wave Spectra使用)
本曲には、U2が、ボーカル(Bono)、ドラムス(Larry Mullen Jr.)、ギター(The Edge)、ベース(Adam Clayton)などのメンバーとして参加しています。また、ホーンセクションは、ギル・エヴァンス率いるメンバーです。この曲も、ロビー・ロバートソンとボーノのツインボーカル構成となっています。
全体に音圧は-20dB以下というより、約-30dB以下とピークの音圧が低い傾向は同じです。
その中で、相対的に低域の音圧が高くなっています。白いカーソルのところにも小さなピークがあるのですが、約32.3Hzです。それよりもやや高い周波数にある尖ったピークは、約33.6Hzとなっています。いずれも、30Hz台前半です。
本曲には、この領域の再生能力が必要ということになります。
曲全体を表ノリの太いバスドラがビートを力強く刻みます。それにかぶせて、ボーカルが何かに抗議するような強い口調でシャウトし続けます。
本曲のタイトルは、証言、です。
ホーンセクションは、煩い感じではなく、ややメロディアスで効果音的です。ある意味、進軍ラッパのような意味合いでもあるのかもしれません。
Z1000-FE108SSHP+スーパートゥイーターZ501での試聴
フォステクスの限定ユニットを用いたZ1000-FE108SSHPにスーパーツィータのZ501(ウォールナットエディション)を組合せてみました。
ネットワーク用のコンデンサは、0.82μFを用いました。Z501の接続は今回は正相に接続しました。
本アルバムに入っている30Hz台の極低域を、Z1000-FE108SSHPは、サラッと、かつゆったりと再生してくれます。
それが、本アルバムの各曲への深みを加えてくれます。余裕を持った音です。
ロビー・ロバートソンのややしゃがれたような渋いボーカルが程よく聴こえます。
やや驚かされたのは、各音の定位感の良さです。
Z1000-FE108SSHPは、横方向にスリムで、左右もカットが入っており、正面からみるとややシャープな印象です。
それが、点音源的な効果を出しているのでしょうか、高域の効果音などが定位感よく配置されるのがわかります。
アルバム全体で感じるのは、インディアンドラムのような太鼓の存在です。それが、効果的にリズムを刻み、異世界へと誘ってくれます。
本スピーカーで聴くと、陰鬱だけの世界ではない、スピリチュアルな何かを感じさせてくれるようです。
CD情報
アマゾンのリンク先(下記画像をクリック)