目次
FOSTEX FE103A 辛口レビュー
FE103Aの音質評価(ユニット素性)
FE103Aはロングセラーモデルの10cmユニットであるFE103系の記念モデルとして2019年10月に限定700セット販売されました。
70周年の記念モデルということで、FOSTEXの振動板の最新技術である2層抄紙振動板を採用する一方、現在はコストの関係で採用されることがほとんどなくなったコの字ヨーク&アルニコマグネットという歴史的な技術を合体させたハイブリッドモデルと言って良いでしょう。
FE-Solシリーズから採用された2層抄紙という技術で作られた振動板を採用しています。剛性のある表層の紙と、ダンプする基層の紙を2段階に分けて抄紙することで作られています。2層抄紙の振動版は従来のEnシリーズの振動版と比較して低歪で聞きやすく、現行のNVシリーズと比べても繊細で伸びのある高音域は一段上のレベルといっても良いかもしれません。
さらにFE-Solシリーズでは採用されなかったハトメレスの振動板や、ポケットネックダンパーによる中低域の改善で、同じ2層抄紙技術を用いたSolシリーズよりも豪華な仕様となっております。現在では採用例が多くないアルニコマグネットによる圧倒的な低域のスピード感など、隙のないユニットに仕上がっています。
ユニットの素性としては10センチの限定ユニットFE108Solと比較すると聴感上はハイ上がり(高域が多い)な印象は少なく、大変聞きやすい。二層抄紙による歪み感のなさは特筆の出来にかんじます。低域はアルニコマグネットによるものかは不明ですが小音量でもリニアリティーが良く、切れの良い低域を聞かせてくれます。昔のFOSTEXの限定ユニットにあったじゃじゃ馬的なユニットとは対極的なユニットと言えるでしょう。
FE103Aに合うエンクロージャーの考察
FE103AのQ値は0.6でバスレフ向きの特性といえ、音道が短く適度なロードをかければバックロードホーンにも使えそうです。
低域の量感がそれほど必要なければ密閉箱でも実用で、高音域があまりうるさくないユニットの特性からバランスの良いスピーカーが作れるでしょう。
オーバーダンピングユニットという訳ではないので、大きい箱容積や長い音道だと低域を制動できずに膨らみすぎてしまう恐れがあります。長岡式スワン等低域が良くでるエンクロージャーでは試していませんがマッチングは少々難しい気がいたします。
バスレフ箱による設計が一番簡単で、かつ性能を伸ばせそうです。容積は5L~10Lの間で低域を出したい場合は可能な限り箱が大きいほうが良いです。FOSTEXさんが販売していた専用エンクロージャーYK103Aは6.2Lでした。
ちなみにFE103Aは紙の取説が入っていなくWEBからのダウンロードでスペックを確認する仕様となっております。
FE103A+7L [密閉箱] 評価
低域は薄目で、若干ハイあがりな感じはしますが、聞けないほどではないです。
実験では弊社がamazonで販売していたバスレフ標準箱7Lにサブバフルをつけてダクトをふさぎ密閉型にしました。吸音材を多少多めにいれるのが良いでしょう。
FE103A+7L [バスレフ箱] 評価
バスレフの7Lに入れたところ密閉よりかバランスが良かったです。ローエンド中心の楽曲では低域は物足りませんが、たいていの曲では不満がなさそうです。吸音材は少な目に背面と天板裏にL字型につけるのが良いでしょう。
FE103A+Z700-FE103Sol箱 [ダブルバスレフ箱]評価
音工房Zで販売していたZ700-FE103Solという箱でテストしました。こちらは第一ダクトが長いダブルバスレフに近い構造です。音道は65cm程で内容積は24Lです。
スピード感のある低音域でFE103Aらしさがよく出ています。特性はダブルバスレフらしく中低域の200Hz付近にディップのある特性ですが、低音の量感が多く、スッキリした音質になっています。
こちらは以前に弊社で販売していたFE103Sol用の専用箱ですが、こちらの箱をベースに改良を加えていったものをFE103Aの専用箱として限定販売を2020年2月に行う予定です。販売予定のものはダブルバスレフより音道を長くしたバックロードよりのものになります。
FE103A+Z1000-FE108Sol箱 [バックロードホーンバスレフ箱] 評価
弊社で限定販売したFE108Sol用の専用箱に入れてみました。音道は徐々に広がるバックロードホーン形状で、最終ダクト部分を絞る構造で、いろいろなバリエーションがありますがBHBS(バックロードホーンバスレフ)という名称です。
このユニットの持ち味であるスピード感がスポイルされてしまっている印象です。低域の量は好みもありますが若干中域から中低域の量感が膨らみすぎている印象があります。
ソースごとの相性
・クラシック
FE-Solシリーズ譲りの美しい高音域の出る振動板です。良く伸び、痛くなりがちな音も比較的やわらかめに鳴ります。ヴァイオリンは繊細に、ピアノはカッチリとした表現です。
中域はFE103Solにくらべて見通しが良くなりました。厚みもFE103Aの方があるように思えます。
低域はこのユニットの最も特徴的な部分で、ダンピングが良くスピード感がある低域です。
・ジャズ
女性ボーカルなどは得意です。高域が煩いという印象はなく中域にも厚みがあります。FE-Solシリーズに比べると少し落ち着いた印象で鳴ります。
外観のレビュー
フレーム
FE-103系の伝統ある鉄板プレス製のフレームに美しく全体にクロームメッキがかけられています。
ユニット取り付けは長穴になっており自作向きな設計
振動板
振動板はFE-Solシリーズで実績のある2層抄紙のコーンを採用しています。
ESコーンの主原料は芭蕉類からとれる繊維で、これを長繊維を基層に、短繊維を表層に2段階に抄紙することで、軽量かつ剛性を向上させ、適度な内部損失を確保しています。
FF-WKシリーズで採用されたハトメレスの技術を採用し、中音域の高調波歪を減少させました。また、ハトメがなくなったため、スッキリとした振動板のデザインになりました。
エッジ
写真左がFE103NV写真右がFE103A。
ダンパー
ダンパーもFF-WKシリーズの技術を盛り込んだのポケットネックダンパーを採用しており、ボイスコイル、ダンパー、コーン紙を同一円周上で接着する3点接着を実現している。
磁気回路
このモデルの最大の特徴であるアルニコ磁石の採用と磁気回路内のポールピースに銅キャップを配置し、低歪化による中高域の明瞭度を向上させています。
その他
ペアで販売され、ディスプレイ可能な木箱に入れられている。金メッキファストン205タイプを装備
ユニット取り付けネジは付属していません。
FE103A 客観的情報
歴史
フォスター電機創設70周年の記念モデルとして、企画・製造され、スピーカーユニットとしてロングセラーモデルのFE103系をベースにしている。
物量投入度合いは過去に例をみない程で、現在では導入の例が少ないアルニコ磁石を使用した磁気回路や、FE-Sol系、FF-WK系などで培われた最新の技術を導入し、技術の粋を尽くしたものになっている。
記念品の意味合いも強く、外装は美しく全面メッキがかけられたものになっており、ディスプレイ性を意識した梱包した状態のユニットの見せ方や美しい木箱、真鍮製のフォスター電機の銘盤など、飾っても楽しめるものになっている。
価格・概要
限定 700ペア
標準価格 \70,000 (税別) [ペア販売]
発売年 2019年10月下旬
スピーカー形式 10cm口径フルレンジユニット
FE103A スペック詳細
インピーダンス : 8Ω
最低共振周波数(Fs) : 79Hz
再生周波数帯域 : fs~20kHz
出力音圧レベル : 88dB (1m/1W)
定格入力 : 5W
瞬間最大許容入力(Mus.) : - W
実効振動半径 (a) : 40mm
ボイスコイル径 : 20mm
バッフル開口寸法 : φ93mm
総重量 : 600g/個
化粧箱寸法 :W272×H133×170(mm)
化粧箱質量 :2,550g(スピーカー含む)
メーカー推奨箱の概要 バスレフ L
mms(m0) : 2.66 g
Cms : 1.53 m/N
Fs(F0) : 79 Hz
Vas : 5.47 L
Qms : 6.15
Qes : 0.66
Qts(Q0) : 0.60
音工房Z無響室でのユニットF特・インピーダンス測定
弊社内無響室
測定機器 Etani ASA10MKII
周波数特性
ユニット、マイク間10cmでの測定結果
ユニット、マイク間 1mでの測定結果
インピーダンス特性
Youtube視聴動画
・・・音工房Z内のリスニングルームで録音したものです。ヘッドホン等で
ご視聴ください。
7Lバスレフ箱で再生 (fd:90.5Hz)
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道短い:65cm)で再生
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道長い:87cm)で再生
リンク集
自作用スピーカーユニット 辛口レビュー 一覧