目次
D101S スーパースワンの外観と音のレビュー
はじめに 長岡鉄男スピーカー研究について
本コンテンツは、長岡鉄男先生のスピーカーを、私なりにもう1回再検証しようと思いまして、こちらのお題にいたしました。
長岡鉄男先生をご存知のない若い方のために書きますと、現在はお亡くなりになられましたが、たくさんの数多くのスピーカー設計図面や書籍を残されたオーディオ評論家でした。
私、大山も長岡鉄男先生の自作スピーカーが、この世界で生きていくことを決めたきっかけの一つでして、大変リスペクトしている方です。
先生のスピーカーを、今後もシリーズとして紹介させていただこうと思います。
D101Sスーパースワンとは
D101Sスーパースワンは長岡鉄男先生のスピーカーの代表的なバックロードホーンスピーカーです。
写真1 D101S スーパースワン
この独特のデザインは、小口径のフルレンジスピーカーで高域の点音源を実現しながらバックロードホーンで低音を出す、というスタイルのスピーカーです。
自作するのは結構難易度が高く、価格もそこそこ高いスピーカーではありますが、自作スピーカーマニアを自称される方々の間では、一度は作ったか聞いたことのあるスピーカーでしょう。
「バックロードホーンって何?」という方は弊社の商品ページに詳しく書きましたのでご覧ください。
http://otokoubouz.com/z700/top.html
私は長岡鉄男先生設計の自作スピーカーを、有名どころについては、昔に大体作ったのですが、スペースをとるのでほとんど手放してしまいました。
しかし、このD101Sスーパースワンだけは音工房Zの工場にリファレンスとして所有しております。
長岡先生はこのスーパースワンを発表されたのが1992年の雑誌上です。
長岡鉄男先生は2000年にお亡くなりになられているので結構晩年の作品だったことになりますね。
長岡先生がスワンについて述べられている言葉の中には印象的なものがいくつかあります。
「スワンはアンプの音の違いを際立たせる」
という言葉がございました。
長岡鉄男先生はスーパースワンをアンプの音の違いを確認するためのリファレンス型スピーカーとして利用されていたのでしょう。
スーパースワンの音についてのレビュー
D101Sスーパースワン(FE108Super搭載)、MDF15mmで10年ほど前に製作したスワンの音を解説します。
箱のエージングは完全、ユニットは長く使っていませんでしたが、昔に相当使ったのでエージングは完了しているものと思われます。
このスピーカーはシステムとしてはびっくりするぐらい低音がよくでます。 初めて聞く人はびっくりすると思います。私もその昔、相当びっくりしました。
この低音はだいたい40Hzぐらいから200Hzぐらいの、一般的に人が低音と感じやすい帯域の低音で、40Hzより下の超最低音まではあまりでません。
低音から中低音の帯域がかなり多めにでるので、試聴する環境によっては中域が膨らみ気味に感じる場合もあるかと思います。
特に鉄筋コンクリートで作った低域の逃げの少ない本格的なリスニングルームで、大音量を出す場合とかに相当気になる場合があります。
※このパイプ音的な中域の膨らみは「バックロードホーン特有の低域の遅れ」と表現されることがありますが、個人的には音道の長さをスワン並に長くしても、中域のパイプ音は設計で回避できると考えております。
この中域の膨らみはソースによっては全く気にならない場合もありますし、個人の好みで気になる人・気にならない人がバラバラな印象があります。
音は「生々しい」この一言に尽きると思います。
細かい音、微細な音、全てを伝えてきます。付け加えると「音が引っ込まずに前に出てきます」、「生々しい音」は良い表現ですが、裏を返しますと温かみがなく聴き疲れする、歪っぽいというようなという表現にもなる場合もあります。
長岡鉄男先生が本のどこかにこんな感じのニュアンスのことが書いてあったのを覚えています。
「スワンはある点では5000円のラジカセに負けるが、ある点では○百万円のハイエンドSPを凌駕する」
確かに、JBLやB&Wの300万クラスのハイエンドスピーカーと比較した場合に、定位感や生々しさなど間違いなく勝てる部分はあります。
音工房Zで現在設計販売しているバックロードホーンはスーパースワンとは全く違う方向で進化していますが、スーパースワンが私のバックロードの全てのスタート地点だったという意味で初回研究室コンテンツに書かせていただきました。
D101Sのユニットを変えると音はどう変わるか
先程ご説明しましたが、D101Sスーパースワンというスピーカーは、長岡鉄男先生が設計された有名なバックロードホーン型スピーカーです。
一般的に、バックロードホーンスピーカーは、フルレンジ型スピーカー1つと、あとは箱の内部に迷路構造を持ったエンクロージャーで全体の音を構成します。
市販されているマルチウエイスピーカーのように複数のスピーカーユニットをデバイディングネットワークで分割しませんので、マルチウエイ型のデメリットを持たないスピーカー形式になります。
(反面バックロードホーンスピーカーにもデメリットが数多く存在します)
バックロードホーンは、ネットワークによるごまかしがきかない分、スピーカーユニットと、エンクロージャーという2つが、音に大きな影響を持つことになります。
通常、バックロードホーンはスピーカーユニット毎に、それぞれ合わせたエンクロージャーを設計しますが、音の傾向が近いスピーカーユニットであればユニットを変えて楽しむこともできます。
長岡鉄男先生のD101スーパースワンには、FOSTEXのFE108Superという限定販売された
スピーカーユニットが指定されています。
こちらのスピーカーユニットは大昔のスピーカーユニットで、現在は販売されておりません。
このスーパースワン以降に販売されたFOSTEXの10センチのフルレンジ型スピーカーはたくさんありまして、長岡鉄男先生ファンの方でスーパースワンを御利用になられている方は、それらのスピーカーユニットを付け替えて楽しまれています。
設計者の意図とは変わった音になってしまいますが、これも自作スピーカーの1つの楽しみ方だと思います。
今回は、D101Sスーパスワンというバックロードホーン箱に、いろいろな限定販売ユニットを挿入した時にどういう音になるかという音工房Zが行った実験を、動画で紹介したいと思います。
箱は同じ、SPユニットを変えたら音がどう変わるか?
興味の有る方は御覧ください。
PCやスマホのスピーカーでは違いは分からないと思いますので、ヘッドフォンでお聞きくださいね。
FE108 Super 長岡鉄男先生オリジナル
外観
写真2 FE108Super(オリジナル)の外観
動画による音の紹介
FE108ES
すでにコーン紙にシミがでていまして、音にも良くない影響がでています。
外観
写真3 FE108ESの外観
動画による音の紹介
FE108 EΣ
入手可能なオーバーダンピングユニット
外観
写真4 FE108 EΣの外観
動画による音の紹介
FE103 En-S
FE108Sと似た形状のためFE108Sと近い音かと期待されたが、音がFE108Sとはだいぶ異なります。
外観
写真5 FE103 En-Sの外観
動画による音の紹介
FE108ESII
直径100mmのランタンコバルトマグネットを強力な2枚重ね構成にした大型磁気回路
入手困難
外観
写真6 FE108ESIIの外観
動画による音の紹介
MG100HR-S
純マグネシウムHR振動板のフルレンジ
外観
写真7 MG100HR-Sの外観
動画による音の紹介
FE108Sol
2015年FOSTEXのSolシリーズの限定ユニット
外観
写真8 FE108Solの外観
動画による音の紹介
ユニットによる音の違い・・・まとめ
これらそれぞれのユニットの音については、ヘッドフォンでも違いを聞き取れるのではないかと思いますが、実際生で聞くとさらに違いが大きく感じ取られます。
音色はFE108Sとはどれも結構異なりますが、今回ご紹介したユニットは、いずれもマグネットが強力でダンピングがかかりますので、中高域の好みはあるにせよ低音はしっかりホーンロードのかかった音を楽しむことができます。
バックロードホーンにはオーバーダンピングユニットというものを良く使いますが、これについてはまたいつか書きたいと思います。
以前にマグネットを強化していないFE系のスピーカーユニット(FE103EN)をスーパースワンに入れたことがあります。
これは中域が膨らんで聞こえてしまいNGでした。(小音量でしか聞かないのであればいいと思います)
FE108Sという紙のユニットは古いユニットなので、新古品でもエッジからのシミの問題はあります。
FE108EΣというスピーカーユニットはレギュラー商品でバックロード向けユニットです。 こちらはデジタル的な音がするので好みもありますが、アナログレコードとの相性ではFE108Sのほうが合うという意見もあります。
以上、少しマニアックな話になってしまいましたが、、、
長岡先生のスピーカーの有名どころは、今後も紹介していきたいと思います。