目次
開発1 はじめに
現在私大山はこれまでチャンレンジしたことのないスピーカー開発に取り組んでいます。昔からやってみたいなと思っていましたが、勉強や実験をしなければならないことが多く大変なプロジェクトになるのが分かっていましたので躊躇していました。
それはずばり、
「フロントロードホーン」
のキット商品の開発です。
フロントロードホーンのキット???そういう商品はこれまでなかったのと思いますので、↓の写真を見てもらうと一発でイメージがつかめるかと思います。
フロントロードホーンと言うと、JBLなどの能率の高い38センチスピーカーと合わせて使うような一昔前のスピーカーに感じる方が多いかと思います。今ではアンプの性能が良くなりましたので、小型で能率を低くしたモデルがスピーカーの主流となり、ホーンは一部のマニアのものになってしまいました。
38センチウーファー&ホーンスピーカーは費用と広いリスニングスペースが必要ですので、よほどお金を沢山もっていて完成品を買える人か恐ろしいほど技術をもった自作マニアにしか手出しできるものではないという印象でした。 ウッドホーンの自作というと新井悠一先生の名著を超えるものは世界のどこを探してもないかと思いますが、新井先生の本を購読して
「よし!フロントホーンを自作してやるぜ!」
と実際に行動に移せた方は多分100人に1人いるかいないかと思います。フロントホーンを木材から買ってきてゼロから自作するのがどれほど大変かは容易に想像できるかと思います。
音工房Zでは、このフロントロードホーンの制作の一番大変なホーンの主要R部分をプレ加工したものをキット化し、簡易的な自作加工をすれば木工素人でも簡単に組み立てることができるようなキット商品を作ろうと決めたのです。
組み立てて塗装した完成品を30~100万くらいで販売している業者は世界中にいますが、私がその真似をしても意味がありません。ニーズがあったらもちやりますが(笑)キットですから、だれもが手の届く価格であること、簡単に製作できること、音が最高に良いことが大事です。これらを全て満たしたものを作ってゆこうと思っています。
とはいえ、狭い家と高齢化が進む日本でウッドホーンキットが爆発的に売れるとは少々考えにくいので、世界のオーディオファンに訴求してゆくモデルにしたいと考えております。こちらをやりたいと思ったのは、ウッドホーンをキットとした商品を未だ見たことがなくチャレンジしてみたいというのもありますが、、昔に影響を受けたというか憧れたスピーカーである↓の300万のスピーカーの存在が大きいです。
http://www.diyloudspeakers.jp/5000html/jbl/s9800.html
開業する前に書いたものですが、「いつかこの音を自作で実現してやりたい!」という気持ちがあったんだと思います。
フロントロードホーン開発2 コンプレッションドライバーについて
本格的なフロントのホーンスピーカーは初めてになりますので、音工房のユーザー様や読者様でこちらの世界を取り組まれている方は私よりか多くの知識や技術のある方も多いかと思います。間違いがございましたらご指摘いただけたら幸いでございます。
初めての方にもわかりやすいように、まずはホーンに利用するコンプレッションドライバー(音がでるスピーカーユニット部分)について解説してみたいと思います。このコンプレッションドライバーは大別すると、1インチ用と2インチ用に分かれます。
1インチはだいたい2.5センチですので、出口の直径が2.5センチのコンプレッションドライバーが1インチ用。2インチ用のコンプレッションドライバーは倍の5センチの直径になります。1インチ用のコンプレッションドライバーですと、振動板は倍の2インチサイズのものが使われています。
振動板は逆のドーム型をしておりまして振動板の直前にイコライザーがセッティングしてあり、振動板より小さい音道を通って、ホーンにつながります。↓の写真は1インチ約直径2.5センチのコンプレッションドライバーの音の出口部分の写真です。(PRVAAUDIOというメーカーのドライバーです)
コンプレッションドライバーを分解してみた内部の写真が↓です。
写真左がイコライザーで、右が振動板です。角度を変えてみるとボイスコイルがついています。
圧縮を意味する「コンプレッション」はこの特殊な内部構造から来ております。振動板背面は密閉されており、振動板直前にはイコライザーが設置され、出口は振動板より狭いスロートを通ります。圧縮感半端ないですね(笑)
このスロートの先にフロントホーンを組み合わせることで、フラットで非常が能率が高く細かい音にも敏感に反応する音になります。ホーンはご存知のように、低域にいくに従い出口のサイズと、長さが長くなる特徴があります。
そのため、一般的にフロントホーンは2インチ用ですと600Hzあたりから上の帯域を、1インチ用ですと1000Hzあたりより上の帯域を使うようです。当然、2インチ用のドライバーのホーンのほうがサイズが大きく、1インチ用はそれよりホーンのサイズも小さくなります。
ホーンの帯域より下の帯域にはウーファーやミッドバスを普通はホーンなしのダイレクトラジエーター型を一般的には使います。つまりホーンで使うのは中高域から高域が主体になります。低域帯域にもホーンを利用するとなると壁にホーンを埋め込むような感じの巨大なシステムになってしまうからです。
なぜ大口径ウーファー&ホーンなのか?
コンプレッションドライバーは能率が110dB/Wと高いために、ウーファーも高い能率の大口径ものが合わせやすいです。ホーンはもともとアンプが非力な時代には劇場などで少しでも高い音圧を得るために利用されていた背景があります。
大口径ウーファー&ホーンというのは古典的ではありますが一つの定番ではありますのでまずはこの形でやってみようと思っています。しかし、私は古典的な方法に拘らなくても別に良いと思っています。
ヨーロッパ系のメーカーとかは小型ウーファーに円形の高域ホーンをあわせた商品が最近ちょっとした流行のような感じになっているのを感じませんか?低能率ウーファーとウッドホーンを合わせて、デジタルデバイダーでゲイン調整をしても別に良いのではと思います。
今の時代にあったいろんな楽しみ方を提案できればと思いますが、次回は新井先生の本の作例をベースに作った試作品の音出ししたいと思います。
開発3 1インチ版の箱の試作
まずは新井先生の本を参考に1インチスロート用のウッドホーンを試作しました。MDFで試作したモデルが下です。側面はR加工せず、フィンもなしです。アダプターもオリジナルからはかなり変えてしまっています。
簡単にコンプレッションドライバーの取外しができるように2枚式にしてみましたが、このアイデアはスロートの穴のテーパー化が難しいのであとあとボツになります。
ある程度有名なコンプレッションドライバーに合わせて汎用性のあるモデルにしたいと思っていますが、まずは作ってみたのを、コイズミ無線さんで購入したBeymaの一番安価なCD10NDNと試作していたサブウーファー用の20センチ2発のウーファーと合わせてみました。
さすがにウーファーの能率が低すぎで、、クロスを1KHzあたりにするとウッドホーンを10dB以上落として使わないとバランスがとれません。しかし、音自体はウッドホーンの独特の密度の高い高域がなんとも魅力的です。クロスをもう少しあげて聞き込みましたがこれなら低能率ウーファーと合わせてもいけそうな気はしました。
適当な調整ですのでバランスはよくありません。1KHzあたりのピーク感が気になりましたがこれが、ドライバーのせいなのか、ホーンのせいなのかわかりません。
「ホーン」と「ドライバー」の関係を測定で調べる
ウッドホーンの試作を一つ作ってみたわけですが、昔にオークションで購入したFOSTEXのH425というウッドホーンと、大昔に自社でテスト用に作ったウッドホーンが1つあります。3つのウッドホーンの写真は↓です。1インチ用のホーンですが形状がだいぶ異なります。
ドライバーはbeyamaのCD10FE/NとFOSTEXのD1405という2機種があります。ホーン3つと、ドライバー2つありますから全6パターンの組み合わせを弊社の無響室で全測定をしてみました。測定はスロートの開口部とマイク1mです。
ちなみに点線は、コンプレッションドライバーのみで測定したものです。実線部分がホーンで持ち上げられた特性です。
(1)beyma CD10FE/N * 新井先生のA-480ベース
(2)beyma CD10FE/N * 音工房で大昔で作ったホーン
(3)beyma CD10FE/N * FOSTEXのH428
(4)FOSTEX D1405 *新井先生のA-480ベース
(5)FOSTEX D1405 *音工房で大昔で作ったホーン
(6)FOSTEX D1405 *FOSTEXのH428
FOSTEXのドライバー1つに固定して、ホーンを3つ変えたときの3つの特性は↓でした。
(4)と(5)と(6)の比較です。
一方、ホーンは私が自作したものに固定してドライバー2つを付け替えたときの特性は↓でした。(1)と(4)の比較です。
これを見ていただくと、ホーンを変えたときもドライバーを変えたときも当然特性は変わりますが、音の変化量で見ますと、ホーン自体よりかドライバーを変えたときのほうが変化量は激しいのがわかりました。当然といえば当然の結果ですが、ほぼほぼ視聴したときの印象がそのままF特グラフにでている感じでした。
次回から新たにドライバー5つ、新たに試作したウッドホーン4つを組み合わせて試聴してみたいと思います。さらに大型の38センチウーファーの箱も試作して聞いてみようと思います。
開発4 38センチウーファーボックスの試作&徹底比較視聴1
それまで、ホーンは20センチ2発の試作用のサブウーファーボックスで試してきました。超高能率のホーンドライバーと合わせる定番といえばやはり38センチです。MDFで150Lの箱を試作しました。
写真でみると伝わらないのですが、半端ないサイズですね。長岡先生のD58より巨大です!この箱の隣にリファレンスのJBLのS9800を隣に置くと、サイズ感がわかると思いますがS9800より奥行きがあるので内容積的には大きいです。
この実験のために自作したホーンと合わせてオークションでいろんなアイテムを購入しました。まずは、ウッドホーン。自作3機種。FOSTEXの規格品2機種。ウッドホーンはさらに2機種目の試作をしました。
続いて、コンプレッションドライバーです。JBL2機種、FOSTEX1機種、TAD1機種、
38センチウーファーはJBL1機種、TAD1機種、DAYTON1機種です。
「ウーファー」と「ドライバー」を固定して、ウッドホーン4機種の差を比較
ウーファーはJBLの2331A、ドライバーはJBLの2425Jに固定です。ネットワークボックスとATTを使って、調整をしながら試聴をしました。前回の測定結果から、ホーンによってどのあたりの帯域の音が影響を受けるかが頭に入っていました。
人間の耳にかなり敏感な600Hzから2KHzああたりの特性が変わりますから、結構聴感でわかる大きな差がでると予想しました。各ユニットのレビューは↓です。
(1)FOSTEX H425
元気が良い音。高域は軽くネットワーク調整をしまして、ウーファー1000Hzから12dB/octでカット、ホーン付きのドライバーは2000Hzから12dB/octカットでうまくなりました。ATTは-10dBにして、こちらを基準に以下のスピーカーも聞いていくことにしました。
(2)FOSTEX H400
同じチューニングにしたところ、高域はH425より少ないためATTを-12dBにして聞くと、凸凹が目立つ感じで結構ピーキーな感じがしました。ホーンが短い分高域が少なくなって調整が楽なのかと思いきやそういう単純なものでもなさそうです。
(3)音工房の1つ目の試作
<新井先生のA480参考>
最もホーンの力が強くかかっている印象です。良く言えば、ホーンで高域が大きく持ち上がっているのですが、若干ホーンの音が強いという印象がありました。もちろんネットワーク調整でよくなるレベルです。
(4)音工房の2個目の試作
1つ目の試作の改良版です。スロートを35mm*35mmに拡大してホーンの角度を1つめの110度から150度に増やしました。こちらがアガチスの集成材で作った一発目でしたが、MDFの試作よりか音に角がなく高域はとても聞きやすいものでした。ホーン自体が楽器的なものですので、ウーファーやフルレンジの箱よりか素材の影響が大きいのかもしれません。
まとめ
半日近くかけて聴き込んでみたのですが、書ききれないほど沢山の発見がありました。隣に座っているS9800は2インチのドライバーで3wayなので音色が全く違うのですが、3way特有のソフトな耳あたりです。今テストしているのは、38センチウーファーと1インチドライバーの2wayです。2way
の良さは切れ込みとスピード感です。
2WAYと3WAYでは比較対象にならないので良し悪しを論じるのは難しいのですが、さすがにまだまだ高域はS9800に勝てるレベルではありません。ただ、低域のローエンドからミッド部分に関しては多分箱の容積が効いているんだと思いますが、余裕でS9800を上回っています。ローエンド音源でブラインドテストをしても充分勝てると思います
あるところまで進んだら、お客様にも聞いてもらおうかと思いますが、次回は、コンプレッションドライバーとウーファーを変更して試聴してみます。
開発5 コンプレッションドライバー比較
前回はコンプレッションドライバーとウーファーを固定して「ウッドホーン」を4つだけを取り変えて比較しました。今日はコンプレッションドライバー4種類を比較します。ウーファーはJBL2331Aに固定。ホーンは弊社の2回目の試作品に固定しました。
コンプレッションドライバーだけつけかえて、比較します。ものによってATTとネットワークを少しいじりながら試聴しましたが、基本1kHzあたりのクロスに-10dBぐらいに落ち着く感じです。
◯TAD TD2001
現在でも超高額ですが新品入手できる、パイオニアのTADのコンプレッションドライバーです。ベリリウム振動板を採用しています。現在の新品はTD2002となっていますが、定価63万ですので、ペアで100万以上と超高額です。TD2001でしたらオークションで中古でペア10万~20万ぐらいが相場でしょうか。新井悠一先生の本でも紹介されています。
一聴した印象としては能率が高く、5KHz以上の超高域がこれまで聞いていたJBLの2425Jに比べて多くでている印象でした。高域のピーキーさは感じることなく透き通った音が特徴です。、ネットワークを弄くりまわさなくてもATTだけでうまく繋がってくれる印象がありました。
◯BEYMA CD10FE/N
ペアで3万円ほどのコンプレッションドライバーです。
一番最初にこれだけで聞いた時は「もしかしたら使えるかな?」と思いましたが、JBLやTADと比較してしまうとさすがに勝負するのは難しい印象でした。
JBLやTADは廉価で探すとほとんど中古になりますので、現状販売されているもので比肩できる新興メーカーで良いものがないかでいろいろ試してみようと思います。すでにある程度買い込んでいますので、こちらでレビューしてゆきます。
◯JBL 2420
個人的にはこちらがベストでした。中古でオークションでペア6万でした。
高域まで上まで伸びています。高域に気になる帯域がほとんどなく長く聞いていて疲れることなく、音も繊細で素晴らしいです。ビンテージオーディオには懐疑的な私ですが、良いものは良いですね。
◯FOSTEX D1405
こちらはつい数年まで新品で入手できましたが、販売終了となってしまいました。能率が他の機種に比べて低く扱いやすいのが特徴です。ほとんどのコンプレッションドライバーが110dB/Wのところ、こちらは104dB/Wです。そのため、ATTは合わせるウーファーにもよりますが-5dBぐらいでいけました。音のクオリティーも良いので、新品購入できればお客様にもおすすめできるのに残念ですね。
まとめ
前回は「ウッドホーン」の4種比較。今回は「コンプレッションドライバー」の比較でした。前に測定データでホーンとコンプレッションドライバーの音の変化量を調べましたが、聴感上でもコンプレッションドライバーの音の変化量が激しい結果となりました。まあ、当然といえば当然ですね。
オーディオマニア的には1つのコンプレッションドライバーに特化したウッドホーンを作るという方向もありますが、それはニーズ的に厳しいと思うのでいたしません。ホーンと合わせるコンプレッションドライバーはネットワークの変更で対応できるところも大きいので、まずは1インチのウッドホーンキットを作ってそれに合わせるドライバーやネットワーク情報の提供を初心者から中級者向きにしたいと思います。
コンプレッションドライバーやウッドホーンをやっている人のブログやホームページを見るとわかりますが、上級者やある程度資金を投入できるマニアの方が多い印象があります。そのため、難解ですし金額を考えるとなかなか真似をする気がおきなかったと思います。
音工房では初心者の方が、楽しめるような適切な価格のウッドホーンキットと使いこなし情報の提供をメルマガやブログ等を通じて行ってゆきたいと思います。開発記事はもう少し続きます。
開発6 大型ウーファーのメリットとデメリット
オーディオ初心者の方にとって38センチの大型ウーファーはさぞかし凄い低域がでるのだろうと期待するかもしれません。しかし、ローエンドの伸びだけでいったら、20センチ2発のパッシブサブウーファーをデジタルデバイダーで上をカットして下だけアンプで持ち上げてやったほうがよほどローエンドを伸ばすことができますし、
10センチのフルレンジでもBHBS箱で40Hzまではでますので、40Hz以下を含まない音源でブラインド比較をしたらどちらが鳴っているかわからない人が多いでしょう。
大型ウーファーは、振動板が重いために切れの良い低域というよりかは少し「とろ~ん」とした低域になりがちというデメリットもあります。昔、10センチのバックロードホーンから20センチのバックロードホーンにいったときにさぞかしローエンドが伸びるだろうと思ったのがそれほどでもなかった経験があります。
ローエンドが大したことないばかりか、10センチではキレの良い低域だったのが、20センチではそのキレの良さがなくなって魅力を感じませんでした。 それ以降、フルレンジは小型のものを箱の共振を使って伸ばすものが多くなりました。マルチウエイも16センチウーファーしか使っていませんでした。大型ウーファーやフルレンジのメリットがいまいちよく分かっておりませんでした。
ヒントを与えてくれたのは以前音源記事を執筆してくださっていた真木礼様のJBLの38センチスピーカーを聞かせていただいたときでした。
「ピアノだけはこいつを使わないと鳴らないんだよ」
たしかに38センチウーファーと他の小型ウーファーのスピーカーと比較してみると38センチウーファーのピアノの音がリアルに聞こえるのがわかりました。例えると、小型ウーファーで鳴っているピアノはおもちゃのピアノ、38センチで鳴っているピアノは本物のグランドピアノに感じたのです。
小型ウーファーでも前述のとおり40Hzまで出すことはできるわけですから、音に違いがでるのはおかしいと感じる方もいるかもしれません。ピアノは小さな1点から音がでるのではなくあの巨大な躯体全体から音がでるために面積が広いウーファーのほうが音像がリアルに感じられるのではないかということです。
8センチの小型フルレンジが女性ボーカルの音像を表現してくれるのは口のサイズとスピーカー口径が近いのと同じ理屈です。アンプが非力な時代大型ウーファーの目的は能率をかせぐためだったと思いますが、現在の38センチウーファーのメリットは純粋に音のためだけで考えると「音像」の部分が1番大きいのかなと。(見た目の迫力とかルックスを別の話で)
38センチとホーンの組み合わせは昔の「能率」という観点からの組み合わせでそれはそれで正しいと思います。しかし「ホーン」と「大型ウーファー」はそれぞれ別のメリットがあるので分けてしまってもよいのかなと考えています。といっても、まずは古典的な組み合わせから入りたいと思います。前フリが長くなりすぎました。
38センチウーファー比較レビュー
38センチで自作したのは初になりますので、いくつか中古と新品で購入してみました。
(1)JBL 2231A
(2)TAD TL-1601a
(3)DAYTON AUDIO PN395-8
総評のレビューとしては、ウーファーはコンプレッションドライバーに比べればどれを使っても差はそれほど大きくないです。やっぱオーディオは「高域」の良し悪しが大枠を決めてしまいますね。
個別の機種の詳細レビューは今後ブログに書いてゆく予定ですので、今日はサラッとメモを書いておきます。すべて150Lの箱に入れて聞きましたが、比較用のS9800と比較してどのウーファーを使ってもS9800よりローエンドは伸びています。 これは箱のサイズが大きいことが、功を奏しています。
テストしてみて分かったのは、1インチのドライバー&ホーンを使うとクロスは1KHzあたりより下げるとバランスが悪くなる感じです。そのため、ウーファーとして低域の質のよしあしと高域の繋がりという2点が大事になってきます。
●JBL 2231A
中古品をオークションで購入しました。エッジの張替えをされているので、オリジナルとはだいぶ違うと思います。ローエンドが過剰にでている反面、ミッドバスは少なめ。少しダブルバスレフのような低域の出方をしています。全体のバランス的にはもう少しミッドの力感があるほうが良い印象がありました。高域とのつながりは良好でした。
●TAD TL-1601a
こちらも中古品をオークションで購入しました。エッジの張替え等はしていないとのことでエージングは相当すすんでいると思います。全体のバランスは良く、キレも良いです。3つのユニットの中ではこちらばベストな印象でしたがDAYTONはエージング前なので比較し難い感じがします。
コンプッションドライバーと同じくこちらの後継機種TL-1601bが新品で販売されています。ペアで43万はかなり高いですがコンプレッションドライバーに比べれば安いです。少し高域が多めでホーンとのつながりが少々難しい欠点がありました。
●DAYTON PN395-8
パーツエクスプレスさんで購入しました。全体バランスは良好で、高域の繋がりも良い。エージング前からかローエンドよりミッドバスが前にでてくる感じでした。適切に評価するには少し時間がかかりそうですが、価格を考えるとこちらがイチオシになりそうです。
次回はウッドホーンの本番試作のお話になります。開発記事は次回が最終回の予定です。
開発7 ウッドホーンの最終試作
フロントホーンと、コンプレッションドライバー、ウーファーの組み合わせをいろいろ変えながら開発記事を書いてきました。今日は販売予定の1インチウッドホーンキットの仕様決定までについて書こうと思います。仕様を決める上で大事なのはコンセプトになりますが、それらを並べてみようと思います。
●(1)これまでウッドホーンを使ったことがない初心者の方が手軽に楽しめるものにしたい。
フロントロードホーンはコンプレッションドライバーやホーン、大きいウーファーなどをすべて新品で買い込むと100万を超える額がかかっていたと思います。相当マニア度が高くないと手出しできなかった世界かと思います。音工房では一番大変なフロントホーンをキット化することで、高校生のアルバイトレベルの金額で購入できるものにしたいと思います。
●(2)ドライバーの汎用性が高く、簡単に使いこなせるものにしたい。
有名どころのコンプレッションドライバーはもちろん、新興メーカーのドライバーにも対応した設計にしたい。音は強烈なホーン臭のする音ではなく、フラットで扱いやすいものにしたい。ウーファーやコンプレッションドライバーをブログで紹介して、お客様に予算に合わせたものをご購入いただいてお楽しみいただきたい。具体的に入手できる商品名やネットワークの参考値なども書いてゆきたいと思います。ハイエンドスピーカーとの対決もやってゆきたいと思います。
●(3)簡単に組立てできる&綺麗なルックス
ウッドホーン自作はセミプロレベルの木工技術や設計の勉強が必要でした。音工房のウッドホーンキットは木工初心者の人が1時間程度で組み立てられるものにします。ウッドホーンのルックスも大事なので、できたら集成材を使い、見ていて飽きないものにしたい。
ウッドホーンの最終仕様決め
ウッドホーンの最終設計はこれまで試作したものと、オークションで購入したFOSTEXのウッドホーンなどの音を比較しながら決めてゆきました。ホーンカーブは新井悠一先生の設計をエクセルのシミューレーターに落としこみをしてくれているエムエスlabさんのページを参考にさせていただきました。
https://ms-laboratory.jp/hobby/audio/horn/horn.htm
https://ms-laboratory.jp/hobby/audio/horn2/horn2.htm
ウッドホーンは新井先生の本を数値だけで読んでいくとなかなか難しいのですが、エムエスlabさんのシミューレーターを使うととても理解がしやすくなります。ウッドホーンをご自身で設計される方には必須のとてもありがたいツールで、ネットで公開していただいており感謝です。
↓の写真をご覧ください。
設計は、
(1)自社で大昔に適当に作ったものがデザイン的に良いと思ったのですが、(2)新井先生のホーンと比較すると特性的には凸凹が多いです。
上の特性は実線が(1)音工房大昔の設計と点線が(2)新井先生のA480です。
A-480だと特性はかなり綺麗なのですが、全体的に音圧レベルが高めで2wayでウーファーとつなげるのに高域の繋がりに少し苦労しました。おそらくホーンとしては理論上の正しい動作をしているからフラットで音圧が高いのかと思います。
私の求めるホーンとしてはA-480ぐらい特性が綺麗でかつ、音圧レベルがそこまで高くなく、ホーンの外観を弊社で昔作ったデザインでできないかと考えました。
最終的に出来上がったものは(3)ですがシミュレーター上では、T=0.65、カットオフ周波数490Hz、ホーン長22センチのハイボリックホーンに近いですが、実際は細かい部分は計算通りではありません。
(2)と(3)を比較した測定は↓です。
測定上はかなり希望に近いものができたと思います。開発記事はこの辺で終わりにさせていただき、今後は使いこなし方法、ドライバーやウーファー、ネットワークの例を配信してゆきたいと思います。
Z503-Woodhorn1
https://otokoubouz.com/z500/503woodhorn.html