今日は弊社のスピーカーZ800-FW168HRを使って↓の図面のAからPの位置16箇所(前後合わせて32箇所)にスピーカーを移動させて測定した周波数特性を示し、スピーカーのセッティングポジションによる定在波の凸凹を検証します。マイク位置はリスニングポジション1点(ニ)に固定です。


 部屋の広さは無響室を抜きにすると、6.5m*5.2m=33平米。約20畳ぐらいです。スピーカーを動かしている距離は1m*2mですから片chのスピーカーを畳1枚強ぐらいの広さを32分割して動かしているイメージです。

 お客様のリスニングルームでなかなかここまで自由にスピーカーを移動できる部屋は多くはないかと思いますが、、スピーカーの位置をこれくらい動かせると特性がどの程度変わるものなのでしょうか?

 スピーカーを置く位置を変えても定在波のピークやディップの問題は永遠につきまといます。しかし測定ポジションによって極端に凸凹が大きく出るところと比較的凸凹が少ない点、つまり定在波の影響が小さいポイントがあることをこのページを最後までご覧いただくとご理解いただけるのではないかと思います。

 測定をする以前から、スピーカーのセッティング位置を変えた場合の音の特性は私の頭の中にイメージはありました。視聴会ではできるだけ良い音で聞いてもらうためのポジション選びは真剣にやっていましたが、、今日はその答え合わせにもなります。

 

スピーカー配置とマイク位置、測定方法の説明

弊社のリスニングルームのスピーカーをセットするエリアには写真のような8枚のタイルカーペットが敷かれています。8枚のタイルカーペットを前列の「前」と後列の「後」にわけます。「前」の4枚の角にA~Pのローマ字を4隅に打ちます。「後」にも同様にA~Pまでをうちます。

 

「前C」の測定位置は↓の写真のようにスピーカーの手間左の角をスタンドの角に合わせます。

「前D」の測定位置は↓の写真のようにスピーカーの手間右の角をスタンドの角に合わせます。

「前K」の測定位置は↓の写真のようにスピーカーの置く左の角をスタンドの角に合わせます。

「前L」の測定位置は↓の写真のようにスピーカーの置く右の角をスタンドの角に合わせます。

 

マイク位置は冒頭図面の「ニ」になります。こちらは背面の壁から500mm離れたところで、マイクの高さは1100mmです。私がパイプ位置に座った時の耳の高さにだいたい合わせました。

これは視聴会のリスニングポジションでセンターポジションになります。

 

いつもスピーカーをセットしているポジションで特性を比較して分析

 

 実際に32箇所を全て測定しましたが、実際に視聴会やスピーカー試作でセットしている位置は、「前」のCDEFの6箇所がほとんどです。図面でいうと赤丸をつけた位置です。最も使うのは前のCとDです。たまにBとGも置く場所がなかった時に使うかなという感じです。

 測定実施する前の私の頭の中には、スピーカー左右距離を極端に近づけた「前B」「前C」「前D」は80~120Hzの低域が大きく持ち上がる印象がありました。一方、左右のスピーカーの距離を広めにとった「前E」「前F」「前G」は100~150Hzあたりのミッドバスが薄め(ディップ)になるがローエンドが伸びるという印象を持っていました。

 前の一列目のスピーカー位置の特性を1つづつだして検証してみます。定在波として着目してほしいのは20Hz~200Hzあたりになります。

前Aの位置

40~200Hz内のピーク・ディップはだいたい10dB内に収まっていまして、フラットなほうですが、極端にスピーカーの距離が近く、ステレオ感はでませんのでこのポジションを使うことはありません。

前Bの位置

 100Hzより下の低域はAとさほどかわりませんが、180Hzあたりに大きな20dB近いお椀型のディップがでています。スピーカーの距離にして25センチそれぞれ左右にずらしただけでここまで極端にでます。Bの位置でもスピーカーの左右距離が狭いので、実際にこのポジションを使うのはスピーカーを置く位置がなくなった場合のみです。この大きなディップは認識していませんでしたが、クラシック音源などでは気になる可能性があります。

前Cの位置<最もよく使う位置>

 

 最も良く使う定番位置です。音場感がしっかりでて特性も悪くないと思っていました。F特上は40Hzから200Hzに大きな凸凹がない最もフラットな特性でした。

前Dの位置<最もよく使う位置>

 

C の隣のこの位置も非常によく使います。Cに比べるとこちらのほうがローエンドがでて、ミッドが落ちると思いこんでいましたが特性比較すると逆のようです。特性だけで判断するとCのほうがフラットといえます。

CとDの比較

前Eの位置<よく使う位置>

 100~200Hzのミッドバス帯域は大きな谷が少なくフラットです。「前-C」「前-D」に比べると低域の量感が少なく感じていましたので、Z800-FW168HRSや低域がよくでるマークオーディオの箱との相性を良く感じていたポジションです。

 

前Fの位置<よく使う位置>

このポジションはEが空いていない時に使います。90Hzあたりのディップは目立ちますが、50~60Hzのローエンドが伸びてきています。スピーカーを離すとローエンドが伸びて来ると感じていましたがこの辺から大きくなっています。

前Gの位置

 このポジションは左右離れすぎで、基本使いません。特性的には思い切り山谷が大きな特性となっています。壁の反射がもろでている感じです。ローエンドが伸びると私が感じていましたが、50~80Hzあたりですね。

前Hの位置

このポジションも離れすぎで使ったことは一度もありません。50~80Hzの盛り上がりがマックスに激しい特性となっています。

「前A」~「前H」の8つの特性のまとめ

 上は「前A」から「前H」の位置。つまり最前列でスピーカーを8パターン動かした場合の特性を重ねています。このグラフからめちゃ面白いことがわかります。グラフを3つに帯域を大きく分けて考えてみます。

 

 

 ①45Hzより下はほぼ同じ。どこにスピーカーをセットしてもほぼ同じ音量になる。

 ②の低い帯域45~90Hzはポジションにより最大20dB近くの差がでている。スピーカーポジションを動かすことでこれら帯域は極端に大きく変わる。 90Hzにディップがあるが、この帯域はどこにスピーカー位置をセットしても音圧差は3dBぐらいに収まっている。100Hz~200Hzもセッティング位置により最大で15dB近くの差がある。110Hz、140Hz、190Hzあたりは変化が3dB程度に収まるポイントがある。

 ③200Hzより上はだいたい5~10dB程度の差である。変化量は②に比べると小さい。

 

 定在波の問題は、部屋の寸法の長さで全て決まってしまうので、スピーカー位置はどこでも同じと考えている人がいるかもしれません。それは①の帯域に関してだけは正しいようです。

 ②の50~200Hzという低域から中低域にかかる耳の感度の良い帯域です。定在波の影響でスピーカーを置く位置で複雑に音圧が変化することを示しています。

 ③の200Hz以上の帯域は差はあるが②の帯域に比べると僅かなのでセッティングを考える時は除外して考えて良いかと。

 

ついでに、上のグラフは20~1000Hzまでを示していますが、20~50000Hzまでを示したグラフが↓です。

 

少し分かりづらいかもしれませんが。今度は高域に目を向けていただくと、指向性がでてくる高い帯域はスピーカーの置く位置で音圧差が大きくなっていますね。この部分はスピーカーの位置が変わったことで、マイクとスピーカーの角度が変化して音圧が大きく変わることになります。先程の帯域を分けたグラフに④を追加してみます。

 

①スピーカーの位置による音圧の影響なし

②スピーカーの位置により最大20dB近く変化する

③スピーカーの位置による音圧の影響は小さい

④スピーカーの位置というより、ユニットの指向性のために再び音圧差が大きくなる

 

弊社の20畳程度のリスニングルームでの考察です。部屋の広さや、壁の反射性・吸音性などによって①から④の境目や、凸凹の変化量は変わると思いますが、だいたい似た感じになるのではないかと考えます。

 

スピーカー位置を32箇所に変えた時の全特性 

 弊社で最もよく使っている、「前C」(青い紫)ポジションを比較用のリファレンスとし全特性を掲載します。縦軸は1目盛り5dBです。スピーカー位置を変えることで、帯域により10dB~20dB近く変化し、20~200Hzの特定帯域のピーク・ディップが目立つポイントがあることをさらっとご確認ください。それらが定在波が大きくでているポイントです。

 

前A↓

前B↓

前C↓

前D↓

前E↓

前F↓

前G↓

前H↓

前I↓

前J↓

前K↓

前L↓

前M↓

前N↓

前O↓

前P↓

 

ここから、「後」セッティングの特性になります。
ソフトウエアの都合で、リファレンスの「前C」は茶色のグラフになります。

 

後A↓

後B↓

後C↓

後D↓

後E↓

後F↓

後G↓

 

後H↓

後I↓

後J↓

後K↓

後L↓

後M↓

後N↓

後O↓

後P↓

 

部屋を縦に使った場合の特性

 私のリスニングルームはこの工場を購入した時に、部屋を縦に使うか横に使うか悩みました。その時はスピーカーをステレオで測定するとかいう発想がなく、私の耳と自作スピーカーの先生であるハイエンド自作スピーカーさんの石田さんのアドバイスをもとに生音楽を聞いて決めました。

部屋を「縦」につかった場合の図面は下のようなイメージです。

 

 10年ほど前に部屋を縦に使うか横に使うか迷って、スピーカーを双方のパターンでテストした結果縦に使うと低域に大きなディップがあるのか量感全体が少なく、一聴して縦に使う案はボツになり横置きにして使う案を採用になりました。今も部屋を横に使っています。

どんな特性かを4箇所で同じZ800-FW168HRを使って改めて測定してみました。Aの位置の測定結果が↓です。

部屋縦A

 

100Hzから200Hzの間に大きなディップはありませんが、80Hz以下の低域が部屋を横にした時と比較するとかなり落ちてます。横置きのメインで使っている「前-C」ポジションと比較してみるとよくわかります。ここまで差があると耳で聞いても歴然と違うのがわかります。

 

 
 左右逆相で間違ってつないだか、サブウーファーの電源がはいってないんじゃないかというほど違いますね。部屋のどこにスピーカーを置くかという問題は音の根本を決める、超超超大事な問題です。

 音に拘りを持っている方はスピーカーの配置を決めてから家具の配置を考えてくださいね。くれぐれも逆にならないように。スピーカーの配置に自信のない方は弊社で今後リリース予定の、測定のコンサルをご利用ください。関東エリア限定でサービス開始予定です。

 

 

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