Z1000-FE168SSHP(完成品)

販売終了しました。

Z701-FE168SSHP(キット)

販売終了しました。

 

目次

開発1 FE168SSHP専用箱 (2021年2月18日)

 

 
  先週FOSTEXの営業さんにスピーカーを持ってきてもらいまして、視聴させてもらいました。箱のお問い合わせを結構いただいているので先に箱の販売予定を書きますと2021年の5月以降に完成品とキットを1回だけ販売させていただこうと思っています。

 箱だけの価格は下記を目安にしてもらえればと思います。多少前後するかもしれませんが、極端に変わることはありません。

●完成品 税込みペア40万円
●キット 税込みペア8万円

 完成品はトールボーイタイプのZ1000-FE168NSと似たサイズとデザインのものを考えています。内部構造とダクトは変更予定です。キットも16センチで出すのは初になると思いますが、トールボーイタイプのBHBSを予定いたしております。

 

FE168SS-HPとT90A-SEの初音レビュー

 

 比較のために、Z1000-FE168NSと聴き比べました。
 ちょっとややこしいのですが、FOSTEXさんが持ってきてくれたエクロージャーはFE168SS-HP用の箱ではなく、FE-168NS用の箱にFE168SS-HPを入れての視聴となりました。比較のスピーカーは弊社のZ1000-FE168NSというスピーカーになります。

 

 

写真左:FOSTEX FE168NS用箱&FE168SS-HP
写真右:Z1000-FE168NS

 そのため、フルレンジ評価で最も大事な高域を中心に聞きました。ツィーターT90A-SEは「なし」と「あり」で視聴しました。まず、FE168SS-HP単体のツィーター「なし」で聞きますと高域が少なく結構なハイ落ちに聞こえます。

 スペック上の比較は後に詳しくいたしますが、16センチ口径のFE168NSやFE168EΣと比較したときにFE168SS-HPは振動板は相対的に重めです。FE168NSはツィーターなしでも聞けなくないですが、FE168SS-HPはツィーター必須と感じました。

 続いて、FE168SS-HPとT90A-SEをセットで聞きました。0.47μF1つを逆相でつないでいます。

高域の繋がりめちゃくちゃいいです!

 

 通常販売しているT90Aは結構賑やかな印象ですが、今回の限定品のSEはステンレスのホーンとイコライザーを初採用ということで全くの別物です。ツィーターもセットで買うと値段がお高くなってしまうのがネックですが、余裕がある方はセットで利用して間違いないツィーターです。

 かなり爆音に近い状況でも聞いてみましたが、フルレンジだけだと煩くて聞けなくなるような音量まで上げても大丈夫です。

 T90A-SEと一緒でなければ鳴らないということはないと思いますが、、、FE168SS-HPにはツィーターは必須な感じですので、廉価なものについては弊社でもいろいろテストをして情報配信してゆきたいと思います。FE168SS-HPはツィーター(T90A-SE)込の音全体をトータルで見てみますと、高域は完全に合格です。

 

 低域についてはFOSTEXさんが持ってきてくれた、FOSTEXFE168NS用箱&FE168SS-HPとT90A-SEと弊社のZ1000-FE168NSと比較試聴しました。

ついでにB&W805D3とも比較視聴。

 個人的にはどちらもこのユニットに対しては箱がマッチせず、少し中域が多すぎかなという印象です。私の予想としては、トータルの音道を短くしたBHBSで中域をすっきりさせつつローエンドを拡大した元祖石田式BHBSが一番はまりそうな気がしています。ローエンドいらなければ、高さ600mmぐらいのボックスでもいけそうです。

開発をやりたくてウズウズしてしてきましたが、、
こちらのお話の続きは3月にOMMF4の小型箱の販売を終えてから本腰を入れて取り組みたいと思います。

 

開発2 FE168SSHP専用箱 (2021年5月28日)

 工場の工事でいろいろ時間をとられましたがやっと、Z1000-FE168SSHPの開発にとりかかれます。目標にはなりますが、7月中には完成品の発表&受付開始し、続いてキットも販売させていただこうと思っております。

 現状フルレンジの8月納品予定分はまだ30セットほど余裕がありますが、ツィーターT90ASEは残りがほんの僅かとなってしまいました。そのためツィーターは一旦販売を停止し完成品・キットを購入してくださる方のためのストックとさせていただこうと思います。

FE168SSHP予約

 ツィーターT90ASEは一度確認した限りではフルレンジとの相性はさすがに良かったです。しかし価格もそこそこしますので廉価品のツィーターとつなげられないか?などもテストしてご報告したいと思います。T90ASEを確実に入手されたい方は弊社以外の代理店さんで入手をしておいていただけたら幸いです。

 FE168SS-HPにはどのような箱の設計をすれば、高いパフォーマンスを引き出せるか?

など、これから箱をご自身で設計される方にも参考になる文章を心がけたいと思いますのでお楽しみください。

音工房Zのユニット倉庫にある16センチフルレンジのスペック比較してみました。

 

 30年前から現在の16センチユニット12機種を一度に撮った写真です。よく集めたものですね(笑)

 

 12機種の16センチフルレンジのTSパラメーターで重要度が大きいものを抜き出して比較しています。

 「レギュラー販売ユニット」と「限定販売ユニット」に大きく分けまして、限定販売については年代順に書いています。年代は取説の下に書いてあったものなので発売時期とは厳密にはずれるかもしれません。16センチの限定は他にもあったかと思いますが、30年間の16センチの限定ユニットのスペックの推移が分かります。

 

 全体的な傾向としては、レギュラーも限定も昔の限定は能率が高く「ハイアガリ」傾向でした。年代が経過するごとに能率は低めで、ハイアガリの逆の「ローブースト」傾向になってきています。今回のFE168SSHPは黄色く塗りつぶしたところを見てください。

 限定販売ユニット30年で販売された限定品の中で

●振動系が最も重い(M0=9.54)

●能率が最も低い(能率=91dB)

●総重量が最も重い(5.3Kg)

 30年前のFE166Superと比較すると振動系は1.5倍ほどで、能率は4dB/W違いですから体感的に2倍以上の音圧差となりますね。能率91dB/Wというと、昔の10センチのオーバーダンピングユニットと同じくらいの能率ということになります。総重量も最も重くなっていますが、重い振動系をオーバーダンプするためにマグネットが巨大になっているのがわかります。

 

これまでも最も大きなサイズだった6N-FE168SSとFE168SSHPの比較写真が下です。

 長岡式バックロードホーンの箱の設計は、軽い振動板に強力マグネットをあわせた高能率(ハイアガリ)のユニットを使うことを前提とした設計でした。箱を巨大にして中域から低域を持ち上げないと、スピーカーの高域が多すぎてバランスが取るのが難しかったからです。ですので、昔のオーバーダンピングユニットは低域を少しでも多くだすために箱を大きくして、音道を長めが基本です。

 今回のFE168SSHPは昔のユニットのようにハイアガリではないので、長岡先生のD37に入れるとおそらく低域と中域が過多になると予想されます。高さ600サイズ程度の小型箱でもローエンドを無視すれば鳴ってしまいそうな感じですね。

開発3 FE168SSHP専用箱 (2021年6月4日)

 前回出した音工房にある16センチフルレンジの写真です。今日はこのユニットを弊社の無響室に入れて一斉に測定し、その結果と今後の方針をお伝えしたい思います。

 

 少し話はそれますが弊社で唯一販売した16センチのフルレンジバックロードホーンZ1000-FE168NSですがニーズが乏しく販売を終了としておりました。

 今回制作するのはFE168SSHP用の箱ですが、Z1000-FE168NSの箱が唯一弊社に16センチバックロードの箱としてありますので、こちらの箱をフル活用しながら試作をすすめてゆきます。Z1000-FE168NSにFE168SS-HPを入れた場合にどんな感じになるか?後からのチューニングで可能なことがあれば書いてゆければと思います。

FE168SSHPのJIS箱での周波数特性確認と他のユニットとの比較

 弊社のJIS箱に入れて測定してみました。

10センチ

100センチ

↓はFOSTEXさんのホームページからの特性です。

 100センチでの弊社の測定は200Hzより下の低域が反射していますので正しくありません。高域特性は2KHzぐらいに盛り上がりがありますがそれより高い周波数はフラットで数値は近似しています。

 特性だけ見るとフラットでツィーターなしでも聞けるような気が一瞬しますが、普通のマルチウエイと比較してもハイ落ちでツィーターは必須といったところです。

昔の16センチ限定フルレンジと一斉比較

 

 30年前のFE166Sの測定データから、全10機種のデータは全てリンクを貼ってもあまり意味がないとおもうので特徴のあるものを比較してみようと思います。今日は特にFE168SSHPとの比較において前回述べた↓FE168SSHPの特徴的なスペックがF特比較にどうでるかを見てみたいと思います。

 

●振動系が最も重い(M0=9.54)

●能率が最も低い(能率=91dB)

 

 最初の比較データは弊社にある最も古いユニットである「FE166S」です。取説には1990年とありますから30年前のバフルの真っ只中に生まれたものです。

 

FE166SとFE168SSHPの比較 測定軸上1m
<30年前と今の比較>

F特リンク(点線FE166S/実線FE168SSHP) 

写真比較リンク

 

 黒い実線がFE168SSHPで、点線がFE166Sです。ユニットは30年前のものながら結構キレイでシミもでていません。違いが顕著なのが2KHzから5KHzあたりの高域でして平均すると8dBあたり違うかなという印象です。

 低域は意外と変わってない印象がありますが、弊社の無響室は200Hzより下はいい加減ですので判定できませんが、それでも50Hz以下はFE168SSHPが多くでているようです。聴感では高域が少ないので低域が圧倒的によくでているように思えますが、そうでもないところが面白いものです。

 ちなみに赤は歪み率を表しています。ほぼ全ての帯域でFE168SS-HPのほうが低歪み率となっています。歪率の改善はSolシリーズのあたりに取り組まれたそうで、以降のユニットは大きく改善していますね。長岡先生の時代はエンジニアの間でも「歪も音のうち」とかいう名言(迷言?)もあったようです。昔のFEは歪っぽいと思われた方もいらっしゃると思いますが、どうやら正解のようです(笑)

 是非Sol以降に販売されたNSやNvシリーズを聞いていただくと大きく進化しているのがわかると思います。

 

6N-FE168SSとFE168SSHPの比較 測定軸上1m
<24年前と今の比較>

F特リンク(点線6N-FE168SS/実線FE168SSHP) 

写真比較リンク

 こちらは長岡鉄男先生の16センチバックロードホーンD37という機種の推奨ユニットです。弊社にあるものは大きくシミがでてしまっています。FE168SSHPと比較してみましょう。

 6N-FE168SSは中域が結構凸凹していますね。FOSTEXさんの取説のF特ではここまで極端でありませんが傾向は似ています。やはり1KHz以上の高域は多いハイアガリ傾向なのは一緒です。歪み率はFE166Sよりかは若干改善している気もしますが、大きく変化している感じはありません。

 

FE163En-SとFE168SSHPの比較 測定軸上1m
<10年前と今の比較>

F特リンク(点線FE163En-S/実線FE168SSHP) 

写真比較リンク

 10年前に販売されたユニットですので、私が開業した頃のものですね。全く記憶にございませんでした(笑)F特を比較してみると、特に高域部分の特性が現在のFE168SSHPに近づいているのがわかりますでしょうか?

 歪み率は随分改善してきていますがFE168SS-HPと比較すると、まだ追いついていません。FEシリーズが年々低能率化して、音の傾向が「ハイアガリ」→「ローブースト」化しているのがわかると思います。

 

FE168NSとFE168SSHPの比較 測定軸上1m
<現行品同士の比較>

F特リンク(点線FE168NS/実線FE168SSHP) 

写真比較リンク

ラストになります。現行品同士の比較になります。

 FE168NSは2kHzから5KHzあたりまで5dBぐらい高く意外とハイアガリです。スペック上の高域だけでいうと1つ前のFE163En-Sのほうがおとなしい印象です。オーバーダンピングユニットと非オーバーダンピングユニットの中間を狙ったNSシリーズだけあって低域はよくでています。

 しかし、FE168NSとFE168SSHPを同じ箱にいれて聴き比べると、もはやウーファーとフルレンジを聞いているのではないかというぐらいFE168NSのがハイアガリに聞こえます。

 注目は歪率です。
 帯域によって異なりますが、平均値をとるとほぼ互角のレベルまできていますね。全体的に見るとFE168SSHPのほうが歪率が若干低く抑えられている感じがします。(赤の実線が168SSHP、点線が168NS)

 

■まとめ これから作る箱について

 2回に渡ってユニットの分析をしてみました。

 FE168SS-HPの特徴としては最初にTS比較で述べたように、フルレンジとしては振動板がこれまでの中では重く能率が低めのユニットなのがわかりました。能率が低くてマグネットが非力だとQ値が上昇して低域ダンプできなくなりますが、F特上は低域は従来と同じく制動された特性となっています。

歪率はこれまでのどのユニットよりも低く抑えられているのがわかりました。

 FE168SS-HPは従来の軽量振動板、高能率のいわゆるオーバーダンピングユニットとはだいぶ趣向が違います。ですので、スワンのような元気がよく鳴りっぷりが良い音を目指すのはちょっと難しいかなという感じです。

 今長岡鉄男先生のD37を使われていて、FE168SSやFE168ES等の音が気に入っている方は、ユニットだけの置換は極端に傾向が変わりますので慎重に検討されたほうがよいかもしれません。

 音工房としてどのような箱にしてゆくかはいろいろ試してみながら決めてゆきたいと思います。傾向的にはマルチウエイの音色感に近い感じになる気がしますから、300万クラスのハイエンドマルチウエイと勝負できるようなものを目標にやっていこうかなと思います。いきなり大風呂敷を広げましたが(笑)どうなるかは次回以降のお楽しみということで。

開発4 FE168SSHP専用箱 (2021年6月10日)

 FE168SS-HPとこれまでにFOSTEXさんで販売した16センチの限定フルレンジとの大きな違いは、一言で言いますと「ハイアガリではないオーバダンピングユニット」ということになります。

 初回に聞いて印象ではツィーターが必須という感じでしたので、2WAYのツィーターの調整並に高域の調整に時間を使いたいと思っています。マルチウエイの音の良し悪しは低域より高域のほうが影響度が大きいからです。

 今日はZ1000-FE168NSにFE168SS-HPをいれ推奨のT90A-SEを中心に、それ以外のいくつかのツィーター、スーパーツィーターをランダムに付け替えながらコンデンサーを調整する「あたりをつける」という作業を行います。

限定T90A-SEを視聴

 

 高域を比較するスピーカーとしてB&W802とZ1-LivornoSを用意しました。
FE168SS-HPはまだ箱がないので、Z1000-FE168NSにFE168SS-HPをいれました。

 3つの機種を用意し音圧レベルをプリセットすることができる、ソフィソナントオーディオ製のセレクターにつなげてセット完了。

1 Z1-LivornoS    基準音圧
2 Z1000-FE168NS(FE168SS-HP利用)+4dB
3 B&W802Nautilus    +4.5dB

 3つのスピーカーを30分くらい聴き比べて思うのは、フルレンジだけ2の高域の量感は市販のハイエンドスピーカーと近いです。音量をあわせてブラインド比較するとどれが鳴っているか分からないくらいです。昔のFOSTEXの限定ユニットの超ハイアガリを知っている人が聞いたら、この変化はかなりぶったまげる変化でしょう。

 FE168SS-HPを最初聞いたとき、ツィーターがないと聞けないレベルかと思いましたがこうやって比較してみると「なし」でも全然聞けますね。とりあえず推奨のツィーターを取り付けてみます。

 これはFOSTEXさんの推奨値なのですが、音質は一気に改善しました。やっぱあったほうが良いのは絶対良いです。さすがに現時点ではB&W802にトータルでは勝てませんが、ソースによっては168のほうが良いものもあります。やる気がもりもりでてきました(笑)

 

レギュラー販売版のT90Aをつけて視聴

 レギュラー版T90Aと限定のT90A-SEの違いはスペック上で大きいのは能率がT90A-SEのほうが低いという点と、躯体にステンレスを初採用している点です。T90A-SEのほうが能率が3dB/W低いので、同じコンデンサー数値ですとツィーターの音圧が勝ってしまうと予想しました。

 実際聞いてみるとたしかにこのままでは煩く、コンデンサー数値をさらに小さくするかアッテネーター、もしくは12dB/octが必要と感じました。今は調整をしませんが、音圧をあわせる
だけなら難しくないという印象はあります。

音色自体がどちらに合うかという意味では専用のT90A-SEに軍配があがりました。

 

Z501とZ502ををつけて視聴

弊社のスーパーツィーターZ501とZ502もつけてテストしました。

弊社のZ501,Z502ともに超高域だけを付け加える設計になっています。そのため超高域だけは足りるけど、高域は少しすくないという感じになるだろうと予想しました。

予想どおりでそのままのネットワークでは「超高域OK、高域不足」という感じになりました。合わせとしてはZ502のほうが能率が高いのでネットワークを変えれば良い感じにもってゆけそうです。

 

ツィーターについての方針まとめ

サクッと聞いた感じではやはり、専用のツィーターが一番簡単に合わせられますし音のまとまりも良いですが、別のものでも使えそうです。高域のネットワーク調整は箱を作りながらもT90A-SEを中心に随時行いますが、現時点のインプレとしては、

箱と高域調整次第で十分300万クラスのものと勝負できるものを作れそうという手応えを得られました!

開発5 FE168SSHP専用箱 (2021年6月15日)

 今回のFE168SS-HPはこれまでのオーバーダンピングユニットと違うのは前回までの特性確認でわかっています。箱の容積の大きさは低域の量感・レンジを決めるのに最も大きな影響を持ちます。

 概してハイアガリ傾向の強い超オーバーダンピングユニットの場合、箱のサイズを大きくして低域から中域を大きく膨らませてバランスをとる必要がありました。長岡式のバックロードホーンの箱が巨大なのも、昔のオーバーダンピングユニットに合わせた設計だったからです。

 それでは、今回の「FE168SS-HP」はどのくらいの箱のサイズが適正値となるのでしょうか?

FE168SS-HPは「ハイアガリ傾向は少ないが低域はダンピングされている」というユニットです。つまり「ウーファー」とまではいかないが、これまでのフルレンジと比較すると明らかにウーファーよりのフルレンジになります。

↓に弊社で使っているFW168HRとFE168SS-HPそして30年前の超オーバーダンピングユニットの3つを比較しています。

 ぴったりではありませんが、FE168SS-HPがちょうどウーファーと昔の超オーバーダンピングユニットの中間ぐらいのスペックなのがわかります。

16Lのバスレフ箱にいれて鳴るか?

 FE168SS-HPがウーファーよりスペックであれば、バスレフ箱でもまあそこそこ鳴るはずです。ものは試しに音道のないシングルバスレフの試作箱2つと、昔にアマゾンで販売していた16センチのMDF箱にいれてテスト的に音を出してみました。比較はZ1000-FE168NSにFE168SS-HPを仮に入れて聞いたスピーカーです。

Z1000-FE168NSに入れての箱と、B&W802を比較用の箱として聞いてみました。

オーバーダンピングユニットをバスレフ箱に入れてきくと、低域スカスカで基本使えないものですが昔ほど酷くはありません。この高級ユニットを小型のバスレフ箱にいれて1発で使いたい人はさすがにいないでしょうが・・(笑)

 隣の比較用においたZ1000-FE168NSに入れた音と比較すると比較になりません。圧倒的にBHBSのが良いです。しかし、この勝負はアンフェアーです。

16Lと54Lの箱のサイズ差があれば、大きいほうが低域有利ですので。

74Lの大型バスレフ箱で比較

Z1000-FE168NSより奥行きがある、大型の74Lの箱を4つ試作しました。

こちらはこの後に内部に音道を作ってBHBS化することを前提としていますが、最初は音道のないシングルバスレフにしてどのような音になるかをテストしました。

74Lのシングルバスレフ VS 54LのBHBSです。シングルバスレフのダクトの共振周波数は57Hzに設定しました。

この74Lの箱は内部に仕切りを入れることで、容積を小さくすることができるようにしていまして74Lと55Lのバスレフ箱でも比較しました。

3つの箱の測定結果は↓です。

 16Lのバスレフ箱の低域レンジが狭いのは仕方ありませんが、74Lと55Lでは差が測定上は大きくありません。聴感ではそこそこあります。Z1000-FE168NSにFE168SS-HPを入れた箱と比較すると、トータルではBHBSが全然良いですが、シングルバスレフの音も善戦しています。

 BHBS化(バックロード化)する際は音道を長くしてホーンロードをかけてというよりは、Z1000-FE168NSより音道を短くしたほうが向くかなと思いました。短い音道のBHBSはダブルバスレフに近づくので、これは設計難易度が高いところでどうなることでしょう。

案ずるよりも産むが易しということで、次回は試作で作った箱の内部に音道をいれていく本格的な試作に取り組んでゆきます。

 

開発6 FE168SSHP専用箱 (2021年6月19日)

BHBSのメリットとは?

 前回74Lのバスレフ箱で聞いてみましたが、悪くない印象がありました。昔の限定オーバーダンピングユニットでは考えられなかったことです。本命のBHBS化はそれらの特性を踏まえて2つの図面を書きまして、比較試聴を行いました。

 弊社が採用している、最終出口部分を絞るBHBSはブログハイエンド自作スピーカーの石田さんが発案したものです。この方式が優れている点はローエンドを伸ばしながら、中域の膨らみを抑えるという従来のバックロードホーンが持っていた欠点を全て払拭していることです。

 またBHBSは調整するポイントが絞られているので、慣れてくると狙いに近い調整をスピーカー組み立て後にもテスト&エラー方式で行えることです。長岡先生のバックロードホーンにも一応公式に近いものがあり多少は感触をつかめますが、最終的には作ってみるまで音は分からず一発必中にならざるを得ないです。

結果的に弊社では10年ほどまえからBHBS一本になりました。

長い音道(1.95m)と短い音道(2.58m)のメリット・デメリット

 私の経験では、BHBSでも長岡式でも箱の容積が一定の場合音道の長さは低域のトータルの量感には影響をさほど与えず、低域の出方・特性に変化を与えるものと考えています。音道が短いBHBSは動作的にはバスレフ/ダブルバスレフに近く、低域の遅れ感は少ない変わりに特性的にはローエンドが思いきり伸びるかわりに、別の帯域に大きな谷ができるような特性になりがちです。低域はキレがよくパンチ力があります。

 一方で、長い音道にしますと特性上の凸凹は短い音道より少なくフラット傾向ですが、低域の遅れ感がでてきます。低域は切れがあるというよりか「ふわっと」していて耳障りが良く聞きやすい音になります。

 これは良い・悪いではなくユニットの特性と狙いに合わせて音道の長さはチューニングしてゆきます。今回は音道がけっこう長めのものと、短めなものの2つを作ってそこからチューニングしてゆきます。比較として、最初はシングルバスレフを基準とし比較していきます。

短い音道と長い音道のBHBSとバスレフの比較試聴

 本命の短い音道のスピーカーVSシングルバスレフでの比較です。内部の音道はZ1000-FE168NSのサイズ拡張版です。

 一聴して、素晴らしく良くシングルバスレフを大きく上回っています。この設計のまま売っても絶賛していただけるぐらいに思いました。今回のFE168SS-HPはユニットがハイアガリではないので、昔に比べると設計はしやすいですね。

 続いて長い音道のスピーカーとバスレフの比較試聴内部音道は昔のZ1000-FE108Solをベース
にしました。あまりロードをかけなくても低域はでると考えて、音響迷路よりの試作です。

 比較は先程と同じシングルバスレフと長い音道のBHBSで比較しました。感想としては、こちらも悪くありません。私と開発者スタッフの青木も短い音道を推していますが、まだこの設計はたたき台に過ぎません。メーカー品や自社のスピーカーとの比較や社内ブラインドテストで方向性を決め、調整を行いたいと思います。

 

開発7 FE168SSHP専用箱 (2021年6月23日)

 前回2つの容積が同じBHBSを試作しまして視聴した結果短い音道が優位でした。今日はその2つのスピーカーを軽く調整してから、社内で私を含めた開発3名によるブラインドテストを行おうと思いましたが、その前に、現在試作した2つのスピーカーを会社にある市販品や弊社のレギュラースピーカーと比較したところ、内容が結構盛りだくさんになってしまったたため今回はこちらだけをお届けします。

 現在のZ1000-FE168SSHPの立ち位置確認、ダメ出し、今後の目指す音を確認してゆこうと思います。ということで、社内ブラインドテストの結果は次回にお送りします。

試作Z1000-FE168SSHP と B&W802

3つのスピーカーの比較をしました。

 ツィーターをつけないとやはり、Z1000の超高域が落ちるのでT90ASEとT96A-REをつけてテストしました。単体でZ1000を聞いているときは40Hz以下の超低域はよく出ていると思いましたが、さすがに20センチ2発の802にローエンドでは勝てるわけがありません。

 ローエンドを多く含んでいる特殊な音源を除けば、Z1000-FE168SSHPの音道が長いZ1000の音は3wayである802と音の傾向は意外と似ています。昔の16センチバックロードホーンとB&W802を比較したら、オーディオ好きならブラインド状態でも音の違いは瞬時に分かると思いますが、今回のFE168SS-HPと弊社のバックロードで目隠しテストをしたら、分からない人が多いと思いました。

 

試作Z1000-FE168SSHP と JBL S9800

最近あまり聞かなくなったスピーカーですが、38センチウーファーのJBLS9800と比較です。

 40Hz以下のローエンドに関しては802と同じ。弊社のZ1000-FE168SSHPの音道短のほうは中低域帯域が過剰にでている印象がありましたが、JBLS9800と比較するとむしろJBLのほうが中低域はさらにでている感じです。38センチウーファーの低域は好みが分かれるところですが、「ぽわ~ん」「とろ~ん」とした制動の鈍さがありまして、試作Z1000-FE168SSHPのほうが締りがある低域を出しています。

 バックロードの低域は低域が遅れるというのは音道の長さを変えた比較実験をするとよく分かりますが、大口径ウーファーも遅れるというのが分かります。

JBLS9800は大口径ウーファー&中域ホーンと非常に特徴のある音のため、Z1000とは傾向は全く違いますが中低域量感は参考になりました。

試作Z1000-FE168SSHP と Z800-FW168HRS

 最も驚いたのは、試作の高域の良さです。Z800-FW168HRSが最強と思っていたのですが、FE168SSHPとT90ASEの組み合わせはソースによっては凌駕しています。

 高域の調整はまだ何もしていませんが、FE168SSHPとT90ASEは推奨通りでうまく繋がってくれています。現時点では音道短いZ1000-FE168SSHPのほうが近いですが、内部調整で低域のバランスを整える必要を感じました。

 

試作Z1000-FE168SSHP と Z1000-FE108Sol

 口径は違いますが、同じバックロード同士の比較ということで参考にテスト視聴しました。ソフィソナントオーディオさんのセレクターを使って音圧を同じに調整をしますと、2つのスピーカーの音圧差はありませんでした。本来10センチと16センチですから、能率差があってもおかしくないところなのですが、それくらい今回のFE168SSHPの能率が低くなっているということです。

 低能率なのもあいまって16センチのほうが低域が全体的にFE168SS-HPのほうが多いです。Z1000-FE108Solは良く売れてくれたバックロードでしたので参考になるところが多くありました。

 

開発8 FE168SSHP専用箱 (2021年6月30日)

第1回社内ブラインドテスト

 試作した音道長さが異なる2つのBHBSスピーカーですが、音に最も影響のあるダクトと空気室の定数を軽く調整をしまして、私を含む弊社の開発陣3名による「好き・嫌いブラインドテスト」を実施しました。

 今回のテストの目的は箱の容積は一定で音道の長さが長いものと、短いもののどちらで音を詰めてゆくかを決めるものです。どちらが鳴っているか知らされている、目隠しされていない状況で聞いてきた限り私と青木の2人は音源により得手不得手がありますが、概ね「短い音道」が優位かなと考えていました。

 非常にざっくりですが、↓のような傾向にあるかなと考えていました。

クラシック系→長い音道有利
ジャズ・ポップス系→短い音道有利

 もう1名の被験者、佐々木は今回のスピーカー開発には直接参加しておらず、試験内容を一切聞かされないで「好き嫌い」を書いてもらいました。

結果

 テストは様々なジャンルの20曲を選びます。被験者にはどちらのスピーカーが鳴っているか分からない状況で、「音道長」のスピーカーと「音道短」のスピーカーを1回づつ聞いてもらいます。CDの再生と、スピーカーの切り替えはソフィソナントオーディオのセレクターを使い別のスタッフが行いました。結果は以下のようでした。

 

大山  音道長好き:13 音道短好き:7
青木  音道長好き:12 音道短好き:8 
佐々木 音道長好き:5 音道短好き:15

 私も青木も「短い音道」が有利と思い込んでいましたが、目隠しして聞くと逆の結果となってしまいました(笑)もう一名の参加者佐々木は短い音道のスピーカーをかなり多めに選びました。

 私がブラインドテストを受けていて思ったのは、両スピーカーの差は違いを認識できていないものもあり、最終的にどちらを採用しても大丈夫かな?というのが正直な感想でした。仮に3人が満場一致で「短い音道」を多く選んでいたら、方向性に迷いはでなかったと思いますが、このような状況になりましたのでもう一度音道の調整をして追加の試験をしたいと思います。

 具体的には音道の長さにもう少し差をつけてみて、2つのスピーカー音の違いを明確にしてみて
テストしようと思います。

開発9 FE168SSHP専用箱 (2021年7月6日)

2回目の社内ブラインドテスト

 1回目のブラインドテストでは音道が長めのスピーカーと、短めのスピーカーをテスト比較しました。ブラインドテストをする前の私の当初の予想としては、短い音道のほうが優位かと思っていましたが、蓋を開けてみると開発陣3人のうち、2人は逆に「音道が長い」ほうを好みとして選んでいました。

 ブラインドテストを受けたスタッフの感想を聞くと、差が拮抗していて違いが分かりにくかったという印象がありました。ブラインドテストをやる前の比較試聴では「音道が長い箱」と、「音道が短い箱」のどちらが鳴っているか分かっています。

 そうなると、いろんな予備知識がバイアスとなって好きと嫌いの判断すら狂わせますが、これはもう嫌というほど経験してきています。ブラインドテストをやった意味があったというものです。

2回目の社内ブラインドテストテスト前に実施した調整

 裏を返しますと、今回の2つの試作箱はすでにそこそこ高いレベルに音がまとまっていて、どちらの方向で商品化しても問題ないと言えるのかもしれません。

 短い音道でいくのを諦めて、長い音道を採用に傾きかけましたがもう少し2つのスピーカーの差が際立つ形に詰めてみてから再度ブラインドテストを行ってみて方向性を決めることにしました。

 まず短い音道のスピーカーで行った調整です。様々な組み合わせを試しましたが最終的には↓の

-空気室を15%程度拡大。

-スロート部分の音道を絞り込む方向に調整

-ダクトは径と長さをテストし、現在より20mm長さをあげる

音道が短いほうのスピーカーは中低域に軽いピークみたいなものがあり、もう少しエネルギーを中域とローエンドに持ってこれないか?と思っていましたが、改善したように思いました。

本当に良くなったかどうかは分かりませので、次のブラインドテストの結果を見て判断したいと思います。続いて、音道の長いスピーカーの再調整です。

-音道の長さ自体を約50センチアップ

-空気室とダクト長さの調整

 こちらは低域の出方自体はあまり変わっていません。ピーク感が少なくフラットに下まで伸びている感じです。パンチ感、スピード感、切れ感よりか、若干「ふわっ」とした感じで聞きやすい
印象です。

 調整後の2つのスピーカーをセレクターで聞いてみると、音に関しては前回のテスト前より分かりやすい差となった気がしました。好みの問題で甲乙つけがたい印象ですが、2回目のテストは音源等は全く同じにして、再び行いました。

第2回目のテスト結果

 


2回目のテストでは識別率は上がりました。

好き嫌いでいうと短い音道が今回は大きく上回りました。佐々木はもともと短いほうを好みでしたが今回は20問中20問短いほうを選びました。

大山  音道長好き:7 音道短好き:13
青木  音道長好き:6 音道短好き:14 
佐々木 音道長好き:0 音道短好き:20

 

私個人的には長いほうも選んでいて良さもあると思うのですが、1度目のブラインドテスト後に行ったある調整で音が一気に改善したのが勝因かと思います。

主観的な音の違いを言いますと、音道の短いBHBSは前回テストしましたB&W802やZ800に近い傾向でした。音道の長いBHBSは従来のバックロードに近い印象でした。今回は当初の目標どおり、強烈な特徴があるバックロードホーンというよりか、

「フルレンジの良さを生かし、音源を選ばずに鳴るハイエンドスピーカー」

を目指すのが、今回のFE168SS-HPの素性にあった箱になると確信しました。ということで、「短い音道」で詰めてゆくことに決定しました。

 

開発10 FE168SSHP専用箱 (2021年7月12日)

長岡鉄男先生のD37を再び作る

 だいぶ開発が進んできました。まだ細かい調整はありますが、社内での2回のブラインドテストを経まして外寸と内部の構造が決まったことで80%近くのとこまで来たと思います。今回のスピーカー開発はこれまで以上に他の市販品やこれまでのバックロードと比較しながら作り込んできました。

 今回最初に過去の16センチのFOSTEXの限定販売ユニットを分析し、音の比較をしよう
と思ったのですが、、、今回のFE168SS-HPと過去のユニットは傾向が大きく異なるため、過去の限定ユニットと相性の合う長岡鉄男先生のD37は再び作ることにしました。

 

 

10年ぶりの再会です。懐かしさがこみ上げてきました。早速試作にいれたFE168SS-HPと長岡オリジナルD37(6N-FE168SS)とを比較試聴します。

長く使っていなく、エッジが固まってしまっているのか?初音出しでは全く低音がでません。ということで、一旦過去の16センチユニットを全て一旦20時間のエージング処理することにしました。

3日後に試聴を再開です。

試作Z1000(FE168SSHP)VS 長岡鉄男D37(6N-FE168SS)  

 

 20年近く前に製造されたユニットですから、そもそも比較することが難しいという前提はありますが、、正直3日間のエージングしてもあまり変化が感じられず、、私的には圧倒的にZ1000が勝っていると思いました。ここでBHBSの優位性を書くと長岡派の方に嫌われると思いますので、この話は終了にしまして(笑)

 

D37とFE168SS-HPを入れたときの音について書きます。

D37 + FE168SS-HP 

 D37のオリジナル設計ですとマグネットが干渉していれることができません。音工房Zがアマゾンで販売している16センチのサブバフルを利用すると使うことができます。当初はD37 + FE168SS-HPで鳴るわけないと思っていましたが、弊社にある大昔の6N-FE168SSよりはFE168SS-HPのほうが良く鳴っています。

 昔のD37の記憶が曖昧でしたが今回こうやって作ってみますと、D37はD101Sスーパースワンとかに比べると低域は伸びていない印象です。ですので、FE168SS-HPを入れても「低域多すぎ!」とまでは感じません。ただ、中域の膨らみだけは大きく、一定以上の音量で聞く人には気になってしまうかなと思いました。次回は話が少し開発からそれますが、D37に過去の長岡鉄男先生のユニットを入れて聞いてみたいと思います。

開発11 FE168SSHP専用箱(2021年7月17日)

 Z1000-FE168SSHPの話から脇道に逸れていますが、前回D37に大昔の6N-FE168SSを入れたときの音のレビューを書きました。今日は残りの6機種の限定オーバーダンピングユニットと、現行2機種をD37に入れたときの音の印象を書きたいと思います。長岡鉄男先生のD37という16センチのバックロードホーンは自作ファンの間では利用している方が多い機種です。

 長い時間利用され続けている機種には相応の理由があるはずですので、今回のZ1000-FE168SSHP設計にも何かしら参考になる点が得られるのではと考えたのです。スピーカーユニット販売順にレビューを書いてみます。ユニットのスペック表は↓です。下段の限定ユニットを中心に行いました。

 なお今日のユニットレビューは私大山の個人的な感想ですが、弊社スタッフの佐々木は測定データー等をさらに詳細に分析しレビューしています。主観的な感想は異なる部分はあると思いますが、合わせて参考にしていただけたらと思います。

 

FE166Super + D37 (1990年)

 こちらはD33という別の機種が本来マッチすることになっています。D37に入れたときの印象は、低音感が薄く中域だけが強調されている印象がありました。断言はできませんが、FE166Superと6N-168SSの2機種は製造からあまりに時間が経過していてエッジとダンパーが固まって本来の音がでていないのでは?と思いました。20時間ぐらいピンクノイズによるエージングを行いましたが、変化はでませんでした。6N-FE168SSと比較すると高域はこちらのほうが素直で良い印象がありました。

6N-FE168SS + D37 (1990年)

 こちらの6N-FE168SSがD37の専用のユニットということになっています。外観上は片方のユニットからシミがでています。前回もさらっと書きましたが、再び書きます。低音感が薄く、中域だけが強調されている印象でした。バックロード特有の中域の厚みとエコー感により、女性ボーカルは艶っぽく聞こえるものもあります。

FE168ES  + D37 (2001年)

 最も物量を費やした印象のあるユニットです。確かこのあたりの年代にESコーンがでてきて他の口径も限定販売されだした時代です。前の2つのユニットと比較すると、圧倒的に低音が良くでている印象がありました。音源によっては中域の膨らみが気になりにくいものもありますが、やはり中域が多い箱の設計とは思います。高域もハイアガリで賑やかです。FE168ESは自作界隈では「低音がでない」と評判になりましたが、、弊社の視聴環境では、前の2つのユニットが全く低音がでない状況だったのでこのユニットは逆に低音豊かに感じました。

FE166ES-R + D37 (2004年)

 今回テストした昔の限定ユニットの中ではD37とのマッチングという意味では最もバランスが良く聞こえました。ハイアガリではありますが、絶妙な感じでうるさくなく、ハイアガリの完成系に感じました。中域の癖はところどころでますが、低音も良くでるのでさほど気にならない感じです。ユニット自体の外観やマグネットなどはチープな感がありますが、昔の限定ではこれが一番好印象でした。高いユニットではなかったかと思いますが、しみじみ値段は関係ないものです(笑)

FE163En-S + D37 (2011年)

10年ほど前の16センチ限定です。こちらはD37に入れて聞くと、最も低音量感が多くでるユニットでした。D37に入れると低域から中域にかけて少しブーミーな印象でした。このユニット以外の限定ユニットは全てD37を意識して設計されたユニットのように感じましたが、こちらのユニットからはD37を意識しないで作ったのではという感じを受けました。

FE168EΣ + D37   (現行)

現行のEΣシリーズは結構息が長いです。そろそろ改定が入るのではと思いながらもなかなか同じものですね。D37とのマッチングという意味では低域もでますので良いほうかと思います。高域はΣの特徴あるハキハキした音です。この高域は好みが分かれるところだと思います。当たり前ですが、Σの高域は10センチ、16センチ、20センチ皆似ています。

まとめ

 今回の過去のユニットとの比較レビューは全てFE168SS-HPとも合わせても行いました。D37の箱と、試作中のZ1000-FE168SSHPの箱の違いというところでいうと、中域の厚みをとっているD37に対して、低域を伸ばしているのがZ1000という感じでしょうか。昔の超ハイアガリユニットのバランスをとるには低域よりか中域をあげないとバランスが取りづらかったのかなという気がしています。

 FE168SSHPは昔のユニットに比べるとハイアガリではありませんので、D37に入れると中域が多すぎになります。しかし、このバランスをどこにもってゆくかは最終ダクトの調整である程度可能ですがいつも死ぬほど迷うところです。次回は試作段階の試聴会のレビューをお届けします。少しショッキングなことが起こりることになります。

開発12 FE168SSHP専用箱 (2021年7月26日)

試作最終段階のZ1000-FE168SSHPのお披露目を行いました。31名の方にご参加いただきました。

試作版の試聴会風景

当日ご参加くださいました全ての方に御礼申し上げます。試作段階Z1000-FE168SSHPは社内でのブラインドテストを集中的に行いましてだいぶ固まってきました。最終仕様を固めてしまう前に一度お客様のお声をお聞きしたいと思ったのです。

私大山は、スピーカーからでてくる音を客観的に評価することの難しさを悩み続けて20年近くたちます。まだ完全な答えは見つかっていませんが次の2つの方法が最も信頼できると感じています。

●設計を少しだけ変えて社内でブラインドテストを繰り返し実施する
●なるべくたくさんのお客様に聞いてもらって感想を聞き、設計にフィードバックする

とても手間と時間のかかる方法ですが、多くの方にご満足してもらう商品を作るには今のところこれしか方法がありません。弊社で試聴会やブラインドテストの募集をするとたくさんの方が集まってきてくれるのは本当に有り難いことです。

今回の試聴会には元TV局にお勤めでモニタースピーカーに詳しいプロのI様をはじめ、多くのレベルの高い方にご参加してくださいましてZ1000について貴重なご意見を頂戴しました。

皆様貴重なご意見どうもありがとうございました!

試作試聴会にご参加いただいた皆様からのご感想~

【試作Z1000-FE168SSHP】と書かれたご感想がお客様から頂戴したレビュー文章です。多くの方にレビュー投稿してくださいました。嬉しいご意見も、厳しいご意見も全て掲載させていただいております。

https://review.otokoubouz.com/sichokai/

当日は下のようにセレクターの配線をしました。

セレクター1 試作Z1000-FE168SSHP
セレクター2 長岡鉄男D37 (6N-FE168SS)
セレクター3 B&W802
セレクター4 お客様選択の弊社スピーカー

 

 レビューを見ていただくと分かりますが、私の予想に反してZ1000-FE168SSHPは高域の調整が甘いという印象が多かったです。私的には予想していたよりか非常に厳しい結果に感じました。

 個人的には箱の低域から中域にかけてはうまくいっていると思いますので可能な高域調整を行ってゆきたいと思います。

フルレンジの高域の調整方法

 マルチウエイの場合高域の調整は、ネットワークとアッテネーターでやります。こちらは効果が大きいです。フルレンジの場合はいくつか方法がありますが、ネットワークを使わない方法は効果が限定的なのでいくつか組み合わせる必要があります。

(1)スピーカーユニット背面に吸音材を入れる

箱への吸音材投入はフロントダクトのシングルバスレフの場合はダクトから漏れる高域抑制に大きな効果があります。音道のあるスピーカー(BHやBHBS)は音道を通る際に高域が減衰するのでホーン出口からの高域漏れを防ぐ意味での吸音材投入はそこまで大きな効果はでないケースが多いです。バックロードホーン空気室が極端に小さいスピーカーで、かつスピーカーユニットのエッジや振動板が薄いものは高域がユニットを通じても漏れてきます。昔のFOSTEXさんのオーバーダンピングはその傾向がありました。その場合は空気室への吸音材を入れると高域は若干落ちます。けど、そんなに大きく落ちるわけではありません。

(2)スーパーツィーターの追加、ネットワーク調整

高域が気になるフルレンジに、スーパーツィーターがうまくつなげるとピークが気にならなく場合がある。高域が煩いのに、スーパーツィーターをつけたらさらに煩くなるのでは?と思う方もいると思います。セッティングを間違えるとさらに煩くなる場合ももちろんあります。2つのユニットをうまくネットワークやセット位置を調整することでピーク・デップが解消されることがあります。「ハイアガリだけどピーク感はない」という状態に持ってゆくのが狙いです。

 

(3)箱で低域量感を調整して、高域の聞こえ方を変える

箱の設計を変更し、低域~中域の持ち上げる帯域を変更して高域を目立たなくする。具体的には40~100Hzあたりの低域よりか、それより上の中低域~中域の量感を多くしてやると高域が聞きやすくなります。女性ボーカル系などに効果があります。BHBSの場合は最後のダクトの長さを短くするか、開口面積を大きくすることで調整が可能。ローエンドを犠牲にすることになるので、どこを取るかは難しい。

(4)フルレンジにコイルを入れる

これをやるのが最も効果大きいですが、フルレンジとしての良さもなくなります。そのためフルレンジ派の人は基本やりませんが、やっていけいないというルールが有るわけではありません。マルチウエイにしてしまう方法や、PST方式が考えられます。ネットワークやPST方式をメインにして販売するのは難しいと思いますが、弊社の使いこなしPDFレポートに書ければと思います。

開発13 FE168SSHP専用箱 (2021年8月5日)

 

 前回実施した試作版の試聴会にてお客様に聞いていただきましたが、私的には納得のいく結果ではありませんでした。お客様からたくさんの意見を頂戴しましたが、中でもTV局でお仕事をされていたプロのエンジニアI様から長文にていただいたレポートは具体的で大変参考になりました。フルレンジの範疇でできる高域調整、ダクトの長さ調整を行い、本番製作に進みたいと思います。

 

空気室への吸音材の量調整

こちらは何度か聴感視聴の際にテストしていました。僅かな量では高域への量感への効果はよくわからなかったので、写真のように大量のフェルトを空気室につめて無響室測定を行いました。

↓のF特測定は空気室パンパンに吸音材を入れた時と、カラの時の比較です。


(実線吸音材あり、点線吸音材なし)

 細かいピークやデップがなくなっているのは注目できますが、空気室への吸音材投入で高域だけを落とすのは難しいです。100Hzあたりの中低域にも効いてるのが分かります。この状態で音楽を聞いてみましたが完全にNGでした。空気室への吸音材大量充填は高域減衰しない上、音の精気がなくなり良いことがありません。

 吸音材をギュウギュウ詰めにすると、ピークとデップがなくなってフラットに見えるので測定データーだけ重視す人には好まれそうですが、聴感重視の私には完全にNGです。吸音材の量はいつも聴感のテストで決めてゆきます。試聴会の時はミクロンウール1枚だったのですが、フェルトも合わせて入れてテスト視聴しました。

 

 最終的には試聴会の時よりミクロンウールの量を倍に増やしました。フェルトは低域に効いてしまうのか印象がよくありませんでした。高域の量自体はさほど変わらないものの、試聴会の時よりか付帯音が取れて繊細な音になりました。

スーパーツィーターのNW調整

スーパーツィーターを外す、もしくはコンデンサー調整でフルレンジの高域のピーク感をなくす試みです。これは試聴会の開催中も何度か、スーパーツィーターを何度か外したり付けたりもしました。コンデンサーの容量も1回サイズを小変更したのですが、聴感では大きな効果が感じられませんでした。

そこで、極端に数値の異なるコンデンサーを測定してみて1~2KHz帯域のピーク解消に効果がでそうか確認してみました。

FE168SSHP+T90ASE
点線が0.33μF、実線が1.2μFです。

ここまで極端に大きくコンデンサーの数値を変えると、高域の量もだいぶ下の帯域まで落ちてきますが、、、今回解消したい高域はフルレンジ側の1~2KHzあたりにある帯域ですのでこの
あたりにはスーパーツィーターは届かない感じです。

 スーパーツィーターのほうがフルレンジより能率が高いので、逆相接続や12dB/octなどもいろいろ試してみました。しかし、ホーンツィーターですので5KHzより下は音圧が急降下のためここをスーパーツィーターだけで変化させるのは難しいことが分かりました。ということで、高域のピーク帯域への効果を得るのは難しいようです。

ダクトの長さを変更して、中域帯域をアップさせる

こちらは弊社の簡易無響室測定ではいい加減な測定結果になるので、聴感をベースにもう一度複数パターンのダクトを準備して長さをいろいろ組み合わせて視聴することにしました。

最初に、極端に変更することで傾向を掴みたくダクトを全て外して視聴しました。

低域が減って中域がかなり多くなります。この状態ですと女性ボーカルの声は厚みがでて良いですが、ローエンド帯域が一気にでなくなってしまいます。暫定的にダクト長さを現状の半分の長さとして音を聞いてゆきました。聴く音源次第のところはありますが、このくらいのほうが一般受けするのかなーという感じの値ではあります。

高域のピーク感という意味ではこの低域のダクト調整がもっとも効果がありました。長さは試聴会では15センチ程度で聞いていましたが、10センチまで短くしました。

本方式のSPの最大の音の変化ポイントがこの最終ダクト調整になるので、音が変わるのは当然ですが短くした状態でスタッフにも様々な音源で視聴して感想を聞きました。

音は激変しました。
何故このサイズで前回の試聴会をやらなかったのか?と悔やまれるところです。

吸音材とダクト長さ変更で全体的には良くなったと思います。が、肝心の高域自体はフルレンジの素性の部分が大きく完全解決までには至っておりません。本番製作の前に、オマケとしてフルレンジにネットワークを入れる2way版とPST版の実験をお届けします。

長い戦いでしたがもう少しで完成します。

開発14 FE168SSHP専用箱 (2021年8月5日)

Z1000-FE168SSHP完成いたしました

試作・実験をいろいろ繰り返してきましたが、ようやく完成しました。

デザイン的にはZ1000-FE168NSを踏襲していますので、新鮮味にかけるかもしれませんが、音については全くの別物になります。※Z1000-FE168NSは販売終了いたしました。

 

 

デザインについて

フロントバフルデザインはZ701-FE168NSと同じになりますが、奥行き方向が約100ミリ長くなります。スピーカーと一緒に使うベースをオプショんで販売させていただくことにいたしました。これはスピーカーのダクトが下部につくデザインのため、ダクトと床の低域反射を抑えるためです。

 

あと、スピーカーのダクトですがこちらは以前は樹脂製のものを使っていましたが今回はウォールナット集成材を削り出して製作しています。

 

細かいところですが、ターミナルプレートを埋め込み式としてZ1000-FE168SSHPという文字を入れています。

 

16センチのトールボーイはZ1000-FE168NSをレギュラー販売で考えましたが、このサイズのスピーカーは数がまとまってでるものではないため今回限定販売という形を取らせていただくことにいたしました。

Z1000-FE168SSHPの最終的な音について

 長々と書いてきましたが、ここに簡潔にまとめたいと思います。スピーカーユニットの素性を調べまして、それまでのオーバーダンピングユニットに比べて振動板重めで、良く低域がでるユニットであることが分かりました。そのため、小さめの箱でこじんまりとバランスを取る方法もあるとは思いましたが、、、

 高級ユニットですのでトールボーイタイプで低域を可能な限りフラットにしながら下を伸ばす方向でいくことにしました。長岡鉄男先生のバックロードホーンD37も作って歴代の限定ユニットを入れて音の傾向を確認しました。

 昔のハイアガリの傾向のユニットのバランスを取るには中域を張り出した長岡先生のD37は理に叶った設計と思いましたが、1つ前の限定FE163EN-Sや今回のFE168SSHPでは少々膨らみ気味になるのを感じました。低域がでない昔のユニットに比べると開発は簡単に済むかなと当初は思っていました。しかし試作機を用いた試聴会で1~2KHzの高域ピークが気になるというお声を数名の方からいただきました。

 当初は30Hz~40Hzの量感も重視したチューニングをしていましたが、中低域から中域の量感を増す方向にシフトしました。スピーカーの音を言葉にするのは難しいですが、突き詰めると次の2点がになります。

「ゆったりした鳴りの中にも、バックロード特有の前にでる迫力のある音」

「特定低域帯域が膨らむことも、凹むこともないフラット傾向な音」

 

近日中にyoutube動画あげますので参考にしてみてもらえたらと思います。

最終試作版と完成品版の音の違い

 

写真試作版と完成品版比較

 長く試作版で音の比較テストをしてきました。完成品版とテスト版の設計上で一番音的に違いはダクトの長さ調整によるものと思いましたが、実際聞いてみますとやはりバフル厚と形状が異なるためか随分音が異なりました。

 試作版がビスだけで組んでいるのに対して完成品版はボンドとプレス機を使い板厚も3mm厚いものを使っているのが大きかったかもしれません。試作版は試聴会でFE168SSHPの高域のピークを指摘される方がいらっしゃいましたが、素の状態でも大きく改善しました。ただフルレンジユニットをスルーで使う場合どうすることができない部分があるのも確かです。

 そこで、前回のメールで実験的に行いましたマルチウエイ化したものもyoutubeに後日あげます。
(こちらは情報提供のみで販売予定はございません)自分としてはやれることは全てやり尽くしたと思います。

 

Z1000-FE168SSHP(完成品)

販売終了しました。

Z701-FE168SSHP(キット)

販売終了しました。

 

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