目次
はじめに
SENNHEISER HD660S
SENNHEISER HD660Sは2003年に発売された前作HD650の後継として2017年11月に発売されました。長らくハイエンド価格帯のリファレンスヘッドホンとして認識されていた前モデルをよりブラッシュアップし、ハイレゾ時代にふさわしいモデルとなっています。
装着感や構造など、前作の良いところはそのままに、音質などは少し古さをみせていた前作からは大幅に刷新されたといっても過言では無いでしょう。
SENNHEISER HD660Sの価格と概要
希望小売価格 :実勢価格5万円前後 (2021年1月現在)
型名 :HD 660S
形式 :ダイナミック、オープンエアー型
ドライバーユニット :約φ40mm (実測)
最大入力 :200mW
インピーダンス :150Ω
音圧感度 :104dB/mW
再生周波数帯域 :9~41,500Hz
コード長 :3m
質量 :約260g(ケーブル含まず)
発売年 :2017年11月20日
SENNHEISER HD660Sの音質評価
SENNHEISER HD660Sの音質
SENHEISER HD660Sは高級ヘッドホンで長い間 リファレンスと呼ばれたHD650の後継で、実に14年ぶりのモデルチェンジを果たし2017年に発売されました。
モデルチェンジ後のラインナップとしては、さらに上位に超高級モデルがあるものの、高級ヘッドホンとして遜色のないものに仕上がっています。
現在のワイドレンジな音源に応えるべく、上位モデルの技術をフィードバックしつつブラッシュアップを果たしました。
SENNHEISER HD660Sの外見・機能
SENNHEISER HD660Sの外見
つや消し黒のシックな外見で、側面の楕円形のパンチングメタルの開放穴が特徴的です。新型になってゼンハイザーのバッヂが左右に付きました。
モノトーンなプラスチックのヘッドホンですが、上品なつや消しの見た目により安っぽさは感じません。
ハウジングを支えるアームのデザインは、先代のHD650からは変更され平面的な角を取ったシンプルなデザインになりました。色も2トーンからモノトーンに変更されました。
[左 HD650 右HD660S]
SENNHEISER HD660Sの機能
L・Rの表示箇所は、HD650のアーム基部に小さく表示から、アーム基部裏側に変更になっています。ケーブルのハウジングへの取り付け基部にもL・R表示があり、こちらの方が確認しやすいです。
[HD660Sはアーム基部裏側にL・R表示がある]
[HD650はアーム基部外側に表示 小さくて見にくい]
[ケーブルにもL・R表示がある 右がHD660Sケーブルは新旧で変化はみられない]
アジャストのノッチは固めな方で、ある程度力を入れないと動きません。ホームユースでは不特定多数の人間が使うことはないので、困ることはないでしょう。線などの表示もなくシンプルなデザインになっています。
ヘッドバンドの頭に接触する部分は頭頂部が凹んだ柔らかい布に覆われたスポンジ製で長時間の使用でも痛くなりません。
外側は無地のつや消しで、ラメが入ったグレー色で塗装されていたHD650よりは若干高級感が薄まりました。SENHEISERの文字も左側に寄って主張が小さいものになりました。
[柔らかい布に覆われた弾力のあるクッション。形状は前作を踏襲している]
[下側がHD660S 左側にSENHEISERの文字がありミニマルな表示でで目立たない]
リスニング用途なのでヘッドホンの可動域は広くありません。
パッドはHD650と同じくベロアです。比較したHD650のパッドはすこしくたびれていて柔らかかったので、新品のHD660Sのパッドが若干硬く感じられました。色もグレー系から黒色に変更されています。
コードは着脱できる3mのもので、嬉しいことに6.3mm標準ステレオプラグとは別に4.4mmバランスプラグの線がセットされています。最近の高級ヘッドホンアンプは4.4mmバランス端子を装備する機種が増えてきたのでニーズにマッチしていると思います。
いまだに広く普及している3.5mmミニジャックには変換ケーブルで対応。6.3mm標準プラグがはまります。
標準6.3mmのケーブルとは別に4.4mmのバランスケーブルが付属する。3.5mmステレオミニジャックにする変換アダプターが付属
SENNHEISER HD660Sの構造
SENNHEISER HD660Sは見た目は大きいヘッドホンですが、ドライバーの直径はΦ40ほどで、ヘッドホンの振動板としてはそれほど大きいものではありません。
そのまわりの金属の細かい金網によってサウンドチューニングをしているようです。
SENNHEISER HD660Sは先代から引き継いで工具無しで分解する事が可能です。
アームを90度外側に回転させると広がりますので、すこし引っ張るとハウジング が外れます。取り付ける時は穴にはめて通常の角度にしてから若干浮き上がっているアームをパチッとするまではめ込みます。
ここの箇所はヘッドホンでも各社もっともガタつきがあり、異音が発生するところですが、このシリーズでは全くといってよいほど音がしません。成形やシンプルな機構も含めてさすがだと感じました。
[ハウジングの取り外しには簡単に行えます]
パッドも軽く引っ張ると外すことができます。銀色の金網のすぐ外の窪みと、イヤパッドと一体のプラスチックの部分がはめ合います。タッパーの要領です。
[ハウジング内側のプラスチック部品は、外側よりも弾力のあるものになっている]
金網とまわりのプラスチックはハウジングから垂直に引っぱれば抜けます。ツメなどは無く、テーパーにより素材同士がピッタリと嵌めあっていました。
[ガタツキなく精度良く合わさっている]
振動板まわりの金網は見た感じ変更はないように見受けられました。穴なども同じです。
[HD660S]
[HD650]
裏側はかなり変更があります。HD650が中央がスポンジで外側が薄い紙だったのが、HD660Sでは網目の異なる金網にそれぞれ変更されています。穴の縁もアールのついている形に変更されている。
[HD660S]
[HD650]
まとめ
SENNHEISER HD660Sの良い点
HD660Sになって前作と大きく変わったところといえば、インピーダンスが低くなったことで、300Ω→150Ωとなっています。前作は非常に鳴らしにくいヘッドホンの筆頭でアンプも選ぶため、購入の敷居も高いものでした。
HD660Sは150Ωとそれでも昨今のヘッドホンの中では高めのインピーダンスですが、アンプの間口が増えたという意味で歓迎できる事でしょう。
標準で4.4mm5極のバランスケーブルが付いてくるというのも、客層のニーズを的確に掴んでいると感じます。SENHEISERでは上位のモデルとしてHD800系があり、HD600系はミドルレンジになりましたが、それでもヘッドホンとしても高価格帯には変わりなく、ヘッドホンアンプもバランス出力搭載のも増えてきたこともあり、別売りで別途購入するよりかは、パッケージを買ってすぐにバランス接続の恩恵を受けることができます。
余談になりますが、バランスジャックは当初各社乱立していて2.5mm系、XLR系、3.5mm系、4.4mm5極、IRIS等ありましたが、2017年の時点で本ヘッドホンに4.4mmバランスを付属させたのは英断だったと思います。(以前SENNHEISERはハイエンド価格帯域であるヘッドホンにはオプションとしてXLR4極のものをリリースしていた)
音質面では前モデルで良さでもあり不満な点でもあった聴きやすくフォーカスの甘めな中高音域や、クリアさ、低域のスピード感などが大幅に刷新されています。
新型のHD660Sは前作に比べてハッキリした高域、クリアな中域、タイトな低域とオーディオ的には上回っているといえるでしょう。モニタヘッドホンとしても優秀と感じました。
しかし前作HD650の温かみのある柔らかい音もリスニングヘッドホンという意味では絶妙にバランスが良くHD660Sとも棲み分けが可能と感じました。
SENNHEISER HD660Sの もう一歩な点
SENHEISER HD660Sは、前作より低くなったとはいえ、150Ωという高インピーダンスのヘッドホンには変わりなく、アンプによっては音量がとれない問題が依然としてあり、DAP直挿しなどでの運用は機種は限られそうです。
ヘッドホンアンプ等、上流の機器の性能差がダイレクトに分かるほど音質が変わるので、性能を活かしきれないヘッドホンアンプだと、暗く眠いモコモコした音へと変わり、失望を禁じ得ないでしょう。
外見がプラスチックモノトーンなので、見た目ほど値段が高そうに見えないのも人によりマイナスポイントかもしれません。
紙製の丈夫なケースで本棚の収まりは良いかもしれませんが、ここはソフトケースやスタンドの方が普段使いには便利ではないかと感じました。