目次
オーディオの師匠M様からの教えを請いに京都まで行ってきました
音工房Zを開業当初から支えてくださっている、私の師匠にあたるM様のリスニングルームに訪問させていただきました。部屋とスピーカーをまとめて測定するルーム測定や、そこから音質改善を目指すコンサルティングとしての技術を磨くためにお願いしましたところご快諾いただきました。
開業当初から音工房Zのメルマガを読んでくださっている方はリタイヤ爺さまのレポートはご存知多いと思いますが、そのリタイヤ爺さまこそが京都のM様です。レポートをまだお読みになられていない方はこちらより弊社の自作スピーカー大百科事典にご登録いただくと、12日目あたりにメールアドレスに500ページ超えの凄いPDFレポートが届きます。無料ですので是非ご登録してみてください。
M様は様々なAudio機器関連の設計を現役時代に長く携わっておられた方です。これまで音工房Zの商品、特にスピーカーの音や安全面について大量のアドバイスをいただいており、M様がいなければ現在のZ501やZ1-Livornoは実現できなかったと思っています。
今日はそんな音工房Zの参謀M様のリスニングルームを測定した際に教えていただいた情報、皆様にも役に立ちそうな情報を掲載します。なお、M様の勤務された会社では、 退職時に秘密保持契約を締結するのが退職要件になっているそうです。
訪問当日は、雑談と私からの質問であっと言う間に終わってしまいましたが、書く内容で万一M様にご迷惑がかかることがあるとまずいので、大事な部分は掲載していないところもありますがその点はご了承ください。
M様のメインスピーカーを測定
M様のメインスピーカーユニットは↓のAltec603cという劇場用のスピーカーです。箱は横1.26m×高1.2m×奥行0.4mのフィンランドバーチ材を使った後面開放型プレーンバッフル板でご利用されています。
同軸ツーウエイをアナログのデバイダーで運用されています。高域のアンプが調子がよくないとのことで、測定では定在波の様子を知るために低域だけの測定になりました。
↓は現状のスピーカー位置・リスニングポジションにおける周波数測定の結果です。
84Hzあたりが最も大きなディップで20dB近くあり、130Hzあたり、200Hzあたりにディップがあります。後ほど別のスピーカーと、シミュレーターと比較してみますがほぼ定在波によるものと思われます。正面に2つ置かれている音響パネルは弊社のZ103です。
M様はこのパネルを昔にご購入いただいておりいろいろなセッティングをお試しいただいたところスピーカーの間にセットするのがベストという結論に至ったそうです。まずはM様の提案によりこの音響パネルの位置を↓の3パターンで測定しました。
(1)音響パネルセンター配置
(2)音響パネルなし
(3)音響パネルをスピーカーの外側斜め配置
マイクはリスニングポジションに固定です。写真を取り忘れてしまったので特性のところにイメージ写真を載せます。
(1)の特性
(2)の特性
(3)の特性
この特性のままだとよくわからないので、測定ソフトウエアREWの特性を重ねる便利な機能を使って比較してみます。
まずは(1)と(2)の比較
20Hzから500Hzで見てみますと、(1)のパネルをセンターにセットすることで200Hzあたりのディップを5dB近く小さくできています。130Hzあたりのディップ低減にもわずかに効いている感じです。130Hz以下にはほとんど特性の変化はない感じがします。特性だけから見ると(2)のパネルなしより(1)のセンター配置が適しているのがわかります。
続いて、(1)のセンター配置と(3)の斜め配置を比較してみます。
パネルを斜めに配置すると逆に200Hzのディップが多くでてしまうようです。特性だけでいうと(1)のセンター配置のが凸凹は少なく斜め配置はNGのようです。
※定在波の凸凹は部屋サイズやスピーカー位置によってケースバイケースの動きになります、中央にパネルおけば必ず定在波が少なくなるわけではありません。
埼玉の工場に帰ってから考えてみたのですが、、130Hzという周波数は一波長2.6mです。そして、M様のリスニングルームで使った弊社の音響パネルAは2つなげて1200mm*1000mmでした。なんとなくですがパネルにより定在波のモードに影響を及ぼすには、パネルのサイズが周波数の半波長程度あれば良いのかなという感じがしますね。
100~300Hzの定在波の大きなピーク・ディップは音楽への影響が大きいです。100Hzですと半波長は1.7mですから、1.7m四方のパネルというと結構巨大ですが、2,3個を繋げれば十分可能かと思いました。
音響パネルはセッティングの仕方を昔にレポートに書きましたが、定在波のピークディップを減少させるという目的で使うことは全く想定していなかったです。測定を実施して良いパネルのポジションを見つければ100Hzより上の定在波対策として十分使えそうなことがわかりました。100Hz以下も可能でしょうがパネルというより巨大な壁になるので実用的には少々難しいかなという気もします。
パネルの素材を低域を吸音(もしかしたら反射?)するものに変えればもう効果を上げられるかもしれません。パネルのセッティングによる定在波のピークディップの低減は、測定と合わせることでお客様の部屋とSP特性に合わせたものをオーダーメイドで作るという可能性も見出すことができました。
音響パネルを高額なケーブル類と同列のオカルト商品と思っている方も多いようですがこうやって特性比較をだすとAMPとかDACよりはるかに音に影響を与えているのが分かると思います。M様からは「ここまでF特が変わるんだから、ボーカルの定位感・楽器の奥行方向の音場感が著しく良くなるのもうなずけるね」というご感想をいただいております。
とてもとても大きな収穫が得られました。
Z800-FW168HRを測定 & 定在波シミュレート
続きまして、私が持ち込みましたZ800-FW168HRを測定いたしました。写真を取り忘れましたので、右上の写真は合成です。
スピーカーのセット位置は可能な限り、リファレンスのAltec603cに近い位置にセットしました。リファレンスの603Cと比較した時の特性は↓です。スピーカーの能率がちょうど10dBぐらい違うのが綺麗にでています。
ピークとディップの位置はかなり似たところにでてますから、部屋の定在波の影響であることが一目で分かります。弊社リスニングルームに戻ってから、メモしておいた部屋の定在波ルームシミュ
レーターとも照らし合わせても80Hzの130Hzあたり、200Hzあたりのディップはシミュレーター通りです。
REWの定在波のルームシミュレーターはこれまでに何度か実測と照らし合わせてきましたが、極端に違っていたことは一度もありません。実測するのが一番でしょうが、測定できない方でも部屋の形が普通の長方形であれば信頼していいと思います。
Z1-Livornoの測定
PC用のニアフィールド用モニタースピーカーのような形でおなじリスニングルーム内でご利用いただいております。こちらのアンプはバッテリー駆動をされており、馬力感のある低域でした。
部屋の位置については、メモしてこなかったのですが、イメージとしては↓のような配置です。
この超ニアフィールドでのZ1測定結果が↓です。
150Hzあたりに大きなピークがありますが、先程のメインSPの配置位置と比較するととても定在波の影響は小さいのがわかります。利用位置が部屋のセンター軸をオフセットすることと合わせて、超ニアフィールドが良いのかもしれませんね。↓はリスニングポジションから1.5m下がって測定した特性です。
これも低域の特性的には200Hzのディップ以外フラットな良い特性ですね。
ルームチューニングを受けたお客様に何度かアドバイスをしたことがありますが、部屋はセンター配置を避けてこのようなオフセットしたところにスピーカーを置くと定在波の影響は小さくできます。
メインスピーカーはどうしても部屋の中心線上、リスナーも部屋の中心線上でご利用いただくパターンが多くどうしても定在波の影響が大きくでてしまいがちです。一度試しにセンターオフセット配置をするというのは面白いかと思います。
定在波を低減させるテクニックは、多くの部屋を訪問させていただき、実測と音楽を聞かせていただいてノウハウが蓄積されてきました。
M様
お忙しいなか丸々一日お付き合いいただきどうもありがとうございました!