目次
はじめに
前回は、マルチチャンネル再生に対応した音楽ストリーミングサービスの現状を俯瞰して、Apple MusicのDolby Atmos配信サービスがスピーカーのマルチチャンネル再生に対応することをご紹介しました。
今回は、それを再生する環境(システム)の構築の事例についてご紹介します。
ストリーミング配信のドルビー・アトモス再生環境
Apple Music → MacBook Pro → AVアンプ
具体的な構築例として、前回もご紹介したように、マルチチャンネル再生のフォーマットとして、ドルビー・アトモス(Dolby Atmos)を取り上げ、それに対応した音楽ストリーミングサービスとして、Apple Music、また、それを再生するシステム構成としては、MacBook ProとAVアンプを接続した事例とします。
スピーカー構成は、5.0.2chにしてみました。
図 Dolby Atmos対応のスピーカー構成例(5.0.2ch)
システムの接続フロー
本再生システムの接続のフローを示します。
それぞれについて、次にご説明します。
接続フローで示した機器の説明
MacBook Pro と Apple Music
MacBook Proは、M1チップのタイプです。
本機のインタフェースは、Thunderbolt4ポートが左サイドに2つあるだけです。
これを次のAVアンプとHDMIで接続したいのですが、本機には、HDMI端子がありません。
そこで、Thunderbolt4ポートにHDMIポートのついたI/O拡張アダプターを取り付けて接続します。
ちなみに、Thunderbolt4のポート形状は、USB-Cと同じで、上位互換となっています。
Thunderbolt4用の拡張アダプターは高額です。汎用的なUSB-C用の機種でも、今回の用途なら使用可能です。ただ、できるだけ高速対応してあるものがいいかと思います。
なお、ケーブルには、HDMI2.1対応品を用います。Dolby Atmosの信号を流すには、HDMI2.1でeARC対応端子が必須です。
HDMI2.1対応品は、ウルトラハイスピードや、帯域幅48Gbpsとも表現されます。
最近は、PS5などのおかげか、HDMI2.1対応ケーブルがとても安くなっていますので、1.4や2.0からバージョンアップし易い状況となっています。
Apple Musicの接続のためには、AppleIDの取得とクレジットカードの登録が必要です。
この登録等については、Appleのサイトを御覧ください。
Apple MusicやAppleTV+など4つのサービスをまとめたApple Oneなどというサービスもあります。
AVアンプ
AVアンプとしては、次の2つの条件が必須です。
1. Dolby Atmosに対応している
2. 少なくも7ch相当のパワーアンプを内蔵している。
条件1.については、最終的に、上面にスピーカーを設置せずに5.1chや7.1chなどで再生する場合でも、AVアンプそのものはDolby Atmosに対応していることが必要です。
AVアンプは、使用する前に、設定ウィザードなどで、スピーカーのセッティング状態を設定し、自走測定して測定結果を記憶させる必要があります。この際、例えば、5.0.0chに設定すると、サブウーファーがないので、サブウーファー用の信号があった場合は、メイン等に振り分けられます。また、上面のスピーカーもないので、この信号も適宜各チャンネルに振り分けられます。これらは、システムがスピーカーセッティングに応じて自動的に行います。
逆に、5.1.2chにスピーカーを配置して、設定ウィザードで、セッティング状態を自動測定し記憶させておけば、リソースが2chや5.1chでも、ドルビー・サラウンド(Dolby Surround)やDTS Neural:Xなどのアップミックスのモードにすることで、5.1.2ch相当で聴くことができます。
Dolby Atmosに対応している機種であれば、最低この2社のアップミックスのモードがあります。また、その他に、Auro-3DnoAuro-Maticや、ヤマハ独自のシネマDSP HDなどというのも同様です。
これらは、かつてのアナログ方式のサラウンドとは異なり、全てデジタル処理ですので、ここでの処理により音がなまるとかはないと言っていいかと思います。
ただし、この場合、ドルビー社やDTS社など各社毎のアルゴリズムが異なりますので、サラウンド音は異なります。好みの方式を選べるともいえます。
また、音質については、音楽再生アプリによって音が変わります。従って、Apple Musicのそもそもの音源の質やアプリそのもののアルゴリズムなどにより、音のクオリティがSACDなどと異なるということは、あり得ます。一度、比較試聴したいと思います
特に現状は、ストリーミング配信でマルチなスピーカーによるDolby Atmos再生が、Apple Musicのみという状況で、実質的に競合がいないという状況ですので、クオリティの向上という観点では、ユーザー側にいい状況とはいえないかもしれません。
なお、この再生のためには、最低限、条件2の7ch(5+2)分のパワーアンプ内蔵であることが必要です。
サブウーファーとしては、スピーカーとしてパワーアンプ内蔵型が想定されています。従って、通常はサブウーファー用のプリアンプ出力があるのみです。
今回は、ONKYOのTX-RZ830を用いた接続例を示します。
接続については、各社、ほぼ同様です。
スピーカー構成(5.0.2ch)
マルチチャンネルのスピーカー構成は、本来は、少なくも水平方向の5chのスピーカーは、位相の課題等を考慮して同じ機種を用いるのが理想です。
今回は、比較的狭い部屋で、小型のスピーカーを中心にコストエフェクティブな組み合わせのセッティングを設定してみました。
セッティング場所のイメージは、4.5畳から6畳程度の洋室です。
書斎に設置したデスクトップマルチチャンネルオーディオ、という感じでしょうか。
ここでは、各チャンネルの特性も考慮して異機種を組み合わせた例をご紹介します。
センター用とフロントハイト(左右)用
以前販売していた” Z600-点音源 "を用いてみました。
これは、Z-Modena mk2を、小型のバスレフ箱に入れたタイプです。センターとフロントハイトは、定位感と臨場感に関係してきますが、特に中高域の再生能力が要求されるので、このタイプが合うと考えた次第です。
コンパクトで比較的軽量かつクリアな音質です。
フロント用(左右)
Z1-Livornoを用いてみました。
Z1-Livornoは、比較的小型にも関わらず、豊かな低域を再生します。フロントの信号には、低域成分も多く含まれますので、低域再生能力は重要です。
サラウンド(左右)用
ここでは、2択を考えました。一つは、フロントと同じZ1-Livornoを用いることです。
もう一つは、センター用と同じユニットを用いたZ700-modenaを用いるセッティングです。
Z700は、8cmのZ-Modenaを用いていますが、エンクロージャはBHBS(バックロードホーンバスレフ)で、サイズからは想像できないほど豊かな低域の再生能力があります。サラウンドからも低域が出ることもあるので、フロントの低域を補うという意味でも低域再生能力はある程度重要です。
以上、ストリーミング配信サービスからの音源をマルチチャンネルのスピーカーで再生するフローの概要をご説明しました。
次回は、MacBookProの設定について、ご説明します。設定は、Windows10/11に比べれば、遥かに少なくなっています。
ただ、一旦シャットダウンすると、立ち上げる時に設定状況を確認する必要があります。
また、ご紹介した機器を接続して、実際に音を聴いた印象についても述べたいと思います。比較対象としては、同じリソースのSACDマルチを想定しています。