目次
FOSTEX FF105WK 辛口レビュー
FF105WKの音質評価(ユニット素性)
FF105WKはFOSTEXが販売する10センチ口径のフルレンジ型スピーカーです。
同社が販売するフルレンジ型スピーカーで類似の価格帯のモデルに「FE系」があります。FE系はバックロード or バスレフ仕様なのに対し、FF系はバスレフを主眼に置いたモデルになっています。
全体的な音のバランスはFE系のハイ上がり傾向で高能率なスピーカーユニットとは異なり、比較的低音が出やすくバランスのとれたユニットになっています。(FE系も2019年に改定されたNVからかなりハイ上がり傾向は抑えられています。)
繊細ではありますが、空気感という意味ではFEシリーズの方が表現が優れているように思えますが、FEにない重心の低い中低域の表現など、楽曲を選ばないという意味では、こちらのほうがオールマイティに聞けるかもしれません。
FE103NVとFE105WKのスペックを比較してみましょう。振動板の重さを示すM0の値はFF105のほうが重いです。振動板が重いと共振周波数(F0)や能率(SPL)は低くなりますが、音の傾向はハイ上がりの逆のローブーストタイプになります。
FE103NV | FF105WK | |
M0 | 2.5g | 3.4g |
Q0 | 0.46 | 0.41 |
F0 | 91.8Hz | 75Hz |
SPL | 88.5dB | 88dB |
FF系は簡単に低音が出ますので、FE系よりか使いこなしはしやすく初心者にオススメのスピーカーユニットとなっています。
FF105WKに合うエンクロージャーの考察
比較的重い振動板です。Q値が0.41とバスレフでもバックロードでもいけそうな数値です。
高域はリジッドドームセンターコーンにより煌めき的な特徴はありますが、ハイあがりではなく、全体に俯瞰してみればフラットな印象です。ここは旧FF系シリーズから改善されたところです。
バックロードホーンで作れそうなスペックですが、重量感のあるFF-WKの低域は、スピード感、空気感重視のバックロードよりも、バスレフやダブルバスレフの方が合うでしょう。
長岡鉄男先生の設計の有名どころのバックロードホーンスピーカーはFE系を使ったものが多いですが、FF系を使ってバックロードを設計する際はホーンロードを多くかけないようにして中低域から中域の量感が膨らみすぎないように作ると良いでしょう。
FF105WK+7L [バスレフ箱] 評価
7Lでチューニング周波数90.5Hzのバスレフ箱で試してみました。
ローエンドは十分でるもので、高音域もうるさくなくバランスのよいものです。吸音材は背面と天板裏にL字状にはります。
最下部のリンクから動画を見ることができます。
FF105WK+Z700-FE103Sol箱[ダブルバスレフ箱]評価
ダブルバスレフ形式はバスレフよりも低音感が稼げるのですが、中域にディップができるのでそれをどこに持っていくかがキモになります。
設定はかなり難しくユニットと合わせて試行錯誤になるので、このユニットの場合はバスレフの方が安定して聞けると想います。
FF105WK+Z1000-FE108Sol箱 [バックロードホーンバスレフ箱] 評価
BHBSはローエンドを伸ばし癖のある中域をカットします。FF105WKの場合は無理に低域を伸ばして特性を悪くするよりかは、素直にバスレフで使うのが良いのかもしれません。低音から中域の膨らみ感が強く良い特性とはなりませんでした。
※BHBS(バックロードホーンバスレフ)とはエンクロージャー内部にバックロードホーンのような迷路構造があり、最後のホーン部分を大きく絞ってバスレフ動作を狙ったシステムです。スピーカービルダー石田健一氏が発案したシステムで、バックロードの長さや最終ダクトのチューニングで様々なバリエーションがあります。
ソースごとの相性
・クラシック
低域は量感たっぷりに鳴ります。
FEが空気感で鳴らすのに対し、こちらは実在感で密度濃く鳴らします。
低域、高域の特徴あるキャラクターに比べて中域は目立ちませんが、 透明感のあるFE-Solの振動板と比べるとしっとりと鳴る傾向です。
リジッドセンターキャップの金属的な音がたまに目立つ場合があります。鮮やかに鳴るのですが、場合によっては痛く耳につく時があります。
・ジャズ
重量感のあるウッドベースや、スネアやブラシなどの金属的な高音域は楽しく、FF-WKシリーズはジャズの為にあるのではないかと錯覚してしまう程です。ボーカルはあまり艶っぽくはならないので、ハスキーボイスな歌手だとよく合います。
外観のレビュー
フレーム
フレームはFE103系と同じ大きさの鉄板プレス製で、メタリックグレーに塗装されています。
ネジ穴は長穴タイプとなっているので、すこしずれて開けてしまってもしっかりとユニットを固定できる自作向きのものとなっています。
ユニット取り付けは長穴になっており自作向きな設計
振動板
前モデルから見た目も内容も大きく変わったのがこの振動板といえます。
2層抄紙コーンというコーン紙を2段階に分けて基層/表層の2層で形成しています。
基層は長繊維(低叩解度)の木材パルプ、表層は短繊維(高叩解度)のケナフを使用していて、高剛性化と内部損失を合わせ持たせています。
振動板が灰色ですが、これは表層に備長炭パウダーが配合されている為で、このユニットの特徴になっています。(若干色に個体差があるようです。)
センターキャップはFOSTEXのツィーターでもよくみる形のリッジドーム形状になっていて、この形にする事により、アルミ合金特有の高域のカラーレーションを抑えられるとの事です。
また、センターキャップはボイスコイルボビンと直結した構造をとっていて、ダイレクトに超高域までの音域をカバーしています。
エッジ形状は前モデルのUDRタンジェンシャルエッジに変わり、新素材のアップロール形状になっており、高ストロークを追求し、低域の再現性を高めています。
素材は、高損失、高ヤング率のポリカーボネート系材料を特殊配合したウレタンフォームを採用しています。
木材パルプ系のしっかりとした鳴りの振動板に仕上がっている。
ダンパー
コーン紙とダンパー、ボイスコイルを同一箇所で行う合理的な3点接着方式を採用しています。
また、ポケットネックダンパー方式を採用し、振動板にハトメのない形式になりました。
ハトメ(振動板中央付近に見られる2つの盛り上がり)がなくなった事で、その荷重による歪がなくなっただけでなく、見た目もスッキリしました。
3点接着方式、ポケットネックダンパーの技術は後のFOSTEXのその他のユニットに採用されている。
磁気回路
マグネットはフェライトの外磁式で340gの強力なものを搭載しており特徴的な凹凸のある形状になっています。
その他
ファストン端子は金メッキに変わり、#205タイプを採用しています。
FF105WK 客観的情報
歴史
10cm普及型ユニットのFE系とは別に発売されたモデルで、伝統的なFEシリーズとは対象的に新技術を可能な限り導入したモデルとなっています。
2層抄紙の技術はFEの限定ユニットであるFE-Sol系に採用され、3点接着方式、ハトメレス、ポケットネックダンパーなどは後に作られたFE-NV系に導入されるなど、FOSTEXのその後のモデルの高音質化に貢献しました。
FF-Kシリーズは以前から発売されていましたが、FF-WKになって新たに10cm口径のこのモデルがラインナップに加わりました。
2011年の発売から現在(2020年執筆時)も継続販売され、息の長いモデルとなっており、その人気の高さも伺い知れます。
フレームの寸法、ネジ穴等は伝統のあるFE103系と同一なので、ユニット交換も楽しめます。
価格・概要
標準価格 \4,400 (税別) 2011年発売時
\5,000 (税別) 2013年10月改定
\5,900 (税別) 2015年5月改定
\6,100 (税別) 2018年12月改定
発売年 2011年3月上旬
スピーカー形式 10cm口径フルレンジユニット
FF105WK スペック詳細
インピーダンス : 8Ω
最低共振周波数(Fs) : 75Hz
再生周波数帯域 : fs~25kHz
出力音圧レベル : 88dB (1m/1W)
定格入力 : 10W
瞬間最大許容入力(Mus.) : 30W
実効振動半径(a) : 40mm
ボイスコイル径 : 20mm
マグネット重量 : 340g
バッフル開口寸法 : φ93mm
総重量 : 800g/個
メーカー推奨箱の概要 バスレフ 6L
チューニング周波数72Hz
mms(m0) : 3.4 g
Cms : 1.346 m/N
Fs(F0) : 75 Hz
Vas : 4.848 L
Qms : 4.203
Qes : 0.463
Qts(Q0) : 0.41
音工房Z無響室でのユニットF特・インピーダンス測定
弊社内無響室
測定機器 Etani ASA10MKII
周波数特性
ユニット、マイク間10cmでの測定結果
ユニット、マイク間 1mでの測定結果
インピーダンス特性
Youtube視聴動画
・・・音工房Z内のリスニングルームで録音したものです。ヘッドホン等で
ご視聴ください。
7Lバスレフ箱で再生 (fd:90.5Hz)
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道短い:65cm)で再生
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道長い:87cm)で再生
リンク集
自作用スピーカーユニット 辛口レビュー 一覧