目次
FOSTEX FE103-Sol 辛口レビュー
FE103-Solの音質評価(ユニット素性)
FOSTEX FE103-Solは2015年4月限定販売された10センチ口径のフルレンジユニットです。
FE103-Solでは通常モデルFE103EnのEsコーンではなく、2層抄紙コーンが採用されたことで、低歪でクセがなく、自然でよく伸びる高音域になりました。マグネットも強力になり、重量は193gから225gに増えましたが、Q値はFE103Enの0.33からFE103solの0.44と逆にオーバーダンピング傾向は下がり、ハイあがりな傾向は抑えられました。
軽い振動板と強力な磁石でハイスピードな低音をドライブすることができ、バスレフからバックロードホーンまで対応できるモデルです。
下のグラフはFE-103Sol(実線)とFE103En(点線)の比較ですが、FE-103Solの方が100Hzより下の低域がよくでていて5k以上の高域も音圧が高くなっています。
低域は当時のレギュラーモデルであるFE103Enと比較するとよくでています。高域は1~5KHzあたりの帯域は1,2dB低くおさえられていますが、5KHz以上の超高域帯域(スーパーツィーターで補う帯域)は高い音圧をだしています。
F特グラフだけを比較するとFE103Solのほうがハイ上がりに見えますが、実際に耳で聞くとFE103Enのほうがハイ上がり傾向に聞こえます。
FE103-Solに合うエンクロージャーの考察
FE103-SolのQ値は8Ω版と16Ω版でそれぞれ違い、8Ωだと0.44、16Ωだと0.54となっています。
他のFE103系と基本となるテイストは似ていますのでエンクロージャーもダブルバスレフやバックロード等共振を使って低域量感を増やすエンクロージャーが合うでしょう。
バスレフ・密閉型は低域の量感が少なくハイあがり傾向になってしまいますが、極小音量で聞いたり低域を無視したソースで利用されるのであれば利用も可能でしょう。オールラウンドのソースで利用する場合はサブウーファーの利用を前提と考えたほうが良いでしょう。
FE103Sol+7L [密閉箱] 評価
小音量でソースを選べば密閉型も悪くないと感じました。
素直で自然な音のでる振動板なので、その特性を享受できるでしょう。
痛くない高音域ですが、ハイあがり傾向になります。
FE103Sol+7L [バスレフ箱] 評価
欲張りすぎないローエンドを狙えば、ポテンシャルを発揮できるでしょう。FE103En等に比べると使いやすくはありますがそれでも市販品のマルチウエイと比べるとハイ上がりな印象はあります。
視聴では弊社販売のAmazonの箱にΦ93mmの穴をあけたサブバフルを製作し、7Lの箱でチューニング周波数が90.5Hzの箱で行いました。
最下部のリンクから試聴できます。
FE103Sol+Z700-FE103Sol箱[ダブルバスレフ箱]評価
ダブルバスレフの設計は難しいですが、うまく設計すればバスレフよりも低域の量感がかせげて中音域がスッキリした箱を製作する事ができます。
ここでの評価は音工房Zで販売したZ700-FE103Solをベースに視聴を行いました。箱のサイズは22L程度と通常のバスレフの2~3倍くらいのサイズです。このくらいのサイズにすると低域がだいぶ豊かになりある程度オールラウンドなソースをこなせるようになります。
ダブルバスレフはローエンドを伸ばすのは簡単ですが、反面中域に谷ができやすいので特に音に影響の大きい第2ダクトは後々変更できるよう設計すると良いでしょう。
FE103Sol+Z1000-FE108Sol箱 [バックロードホーンバスレフ箱] 評価
ある程度パワーがあり、若干オーバーダンピング傾向のユニットなので、音道の短めなバックロードならば具合は良いでしょう。
実験には音道の短いものと、長いものの バックロードホーンバスレフを使いましたが、 どちらもよい結果になりました。
最下部のリンクから試聴できます。
ソースごとの相性
・クラシック
8cmでは編成の多い曲の再生は難しかったのですが、 10cmのFE103-Solならば なかなか迫力のある音質で聞くことができます。
ヴァイオリンやフルートなど、高音域が主体の音源では かなり音質は良好です。
逆に低域が主体のソースなどでは若干不満がのこります。
・ジャズ
スピード感のある低域とクリアに繊細に鳴らす高域とで非常に 美しい音で聴くことができます。
女性ボーカル等は艶っぽく美しく鳴らすことができます。
・ボーカル
FE-103Solは自然な大人しい音色で、特に女性ボーカルは美しいです。
外観のレビュー
フレーム
Solシリーズのイメージカラーであるカッパーオレンジに塗装されていて見た目のインパクトがあります。
伝統的なFE103系のスチールプレス製で、ユニットのリプレースは問題ありません。
ユニット取り付けは長穴になっており自作向きな設計
振動板
通常版であるFE103Enで採用されているEsコーンではなく、特別に草系の2層抄紙ESコーンおよびセンターキャップを採用しています。
2層抄紙技術はFF-WKシリーズでも採用されていますが、あちらは木材ケナフ系で、SOL系は草系となっています。
センターキャップはボイスコイルボビン直結で、メカニカル2wayとなっており、スペック上は40kHzまでの高域まで
伸ばしています。
また、ボイスコイルボビン材は高耐熱ガラスコンポジットとなっており、確実な振動の伝達と耐入力の向上に寄与しています。
通常モデルのFE103Enと大きく違うところはこの振動板まわりの構造と言えます。
2層抄紙ESコーンは自然な鳴りでSolシリーズの特徴になっている。
エッジ
エッジはFE103Enと同じもののようです。
FE103Enのカスタムモデルの意味合いが強いが、振動板の変更により音のキャラクターはかなり変わるものとなっている。
ダンパー
ハイ・コンプライアンス コルゲーションダンパーを採用しています。
FF-WKシリーズで採用された、コーン紙、ダンパー、ボイスコイルを同一箇所で行う3点接着方式を採用しコーンネックの強度を高めています。
FF-WKシリーズで見られるポケットネックダンパーは採用されておらず、伝統的な振動板にハトメがあるタイプになっています。
磁気回路
マグネット重量はFE103Enの193gにくらべて226gと増加し、さらにオーバーダンピングな傾向になったかのように思われますが、Q値はFE103Enの0.377から0.44と上がっており、むしろオーバーダンピングな傾向は減少しました。
16Ω版のQ値は0.666となっており、FOSTEXの標準箱指定がバスレフのみになっているほどです。
その他
ファストン205金メッキ端子を採用しています。
FE103Sol 客観的情報
歴史
FE103系の50周年記念限定モデルとしてラインナップされました。
(初代のFE103の発売は1964年)
限定モデルとしては珍しくインピーダンスの違う2種類が発売され、コアな自作マニアの要望に答えたものになっています。
構造としてはFE103Enを基本として、同じ10cmフルレンジのFF105WKの設計も取り入れて当時の最新の技術で製作されたものになっています。
価格・概要
限定販売 FE103-Sol (8) 限定1,500台 (インピーダンス8Ω)
FE103-Sol(16) 限定800台(インピーダンス16Ω)
標準価格 \6,500 (税別)
発売年 2015年4月中旬 (生産終了)
スピーカー形式 10cm口径フルレンジユニット
FE103En スペック詳細
インピーダンス : 8Ω / 16Ω
最低共振周波数(Fs) : 85Hz (8Ω)
:88Hz (16Ω)
再生周波数帯域 : fs~40kHz
出力音圧レベル : 90dB (1m/1W)
定格入力 : 5W
瞬間最大許容入力(Mus.) : 15W
実効振動半径(a) : 40mm
ボイスコイル径 : 20mm
マグネット質量 : 226g
バッフル開口寸法 : φ93mm
総重量 : 650g/個
メーカー推奨箱の概要 バスレフ L Hz
mms(m0) : 2.5 g (8)
: 2.4g (16)
Cms: 1.243 m/N (8)
: 1.184 m/N (16)
Fs(F0) : 85 Hz (8)
: 86 Hz (16)
Vas : 4.29 L (8)
: 4.27 L (16)
Qms : 2.755 (8)
: 2.947 (16)
Qes : 0.525 (8)
: 0.666 (16)
Qts(Q0) : 0.44 (8)
: 0.54 (16)
音工房Z無響室でのユニットF特・インピーダンス測定
弊社内無響室
測定機器 Etani ASA10MKII
周波数特性
ユニット、マイク間10cmでの測定結果
ユニット、マイク間 1mでの測定結果
インピーダンス特性
Youtube視聴動画
・・・音工房Z内のリスニングルームで録音したものです。ヘッドホン等で
ご視聴ください。
7Lバスレフ箱で再生 (fd:90.5Hz)
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道短い:65cm)で再生
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道長い:87cm)で再生
リンク集
自作用スピーカーユニット 辛口レビュー 一覧