【限定】Z1000-FE108SSHP (完成品)
完売しました
【限定】Z703-FE108SSHP (キット)

 

目次

Z1000-FE108SSHP開発1

FE108SSHPに必要な容積は?

 フルレンジ箱の開発は「容積」を既存の箱に入れて音を出してみて、どのくらいの大きさが必要かのあたりをつけるところからはじめます。箱の容積は最重要で、これを間違えてしまうと十分な低域がでなくなってしまいます。かと言って必要以上に大きくしすぎてもユニットの能力以上に低域が伸びるわけではないです。

 デザイン的な部分とも関わりがあるのでまずは総容積を決めて、その後に音道やダクトをつめてゆきます。最近のFOSTEXの限定は昔のオーバーダンピングユニットと違って低能率で低域が出やすくなっています。そのため昔の長岡鉄男先生の設計の大型の箱に比べれば小型でバランスをとりやすくなっています。

 どうなるかは、毎度のこと実験&視聴をしながら決めてゆきます。最初に入れたのは16Lのバスレフ箱と、Z1000-Bergamoの試作箱である25Lの箱にFE108SSHPを入れてみました。

 比較して聞くと25Lが圧勝です。低音がはいっている音源を聞いたら1秒でわかります(笑)

 オーバーダンピングユニットなのでシングルバスレフとの相性も良くないのもありますが、、内部の構造によるものではなく、容積によるものと一瞬でわかる違いでした。翌日に実験したのが、倍近い内容積のあるZ1000-FE108SolにFE108SSHPをいれた箱VSZ1000-Bergamo試作にFE108SSHPを入れた箱です。

 超低域だけはZ1000-FE108Solのが良いですが、それ以外は全てにおいてZ1000-Bergamoのが上でした。

少しびっくりしました。

 Z1000-FE108Solの箱は音道が2.5mを超える音道ロングタイプであるL-BHBSですが、FE108SSHPとはミスマッチ感が強かったです。一方のZ1000-Bergamoの箱は僅か25Lで、音道長さは1.5未満の音道ショートタイプのS-BHBSです。

 後者のほうが合っていました。

 音道はどうするかは後日実験をして決めますが、容積的には25Lでも十分鳴るのが分かりました。50Lもの大きさは全く必要なさそうです。とりあえず暫定的に30L程度のトールボーイを2つ作って、音道実験をおこなってゆくことにしました。

Z1000-FE108SSHP開発2 <音道ABCD> 

音道長さテスト

前回でだいたい容積のあたりがついたところで、4つの約30Lの試作箱を作りました。今回の実験で試した音道のタイプにABC~と番号をつけてゆきます。

 この箱に音道をいろいろ試して、ベストな音道を見つけてゆきたいと思います。予定としましては今月末ごろに完成品をだし、その後キットを出す予定です。

 前回すでに弊社にある既存の箱に入れて聞いてみたところ、2.8m程度の音道の長さをもつZ1000-FE108Solの箱ではうまく鳴らず音道の短いZ1000-Bergamoの箱にユニットを入れたほうが綺麗になりました。

 FOSTEXのオーバーダンピングユニットは昔の高能率のものとは印象が大きく変わっておりますので、箱の設計もそれに合わせる必要があります。

 ご自身でFE108SSHPを設計される方へのアドバイスとしては、巨大な容積の箱にしなくても20~30L程度で良い感じで、バックロードの場合は設計次第ですが音道は短くても中域から低域はうまく引きだせそうです。ダブルバスレフも鳴ると思いますが、さすがにシングルバスレフや密閉はサブウーファーとかないと難しいかなという印象です。

 弊社でもFOSTEXさんの限定ユニットではこれまで音道は1.5mを超えるL-BHBSタイプが主流でした。今回もテストして決めますがもしかしたら短いほうがマッチするかもしれません。

 さっそく音道長さを決めるテストに入ってゆきます。

音道長さテスト1 音道1.5m VS 音道1.8m

 印象が良かった1.5mと少し音道を伸ばした1.8mの試作音道をテストしました。

 

1.8m(A)

1.5m(C)

 

音道の長いほうは、接続を逆相に間違えたのでは?と思えるほど低域が弱く、確認してみるも問題なし。ユニットの個体差?と思って、ペアを入れ替えてみるも問題なしでした。両スピーカーとも最終ダクトが長すぎる感じがしたので短くしてみるも解決されませんでした。

あまりに極端な差で、通常30センチ音道が長くてここまでの差はつかないです。

長い音道をこれで諦めには少し惜しいとおもい、軽く音道を調整し音道を逆に1.9m程度にして再度ステレオにて視聴してみました。

 

音道長さテスト2 音道1.5m VS 音道1.9m

↓1.9m(D)

結果は多少改善されましたが、1.5mの音道が圧勝という結果になりました。現時点のリファレンスは1.5mになりました。内部の音道的には昔販売したZ1000-FE103Solと少し近く、ダブルバスレフ形状に近いS-BHBSです。

1発目でこのクオリティーの高さ!
このまま販売しても問題ないレベルです。
現時点でこの1.5mの音道のスピーカーをリファレンスモデルとしてこれを超えるものを比較しながら作ってゆきます。

 

音道長さテスト3 音道1.5m VS 音道1.2m

1.9mの音道はダメで1.5mが良かったため、さらに短くしたものをテストしました。

1.2m(B)

こちらは意見が割れました。

 視聴位置で変わる程度の差で好みの差といえるかもしれませんし、ブラインドテストをして耳のいい人でやっと分かるような差です。低域が「ふわっと」でるか「ばしっと」でるかに極極僅かな違いがあります。

 今回のテストでは、総音道は1.2~1.5m程度にして内部の折り曲げ方や、空気室、ダクト調整などをテストして最終仕様を決めたいと思います。

FE108SSHP開発3 <音道EF>

 4パターン程度の音道の長さを試し1.5mの音道(C)を暫定リファレンスとしました。試作の早い段階でレベルが高いのができてくれたので、音道の折り曲げを変えてどのような音になるかテストしました。BHBSは箱の総容積、ダクト、総音道の長さで特性の大部分が決まってしまいます。

 特に音道の短いS-BHBSはダブルバスレフ公式と共通する部分も多いので、音道の広がり率や曲げ方の影響はさほど大きくないと考えておりました。しかし、Z1000-Bergamoでは音道の配置で音が変わった経験もありましたので、細かい改善ができればという思いでテストしてみました。

音道の折り曲げを変えたパターン1<E>

 まずはこちら

 かなり変わった音道に見えますが、↓のリファレンスと空気室やダクトの定数は近いです。

 実際の音は、どちらが鳴っているかわからないような軽いブラインド状態で聞きました。「若干抜けが悪くなったかなと?」いう気がしましたがほとんど違いはわかりませんでした。リファレンスと折り曲げパターン1を無響室に入れて測定比較もしてみました。

点線:リファレンス(C)
実線:折り曲げを変えたパターン1(E)

 多少中域が変わっていますが、耳ではわからないような違いでした。

 

音道の折り曲げを変えたパターン2<F>

 もう一つ試してみた音道が↓です。

 こちらもリファレンスと音楽で比較視聴してみました。聴感上の違いはさきほどよりはありましたが、好みの差の範疇で個人的にはリファレンスのほうが芯のある音かなという印象でした。

点線:リファレンス(C)
実線:折り曲げを変えたパターン2(F)

 上は無響室で測定したものでリファレンスと、試作を重ねています。こちらのほうがインピーダンスも特性もずれています。S-BHBSはダブルバスレフの第1ダクトを折り曲げたりテーパー加工にしているのが特徴ですが、動作は完全にはわからず毎回テストして聞いてみるしかないのが現状です。

 今回はあまり、改善は得られませんでリファレンス超えにはなりませんでした。少し落ちこみま したが、それを上回る悲劇に見舞われることになりました。

現段階のリファレンスCと別の弊社のリファレンスであるZ1000-Bergamoとを比較視聴してみました。↓↓

「え?なにこれ???」

昨日までリファレンスと思っていたスピーカーがあまりに貧弱な低域の出方に耳を疑いました。接続を間違えているのではと思い確認してみるも問題なし。市販品で基準としている805D3を取り出して4つで比較してみます。

 明らかに昨日作ったリファレンスはチューニングがローエンドによりすぎでしまっていて、必要な100~200Hzの低域が不足しているのがわかりました。第2ダクトを短くする対応でうまくいく場合もあるので、試してみました。

 多少ましになりましたが、正直小改良でなんとかなるものでない感じでゼロからやり直すしかない感じでした。これまでFOSTEXの限定ユニットでやってきた音道を少々長くしてバックロード寄りの設計にしたほうがバランスが取れるかなという気がしました。

 音道が長いL-BHBSは、ダブルバスレフの動作よりかバックロード要素が強いので音の出口はもう少し大きくする必要がありそうです。設計は振り出しに戻ってしまいましたが次回音道長を長くし、開口を広くとったパターンでテストしてみようと思います。

 

FE108SSHP開発4 L-BHBS  <音道G>

長い音道(L-BHBS)&大きいダクトで再設計

 最近はZ1000-BergamoやZ701-OMOF101等総音道の短いBHBSばかりやってきましたが久々のロング版の設計になります。容積は30Lで多分いけると思いますが、難しい場合は拡大版を考えます。

 FE108SS-HPは以前のFOSTEXのオーバーダンピングユニットに比べると低域がでやすいのは間違いないので、なんとか30L程度の容積で音道は2m程度でうまく鳴ると予想しました。これまでFE108SSHPを聞いてきまして、低域を引き出すのはなんとかなりそうかと思いました。

 高域はカタログスペック上はさほどハイアガリ感はありません。多少のピークとディップは当然あります。聴感上は音量をあげるとハイアガリなFEの音です。超高域は思ったよりか少ないのでスーパーツィーターは必須になるかと思います。音源によっては高域がきになるところもあり、ここは最後の空気室やスーパーツィーターでの調整でどこまで滑らかにできるかです。

 この高域に合わせた低域を考えて、試作しながら理想的なバランスを作ってゆくのがフルレンジ1発の箱作りの醍醐味です。ここまでの経験をもとに音道長さ約1800mmにして、開口はΦ100の大型のダクトを使って再設計しました。

L-BHBSの試作1つ目 <G>

 

 最初に音出しした時の印象は、音道を長くしたせいで、これまでのバスレフ的な音から少しだけバックロードっぽい鳴りとなりましたがこれまで作ったなかで最も良い音でした。音道Gはこれまで全く試したことのない音道でしたが、弊社のスタッフが案をだしてくれたものです。(この音道Gは最終仕様になりそうな予感のため写真はアップしていません)

 こちらのスピーカーの無響室における周波数測定とインピーダンス測定データが↓です。

実線が今回のスピーカー(G) 
点線がこれまでのリファレンス(C)
としたものです。

 周波数特性は絶対的なものとしてはあまり参考になりませんが、過去のスピーカーの相対比較でみると狙い通りで理想的な持ち上がり方をしてくれています。

 インピーダンス特性を見ていただくと、わかりますが初回のリファレンスでは山が3つのダブルバスレフ特性です。今回は山が5つくらいありまして、これは音道を長くしてバックロードの要素を強くしてゆくと山の数が多くなってゆきます。

ちなみにスーパースワンのインピーダンス特性は↓です。ユニットはオリジナルのFE108Sです。

ダクト調整と吸音材調整を軽く実施

1つ目の試作で良い感触がつかめたので、ダクト調整をします。Φ100のダクトを4つの長さ(200,150、125、100)を準備しました。

 

 ダクトを外してしまったものを含めて5パターンで視聴しました。

 暫定的にダクトの長さを100mm~150mmぐらいのあたりが良さそうです。ここは10mm違うだけで大きく音が変わるところなので暫定値をつかめただけでOKとしました。続いて、高域を綺麗にだすために空気室の2面にミクロンウールをいれました。

 今回は箱の設計上、空気室の背面の板からバフルまでの距離が100mm程度しかとれなかったため非常に大きな効果が得られました。スーパーツィターと1.2μFのコンデンサーも付けてみました。音は最初にリファレンスに決めたものよりか求める音に近づいてきました。

 音道1.5mの試作Cをリファレンスとしていましたが、音道1.8mの試作Gが素晴らしく良いのでこちらをリファレンスに変更してこちらの音をつめてゆくことにします。音道Gは音道長い&ダクトの外径を広くして音が良くなりました。ものは試しに、音道Cにもダクトの径を大きいものを付け変えてみました。

 長さも径も違うので、共振周波数が変わっていますが全体的な低域の音圧が上がってやはり音が良くなりました。

 バスレフダクトは理屈の上では径と長さで共振周波数が決まりますが、BHBSのようないろんな動作を兼ねているような箱の場合は径を変えると音が大きく変わることが往々にしあります。感触的なものなのですが、音道が長いバックロード要素の強いBHBSほど外径を大きくとる必要があるという気がしています。

 音道Gは素晴らしく良かったのですが、、近い音道の長さで折り返しを変えた音道を次回2パターンテストします。

 

FE108SSHP開発5 L-BHBS <音道HI>

だいぶ開発も進んできました。
前回試してリファレンスとした音道Gが素晴らしく良かったので、音道の長さを近くした別設計の箱をためします。リファレンスGを超えることはできるでしょうか?

写真左は総音道の長さが約1.8mでこちらは試作<H>
右は総音道の長さ2.2mで試作<I>です。

長岡鉄男先生のD10バッキータイプの構造を参考にしました。

 

試作Hの視聴

試作Hの音道

Hのスピーカーの設計のポイントは空気室を小さくしています。これは、スロートにロードがかかりやすくするためと音道を長くするスペースを確保することが目的です。

広がり率的にはホーンの最後の部分でドカーンと大きくなるタイプです。これは部分的にダブルバスレフの効果を入れている従来のL-BHBSの設計です。

前回のリファレンスGと比較すると、音的には僅差ですがGのほうが抜けがよくローエンドも伸びている感じでリファレンス超えとはなりませんでした。

特性比較は↓です。

今回も総音道の長さは試作G Hともに1.8m、広がり率も近いものでの比較です。

若干特性の違いはありますが、やはり近いものがあります。

試作Iの視聴

試作Iの音道

 右側のスピーカーはホーンとしては最後までホーンが開かないタイプです。ホーンとしての効果やダブルバスレフとしての効果は小さく音響迷路的なものです。

 昔のオーバーダンピングユニットにはやったことはありますが、低域不足で使えなかったのですが今回のユニットはだいぶ趣向が違うので試してみました。音道長さはこれまでのものとは極端に変えて2.2mとしました。

特性比較は↓です。

 特性は音道が長くしたせいか僅かにローエンドが伸びましたが、、聴感で比較すると音道が長くなることによる時間遅れのネガティブな印象がありました。音道の長さは低域から中域まででていれば可能な限り短くするというのが最近の音工房の音作りになっています。

 長岡先生の設計は2m以上が普通ですし、趣味で3m、4mとかの音道を楽しまれている方もいます。良し悪しを言うつもりはなく最後は好みの世界ですから、自作を楽しまれている方はご自身のお好みの音道長さをお楽しみいただけたらと思います。

 現状のリファレンスGとHが候補に残りましたが、見た目的にもすっきりしている前回制作した音道Gで詰めたいと思います。

 クランプでとめる方式で異なる音道をA~Hの7パターン試しましたが、Gを微調整したパターンで社内ブラインドテストを実施し最終仕様を決めたいと思います。

<遊び> FE108SSHPをスーパースワンにいれたもの VS 試作G

んー。長岡鉄男先生であれば、このユニットに対してどんな設計をされたか興味がありますね。さすがに108SSHP&スワンになると、現在の出口を半分以上絞らないとバランスとれない気がします。スワンが使えたのはFE108Solあたりまでがギリギリかなという気がしました。

 

FE108SSHP開発6 社内ブラインドテスト & 最終音道決定

 ここまではスタッフでA-Iまで8パターンの音道をテストしまして、Gをリファレンスとしてきました。どちらが鳴っているか分かっている状態の比較ですので、もしかすると先入観で誤った判断をしていると困るので社内のブラインドテストを実施しました。

 これまでの流れを簡単に説明いたしますと、当初音道の短いものでテストしてうまくいったと思いました。ダブルバスレフ構造に近いS-BHBSでいけると思ったのですが、Z1000-Beragamoや市販品と比較するとローエンドだけは良いのですが低域から中低域にかけての力感が弱い状態でした。

 そこで改めて音道を2m近辺のものの候補を3つほどテストし、これまで全くやったことのない構造のGが大ブレーク。後にHとIをやりましたが、Gには及びませでした。長い音道は耳で聞くと圧倒的にGが良いのですが、これで本当に間違いがないのかを確認するために社内でのブラインドテスト
を実施しました。

社内ブラインドテスト1 
音道G(音道1800) VS 音道Iの改良(音道2000)

 こちらは、リファレンスと音道がそれより長い2200のを改良したものでテストしました。

 どちらが鳴っているかわかってきくと1800が圧勝なのですが、果たして結果はどうでたでしょうか?ブラインドテストはいつも聞いているスピーカー制作用の音源を10曲、好みを選ぶという方式でやりました。

青木  10曲中8曲 音道Gを選択
佐々木 10曲中9曲 音道Gを選択
大山  10曲中7曲 音道Gを選択

 やはり平均的には音道が1800と短いリファレンスを多く選択されていました。もちろん楽曲や好みで2000が悪いわけではないのですが、差がそこそこ大きい時は概ね似た好みの判断をするようです。ブラインド状態でしたが、だいたい聞き分けできている印象がありました。

 次は音道Gと半日ほどかけて作った音道Gの改良版を比較しました。

 

社内ブラインドテスト2
音道G(音道1800) VS 音道G’(Gの改良版)

 ベースとなる音道は同じにして気持ちだけ折り曲げ角度を変えました。

青木  10曲中3曲 音道G’を選択
佐々木 10曲中6曲 音道G’を選択
大山  10曲中8曲 音道G’を選択

 

 ほぼほぼ半々に割れました。聞いていてもほとんど違いがわかりませんでしたが、若干だけG'が上回りました。

テスト用紙リンク

 

 低域はほぼ完成しましたので、次回バーチベニヤと突板で写真撮影用の本番制作にかかります。あとはスーパーツィーターのコンデンサー調整や空気室への吸音材の量の調整が中心になりますが、視聴会にてお客様にいただくお声もその辺は最終仕様に反映させたいと思います。

 

開発7 Z1000-FE108SSHP外観完成しました!

 
 試作G'の音道をもとに僅かだけ外寸の比率を変えて作った本番制作したスピーカーが↓です。

 サイズ的にもデザイン的にも昔に限定販売いたしましたZ1000-FE103Solに近いものとなりました。

 Z1000-FE103Solは木口のバーチベニヤに染色していましたが、今回のZ1000-FE108SSHPについてはウォールナットの突板を折り曲げて貼っています。

 これは結構難易度が高い加工でして弊社の職人が1枚づつ手加工で制作しております。

 肝心の完成品の音ですが、
これまでクランプ方式でやってきた箱の音道に高圧プレスとボンドで接着したことにより低域の密度が濃くなり、量感も多くなり完全に2グレードぐらい上がった音になりました。MDFがホワイトバーチに変わったことによるグレードアップもあるかもしれませんが、多分ボンドと圧着が大きいのだと思います。何れにせよ音は良くなりました。

 低域についてはローエンドをひたすら追い求めるのではなく、FE108SSHPの高域に合わせて80~200Hzあたりのミッドバス帯域を厚めにすることを考えて設計しました。

 といってもこの箱のサイズで40Hzぐらいの低域はしっかりでており、ミッドバスも初めて試した音道形状を採用することで比較的フラットな特性になったと思います。

 低域に関してはもともとそこまで低域が出にくいユニットではなかったこともあり、低域をただ出すだけで良ければさほど苦労はしませんでした。設計上一番気を使ったのはFE168SSHPのときも同じでしたが、高域の素性から低域全体のバランスを考えての設計です。

 フルレンジの高域調整はネットワークを入れたりDSPとかを除くとできることは限られますが、空気室の吸音材調整や、スーパーツィーターのセッティング、そしてBHBSのダクト調整などが主です。

 次回はユーザー様をお招きして聞いていただいたZ1000-FE108SSHPの印象と高域の最終調整についてになります。

 

開発8 Zユーザー様視聴会開催(6/9)

仕上げ版のスピーカー制作を終えた6月9日に視聴会を実施しました。

 低域は全く問題なく、箱のサイズを考えるとこれまでの10センチのフルレンジでは考えられない低域がでています。問題は2KHzと4KHzの高域のピークでした。FE168SSHPのときも似た帯域にピークがありまして使いこなしレポートでマルチ化のNWを書いたのを思い出しました。F特スペック上は今回の10センチより前回のFE168SSHPのほうが凸凹が大きい気がしますが、聴感では今回の10センチのが目立つようです。

 お客様にお持ち込みいただいた音源を私と青木もお聞きし、お客様からいただいたご感想をいただきましたがやはり皆様同じ印象を持たれたようでした。視聴会ではテスト的にスーパースワンを置いて比較して聞いてもらいました。

 確かにスワンは中域が大きく膨らんでいる分、若干高域がマスキングされている感じもしなくはないですが、、流石にこの膨らみは弊社のBHBSの音からかけ離れすぎています。

BHBSダクト調整

 すでに、箱設計時点から高域対策としてローエンド重視ではなくミッドバスの量感のほうを意識していました。音道はもう変える気はしないのですが、BHBSのダクトの長さを変えることでローとミッドバスの量をいじることができるのでまずはここから手をつけてみることにしました。

 視聴会で使っていたダクトの長さを150mmから100mmに変更しました。ダクトの長さを短くすれば、短くするほどローエンドが減少し、ミッドバスが増加します。結果的に高域は多少マイルドになります。

 開発の2人に聞いてもらうと、
「女性ボーカルは少し良くなったかなー?」
「オルガンの空気感が減ってしまって寂しくなってしまったかな」
という感じで意見が割れました。

 聞く音源によって意見が変わるのは毎度のことです。今回のスピーカーは下手にオールラウンド系を狙うよりか割り切った設計にしたほうが良いかなという考えのもと、ダクトは元通りの150mmにしました。

空気室吸音材調整

 バックロードホーンの空気室に入れる吸音材の調整で若干の高域調整が可能です。

 スピーカーユニットは背面からも高域がでていますから、空気室に入った高域が振動板やエッジ部分から漏れてくる高域を吸音材で吸わすわけです。どのくらい高域が変わるかは、ユニットの振動板とエッジの素材が高域を通しやすいものほど変化量が大きいです。FOSTEXのオーバーダンピングユニットは、変化量が大きいほうかと思います。

 ただし、それでも極端に大きく変えることは無理で若干(1~2dB)減ったかなという程度です。

 話は少しそれますが一般的なマルチウエイバスレフ箱の場合についてお話しておきます。ウーファーから出る高域を箱内部の吸音材で吸わせますがマルチウエイの場合通常ウーファーにコイルが入っていて高域がすでにカットされているのでダクトからの漏れはさほど多くないので吸音材の効果はわかりにくいです。

 NWなしのフルレンジ&バスレフは、高域が盛大にダクトからでますのでボックス内部の吸音材の効果はとても分かりやすいです。

 話を戻しまして、今回はデフォルト状態で背面に2枚のミクロンウールを入れていました。今回さらに1枚追加して3枚のミクロンウールにしました。これも開発3名に聞いてもらいましたが、ここでも意見が割れました。

「ピーク感は改善したが、鮮度が落ちた」
という意見がでました。

個人的にはピーク感改善が大事と判断し3枚に変更しました。

スーパーツィーター調整とマルチ化実験

 FOSTEXさんの10センチのフルレンジは長く使っていますが、10センチのフルレンジはスーパーツィーターなしでも聞けましたが、、今回のFE108SS-HPはハイエンドが落ちるのが早くスーパーツィーターあり・なしで音が大きく変わります。 ただ、スーパーツィーターなしの状態で2KHzあたりに大きな山があり旨い接続がなかなか見つかりませんでした。

マークオーディオさんなんかですとそんなに悩まずに何をつけてもうまく繋がるのですがね(笑)

 こちらは数値は書きませんが、T96A-SAと弊社のスーパーツィーターZ501のコンデンサーの数値を大きく変える結果となりました。次の視聴会ではこちらで聞いてもらおうと思います。試しにFE168SSHPの時に試したコイルによるネットワーク化も実験してみました。

 高域は落ちますが、やはり鮮度が劣化します。使いこなしレポートには書きたいと思いますが、、、鮮度命のバックロードにこれは厳しいかなというのが正直なところです。次回にもう一つ施策を実験してみようと思います。

 

開発9  ドーナツ型ディフューザーの実験

 高域対策の続きです。これはいつか実験してみたいと思いながら、なかなかできなかったので良い機会と思い試してみた対策です。

 どんな対策かといいますと、サランネットに高域を吸音か反射させる素材を貼って、高域をコントールできないかという試みです。邪道と言われれば邪道かもしれませんが、ドライバーの前に何かしらのものを設置して音を変える「ホーン」とか「音響レンズ」というものがありますから、うまくゆけば良いんじゃないかという軽い気持ちでの実験です。

 

 まず、どのくらい聴感で効果があるのかを知りたかったので、サクッと試してみたの
が弊社のフェルトとミクロンウールです。

フェルト

ミクロンウール

 簡単に実験できるのでやってみると分かると思いますが、高域はがっつり落ちますが落ちてほしくない帯域まで一緒に落ちてしまって完全にNGでした。

 続いて吸音ではなく反射させれば良いのではという発想のもと、ベニヤを下の写真のように切り抜いて音を出してみました。

 吸音材よりは高域の落ち方は緩やかで良いのですが、音が反射してしまうからか解像度が落ちてしまいました。続いて、実験したのが前の写真のベニヤの真ん中だけをくり抜いて作ったドーナツ型です。

ドーナツ型

 こちらは解像度の劣化が少なく高域もそこそこ落ちてくれるので、「使えるのでは?!」という期待させてくれるものでした。

 このドーナツの内径と外径をいろんなパターンでいろいろな素材で作って測定をすれば、特定の帯域だけが減衰するパターンを発見できるのではと思ったのです。

大量のサイズ違いのドーナツを作成する

下の写真のようなサイズ違いと、素材違いのものを大量に作りました。

(全部写真に掲載できませんが、ゴムスポンジ系もたくさんつくりました。)

測定をしてから音を聞くと先入観で音を正しく判断できなくなることがよくあるのでまずは、測定前に最も音が良いリングを1つ選びました。それが下です。

 テストしていた音源は4KHzのピークがよくわかるキロロを音源にテストしました。明らかに耳に不快に感じる高域が減っているのが分かりました。音の解像度もほとんどサランネットのままと変わらない。多分4KHzあたりのピークによく効いてるのかなという想像しました。

 実際に複数の素材をサランネットの中に入れた場合と入れない場合を測定しました。

最も良いと思っていたリングありとなしの特性は↓でした。実線がリングあり、点線がリングなしのノーマルです。

 減衰しているのは5KHzから20KHzの高域帯域の上のほうが中心で、2KHzと4KHzにはほとんど変わらないばかりか逆に僅かに上がっているではないですか!(笑)。

 

 もっと大胆な形状変更をすれば変わるかもしれませんが、今回実験した形状では測定上1~4KHzは軽く持ち上がり、5KHz以上が大きく落ちるという特性がほとんどでした。大量のリングを作ったので、もう少し良い測定結果を期待したのですが少し残念でした。しかし、聴感で明らかに耳につく帯域の音は落ちていることは思いましたので、次の視聴会でお客様に聞いてもらうことにしました。

 

Z1000-FE108SSHP開発最終  

 前回の種々の高域対策を施したものを実装して、6/25に視聴会を実施しました。数名のお客様に対策前の視聴会にもご参加いただいておりました。ご感想を個別にヒアリングするのと同時に開発者である我々もお客様の音源を一緒に視聴いたしまして、前回と比較して大きな改善を実感しました。

お客様には7曲ぐらいのデモ音源を3つのパターンで聞いてもらいました。

(1)フルレンジ+スーパーツィーター

(2)(1)にネットワークを入れる

(3)(1)にサランネットデフューザーを入れる

 

お客様にヒアリングしたところ、(1)と(2)が良いというお声が多かったです。前回までに行った高域対策として効果的だったのはネットワークを除くと、効果が大きかった順番に

STのコンデンサー変更>吸音材追加>リング型ディフューザー

かなという感じです。

上記で紹介した調整はご購入者様用の使いこなしPDFにやり方等は書きますので、そちらをご参照いただければと思います。

youtube動画

視聴会にご参加できなかった方向けの
動画になります。

(1)Z1000-FE108SSHP 単体

(2)Z1000-FE108SSHP + Z501スーパーツィーター

(3)Z1000-FE108SSHP + FOSTEX T96A-SA

(4)Z1000-FE108SSHP +ディフューザー入りサランネット

(5)Z1000-FE108SSHP + FOSTEX T96A-SA
(2wayネットワーク )

 

Z1000-FE108SSHPがマッチするユーザー/マッチしないユーザー

とはいえ、Z1000-FE108SSHPはZ1000-BergamoやZ701-Modenaなどに比べると「オールラウンド何でも鳴りますよ」というスピーカーとは少し違います。前作のFE168SSHPは高域のピーク感は1~2KHzあたりにありましたが、今回のFE108SSHPはもう少し高域の上の2~4KHzの帯域にあります。

Z1000-FE108SSHPが向かないと思われるユーザーは
「●大爆音で聞かれる方」
「●女性ボーカル中心に聞かれる方」です。

高域のピーク感はほぼ音量を大きくするのに比例して目立つようになります。弊社の視聴会は爆音に近い感じでテストしますのでどうしてもその帯域は目立ってしまいます。また、視聴会や自身でテストしていて大音量での女性ボーカル系は苦手なスピーカーに思いました。

 

一方で、Z1000-FE108SSHPがベストマッチすると思われるユーザー
「●小音量でのリニアリティーを追求されている方」
「●ローエンドの入ったドンパチ系」には最高の1台になるかと思います。

 

 メルマガ・ブログで引き続きFE108SSHPに音源レビューはこれから配信を続けてゆきますのでお楽しみにしていてください。オールラウンドでない分ハマるととんでもない良さを発揮します。

 今回のFE108SSHPは調整や使いこなしにノウハウが求められるスピーカーかと思いますが、音工房Zではこれまで通り使いこなしPDFや質問メールでお客様をサポートしていきますので安心してご購入ください。

 

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