目次
FOSTEX FE103En 辛口レビュー
FE103Enの音質評価(ユニット素性)
FOSTEXのFEシリーズは伝統的にハイ上がり(低域よりか高域が多くでる)特性のフルレンジユニットです。手頃な10センチ口径のスピーカーユニットはオーディオ評論家長岡鉄男先生の作例も非常に多く最も人気のある口径といっても良いでしょう。
前作FE103Eの軽やかな繊細な鳴りから、FE103Enは密度が高く太い音に変わった印象があります。
オーバーダンピングと銘打っている訳ではないのですが、Q値は0.33と低めです。取説にはバスレフ向きと書いてありますが、バックロード、ダブルバスレフ、TWQT等低域を膨らませたエンクロージャーと合わせるのが良いでしょう。バスレフ形式でも音を鳴らすことは可能ですが、ソースはある程度高域中心のものとの相性が良くなるでしょう。
下図は弊社音工房Zの簡易無響室でFE103EとFE103Enを比較したグラフです。実線がFE103En,点線がFE103Eです。
ローエンドは20Hzから80HzまでのローエンドはFE103Eのほうが多くでています。100Hzから1,500kHzまでの可聴域で重要な中低域の音圧がわずかながらですがFE103Enのほうが全体的に高くなっています。高域は概ねFE103Eのほうが1dB程度高い特性となっています。
FE103Enに合うエンクロージャーの考察
FE103EnのQ値は0.33で、オーバーダンピング傾向でバックロードホーン向きのユニットといえます。前作のQ値は0.35だったので、さらにその傾向が強まったといえます。
スピーカーユニットは特性的にFOSTEXの限定販売にあるようなゴリゴリなオーバーダンピングユニット(低域が出にくい)とは少々違います。フルレンジ1発で利用する場合はバスレフからバックロードまで幅広く使えますが、やはり自作の醍醐味である低域を膨らますダブルバスレフやバックロードホーンとの相性が良いように感じます。密閉方式で1発で鳴らすのは難しいでしょう。
低域がでににくいユニットないので、フルレンジ1発+サブウーファーという構成も可能です。その場合は逆に低域がダラ下がりになる密閉箱を利用すると低域は良いつながりを得られるはずです。
ちなみに8センチのフルレンジFE83シリーズとの比較で言いますと、FE83シリーズはFレンジがFE103シリーズより狭く、そのナローレンジの中でバランス良くなります。10センチのFE103シリーズはレンジが広い分箱の作り込みや、鳴らすテクニックが求められる気がします。
FE103En+7L [バスレフ箱] 評価
音工房Zがアマゾンで販売していた7Lの標準箱にいれて試聴してみました(現在この標準バスレフ箱は販売していません)。スリットダクトで共振周波数は90.5Hzです。
10cmクラスになると8cmのFE83Enのときと比べてかなり低音がでる事が実感できます。
低域中心のソースでなければ不満はないと思いますが、低域がはいったものになるとどうしても不足感を感じてしまいます。
ページ最下部に試聴動画があります。
FE103En+24L BHBS箱 2種 評価
音工房Zで販売しているバックロードホーンとバスレフを組み合わせたエンクロージャーをBHBS形状と読んでいます。このエンクロージャーの元祖は石田健一さんというスピーカービルダーさんのものをベースに改良をしています。簡単に言いますと箱の中にバックロードホーン形状の迷路があり、最終部分をバスレフのダクト形状にしています。
弊社ではこのバックロードホーン音道の短いもの、比較的長いもので比べてみました。
容積は24Lで、音道が短い方は長さ65cm 長い方は87cmです。
数字をみただけだと差は少ないように見えますが、実際に試聴してみると、音の余韻は雰囲気にかなり差があるように聞こえます。
音道が短いものは勢いがあり、音道が長いものは厚みがあります。
ページ最下部に試聴動画があります。
ソースごとの相性
・クラシック
少しホールトーンが入っているような古楽の曲はかなり合うようです。
・ジャズ
空気感重視の比較的軽めな音源のジャズならば良くマッチします。
・女性ボーカル
女性ボーカルは特にこのユニットの得意とする所です。
楽曲によっては痛く聞こえる場合もあります。
外観のレビュー
フレーム
FE103系伝統の鉄板プレス製フレームで板厚は約1mmです。リブもつけられており、ある程度強度はあるものなのですが、音工房Z所有のものは度重なる試作で、インパクトドライバーをつかっている関係で下図のように穴が凹んで塗装も削れています。
全体的な形状は前作と変わらないので、リプレースは問題なくできます。
次作のFE103NVも同形状を踏襲しています。
ユニット取り付けは長穴になっており自作向きな設計
振動板
前作に引き続きき芭蕉の仲間に属する多年草植物からつくられたESコーンを採用しています。クリアで自然な鳴りが特徴で、明るく繊細な印象です。
エッジ
EからEnへの進化の一つはエッジ材質の変更です。Eのエッジは透けて向こうが見えるのに対し、Enの方は見えません。触った感じもEnの方が若干硬めです。
FE103Eよりも腰の低い低音がでるようになったのは、この弾力のあるエッジの働きによるものかもしれません。
左下のFE103Eのエッジは経年劣化ですこしベトツキのある感じになってしまいましたが、左下のFE103Enのものは随分前に購入したのですが、まだサラサラです。
ダンパー
ダンパーは同心円上のコルゲーションがついたもので、FE103Eと変わっていないように見受けられます。
磁気回路
マグネット重量は前作と変わらず193gのフェライト磁石を使用。ターミナルは金メッキに変更され、形も大型になった。
左側が前作FE103E 右側がFE103En
FE103En 客観的情報
歴史
10cmの普及型ユニットであるFE103系の標準販売モデルで、2005年から発売されていたFE103Eの後継モデルになります。現在は販売終了で、その後継モデルは2019年7月下旬から発売のFE103NVとなりました。
原材料の高騰などの理由から、値上げが続きましたが、10年近く販売されたロングセラーモデルとなりました。
価格・概要
標準価格 \4,000 (税別) 2009年発売時
\4,280 (税別)
\5,000 (税別) 2013年10月改定
\5,800 (税別) 2015年5月改定
\6,000 (税別) 2018年10月改定
発売年 2009年9月 (生産終了)
スピーカー形式 10cm口径フルレンジユニット
FE103En スペック詳細
インピーダンス : 8Ω
最低共振周波数(Fs) : 83Hz
再生周波数帯域 : fs~22kHz
出力音圧レベル : 89dB (1m/1W)
定格入力 : 5W
瞬間最大許容入力(Mus.) : 15W
実効振動半径(a) : 40mm
ボイスコイル径 : 20mm
マグネット質量 : 140g
バッフル開口寸法 : φ93mm
総重量 : 580g/個
メーカー推奨箱の概要 バスレフ L Hz
mms(m0): 2.55 g
Cms: 1.65 m/N
Fs(F0) : 83 Hz
Vas: 5.95 L
Qms: 2.747
Qes: 0.377
Qts(Q0) : 0.33
音工房Z無響室でのユニットF特・インピーダンス測定
弊社内無響室
測定機器 Etani ASA10MKII
周波数特性
ユニット、マイク間10cmでの測定結果
ユニット、マイク間 1mでの測定結果
インピーダンス特性
Youtube視聴動画
・・・音工房Z内のリスニングルームで録音したものです。ヘッドホン等で
ご視聴ください。
7Lバスレフ箱で再生 (fd:90.5Hz)
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道短い:65cm)で再生
24Lバックロードホーンバスレフ箱(音道長い:87cm)で再生
リンク集
自作用スピーカーユニット 辛口レビュー 一覧